14 / 42
第14話 雑務 ※宰相候補の男視点
しおりを挟む
なぜ俺が、こんな仕事をしなければいけないのか。
「各部屋の掃除が終わりました」
「そうか。なら次は、庭園の整備に回ってくれ」
報告しに来た使用人に、次の作業に取り掛かるよう指示を出す。すると、すぐ別の使用人が報告にやってきた。
「――様が、陛下に謁見を賜りたいとお越しになられていますが」
「なに? そんな話は、聞いていないが」
急な貴族の訪問に、俺は眉をひそめる。また勝手に言って、陛下に会おうとしているのか。この面倒な時期に。しかし、念のために確認しないといけない。予定を確認してみると、やっぱり何の約束もしていなかった。王城を訪れた貴族を追い返す。
「私は、――家の当主だぞ! 陛下に会わせてくれないとは、どういうことだッ!」
「約束のない者は、お帰りください」
「くっ、覚えておけっ!」
面倒な貴族は俺を睨みつけると、肩を怒らせながら帰っていった。
そんな事をしている間に、夕食の時間が迫ってきている。もう、こんな時間になっていたのか。あっという間だ。しかし、気が抜けない。
料理を用意する宮廷料理人に、そろそろ準備を始めるよう指示を出す。このタイミングで調理を開始すれば、丁度よい時間に提供できるだろう。
「本日は、羊肉のステーキとスープ、サラダを用意いたしました。これで、よろしいでしょうか?」
「あぁ、それでいい」
「給仕係と毒見役は、いかがいたしましょうか?」
「いつも通りで、いいだろう」
「わかりました」
俺の答えに、使用人たちが頷いた。そしてようやく動き出す。提供する料理の最終確認と次の指示まで、俺がやらなければいけないのか。もう少し、自分たちで判断してほしいのだが。
作業の内容は、このように様々。俺が求めていたのは、こんな仕事じゃない。王を支えて、共に国を繁栄に導く。そんな、栄誉ある宰相の仕事だったはずなのに。
本来であれば俺がやるような仕事じゃない。しかし、俺が処理しないといけない。他に任せられる人間がいないからと押し付けられてしまった。
こうなってしまった原因は、俺の婚約相手だったリゼットの実家。デュノア家のせいだろう。
王城や宮殿で働いている使用人は、様々な貴族家から派遣されてきた人員だった。デュノア家も、派遣してきていた貴族家の一つだ。それが今回、リゼットとの婚約を破棄した事で派遣していた使用人たちを全員引き上げてしまったのだ。
婚約破棄により、デュノア家と俺の実家との繋がりが切れてしまった。王家との関係も遠のいてしまったので、そんな王家との関係が薄い貴族家が王城や宮殿に使用人を派遣しているのはよろしくない、という理由で。もっと他に、ふさわしい貴族家があるはずだと。今後は、そちらに任せてくださいと。
そんなのは、表向きの理由だろう。実際の目的は、婚約を破棄した報復だと思う。親友たちも、婚約を破棄したことで色々と嫌がらせされている、という話を聞いた。酷いものだ。
デュノア家から派遣されていた使用人の数は、想像していた以上に多かった。王城と宮殿からは、半分ぐらいの使用人が一気に居なくなってしまったのだ。
そんなに減ってしまうと、当然仕事が回らなくなる。急いで人員を補充しようとしてみたが、王城や王宮で働けるような優秀で忠誠心のある使用人は、そう簡単に集めることは出来ない。
以前のような状況に戻すためには、もう少し時間が必要だ。
そのせいで、俺に王城と宮殿に関する雑務が回ってきたというワケだった。
「各部屋の掃除が終わりました」
「そうか。なら次は、庭園の整備に回ってくれ」
報告しに来た使用人に、次の作業に取り掛かるよう指示を出す。すると、すぐ別の使用人が報告にやってきた。
「――様が、陛下に謁見を賜りたいとお越しになられていますが」
「なに? そんな話は、聞いていないが」
急な貴族の訪問に、俺は眉をひそめる。また勝手に言って、陛下に会おうとしているのか。この面倒な時期に。しかし、念のために確認しないといけない。予定を確認してみると、やっぱり何の約束もしていなかった。王城を訪れた貴族を追い返す。
「私は、――家の当主だぞ! 陛下に会わせてくれないとは、どういうことだッ!」
「約束のない者は、お帰りください」
「くっ、覚えておけっ!」
面倒な貴族は俺を睨みつけると、肩を怒らせながら帰っていった。
そんな事をしている間に、夕食の時間が迫ってきている。もう、こんな時間になっていたのか。あっという間だ。しかし、気が抜けない。
料理を用意する宮廷料理人に、そろそろ準備を始めるよう指示を出す。このタイミングで調理を開始すれば、丁度よい時間に提供できるだろう。
