女のくせに強すぎるからという理由で婚約破棄された令嬢の話

第7話 ※クリストフ視点

※※　クリストフ視点　※※

　セレスティーヌをどう対処するか。それが問題だった。俺が剣術の練習をやめろと言って、素直に聞き入れるような女じゃないことは分かっている。俺と戦うときには手を抜け、という指示も聞かなそうだ。そもそも俺から口出ししたくない。

　他に何か、上手い方法はないだろうか。腕を鈍らせる、とか。

　セレスティーヌの実力を下げるために、練習を妨害したり、意欲を低下させたり、怪我をさせたり。どれもバレずに成功させることは難しそうだ。バレてしまったら、俺の評判が下がだろうし。

　どうすればいいだろう。

「クリストフ様」

　学園の廊下を１人で歩きながら考えている最中。背後から誰か俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、振り返ると見覚えのある顔があった。

「君は確か、セレスティーヌの妹の」
「ジョスリーヌです」
「そうだ、ジョスリーヌ嬢」

　何度か彼女とは顔を合わせたことがある。表情の乏しいセレスティーヌと比べて、非常に表情の明るいジョスリーヌ。顔は似ている姉妹だけど、雰囲気が違って別人のようにも見える。

「どうかしましたか？」
「え？」
「ものすごく悩んでいたようですが」
「分かるか？」
「はい。とても苦しそうでした」

　ジョスリーヌが心配そうに、俺の顔を覗き込んでくる。そんなにバレバレだったのだろうか。

　俺を悩ませている問題は、妹である彼女にも少しだけだが関係あるかもしれない。ここで会ったのも何かの縁。そう思って、ジョスリーヌに相談してみることにした。

「実は、君の姉であるセレスティーヌの剣術に関してなんだが」
「あぁ、なるほど！　お姉さまが最近ずっと剣術に時間を使っていることについて、ですよね？」
「そうだ」

　どうやらジョスリーヌも知っているようだ。詳しく話を聞いてみると、彼女の家で色々と問題になっているらしい。

「お姉さまは最近、家のことを疎かにして剣術の訓練ばっかりやっているんですよ。もしかして、婚約相手のクリストフ様も放っているんですか？」
「そうなんだよ。貴族の令嬢として、彼女には家のことに集中してもらいたいんだ。なんとかして、彼女に剣術をやめさせることは出来ないかな？」
「うーん」

　何か、良いアイデアを教えてくれないかな。出来ることなら、妹のジョスリーヌに協力してもらえたら心強いのだが。

　彼女は顎に指を当てて、しばらく考え込んでいた。