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第3話 大人たちの話し合い◆第三者視点
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ラザフォード男爵家の邸宅に、ブラックウェル男爵家の当主エドガーが到着した。彼を玄関先で出迎えたのは、ラザフォード家の当主ルパートである。
「よく来たな、エドガー」
「出迎え、ありがとう。ルパート」
2人は笑顔を浮かべて雑談しながら、部屋へ移動する。その様子を見ると、2人が親しい関係であるように周りからは見えるだろう。だが実際は、そう親しくもない。
ブラックウェル男爵家の当主であるエドガーと、ラザフォード家の当主ルパートがテーブルを間に挟んで向かい合って座る。するとすぐ、ルパートが口を開いた。
「で、今日は何の用だ?」
「ちょっと、確認しておきたいことがあってね」
「確認? 君が私に、何を確認するっていうんだ?」
ルパートは疑問の表情を浮かべて問いかける。エドガーが何を確認しに来たのか、見当がつかないから。お前の目的は何なのか、早く教えてくれと。
「君の息子が学園で問題を起こしているそうだが、知っているかい?」
「……」
エドガーが言うと、ルパートは黙ったまま眉をひそめた。
「なるほど、その話か。根も葉もない噂だろう。うちの息子がそんなことをするはずがない。本人も否定していたからな」
「それが本気で正しいと思っているのか?」
「もちろん!」
「……」
前にも同じような噂を聞いたことがあるが、息子本人が否定したので、ルパートは信じていなかった。そんな答えを聞いて、頭を抱えたくなるエドガー。なんとか耐えつつ、苦笑いを浮かべて話を続ける。
「じゃあ、この情報も全部嘘だと言うのかい?」
「これは?」
エドガーは、懐から一束の書類を取り出した。娘のエレノアが集めた情報である。渡された資料に目を通すルパートの表情が、次第に曇っていく。
これほど具体的な情報を突きつけられては、もはや嘘だと言い張ることはできない。息子が実際に非行に走っているのは間違いない。薄々感じていたけど、これでは否定できない。これだけ大量の情報を出されてしまったら。
「くそっ、あのバカ息子め……ッ!」
ルパートは拳を握りしめて呻いた。これが公になってしまえば、ラザフォード家の名声は地に落ちる。領地経営にも大きく影響が出るかもしれない。
「うちのエレノアから、ラザフォード家に事実確認の手紙を送ったそうだが? それについては、どう説明してくれるんだ?」
エドガーが追及する。ルパートは歯噛みしながら答えた。
「ああ、そんな手紙が来ていたのは覚えている。だが、あれは……」
言い訳する気配を感じたので、これ以上は聞く気にもならないエドガーは、強引に話を進めていく。
「それから、息子との婚約破棄の合意書にも、君の息子がサインしたよ」
「何だと!?」
ルパートは絶句した。ちゃんとした書類を用意して、婚約破棄を認めるサインまでちゃんと存在している。偽造じゃない。婚約破棄が成立しているなんて。これでは、ブラックウェル家との関係が危うい。
「ま、待ってくれ。あれは何かの行き違いだ。ちゃんと話し合えば……」
「先ほど言ったが、私はここに事実を確認しに来ただけだよ。これからどうするかを聞きに来たわけじゃない」
エドガーの言葉に、ルパートは何も言えなくなった。
「ルパート、これまでうちはラザフォード家を手厚く支援してきたよ。商人を送って市場を活性化させ、技術者を派遣して産業を発展させてきたことは君も知っているはずだ」
エドガーの言葉にルパートの表情が曇る。ブラックウェル家の支援があってこそ、今のラザフォード家の繁栄があると言っても過言ではない。
大事な娘を嫁がせるために、ラザフォード家の領地を豊かにさせようという理由だった。
「だが、こんな状況では、ブラックウェル家の関係者を全て引き上げざるを得ない」
「待ってくれ、エドガー。そこまでする必要は……」
ルパートが慌てて口を挟むが、エドガーは続ける。
「商人も技術者も、全て引き揚げさせよう。君の領地に送っていた特殊技能者たちも、全員召し戻す」
「そ、そんなことをされては、うちは立ち行かなくなるッ! 今のラザフォード家の豊かさは、君たちの支援あってこそだ。それを急に引き戻すなんて……」
ルパートは必死になって訴えるが、エドガーの表情は冷ややかだ。
「残念ながら、手遅れなんだ。君は、自分の息子の行いを見過ごし、私の娘の忠告も聞き逃し、自分で事実を調べようとせずに息子に話を聞いて、それを信じるだなんて愚かなことをしてしまった。だからもう、手遅れなんだよ」
