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第11話

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 大会は順調に勝ち進み、準々決勝。次の相手はクリストフ様だった。

 今日の試合会場には平民や貴族の観客も多く入っていた。試合を楽しむ平民から、声援も飛んでくる。何故か私は、意外と人気だった。

「頑張れー!」
「次も勝てよー!」
「綺麗だぞぉ、ネエチャン!」
「女の強さを見せてあげてぇ!」

 片手を上げて見せるだけで、歓声が沸き起こった。

 そして、私の次の試合。次期騎士団長だと注目されているクリストフ様が相手で、本日の見逃せない戦いの一つだと言われていた。



 試合を開始する時間になったので、私は舞台に上がった。正面からクリストフ様が現れる。これから試合を始めるというのに、彼から漂う雰囲気に何の威圧もない。

 見くびられている?

「よお。待ってたぞ、セレス」
「久しぶりですね」

 舞台の上でクリストフ様に話しかけられたので、私は会話に応じる。

「お前とは決勝で戦いたかったが、仕方ない。ここで決着をつけるか」
「えぇ」
「じゃあ、手はず通りにやってくれ」
「?」

 小声で、そう言われた。手はず通りに、というのは一体どういう意味なんだろう。よく分からないまま会話が終わって、とりあえず私は試合開始を待った。

 会場に、試合開始の合図が鳴り響く。続いて、観客の興奮する声が広がった。

「「「うぉぉぉぉぉ!」」」

 私は剣を抜き、相手も剣を抜いた。集中して、観客の声は気にならなくなる。急にクリストフ様が突撃してきた。なぜか、反撃の警戒が甘かった。なので私は、相手の勢いを利用してカウンターを決める。

 良い感じだ。相手の攻撃がよく見えた。

「ふっ!」
「うわっ!?」

 想像していた以上に効果的なカウンターが決まって、態勢を崩したクリストフ様が驚きながら地面に倒れた。剣を片手に手をついて、慌てて立ち上がる。

「くそっ!」

 ようやく、相手の警戒心が少しだけ強くなった。私から離れて、間合いをとる。

 相手は一転して、受け身になっていた。剣を正面に構えたまま、仕掛けてこない。こちらの出方を見極めようとしているらしい。

 今度は私から、剣の間合いに入り込んでいく。

「くっ!?」

 私が剣を振り下ろす頃に、やっと相手が反応した。剣で防御したまま慌てて後ろに下がろうとする。だが遅い。

 このまま私が剣を振り切ると、相手の首をすっぱりと切断することも可能だ。

 勝負を決着させる方法は、相手を戦闘不能にするか降参させるか。戦闘不能にすると言っても、過度にダメージを与えてはいけない。もちろん死なせたらダメ。

 だから、相手の防御に合わせて私は剣を振るう。ギンと金属の剣がぶつかり合い、音が鳴った。

 逃げようとする相手を詰めて、私も何度も攻撃を繰り返した。防戦一方の相手は、反撃する様子がない。私の攻撃をギリギリで避けたり、受け流したりしている。

 前回よりも、クリストフ様の実力が確実に落ちていた。そのことに気付いた私は、攻撃を止めて距離をとる。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 正面にいる相手から、荒い息遣いが聞こえてくる。これは、勝負にならない。

「ぐっ、うっ、うおぉぉぉぉぉ!」

 呼吸を少し整えた相手が、剣を固く握りしめると攻撃を仕掛けてきた。自暴自棄のような攻撃だった。

 私は冷静に対処して、相手の剣に合わせて剣を振るう。あるのは勢いだけなので、対応するのは簡単だった。

 ギィンと、金属の割れる音が会場に響いた。そして次の瞬間、カァンと甲高い音を鳴らして折れた剣先が地面に転がった。

「剣が折れて戦えないようですね。降参して下さい」
「「「うわぉぉぉぉぉぉぉッッッ!」」」

 私は剣を鞘に収めて、クリストフ様に降参しろと促した。会場に居る観客たちが、歓声を上げるのが聞こえてくる。
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