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13 無敵の巫女
異世界の巫女との特殊な実験が始まった。
異世界との境界がどんなものなのか、さらなる情報が得られる筈だ。
まぁ、単にWebカメラを壊して終わりかもしれないけど。
乙羽は美琴がコーヒーカップを手にするまで待ってエフェクトをオンにした。
これなら、コーヒーカップはエフェクトの内側になるだろう。
『あ、何か出てきました~っ!』
美琴のちょっと興奮した声がした。
「さすがに、スポイトはこれ以上先にはいかないな」
スポイトは世界の境界と思われる特殊なフィールドに当たってそれ以上は挿入できないようだ。
乙羽は、その状態でスポイトのコーヒーを注入した。
『三鈴の少し先から液体が滴ってます』
乙羽は、「良し!」と言って残るコーヒーも全部注入した。
「でも、これ飲んじゃまずいよな?」
「そうよね」
「ああ、そうか。分かった。飲むのは止めて、見るだけにして」
『分かりました』
「じゃぁ、エフェクトを切ってもう一度やってみよう」
乙羽がやっていることは要するに世界の境界をコーヒーフィルターのように使うってことだ。
「ふふ。そう言うことね!」
これは面白い実験だ。このコーヒーはペーパーフィルターでドリップしている。ペーパーフィルターの穴のサイズは10マイクロメートルから20マイクロメートルくらいだ。もしこれより小さい穴ならコーヒーの色が薄くなるだろう。
俺たちは美琴の感想を待った。
『ずっと薄い色になりました。香りはしますね』
「「「よしっ!」」」
盛り上がる地球組。それを聞いて、不思議な顔をする異世界組。
『これ飲んでも大丈夫でしょうか?』
「いや、止めたほうがいい。特に薄いのは不味いと思う」
『わかりました』
しかし、実験は大成功だ!
「だいたい分かった。世界の境界は、数マイクロメートル程度の格子構造だと思う。まぁ、もう少し大きい可能性もあるけどな!」
乙羽、ちょっとドヤ顔。
「ああ、それだったら、もっと細かく分かる方法があるわよ」
見ていた荻野がおもむろに言った。これ、研究者の目だな。
「ほんとか?」
「どうやるんだ?」
「ふっふっふ」
「おい! もったいぶってないで教えろよ!」
「だめね~っ、数マイクロ辺りって、つまり赤外線の波長でしょ?」
「ん? ああ、そうか。熱が伝わるかどうかでわかるか!」
「そうよ」
「くそっ! そうだった!」
「うん? どうするんだ?」
俺が聞くと荻野はちょっといたずらっぽい目をした。
「エフェクトをオンにして、焚火に手をかざしてみれば分かるわよ」
「ああ、どの程度熱を感じるかってことか!」
「そんなにはっきり分かるかな?」
「やってみれば、分かるわよ」
その後、エフェクトをオンにした状態で、火に手をかざしてみてもらった。
そして、熱を全く感じなかったという。
「異世界との境界は、1マイクロメートルの格子ね!」
「うん、まず間違いないな」
「すげ~っ、特定しやがった!」
乙羽はちょっと悔しそう。確かに、荻野の言う通りだろう。
ただ、納得してるのは開発室にいる俺たちだけだった。
『あの。良く分からなかったんですけど』
美琴が困ったように言った。そうだよな。
「あ、ごめん。つまり三鈴が強く光ってる時は、巫女さんたちは次元のフィールドに覆われて刃物では切れないし火傷もしないようになるってこと」
『次元のフィールドですか?』
「そう、次元フィールド」
『それに覆われると刃物で切れないし、火傷もしない?』
「そういうこと!」
『それって火あぶりでも大丈夫ってことですか?』
なんで「火あぶり」?
「うん、まぁ、そう。たぶん、火事とかでも平気」
『すご~いっ!』
『さ、さらに三鈴の力が増してる~っ』
『私たち、どうなってしまうんです?』
心配そうな顔をする朝霧。
「あっ、エフェクトを切れば普通の人間だから。そこは注意してね?」
俺は、諭すように言った。
『あ、はい。そうですね。気を付けないと。でも、料理の時は便利かも?』
ああ、確かに火傷しないからな。
『それは凄い話を聞いた!』
何故か来ていた討伐ネギの西園寺。
『こうなったら、巫女もぜひ魔物討伐に加わってほしいものだ!』
『『『えええええ~っ』』』
もちろん巫女たちは、ちょっと複雑な顔だ。
「か弱い巫女」が、「無敵の巫女」に変わった瞬間だった。
そりゃ、驚くし困惑するよね。
ごめんな、全て乙羽の責任だ!