「本日は、羊肉のステーキとスープ、サラダを用意いたしました。これで、よろしいでしょうか?」
「あぁ、それでいい」
「給仕係と毒見役は、いかがいたしましょうか?」
「いつも通りで、いいだろう」
「わかりました」
俺の答えに、使用人たちが頷いた。そしてようやく動き出す。提供する料理の最終確認と次の指示まで、俺がやらなければいけないのか。もう少し、自分たちで判断してほしいのだが。
作業の内容は、このように様々。俺が求めていたのは、こんな仕事じゃない。王を支えて、共に国を繁栄に導く。そんな、栄誉ある宰相の仕事だったはずなのに。
本来であれば俺がやるような仕事じゃない。しかし、俺が処理しないといけない。他に任せられる人間がいないからと押し付けられてしまった。
こうなってしまった原因は、俺の婚約相手だったリゼットの実家。デュノア家のせいだろう。
王城や宮殿で働いている使用人は、様々な貴族家から派遣されてきた人員だった。デュノア家も、派遣してきていた貴族家の一つだ。それが今回、リゼットとの婚約を破棄した事で派遣していた使用人たちを全員引き上げてしまったのだ。
婚約破棄により、デュノア家と俺の実家との繋がりが切れてしまった。王家との関係も遠のいてしまったので、そんな王家との関係が薄い貴族家が王城や宮殿に使用人を派遣しているのはよろしくない、という理由で。もっと他に、ふさわしい貴族家があるはずだと。今後は、そちらに任せてくださいと。
そんなのは、表向きの理由だろう。実際の目的は、婚約を破棄した報復だと思う。親友たちも、婚約を破棄したことで色々と嫌がらせされている、という話を聞いた。酷いものだ。
デュノア家から派遣されていた使用人の数は、想像していた以上に多かった。王城と宮殿からは、半分ぐらいの使用人が一気に居なくなってしまったのだ。
そんなに減ってしまうと、当然仕事が回らなくなる。急いで人員を補充しようとしてみたが、王城や王宮で働けるような優秀で忠誠心のある使用人は、そう簡単に集めることは出来ない。
以前のような状況に戻すためには、もう少し時間が必要だ。
そのせいで、俺に王城と宮殿に関する雑務が回ってきたというワケだった。
424
あなたにおすすめの小説
私の誕生日パーティーを台無しにしてくれて、ありがとう。喜んで婚約破棄されますから、どうぞ勝手に破滅して
珠宮さくら
恋愛
公爵令嬢のペルマは、10年近くも、王子妃となるべく教育を受けつつ、聖女としての勉強も欠かさなかった。両立できる者は、少ない。ペルマには、やり続ける選択肢しか両親に与えられず、辞退することも許されなかった。
特別な誕生日のパーティーで婚約破棄されたということが、両親にとって恥でしかない娘として勘当されることになり、叔母夫婦の養女となることになることで、一変する。
大事な節目のパーティーを台無しにされ、それを引き換えにペルマは、ようやく自由を手にすることになる。
※全3話。
聖女をぶん殴った女が妻になった。「貴女を愛することはありません」と言ったら、「はい、知ってます」と言われた。
下菊みこと
恋愛
主人公は、聖女をぶん殴った女を妻に迎えた。迎えたというか、強制的にそうなった。幼馴染を愛する主人公は、「貴女を愛することはありません」というが、返答は予想外のもの。
この結婚の先に、幸せはあるだろうか?
小説家になろう様でも投稿しています。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。
水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。
しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。
マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。
当然冤罪だった。
以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。
証拠は無い。
しかしマイケルはララの言葉を信じた。
マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。
そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。
もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる