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19 二人の関係
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俺たちは隔離部屋に通された。
流石に、それぞれの個室という訳にはいかないが、防護スーツを着ているので問題はない。常にシャワーを浴びているようなものだからな。たまには風呂に入りたいもんだが。
「ねえ、リュウ」
隔離部屋に入ってからしばらくして、メリスがコーヒーを煎れて来てくれた。設備はしっかりしているようだ。
「とりあえず、リュウとユリが転移して来たのはいいとして」
「なんで俺たちはいいんだよ」
「だから、一緒のベッドだったんでしょ?」
ちょっと責めるような目で言う。
「ああ、そういう意味か」
「そう」
メリスは、三人分のコーヒーをテーブルに置くと自分も椅子に座った。
「でも、どうして私も転移してるのよ」
「いや、俺に言われても」
「そうよ。分からないわよね? 何も実験して無かったし」
ユリも同じ気持ちらしい。
「そうなんだけど、これは何か意味があると思うのよ」
メリスは納得いかないという顔で言った。
「そうだな。それはつまり転移した原因によるんだと思う。昨日、何があった?」
と言ったものの、思い返しても特別なことはないようだった。
「昨日の俺たちは世界識別器を作る作業をしていたんだよな?」
「そうそう。リュウが安定発光セルを作るとか言って、色んな要素技術で作ったものを集めてた」
「それって、転移直前に光るって話の?」
「そう。たくさん並べておくと、相手の世界に対応したパターンで光る」
「でも、夜には何もしてないわよね?」
「もちろんだ」
「そうよね」
「そうなの?」
「えっ?」
「え~?」
ちょっと微妙な空気になる。
「ううん。まさか二人が付き合うとまずいのか?」
「そんな~!」
「そんな訳ないでしょ。男女の関係が転移装置なの?」
メリスは、ちょっと鋭い目で言った。
「おかしいよな。ん? 引き起こしたんじゃないとすれば」
「ないとすれば?」
「引っ張りこまれた? 二人が必要だったとか?」
「なんのために?」
「だから、二人が引き起こす可能性のある何かだよ」
「それは何よ」
「知らん。って、いうかお前も同じってことになるんだけど?」
「そうなんだけど」
「もしかして、私たちが付き合うのって世界の選択だったのかな?」ユリが耳打ちしてきた。
「なんだよそれ?」俺もそっと返す。
「リュウが転移してきたのも、そもそも私に会うためなのよ!」
「ロマンチックだけど、そういう否定しずらい提案は困るんだが」
「そこ。こそこそ相談しない! ただ、世界に影響する関係ってことはあるかもね」
メリスは、確信したように言う。
「そうか? でも、そうだとすると、ますますメリスがいる意味が分からないだろ」
「あっ」いきなりメリス、焦りだす。
「もしかして、私と同じでメリスも『恋人関係』ってことなの?」
ユリが怪しむような顔で言う。
「……」
「どういうことだ?」
「だから、メリスもそういう関係ってことじゃないの?」とユリ。
「そういう関係って?」
「だから三角よ」とユリは俺の腕に縋り付いて言う。
「えっ? そうなのか? いや、俺知らないぞ?」
「それは」メリス慌てる。
「そうなんだ」とユリ。
「そうなのか?」
「もう、だって、好きになるのは私の意志じゃないし」
「まじか」
「そういうことなのね」ユリは納得した顔で言う。
「もう、最悪ぅ」メリス、思いっきり後悔する。
「でも、それって、世界が認識しているってことだよな? 世界が意識を読んだとも思えないし、もしかすると将来の可能性とかも含んで世界が選択するのか?」
「ああ、なるほど」メリス、ちょっと元気になる。
「たぶん何かが大きく変わる?」何かって何だ?
