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第10話

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 武術大会の当日。私は、万全の状態で会場に入った。戦闘用の衣服を着て、腰から愛用している剣をぶら下げている。装備の手入れも万全で、いつでも戦える状態で。



「調子はどうだ?」
「師匠! 調子は、問題ないです」
「今は先生と呼んでくれ」
「はい、先生!」

 会場で大会の準備をしていた師匠に出会った。今日は学園の先生として働いているようだ。調子を聞かれたので、完璧だと答えた。すると、頭から足の先までじっくり全身を観察された。

「大丈夫そうだな」

 師匠からもお墨付きをもらえた。自信をつけて、今日の大会に挑める。今日も私が目指す順位は、優勝。

「まぁ、お前なら優勝は間違いないと思う。怪我だけには気を付けろよ」
「はい。気を付けます」
「じゃあ、行って来い」
「行ってきます」

 会場を歩いて、選手の控室である天幕に到着した。中に入ると、既に参加者らしい数十名の学生たちが待機していた。彼らの視線が、天幕に入ってきた私に注目した。

「「「……」」」

 静まり返った待機所。

 剣術部門に参加する学生は、ほとんどが男子である。そんな彼らから、様子を伺う視線を感じた。対抗心や負けん気、侮っていたり恐怖するような視線も肌に感じた。とにかく、多くの人たちから注目を集めている。

 おそらく、前回の大会で私が優勝したからだろう。

 私は天幕の空いている隅まで歩いて、立ち止まった場所で腕を組み、目を閉じた。試合が始まるまで、そこで精神を集中して戦いに備える。



「セレスティーヌ様、今日の大会も頑張りましょう!」
「えぇ、そうね」
「男子にも負けないように、私は今日も全力を尽くしますよ!」
「お互い、頑張りましょうね」
「はい! 上位入賞を目指します!」

 数少ない女子学生の参加者たちが私の周りに集まってきて、お互いに本番に向けて励まし合っていた。私も話しかけられたので、彼女たちと会話する。

 そんな私達を遠くから冷ややかな目で見てくるのは、クリストフ様たちのグループだった。

「女子が上位入賞、だって。無理だろ」
「前回勝てたのは、たまたまマグレだったのにな」
「誰かさんが手加減しなければ、彼女の優勝はどうなっていたことか」
「卒業を記念する大会だからな。申し訳ないが、俺達が華を持たせてもらうか」
「そうだな!」

 彼らは、コチラにも聞こえるような声で女子を馬鹿にしたような会話をしていた。私達を煽っているのだろう。その中心に居るのがクリストフ様だった。

 久しぶりに見た彼は、以前に比べて実力が衰えているように見えた。普通に立っているだけなのに、重心がブレている。腕や肩の筋肉も落ちているように見えるけど、私の勘違いだろうか。久しぶりに見たからかな。

 まぁ、実際に戦ってみないと分からないか。あまり侮らないようにしなければと、自分を戒める。

 一応、学生の中でナンバー2の実力者だと言われている彼。戦うのは、それなりに楽しみだった。彼と戦うのは前回の大会以来になる。前回は私が勝って優勝したが、今回も勝たせてもらうつもりだ。
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