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02.手続きが終わって
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王や大臣たちと話し合い、婚約を破棄するための手続きを進めていく。やんわりと引き止められたが、気にしなかった。
彼らが引き止めようとするのは、王妃にするための教育が無駄になるから、という理由だろう。確かに、私にかけた時間と費用が無駄になる。だけど私は、ランベルト王子との婚約関係を破棄することだけに集中して、突き進んだ。
何を言われても、もう撤回はしない。
各所とやり取りをして、ようやく婚約破棄の手続きが全て終わった。
ランベルト王子が率先して手続きしてくれたらスムーズに処理できるというのに、彼は全く手伝ってくれなかった。それが、当たり前だと思っているからだろう。
私は、彼に全く期待していない。何度注意をしても、改善されることがないから。愛人関係も、女遊びをするのなら自分で後始末をつけてくれないと困るというのに、何か問題が起きたら放置するだけ。
時間が経てば、全ての問題は勝手に解決すると思っているらしい。そんなはずないのに。
彼が不祥事を起こすと、私まで巻き込まれてしまう可能性が高い。それが嫌だったので仕方なく、事後処理を私が請け負っていた。
だけどもう、彼に困らされることはない。家が決めた婚約関係は、ランベルト王子から破棄を申し出てくれた。それが、とてもありがたかった。女の私から、申し出ることは出来ないから。実家へのダメージも少ない。とはいえ、王族との関係が切れた影響は大きいだろう。どうにかして、挽回しないと。
「ランベルト様、婚約破棄の手続きが終わりました」
「ありがとう。相変わらず、君は仕事が速いね」
「……」
好きで事務処理が早くなったわけじゃない。お前が何もしないから、私がやるしか無かった。そう文句を言いたいけれど、何も吐き出さずに言葉を飲み込む。
私はもう、立ち去る者だから。
「それでは、ランベルト様。私は失礼します」
「え? 待ってくれ」
「……何ですか?」
全て終わったので、私は部屋を退室するつもりだった。なのに、ランベルト王子に呼び止められる。何か不備があったのか。
「もう帰るのか?」
「はい。用事は終わったので」
「寂しいじゃないか」
「は?」
一瞬、彼が何を言っているのか本気で理解できなかった。寂しいって、一体何が?
「今まで俺たち2人を結んでいた、婚約という堅苦しい関係はこれで解消されたね。なら、これから先は愛し合うだけ」
「……」
「婚約を結ぶ前の、愛し合っていた頃に戻ろうじゃないか」
「別の誰かと勘違いしていませんか?」
婚約を結ぶ前は、知り合いですらなかった。家の事情があって、親同士が話し合い婚約が決まった。その後に、初めて顔を合わせた。
彼の言った、愛し合っていた頃、なんて存在していない。ランベルト王子は、何を言っているのか。
どうせ、今まで遊んできた女性の誰かと勘違いしているんだろうけど。
「つれないね」
「当然です。婚約を破棄したら、私たちは他人ですから」
「他人? そんなことはない。君は、俺を愛しているだろう? それなら、俺の」
「愛してません」
「え?」
「今までは、婚約関係があるので付き合っていただけです。それが無くなれば、他人ですよ」
「そ、そんな……!?」
なぜ彼が驚いているのか。私が王子に好意を向けていないことに、本気で気付いていなかったのか。婚約だけの関係だということを。
よく分からないが、これ以上は長居したくなかった。さっさと家に帰って、今後の予定について考えないといけないから。これから先、どうやって生きていくのか。
「……」
「それでは、失礼します」
改めて、部屋を退出するための挨拶を口にする。呆然としているランベルト王子を放置して返答も待たず、私は1人で部屋から出ていく。
彼らが引き止めようとするのは、王妃にするための教育が無駄になるから、という理由だろう。確かに、私にかけた時間と費用が無駄になる。だけど私は、ランベルト王子との婚約関係を破棄することだけに集中して、突き進んだ。
何を言われても、もう撤回はしない。
各所とやり取りをして、ようやく婚約破棄の手続きが全て終わった。
ランベルト王子が率先して手続きしてくれたらスムーズに処理できるというのに、彼は全く手伝ってくれなかった。それが、当たり前だと思っているからだろう。
私は、彼に全く期待していない。何度注意をしても、改善されることがないから。愛人関係も、女遊びをするのなら自分で後始末をつけてくれないと困るというのに、何か問題が起きたら放置するだけ。
時間が経てば、全ての問題は勝手に解決すると思っているらしい。そんなはずないのに。
彼が不祥事を起こすと、私まで巻き込まれてしまう可能性が高い。それが嫌だったので仕方なく、事後処理を私が請け負っていた。
だけどもう、彼に困らされることはない。家が決めた婚約関係は、ランベルト王子から破棄を申し出てくれた。それが、とてもありがたかった。女の私から、申し出ることは出来ないから。実家へのダメージも少ない。とはいえ、王族との関係が切れた影響は大きいだろう。どうにかして、挽回しないと。
「ランベルト様、婚約破棄の手続きが終わりました」
「ありがとう。相変わらず、君は仕事が速いね」
「……」
好きで事務処理が早くなったわけじゃない。お前が何もしないから、私がやるしか無かった。そう文句を言いたいけれど、何も吐き出さずに言葉を飲み込む。
私はもう、立ち去る者だから。
「それでは、ランベルト様。私は失礼します」
「え? 待ってくれ」
「……何ですか?」
全て終わったので、私は部屋を退室するつもりだった。なのに、ランベルト王子に呼び止められる。何か不備があったのか。
「もう帰るのか?」
「はい。用事は終わったので」
「寂しいじゃないか」
「は?」
一瞬、彼が何を言っているのか本気で理解できなかった。寂しいって、一体何が?
「今まで俺たち2人を結んでいた、婚約という堅苦しい関係はこれで解消されたね。なら、これから先は愛し合うだけ」
「……」
「婚約を結ぶ前の、愛し合っていた頃に戻ろうじゃないか」
「別の誰かと勘違いしていませんか?」
婚約を結ぶ前は、知り合いですらなかった。家の事情があって、親同士が話し合い婚約が決まった。その後に、初めて顔を合わせた。
彼の言った、愛し合っていた頃、なんて存在していない。ランベルト王子は、何を言っているのか。
どうせ、今まで遊んできた女性の誰かと勘違いしているんだろうけど。
「つれないね」
「当然です。婚約を破棄したら、私たちは他人ですから」
「他人? そんなことはない。君は、俺を愛しているだろう? それなら、俺の」
「愛してません」
「え?」
「今までは、婚約関係があるので付き合っていただけです。それが無くなれば、他人ですよ」
「そ、そんな……!?」
なぜ彼が驚いているのか。私が王子に好意を向けていないことに、本気で気付いていなかったのか。婚約だけの関係だということを。
よく分からないが、これ以上は長居したくなかった。さっさと家に帰って、今後の予定について考えないといけないから。これから先、どうやって生きていくのか。
「……」
「それでは、失礼します」
改めて、部屋を退出するための挨拶を口にする。呆然としているランベルト王子を放置して返答も待たず、私は1人で部屋から出ていく。
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