婚約破棄された私は、号泣しながらケーキを食べた~限界に達したので、これからは自分の幸せのために生きることにしました~

キョウキョウ

文字の大きさ
10 / 38

第10話 大歓迎

しおりを挟む
「ようこそ。君が来るのを待っていたよ、オリヴィア嬢」
「お出迎え、ありがとうございますアンドリック様。そして、本日からよろしくお願いします」

 エルヴェシウス公爵家の屋敷を訪れた。玄関ホールで待っていた、体の大きな男性に挨拶をする。

 彼が、新しい婚約相手となるエルヴェシウス公爵家当主のアンドリック様である。笑顔を浮かべたアンドリック様が、私を出迎えてくれた。

 話を受けてからすぐ婚約が決まって、私は今日からエルヴェシウス公爵家の屋敷で暮らすことになった。私が暮らしていた部屋から荷物を運んでもらい、何人かメイドを連れてきて、身の回りのお世話をしてもらう。

 結婚する前から、公爵家の屋敷でお世話になる。婚約相手のアンドリック様と早く親睦を深めるために、私から提案してみた。

 お互いのことをよく知るため、親交を深めるには同じ場所で暮らしてみるのが一番だと思ったから。

 それに、前の婚約はダメになってしまったけれど、今回は必ず成功させるつもり。そのためには、アンドリック様と良好な関係を築かなければならない。頑張りましょう。私は気合を入れる。

「早速だけど、君のために用意した物がある。それを見せたいんだけど、一緒に来てくれるかな?」
「はい、もちろんです」

 少し不安そうな表情で誘ってくる彼に、もちろんと言ってついて行く。

 彼が案内してくれたのは屋敷の中の一室。大きなテーブルが真ん中にあって、その周りに椅子が並んでいる場所。美味しそうな匂いもする。おそらく、食事するための部屋みたいだけれど。

「まぁ!」

 テーブルの上に置いてある物を見て、私は驚いた。そこにあったのは、とても美味しそうな料理の数々だった。それが、アンドリック様が私のために用意した物のようね。

「君は、食事するのが好きだと聞いてね」
「はい。食べることは大好きです!」
「この太った体を見てわかると思うけれど、実は僕も食べるのが好きなんだ」

 そう言ってお腹をさする彼の姿に、親近感が湧いた。そして、好きなことが同じなのも嬉しい。好きを共有できるのね。

「さぁ、好きなだけ食べてくれ。お腹がすいているだろう? 遠慮せずに食べてくれ」
「はい!」

 私は席に座って、彼が用意してくれた料理を食べてみる。ものすごく、美味しい!

「これ、とっても美味しいですよ。アンドリック様も一緒に頂きましょう!」
「ありがとう。それじゃあ、僕も一緒に。……うん、君の言う通り美味しいね」
「よかった! もっと、食べましょう」

 アンドリック様も一緒に、次々と食べていく。どれもこれも美味しい。私の好みを熟知しているかのように、どの料理も絶品だった。一緒に食べるアンドリック様も、美味しいという表情。食の好みが同じなのね。そう思ったら、自然と笑顔になっていた。

 私たちは、用意された料理を一緒に堪能した。とても楽しい時間だった。

 彼と食事をしながらお話しする。私たちは食という共通の話題で盛り上がることが出来た。短い時間で、とても気が合うことが分かったし、美味しい食べ物をたくさん教えてくれた。まだこの世界には、そんなに美味しい料理があふれているなんて!

 結婚した後も自由に食べて良い、という許可も頂いた。

「もちろん、自由に食べていいよ。食べるのを禁止されるなんて、辛すぎるからね。そんな辛いことはさせないから、安心して」
「ありがとうございます!」

 私にとって、それは天国のような条件である。食事制限を強制されず、好きなように食べることが出来る。私の望む条件は、それぐらいだった。それを満たしてくれるのなら、他には何もいらないくらい。

 こうして私は、婚約者となったアンドリック様に心を開いたのであった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」 完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。 私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。 この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。 あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。 できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。 婚約破棄?大歓迎ですわ。 その真実の愛とやらを貫いてくださいね? でも、ガスパル様。 そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ? 果たして本当に幸せになれるのかしら…?? 伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。 学園物を書いた事があまり無いので、 設定が甘い事があるかもしれません…。 ご都合主義とやらでお願いします!!

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

婚約者を借りパクされました

朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。 わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。 兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。 わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。 家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。 そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。

名も無き伯爵令嬢の幸運

ひとみん
恋愛
私はしがない伯爵令嬢。巷ではやりの物語のように義母と義妹に虐げられている。 この家から逃げる為に、義母の命令通り国境を守る公爵家へと乗り込んだ。王命に物申し、国外追放されることを期待して。 なのに、何故だろう・・・乗り込んだ先の公爵夫人が決めたという私に対する処罰がご褒美としか言いようがなくて・・・ 名も無きモブ令嬢が幸せになる話。まじ、名前出てきません・・・・ *「転生魔女は国盗りを望む」にチラッとしか出てこない、名も無きモブ『一人目令嬢』のお話。 34話の本人視点みたいな感じです。 本編を読まなくとも、多分、大丈夫だと思いますが、本編もよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/novel/618422773/930884405

虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を

柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。 みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。 虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ? 

青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。 チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。 しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは…… これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦) それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

処理中です...