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第29話 王子の手紙
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調査員から、新たな情報が届いた。ローレタウ王国のギオマスラヴ王子に関して、私に知らせておくべきかもしれない情報があるらしい、とのこと。
婚約者となったラレアム様との信頼関係を築くのに専念していたので、他の用件については後回しにしていた。特に、王子の動向については興味が薄れていた。だが、あの後に大きな展開があったらしくて、私にも少し関係がある出来事らしい。
ということで、彼らの動向について最新情報を教えてもらった。
「あらあら」
新たな婚約関係を結んだギオマスラヴ王子と男爵令嬢は、別れてしまったらしい。ついこの前、婚約したばかりのはず。二人の間には、真実の愛が存在しているという関係だったはずなのに、もう駄目になってしまったのね。
どうやら、令嬢のほうが不貞を働いたということらしい。その事実を知った王子が激怒して、再び婚約を破棄したのだそうだ。それだけでなく、処刑してしまったらしい。
なんとも、あっけない結末だと思った。真実の愛だなんて言うから、もっと特別で深い関係が続いていくと思っていたけれど。王子が愛の力を信じて、男爵令嬢を許してあげればよかったのに。
別に期待していたわけじゃないけど、もう少し長く2人の関係は続くものだと考えていた。だけど、終わってしまった。私は絶対に、彼らのようにはならないよう気をつけようと思った。教訓にしましょう。
それで、婚約を破棄した王子から私宛に手紙が送られてきたそうだ。これが、私に関係する出来事。
調査員からは、何が書かれているのか確認しなくても別に問題はないと言われた。ただ、後から手紙の存在を知って面倒なことにはならないよう、念のために報告だけしておくことにした、とのこと。
その手紙が今、私の手元にある。これを読むかどうかの判断は、私に委ねられた。
ラレアム様にも、私が王子からの手紙を受け取ったことについて報告しておいた。今回の件に関わりの薄いラレアム様に、わざわざ報告する必要はないのかもしれないが、こんなものが原因で拗れてしまったら困るので一応伝えておくことに。
「エルミリアは、大変だな」
「そうですね。でも、大丈夫ですよ。手紙を送るくらいで、これ以上は干渉してくる手段がないと思いますので」
「何か困ってことがあれば、迷わず相談してくれ。出来る限り力になるぞ」
「ありがとうございます、ラレアム様。そう言ってもらえるだけで、心強いですわ」
とても頼りになるラレアム様の言葉に、嬉しくなって微笑んだ。
ギオマスラヴ王子の送ってきた手紙の内容について、中身を確認する必要はない。そう伝えられていたが、内容を確認することにした。少し、興味もあったので。
この手紙には、どんな事が書かれているのかな。なぜ今更、私に手紙を送ってきたのかしら。それも疑問。
予想しながら手紙を読んでみたら、思った通りの内容でしかなかった。復縁を願う言葉がズラリと、つまらないほどに並んでいるだけ。それから、わずかばかりの謝罪する言葉が書かれている。手紙の最後には、『君を愛している』という一文が添えられていた。
「時間の無駄ね」
真面目に読んでしまったのが馬鹿馬鹿しい気持ちになった。これなら、読む必要はなかった。こんな物に興味を持って、読んでしまったことを後悔するぐらい。
ある意味では面白かったけれど、この熱い想いを向けられているのが私だと考えると、気持ちが悪い。どういう考えで、こんな文章を書くに至ったのかしら。理解など出来ない。
当然、これを送ってきた王子宛に返事の手紙を書く必要もないわね。返事がほしいと手紙の中に書いてあったけれど、従う必要もない。そんなの無視すればいい。
この手紙によると、どうやら私が王国に戻るのを確信している様子だった。なんとも、おめでたい人だと思う。この人は、どうしてそこまで思い込んでいるのかしら。
あんなに罵倒されて、私が王国に戻りたいと思うわけない。
イステリッジ公爵家が帝国に移ることは確定事項。今後、王国が変わったとしても戻る予定はない。それが、イステリッジ公爵家の方針。私も家の方針に全力で従う。
そしてなりより、帝国にはラレアム様が居る。既に、私の居場所は彼と共にある。もう離れたくないと思うぐらいには、仲良くなっている。これから夫婦になるため、ラレアム様との信頼関係を築いていく。特に今は、大事な時期。
それが家のため、帝国のため、私達のためになると確信しているから。あの王子には、邪魔してほしくないわ。もう、とにかく関わってほしくないのよね。