「分かんないよ。でも、そうすると私たちって運命共同体ってこと?」ユリが鋭いことを言った。
「確かに。一緒に世界を渡る程に」
「そうね。これって真面目に考えるべきね。分かったわ。私、リュウと恋人になる!」メリスは、すっきりした顔で言う。
「どうしてそうなる」
「嫌なの?」
「いや、そういう意味じゃない」
「じゃぁ、いいじゃない!」
「いや、おかしいだろ」
「そうよ。でも、これは運命なの?」とユリは微妙な表情。
「いやいや、単に今の状態もしくは未来に関係してるってだけだろ。恋人関係とは限らない」
「それはそうよね」
「そうかなぁ」
「まぁ、焦って決める必要はないだろ」
「確かにね」
「うん。じゃぁ、恋人はともかく、これからも協力しあうってことでいいよね私たち? それしか、選択肢はないよ」とユリ。
「もちろん!」
「そうだな」
微妙にヤバイ気もするが。
流石に、それぞれの個室という訳にはいかないが、防護スーツを着ているので問題はない。常にシャワーを浴びているようなものだからな。たまには風呂に入りたいもんだが。
「ねえ、リュウ」
隔離部屋に入ってからしばらくして、メリスがコーヒーを煎れて来てくれた。設備はしっかりしているようだ。
「とりあえず、リュウとユリが転移して来たのはいいとして」
「なんで俺たちはいいんだよ」
「だから、一緒のベッドだったんでしょ?」
ちょっと責めるような目で言う。
「ああ、そういう意味か」
「そう」
メリスは、三人分のコーヒーをテーブルに置くと自分も椅子に座った。
「でも、どうして私も転移してるのよ」
「いや、俺に言われても」
「そうよ。分からないわよね? 何も実験して無かったし」
ユリも同じ気持ちらしい。
「そうなんだけど、これは何か意味があると思うのよ」
メリスは納得いかないという顔で言った。
「そうだな。それはつまり転移した原因によるんだと思う。昨日、何があった?」
と言ったものの、思い返しても特別なことはないようだった。
「昨日の俺たちは世界識別器を作る作業をしていたんだよな?」
「そうそう。リュウが安定発光セルを作るとか言って、色んな要素技術で作ったものを集めてた」
「それって、転移直前に光るって話の?」
「そう。たくさん並べておくと、相手の世界に対応したパターンで光る」
「でも、夜には何もしてないわよね?」
「もちろんだ」
「そうよね」
「そうなの?」
「えっ?」
「え~?」
ちょっと微妙な空気になる。
「ううん。まさか二人が付き合うとまずいのか?」
「そんな~!」
「そんな訳ないでしょ。男女の関係が転移装置なの?」
メリスは、ちょっと鋭い目で言った。
「おかしいよな。ん? 引き起こしたんじゃないとすれば」
「ないとすれば?」
「引っ張りこまれた? 二人が必要だったとか?」
「なんのために?」
「だから、二人が引き起こす可能性のある何かだよ」
「それは何よ」
「知らん。って、いうかお前も同じってことになるんだけど?」
「そうなんだけど」
「もしかして、私たちが付き合うのって世界の選択だったのかな?」ユリが耳打ちしてきた。
「なんだよそれ?」俺もそっと返す。
「リュウが転移してきたのも、そもそも私に会うためなのよ!」
「ロマンチックだけど、そういう否定しずらい提案は困るんだが」
「そこ。こそこそ相談しない! ただ、世界に影響する関係ってことはあるかもね」
メリスは、確信したように言う。
「そうか? でも、そうだとすると、ますますメリスがいる意味が分からないだろ」
「あっ」いきなりメリス、焦りだす。
「もしかして、私と同じでメリスも『恋人関係』ってことなの?」
ユリが怪しむような顔で言う。
「……」
「どういうことだ?」
「だから、メリスもそういう関係ってことじゃないの?」とユリ。
「そういう関係って?」
「だから三角よ」とユリは俺の腕に縋り付いて言う。
「えっ? そうなのか? いや、俺知らないぞ?」
「それは」メリス慌てる。
「そうなんだ」とユリ。
「そうなのか?」
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「まじか」
「そういうことなのね」ユリは納得した顔で言う。
「もう、最悪ぅ」メリス、思いっきり後悔する。
「でも、それって、世界が認識しているってことだよな? 世界が意識を読んだとも思えないし、もしかすると将来の可能性とかも含んで世界が選択するのか?」
「ああ、なるほど」メリス、ちょっと元気になる。
「たぶん何かが大きく変わる?」何かって何だ?
「分かんないよ。でも、そうすると私たちって運命共同体ってこと?」ユリが鋭いことを言った。
「確かに。一緒に世界を渡る程に」
「そうね。これって真面目に考えるべきね。分かったわ。私、リュウと恋人になる!」メリスは、すっきりした顔で言う。
「どうしてそうなる」
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「いや、そういう意味じゃない」
「じゃぁ、いいじゃない!」
「いや、おかしいだろ」
「そうよ。でも、これは運命なの?」とユリは微妙な表情。
「いやいや、単に今の状態もしくは未来に関係してるってだけだろ。恋人関係とは限らない」
「それはそうよね」
「そうかなぁ」
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「うん。じゃぁ、恋人はともかく、これからも協力しあうってことでいいよね私たち? それしか、選択肢はないよ」とユリ。
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