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第9話
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師匠と結婚することになって、色々と話し合いを行った。家族はもちろん、爵位を管理する大臣や宰相とも。
思っていた以上に大事になったけれど、なんとか無事に全ての手続きは終わった。これで師匠と私は婚約者となった。結婚するのは、私が学園を卒業してからの予定。
婚約者になってから、日々の生活に大きな変化はそれほど無かった。私達2人は、いつものように学園の訓練所で剣術の腕を磨く毎日を過ごしていた。
「ますます腕を上げたな、セレス!」
「師匠も凄いです。全然、追いつけません」
「そりゃ、鍛えているからな。そう簡単に、追いつかれたりはしないさ」
「いいえ。絶対に追いついてみせます!」
そんな会話を交わしながら、2人で剣術の訓練を続けた。
学園の授業がある時間は、私は教室で勉強をして。師匠は生徒たちに指導をして。授業が終わると訓練所に行って、2人で訓練する。暗くなるまでずっと2人きりで。そんな日々を送っていた。
最近なぜか、妹のジョスリーヌが絡んでくる。私の姿を見つけると、近寄ってきて文句を言ってきた。
「お姉さま、まだ剣なんか振り回しているんですか?」
「えぇ、もちろん」
今日も訓練が終わって屋敷に帰ってくると、ジョスリーヌと出会った。その瞬間に言われた言葉が、それだった。これを毎回のように言ってくる。
どうやら彼女は、私に剣術をやめてほしいようだった。けれど私は、やめるつもりなんて微塵もない。そう答えるとジョスリーヌは、不機嫌そうな表情になった。
「お父さまやお母さまも、剣をやめてほしいと言っています。お姉さまは、親の言うことを無視するのですか?」
「両親は、私が剣の腕を磨くことを認めてくれていますよ。私の新しい婚約者であるルナール様とは、剣を通じて仲良くしているので文句も無いでしょう」
クリストフ様の時とは違って、師匠と毎日のように会って仲良くしていた。関係も良好だから、急に婚約破棄されるということもないだろう。だから、両親は安心して私達の様子を見守ってくれているはず。
「ルナール様……。確かに、優秀な方だとは思いますが年齢が高すぎませんか?」
形勢が不利になると、いつも年齢のことを指摘してくるジョスリーヌ。逆に言うと指摘できる部分がそれぐらいしか無いぐらい、師匠は文句なしだった。そもそも年が離れていても、それほど問題じゃない。私は気にならなかった。
「お姉さまなら、もっと若い相手を選ぶことは出来たんじゃありませんか?」
「おそらく、彼以上に惹かれるような相手も居ませんよ。だから私は、ルナール様と一緒になれて幸せです」
「ッ!」
私の言葉を聞き、苦々しい表情を浮かべるジョスリーヌ。ルナール様以外の相手を選ぶ気はない、ということを妹は分かってくれただろうか。
「ジョスリーヌも、クリストフ様とちゃんと仲良くしなさいよ」
「私のことは、いいんです!」
私の替わりに、クリストフ様と婚約したジョスリーヌ。その後、2人が仲良くしているのかどうかについて、よく知らなかった。どうなっているのか、ジョスリーヌが教えてくれないから。クリストフ様とも接点が無くなって、知る機会が無い。
「もっと女らしくしておけばよかったって、お姉さまはいつか後悔しますよ!」
それだけ言い残すと、彼女は早足で去っていった。私は今のままで大丈夫だろうと信じているし、師匠も居る。だから、後悔することは無いと思う。
自室に戻った私は、近い将来について考えていた。学園の卒業記念で行われる武術大会について。
剣・弓・馬・槍など、武士として戦うのに必要な技術を競い合う大会である。私はもちろん、剣術の部門でエントリーする予定だった。
その武術大会で優勝できるように、体調や調子など調整するためのスケジュールを組み立てる。後で、師匠にもアドバイスをお願いしよう。
思っていた以上に大事になったけれど、なんとか無事に全ての手続きは終わった。これで師匠と私は婚約者となった。結婚するのは、私が学園を卒業してからの予定。
婚約者になってから、日々の生活に大きな変化はそれほど無かった。私達2人は、いつものように学園の訓練所で剣術の腕を磨く毎日を過ごしていた。
「ますます腕を上げたな、セレス!」
「師匠も凄いです。全然、追いつけません」
「そりゃ、鍛えているからな。そう簡単に、追いつかれたりはしないさ」
「いいえ。絶対に追いついてみせます!」
そんな会話を交わしながら、2人で剣術の訓練を続けた。
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「えぇ、もちろん」
今日も訓練が終わって屋敷に帰ってくると、ジョスリーヌと出会った。その瞬間に言われた言葉が、それだった。これを毎回のように言ってくる。
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「お父さまやお母さまも、剣をやめてほしいと言っています。お姉さまは、親の言うことを無視するのですか?」
「両親は、私が剣の腕を磨くことを認めてくれていますよ。私の新しい婚約者であるルナール様とは、剣を通じて仲良くしているので文句も無いでしょう」
クリストフ様の時とは違って、師匠と毎日のように会って仲良くしていた。関係も良好だから、急に婚約破棄されるということもないだろう。だから、両親は安心して私達の様子を見守ってくれているはず。
「ルナール様……。確かに、優秀な方だとは思いますが年齢が高すぎませんか?」
形勢が不利になると、いつも年齢のことを指摘してくるジョスリーヌ。逆に言うと指摘できる部分がそれぐらいしか無いぐらい、師匠は文句なしだった。そもそも年が離れていても、それほど問題じゃない。私は気にならなかった。
「お姉さまなら、もっと若い相手を選ぶことは出来たんじゃありませんか?」
「おそらく、彼以上に惹かれるような相手も居ませんよ。だから私は、ルナール様と一緒になれて幸せです」
「ッ!」
私の言葉を聞き、苦々しい表情を浮かべるジョスリーヌ。ルナール様以外の相手を選ぶ気はない、ということを妹は分かってくれただろうか。
「ジョスリーヌも、クリストフ様とちゃんと仲良くしなさいよ」
「私のことは、いいんです!」
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