王子と王国の問題には関わらないよう注意しながら、放置ということで。
婚約者となったラレアム様との信頼関係を築くのに専念していたので、他の用件については後回しにしていた。特に、王子の動向については興味が薄れていた。だが、あの後に大きな展開があったらしくて、私にも少し関係がある出来事らしい。
ということで、彼らの動向について最新情報を教えてもらった。
「あらあら」
新たな婚約関係を結んだギオマスラヴ王子と男爵令嬢は、別れてしまったらしい。ついこの前、婚約したばかりのはず。二人の間には、真実の愛が存在しているという関係だったはずなのに、もう駄目になってしまったのね。
どうやら、令嬢のほうが不貞を働いたということらしい。その事実を知った王子が激怒して、再び婚約を破棄したのだそうだ。それだけでなく、処刑してしまったらしい。
なんとも、あっけない結末だと思った。真実の愛だなんて言うから、もっと特別で深い関係が続いていくと思っていたけれど。王子が愛の力を信じて、男爵令嬢を許してあげればよかったのに。
別に期待していたわけじゃないけど、もう少し長く2人の関係は続くものだと考えていた。だけど、終わってしまった。私は絶対に、彼らのようにはならないよう気をつけようと思った。教訓にしましょう。
それで、婚約を破棄した王子から私宛に手紙が送られてきたそうだ。これが、私に関係する出来事。
調査員からは、何が書かれているのか確認しなくても別に問題はないと言われた。ただ、後から手紙の存在を知って面倒なことにはならないよう、念のために報告だけしておくことにした、とのこと。
その手紙が今、私の手元にある。これを読むかどうかの判断は、私に委ねられた。
ラレアム様にも、私が王子からの手紙を受け取ったことについて報告しておいた。今回の件に関わりの薄いラレアム様に、わざわざ報告する必要はないのかもしれないが、こんなものが原因で拗れてしまったら困るので一応伝えておくことに。
「エルミリアは、大変だな」
「そうですね。でも、大丈夫ですよ。手紙を送るくらいで、これ以上は干渉してくる手段がないと思いますので」
「何か困ってことがあれば、迷わず相談してくれ。出来る限り力になるぞ」
「ありがとうございます、ラレアム様。そう言ってもらえるだけで、心強いですわ」
とても頼りになるラレアム様の言葉に、嬉しくなって微笑んだ。
ギオマスラヴ王子の送ってきた手紙の内容について、中身を確認する必要はない。そう伝えられていたが、内容を確認することにした。少し、興味もあったので。
この手紙には、どんな事が書かれているのかな。なぜ今更、私に手紙を送ってきたのかしら。それも疑問。
予想しながら手紙を読んでみたら、思った通りの内容でしかなかった。復縁を願う言葉がズラリと、つまらないほどに並んでいるだけ。それから、わずかばかりの謝罪する言葉が書かれている。手紙の最後には、『君を愛している』という一文が添えられていた。
「時間の無駄ね」
真面目に読んでしまったのが馬鹿馬鹿しい気持ちになった。これなら、読む必要はなかった。こんな物に興味を持って、読んでしまったことを後悔するぐらい。
ある意味では面白かったけれど、この熱い想いを向けられているのが私だと考えると、気持ちが悪い。どういう考えで、こんな文章を書くに至ったのかしら。理解など出来ない。
当然、これを送ってきた王子宛に返事の手紙を書く必要もないわね。返事がほしいと手紙の中に書いてあったけれど、従う必要もない。そんなの無視すればいい。
この手紙によると、どうやら私が王国に戻るのを確信している様子だった。なんとも、おめでたい人だと思う。この人は、どうしてそこまで思い込んでいるのかしら。
あんなに罵倒されて、私が王国に戻りたいと思うわけない。
イステリッジ公爵家が帝国に移ることは確定事項。今後、王国が変わったとしても戻る予定はない。それが、イステリッジ公爵家の方針。私も家の方針に全力で従う。
そしてなりより、帝国にはラレアム様が居る。既に、私の居場所は彼と共にある。もう離れたくないと思うぐらいには、仲良くなっている。これから夫婦になるため、ラレアム様との信頼関係を築いていく。特に今は、大事な時期。
それが家のため、帝国のため、私達のためになると確信しているから。あの王子には、邪魔してほしくないわ。もう、とにかく関わってほしくないのよね。
王子と王国の問題には関わらないよう注意しながら、放置ということで。
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