赤の他人から婚約破棄を迫られた話~恥ずかしがり屋の王子殿下は、溺愛していることを隠しておきたい~

キョウキョウ

文字の大きさ
6 / 7

第6話

「さぁ、クリス。痛めた足を治療するために、医務室へ向かおう。彼女に対する暴言や身分を弁えない態度は、後でしっかり沙汰を出すよ。クリスを突き飛ばした君は、特に厳しく処理してあげるから覚悟しておいて。逃さないように、二人を連行しろ」
「了解しました」

 最初は私に向けて。次にシャイト子爵令嬢とテスタ伯爵令息の二人。そして最後は近衛に向かって、色々な表情を使い分けながら指示するルシャード様。

「や、やめろ……! 俺は、違うんだ!」

 慌てたのは、テスタ伯爵令息のリカルドである。近衛に腕を掴まれると、暴れた。

「も、申し訳ありませんでした、殿下ッ! ですが、僕は知らなくて。騙されただけなんですよ! 本当に、マレイラ嬢がイジメられていると思ったから……!」

 私を突き飛ばしたリカルドは、ルシャード様に向かって何度も繰り返し頭を下げて必死に謝罪する。近衛の人たちに拘束されながら、泣きそうな顔で。身体をブルブル震わせながら。

「医務室に急ごう。早く治療してもらわないと、怪我が悪化するかも」
「あ。え、えぇ……。お願いします」
「で、殿下!! どうか! どうか、お許しを!!」

 彼のことなど完全に無視をして、医務室へ移動しようとする。しかし、リカルドも諦めが悪かった。声を張り上げて、何度も何度もしつこく謝罪を繰り返す。

 ルシャード様が立ち止まり、彼の方へ顔を向ける。

「……ハァ。謝る相手は、私じゃないだろう? それを理解していない時点で、君は許されないのさ」
「あ……。も、申し訳……」

 ため息をこぼしながら、ルシャード様は指摘する。謝罪する相手を間違っている、と。

 リカルドの視線が私に向く。けれど、もう遅いわよね。指摘されて黙ってしまった彼を放置して、ルシャード様は今度こそ立ち止まらずに医務室へ向かった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい

花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。 ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。 あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…? ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの?? そして婚約破棄はどうなるの??? ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

【完結】侯爵家の平和な日常~世間知らずの花々の一生~

春風由実
恋愛
「お姉さま、悪女になってくださる?」  ──それは妹の一言から始まった。魔王に捕まったとある美しき姉妹の物語。 ※短いです。七話で完結します。

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら

雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」 「え?」 伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。 しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。 その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。 機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。 そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。 しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。 *他サイトでも公開しております。