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第2話 精霊の契約書
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笑顔になりそうなのを我慢するため、顔を伏せる。まだ、その表情を彼に見せちゃダメよ。そんな私の動きを見て、ランドリックは勘違いしたようだ。
「こんな所で泣かないでくれよな。俺が君を泣かせた、悪者みたいじゃないか」
「……」
泣いてはいないけれど、勘違いさせたままにしておきましょう。私にとっては都合が良い。このまま、彼には突っ走ってもらいたい。そうするように誘導したのだから。
「……破棄を取り消すつもりは、ありませんか?」
「ハハハ!」
「フフッ」
顔を伏せたまま、聞いた。そうすると、ランドリックは楽しそうに笑った。その横にいるレイティアも、笑っているようだ。2人とも、本当に楽しそうね。
「取り消す、なんてあり得ないね。決めたことを覆すつもりはないよ。これから先はレイティアと一緒に良い人生を歩んでいくつもりだから、邪魔者にはさっさと消えてほしいんだ」
その答えを聞いて、私は安心する。彼は、本気で私との婚約を破棄したいようね。
それに、私が邪魔者、か。そこまで言われてしまったのなら、もう遠慮はしない。遠慮なんて必要ないみたい。
「わかりました。それでは、婚約破棄の証明を残しておきましょう」
「証明を残す?」
「あれを持ってきて」
「はい、すぐに」
眉をひそめる彼。私は、近くに居た使用人に命じて契約書を持ってこさせた。彼の目の前に、事前に用意しておいた契約書を差し出す。
「これにサインをして。婚約を破棄する事実を記して」
「いいだろう」
「え?」
内容を確認もせず、受け取った契約書を片手に持ってあっさりサインに応じてくれたランドリック。もう少し、ごねるかと思ったのに予想外だ。怪訝な顔をした私に、彼は得意気な顔で告げる。
「これは精霊の力を用いた、絶対に破ることのできない契約書だろう? それぐらい、わかっているよ」
流石に、その程度のことは理解していたようだ。それなら、その契約書が非常に重要なものであることも理解しているだろう。それなのに、内容を確認もせずにサインしようとするなんて。
逆に心配になってしまう。本当に、わかっているの? 大丈夫?
思わず、彼をじっと見つめてしまう。
「これを出して俺が怯むのを期待したようだけど、その手には乗らないよ。さっさとサインして、婚約破棄を確定しようじゃないか。その方が俺にとっても都合が良い」
そんなことは考えていなかったけれど、ランドリックは自信満々だ。自分の考えが間違っているなんて、微塵にも思っていない様子。私がそう企んでいるに違いないと、勝手に思い込んでいる。
「こんな所で泣かないでくれよな。俺が君を泣かせた、悪者みたいじゃないか」
「……」
泣いてはいないけれど、勘違いさせたままにしておきましょう。私にとっては都合が良い。このまま、彼には突っ走ってもらいたい。そうするように誘導したのだから。
「……破棄を取り消すつもりは、ありませんか?」
「ハハハ!」
「フフッ」
顔を伏せたまま、聞いた。そうすると、ランドリックは楽しそうに笑った。その横にいるレイティアも、笑っているようだ。2人とも、本当に楽しそうね。
「取り消す、なんてあり得ないね。決めたことを覆すつもりはないよ。これから先はレイティアと一緒に良い人生を歩んでいくつもりだから、邪魔者にはさっさと消えてほしいんだ」
その答えを聞いて、私は安心する。彼は、本気で私との婚約を破棄したいようね。
それに、私が邪魔者、か。そこまで言われてしまったのなら、もう遠慮はしない。遠慮なんて必要ないみたい。
「わかりました。それでは、婚約破棄の証明を残しておきましょう」
「証明を残す?」
「あれを持ってきて」
「はい、すぐに」
眉をひそめる彼。私は、近くに居た使用人に命じて契約書を持ってこさせた。彼の目の前に、事前に用意しておいた契約書を差し出す。
「これにサインをして。婚約を破棄する事実を記して」
「いいだろう」
「え?」
内容を確認もせず、受け取った契約書を片手に持ってあっさりサインに応じてくれたランドリック。もう少し、ごねるかと思ったのに予想外だ。怪訝な顔をした私に、彼は得意気な顔で告げる。
「これは精霊の力を用いた、絶対に破ることのできない契約書だろう? それぐらい、わかっているよ」
流石に、その程度のことは理解していたようだ。それなら、その契約書が非常に重要なものであることも理解しているだろう。それなのに、内容を確認もせずにサインしようとするなんて。
逆に心配になってしまう。本当に、わかっているの? 大丈夫?
思わず、彼をじっと見つめてしまう。
「これを出して俺が怯むのを期待したようだけど、その手には乗らないよ。さっさとサインして、婚約破棄を確定しようじゃないか。その方が俺にとっても都合が良い」
そんなことは考えていなかったけれど、ランドリックは自信満々だ。自分の考えが間違っているなんて、微塵にも思っていない様子。私がそう企んでいるに違いないと、勝手に思い込んでいる。
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