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第29話 後悔の涙◆妹リリアン視点
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辺境での生活で、ずっと考え込んでいた。どうしてこんなことになってしまったのだろう、かと。
これまで、ずっと上手くいっていた。お姉様という心強い味方がいて、生きているだけで困ることなんて何一つなかった。今振り返ると、幸せな日々だった。そして、とんでもなく恵まれていた。それを自覚しないまま、受け取っていた。
辺境での生活は、とにかく最悪だった。簡素な屋敷に、粗末な食事。最初の頃は、慣れない環境に文句ばかり言っていた。だけど、いつの日か気付いてしまう。文句を言っていても何もならない。この環境に慣れるしかない。
こんな暮らしを続けていたら、欲なんて薄れていく。そして、気が付いた。私は、とんでもないことをしてしまった。お姉様が大事にしていたものを奪い取って、満足していた。失敗したら恨んで、妬んで。お姉様に頼ってばかりの人生だった。そんなことをすれば嫌われるって。
私は、お姉様に嫌われてしまったのね。今になって、そんなことに気付く。自分の愚かさに気付いた。だけど、もう謝ることも出来ない。全てが遅かった。もっと早く気付くべきだった。
ルーカス様との関係は、表面上は良好だった。しかし、彼の瞳の奥には、まだ疑念の色が消えない。
過去の私を知る彼には、私の変化を信じることができないのだろう。ルーカス様が私を見る。その視線に疑いの色を感じ、私は思わず目を伏せてしまう。
ああ、私はどんなに後悔しても、もう彼の信頼を取り戻すことはできないのだ。
幸いなことに、ルーカス様は夫婦としての関係は大事にしてくれた。私のことを、疑っている。けれど、妻として大事に扱ってくれる。後悔と悲しみに暮れる日々を過ごす中で、彼との関係だけが心の支えだった。
そして私は、子どもを身ごもった。小さな命の存在に、私は大きな希望を抱いた。
「あなたが生まれてきてくれたら、きっと何かが変わると思う」
お腹に語りかける。まだ見ぬ我が子の未来を想像し、幸せな気持ちになる。この子のためにも、私は変わらなくては。そう心に誓うのだった。
季節が巡り、出産の日がやって来た。陣痛に耐えながら、私は祈った。
「どうか、元気に生まれておいで」
長い時間が過ぎ、ついに新しい命の誕生を告げる産婆の声が聞こえた。元気に生まれてきた、と。安堵と疲労に身を任せて、私は眠りについた。
目が覚めると、不思議な静けさが私を包んでいた。
「……私の子は?」
か細い声で尋ねる。私の疑問に答えたのは、ルーカス様だった。
「あの子は、連れて行かれた。そういう契約だった」
ルーカス様が、暗い表情で語る。
「……契約?」
「跡継ぎにするため、ヴァレンタイン家に送る。辺境に来る前に、父と交わした契約だ」
そして私は、契約について聞かされた。生まれた子は、ヴァレンタイン家に血を継ぐために取られてしまうこと。
私の脳裏に、かつて奪い取ったお姉様の大切にしていた物の数々が走馬灯のように蘇る。過去の私はそれを、無自覚に奪ってきた。そして今度は、私自身の大切なものが奪われていくのだ。
「ああ、そんな……」
私は泣き崩れた。
赤子の顔を一目見ることもできぬまま、我が子との別れ。これが、私への罰なのだろう。身勝手に奪い、傷つけてきた私への罰。
「お姉様……、ごめんなさい」
遅すぎた謝罪の言葉が、小さな部屋に響く。私は自分の過ちに気づくのが遅すぎたのだ。どんなに後悔の涙を流しても、過去は変えられない。自分のしてしまったことは、もう取り消せない。
これまで、ずっと上手くいっていた。お姉様という心強い味方がいて、生きているだけで困ることなんて何一つなかった。今振り返ると、幸せな日々だった。そして、とんでもなく恵まれていた。それを自覚しないまま、受け取っていた。
辺境での生活は、とにかく最悪だった。簡素な屋敷に、粗末な食事。最初の頃は、慣れない環境に文句ばかり言っていた。だけど、いつの日か気付いてしまう。文句を言っていても何もならない。この環境に慣れるしかない。
こんな暮らしを続けていたら、欲なんて薄れていく。そして、気が付いた。私は、とんでもないことをしてしまった。お姉様が大事にしていたものを奪い取って、満足していた。失敗したら恨んで、妬んで。お姉様に頼ってばかりの人生だった。そんなことをすれば嫌われるって。
私は、お姉様に嫌われてしまったのね。今になって、そんなことに気付く。自分の愚かさに気付いた。だけど、もう謝ることも出来ない。全てが遅かった。もっと早く気付くべきだった。
ルーカス様との関係は、表面上は良好だった。しかし、彼の瞳の奥には、まだ疑念の色が消えない。
過去の私を知る彼には、私の変化を信じることができないのだろう。ルーカス様が私を見る。その視線に疑いの色を感じ、私は思わず目を伏せてしまう。
ああ、私はどんなに後悔しても、もう彼の信頼を取り戻すことはできないのだ。
幸いなことに、ルーカス様は夫婦としての関係は大事にしてくれた。私のことを、疑っている。けれど、妻として大事に扱ってくれる。後悔と悲しみに暮れる日々を過ごす中で、彼との関係だけが心の支えだった。
そして私は、子どもを身ごもった。小さな命の存在に、私は大きな希望を抱いた。
「あなたが生まれてきてくれたら、きっと何かが変わると思う」
お腹に語りかける。まだ見ぬ我が子の未来を想像し、幸せな気持ちになる。この子のためにも、私は変わらなくては。そう心に誓うのだった。
季節が巡り、出産の日がやって来た。陣痛に耐えながら、私は祈った。
「どうか、元気に生まれておいで」
長い時間が過ぎ、ついに新しい命の誕生を告げる産婆の声が聞こえた。元気に生まれてきた、と。安堵と疲労に身を任せて、私は眠りについた。
目が覚めると、不思議な静けさが私を包んでいた。
「……私の子は?」
か細い声で尋ねる。私の疑問に答えたのは、ルーカス様だった。
「あの子は、連れて行かれた。そういう契約だった」
ルーカス様が、暗い表情で語る。
「……契約?」
「跡継ぎにするため、ヴァレンタイン家に送る。辺境に来る前に、父と交わした契約だ」
そして私は、契約について聞かされた。生まれた子は、ヴァレンタイン家に血を継ぐために取られてしまうこと。
私の脳裏に、かつて奪い取ったお姉様の大切にしていた物の数々が走馬灯のように蘇る。過去の私はそれを、無自覚に奪ってきた。そして今度は、私自身の大切なものが奪われていくのだ。
「ああ、そんな……」
私は泣き崩れた。
赤子の顔を一目見ることもできぬまま、我が子との別れ。これが、私への罰なのだろう。身勝手に奪い、傷つけてきた私への罰。
「お姉様……、ごめんなさい」
遅すぎた謝罪の言葉が、小さな部屋に響く。私は自分の過ちに気づくのが遅すぎたのだ。どんなに後悔の涙を流しても、過去は変えられない。自分のしてしまったことは、もう取り消せない。
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