「……」
そしてまた、ルパートは何も言えなくなった。
「よく来たな、エドガー」
「出迎え、ありがとう。ルパート」
2人は笑顔を浮かべて雑談しながら、部屋へ移動する。その様子を見ると、2人が親しい関係であるように周りからは見えるだろう。だが実際は、そう親しくもない。
ブラックウェル男爵家の当主であるエドガーと、ラザフォード家の当主ルパートがテーブルを間に挟んで向かい合って座る。するとすぐ、ルパートが口を開いた。
「で、今日は何の用だ?」
「ちょっと、確認しておきたいことがあってね」
「確認? 君が私に、何を確認するっていうんだ?」
ルパートは疑問の表情を浮かべて問いかける。エドガーが何を確認しに来たのか、見当がつかないから。お前の目的は何なのか、早く教えてくれと。
「君の息子が学園で問題を起こしているそうだが、知っているかい?」
「……」
エドガーが言うと、ルパートは黙ったまま眉をひそめた。
「なるほど、その話か。根も葉もない噂だろう。うちの息子がそんなことをするはずがない。本人も否定していたからな」
「それが本気で正しいと思っているのか?」
「もちろん!」
「……」
前にも同じような噂を聞いたことがあるが、息子本人が否定したので、ルパートは信じていなかった。そんな答えを聞いて、頭を抱えたくなるエドガー。なんとか耐えつつ、苦笑いを浮かべて話を続ける。
「じゃあ、この情報も全部嘘だと言うのかい?」
「これは?」
エドガーは、懐から一束の書類を取り出した。娘のエレノアが集めた情報である。渡された資料に目を通すルパートの表情が、次第に曇っていく。
これほど具体的な情報を突きつけられては、もはや嘘だと言い張ることはできない。息子が実際に非行に走っているのは間違いない。薄々感じていたけど、これでは否定できない。これだけ大量の情報を出されてしまったら。
「くそっ、あのバカ息子め……ッ!」
ルパートは拳を握りしめて呻いた。これが公になってしまえば、ラザフォード家の名声は地に落ちる。領地経営にも大きく影響が出るかもしれない。
「うちのエレノアから、ラザフォード家に事実確認の手紙を送ったそうだが? それについては、どう説明してくれるんだ?」
エドガーが追及する。ルパートは歯噛みしながら答えた。
「ああ、そんな手紙が来ていたのは覚えている。だが、あれは……」
言い訳する気配を感じたので、これ以上は聞く気にもならないエドガーは、強引に話を進めていく。
「それから、息子との婚約破棄の合意書にも、君の息子がサインしたよ」
「何だと!?」
ルパートは絶句した。ちゃんとした書類を用意して、婚約破棄を認めるサインまでちゃんと存在している。偽造じゃない。婚約破棄が成立しているなんて。これでは、ブラックウェル家との関係が危うい。
「ま、待ってくれ。あれは何かの行き違いだ。ちゃんと話し合えば……」
「先ほど言ったが、私はここに事実を確認しに来ただけだよ。これからどうするかを聞きに来たわけじゃない」
エドガーの言葉に、ルパートは何も言えなくなった。
「ルパート、これまでうちはラザフォード家を手厚く支援してきたよ。商人を送って市場を活性化させ、技術者を派遣して産業を発展させてきたことは君も知っているはずだ」
エドガーの言葉にルパートの表情が曇る。ブラックウェル家の支援があってこそ、今のラザフォード家の繁栄があると言っても過言ではない。
大事な娘を嫁がせるために、ラザフォード家の領地を豊かにさせようという理由だった。
「だが、こんな状況では、ブラックウェル家の関係者を全て引き上げざるを得ない」
「待ってくれ、エドガー。そこまでする必要は……」
ルパートが慌てて口を挟むが、エドガーは続ける。
「商人も技術者も、全て引き揚げさせよう。君の領地に送っていた特殊技能者たちも、全員召し戻す」
「そ、そんなことをされては、うちは立ち行かなくなるッ! 今のラザフォード家の豊かさは、君たちの支援あってこそだ。それを急に引き戻すなんて……」
ルパートは必死になって訴えるが、エドガーの表情は冷ややかだ。
「残念ながら、手遅れなんだ。君は、自分の息子の行いを見過ごし、私の娘の忠告も聞き逃し、自分で事実を調べようとせずに息子に話を聞いて、それを信じるだなんて愚かなことをしてしまった。だからもう、手遅れなんだよ」
「……」
そしてまた、ルパートは何も言えなくなった。
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