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第6話 ※クリストフ視点
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※※ クリストフ視点 ※※
セレスティーヌに婚約破棄を言い渡す、数週間前のことである。俺は友人たちと、楽しく会話をしていた。
「いやぁ、昨日は惜しかったなクリス」
「しかし、女なんかに負けるなんてなぁ」
「婚約相手なんだろう? 彼女に華を持たせるために手加減したんだよな?」
剣術大会の翌日。俺は2位で、婚約相手のセレスティーヌは優勝していた。結果について話し合う友人たち。俺は意識して笑みを浮かべると、友人の質問に答えた。
「あぁ。実は、そうなんだよ。彼女、剣術に関してかなりプライドを持っていてな。負かしたりしたら不機嫌になって、とても厄介なんだよ」
「ほら、やっぱり!」
俺の言葉をまんまと信じる友人たち。俺は表情に出ないように注意して、ひそかに安堵する。そして、なぜ俺がこんなことに気を回さないといけないのかと思ったら、怒りが湧いてきた。
セレスティーヌは、婚約相手であるはずの俺に手加減せずに勝ちやがった。普通は男を立てるのが貴族の令嬢なのではないのか。まさか本気で挑んでくるとは思わず、気を抜いてしまった一瞬で勝敗が決まってしまった。
いや、彼女の実力は本物だろう。気を抜いていなくても、負ける可能性があった。それが、とても面倒だった。騎士団長の地位を約束された俺が、妻となる女に負ける可能性があるなんて。
大会の結果を考えると、今後も手を抜いてくれるような女じゃないかもしれない。わざわざ俺から彼女に、手加減してくれとお願いするのも嫌だった。
俺の評判を下げないようにする対策方法を、何か考えないといけないか。試合中の彼女に手加減させる方法とか、剣術を止めさせる方法とか。
そんな事を考えている俺の横で、友人たちが馬鹿笑いをしながら楽しそうに会話を続けていた。
「でも変わっているよな、お前の婚約相手」
「女なのに剣の練習なんかして。腕を磨いても、女だから戦場には出れないだろ?」
「ルナール先生と、ずっと訓練してるよな」
「なるほど、そういうことか」
「あの先生、顔は良いし剣の腕も圧倒的だからな。女子生徒からの人気も高い」
「しかし、セレスティーヌ嬢が男に夢中になるなんて意外だ」
「いつも無愛想で、恋愛とかにも全く興味ないって感じなのに」
「婚約相手のクリスも、眼中にないみたいだよな」
「実際、彼女との仲はどうなんだよクリス?」
こいつら、好き勝手に言いやがって。だけど俺は大人として、冷静な対応をする。無闇矢鱈と怒ったりはしない。
「セレスとの仲は、非常に良好だよ。何も問題はない。ただ、彼女はちょっと剣術に夢中過ぎるけどね」
「ふーん。そっか」
友人は、あまり興味の無い感じの返事をした。それから話題は変わって、全く別の内容になって友人たちの会話は続いていく。
今はまだ、女だからとセレスティーヌの実力を甘く見ている友人たち。もしも俺が彼女に少しでも劣っていると知れ渡ったら、馬鹿にされるのは目に見えていた。彼らだけじゃなくて、他の多くの人たちにも。それは避けないといけない。
なんとかして、俺に都合の悪い事実は隠さないといけない。さて、どうするか。
セレスティーヌに婚約破棄を言い渡す、数週間前のことである。俺は友人たちと、楽しく会話をしていた。
「いやぁ、昨日は惜しかったなクリス」
「しかし、女なんかに負けるなんてなぁ」
「婚約相手なんだろう? 彼女に華を持たせるために手加減したんだよな?」
剣術大会の翌日。俺は2位で、婚約相手のセレスティーヌは優勝していた。結果について話し合う友人たち。俺は意識して笑みを浮かべると、友人の質問に答えた。
「あぁ。実は、そうなんだよ。彼女、剣術に関してかなりプライドを持っていてな。負かしたりしたら不機嫌になって、とても厄介なんだよ」
「ほら、やっぱり!」
俺の言葉をまんまと信じる友人たち。俺は表情に出ないように注意して、ひそかに安堵する。そして、なぜ俺がこんなことに気を回さないといけないのかと思ったら、怒りが湧いてきた。
セレスティーヌは、婚約相手であるはずの俺に手加減せずに勝ちやがった。普通は男を立てるのが貴族の令嬢なのではないのか。まさか本気で挑んでくるとは思わず、気を抜いてしまった一瞬で勝敗が決まってしまった。
いや、彼女の実力は本物だろう。気を抜いていなくても、負ける可能性があった。それが、とても面倒だった。騎士団長の地位を約束された俺が、妻となる女に負ける可能性があるなんて。
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俺の評判を下げないようにする対策方法を、何か考えないといけないか。試合中の彼女に手加減させる方法とか、剣術を止めさせる方法とか。
そんな事を考えている俺の横で、友人たちが馬鹿笑いをしながら楽しそうに会話を続けていた。
「でも変わっているよな、お前の婚約相手」
「女なのに剣の練習なんかして。腕を磨いても、女だから戦場には出れないだろ?」
「ルナール先生と、ずっと訓練してるよな」
「なるほど、そういうことか」
「あの先生、顔は良いし剣の腕も圧倒的だからな。女子生徒からの人気も高い」
「しかし、セレスティーヌ嬢が男に夢中になるなんて意外だ」
「いつも無愛想で、恋愛とかにも全く興味ないって感じなのに」
「婚約相手のクリスも、眼中にないみたいだよな」
「実際、彼女との仲はどうなんだよクリス?」
こいつら、好き勝手に言いやがって。だけど俺は大人として、冷静な対応をする。無闇矢鱈と怒ったりはしない。
「セレスとの仲は、非常に良好だよ。何も問題はない。ただ、彼女はちょっと剣術に夢中過ぎるけどね」
「ふーん。そっか」
友人は、あまり興味の無い感じの返事をした。それから話題は変わって、全く別の内容になって友人たちの会話は続いていく。
今はまだ、女だからとセレスティーヌの実力を甘く見ている友人たち。もしも俺が彼女に少しでも劣っていると知れ渡ったら、馬鹿にされるのは目に見えていた。彼らだけじゃなくて、他の多くの人たちにも。それは避けないといけない。
なんとかして、俺に都合の悪い事実は隠さないといけない。さて、どうするか。
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