この情報は、すぐに宮司に伝わることとなった。
* * *
さっそく宮司の菅野が飛んできた。
『すばらしい。やはり、今回の「鏡合わせ」は一味違いますね!』
やはり? 何だろう? あ、そういえば、今回は三人の巫女がつながったしな。いつもと違うってのは確かだな。
「事実上の無敵のバリアを纏ってるしね!」
「うん、『僕の考えた最強の防御』?」
「ほんと、そんな感じ」
「ちょっと出来過ぎで怖いくらいだな」
確かにな。たまたまってことはないだろう。
誰が考えたものかは不明だが、二つの世界の境界としては最低限必要なものだったんだろうとは思う。
『これからも我々は全力で支援してまいりますので、今後も巫女たちのことをよろしくお願いします』
なるほど。でもさすがに魔物討伐にずっと付き合うのは難しいかなぁ。
「三鈴の効果を使うには私たちが立ち会う必要がありますので、週末限定ということになります」
『はい、それで結構です。それでも十分ありがたい話です』
週末限定の無敵の女! 爆誕!
そして、当然のように魔物討伐隊、「巫女隊」が結成されたのだった。
異世界との境界がどんなものなのか、さらなる情報が得られる筈だ。
まぁ、単にWebカメラを壊して終わりかもしれないけど。
乙羽は美琴がコーヒーカップを手にするまで待ってエフェクトをオンにした。
これなら、コーヒーカップはエフェクトの内側になるだろう。
『あ、何か出てきました~っ!』
美琴のちょっと興奮した声がした。
「さすがに、スポイトはこれ以上先にはいかないな」
スポイトは世界の境界と思われる特殊なフィールドに当たってそれ以上は挿入できないようだ。
乙羽は、その状態でスポイトのコーヒーを注入した。
『三鈴の少し先から液体が滴ってます』
乙羽は、「良し!」と言って残るコーヒーも全部注入した。
「でも、これ飲んじゃまずいよな?」
「そうよね」
「ああ、そうか。分かった。飲むのは止めて、見るだけにして」
『分かりました』
「じゃぁ、エフェクトを切ってもう一度やってみよう」
乙羽がやっていることは要するに世界の境界をコーヒーフィルターのように使うってことだ。
「ふふ。そう言うことね!」
これは面白い実験だ。このコーヒーはペーパーフィルターでドリップしている。ペーパーフィルターの穴のサイズは10マイクロメートルから20マイクロメートルくらいだ。もしこれより小さい穴ならコーヒーの色が薄くなるだろう。
俺たちは美琴の感想を待った。
『ずっと薄い色になりました。香りはしますね』
「「「よしっ!」」」
盛り上がる地球組。それを聞いて、不思議な顔をする異世界組。
『これ飲んでも大丈夫でしょうか?』
「いや、止めたほうがいい。特に薄いのは不味いと思う」
『わかりました』
しかし、実験は大成功だ!
「だいたい分かった。世界の境界は、数マイクロメートル程度の格子構造だと思う。まぁ、もう少し大きい可能性もあるけどな!」
乙羽、ちょっとドヤ顔。
「ああ、それだったら、もっと細かく分かる方法があるわよ」
見ていた荻野がおもむろに言った。これ、研究者の目だな。
「ほんとか?」
「どうやるんだ?」
「ふっふっふ」
「おい! もったいぶってないで教えろよ!」
「だめね~っ、数マイクロ辺りって、つまり赤外線の波長でしょ?」
「ん? ああ、そうか。熱が伝わるかどうかでわかるか!」
「そうよ」
「くそっ! そうだった!」
「うん? どうするんだ?」
俺が聞くと荻野はちょっといたずらっぽい目をした。
「エフェクトをオンにして、焚火に手をかざしてみれば分かるわよ」
「ああ、どの程度熱を感じるかってことか!」
「そんなにはっきり分かるかな?」
「やってみれば、分かるわよ」
その後、エフェクトをオンにした状態で、火に手をかざしてみてもらった。
そして、熱を全く感じなかったという。
「異世界との境界は、1マイクロメートルの格子ね!」
「うん、まず間違いないな」
「すげ~っ、特定しやがった!」
乙羽はちょっと悔しそう。確かに、荻野の言う通りだろう。
ただ、納得してるのは開発室にいる俺たちだけだった。
『あの。良く分からなかったんですけど』
美琴が困ったように言った。そうだよな。
「あ、ごめん。つまり三鈴が強く光ってる時は、巫女さんたちは次元のフィールドに覆われて刃物では切れないし火傷もしないようになるってこと」
『次元のフィールドですか?』
「そう、次元フィールド」
『それに覆われると刃物で切れないし、火傷もしない?』
「そういうこと!」
『それって火あぶりでも大丈夫ってことですか?』
なんで「火あぶり」?
「うん、まぁ、そう。たぶん、火事とかでも平気」
『すご~いっ!』
『さ、さらに三鈴の力が増してる~っ』
『私たち、どうなってしまうんです?』
心配そうな顔をする朝霧。
「あっ、エフェクトを切れば普通の人間だから。そこは注意してね?」
俺は、諭すように言った。
『あ、はい。そうですね。気を付けないと。でも、料理の時は便利かも?』
ああ、確かに火傷しないからな。
『それは凄い話を聞いた!』
何故か来ていた討伐ネギの西園寺。
『こうなったら、巫女もぜひ魔物討伐に加わってほしいものだ!』
『『『えええええ~っ』』』
もちろん巫女たちは、ちょっと複雑な顔だ。
「か弱い巫女」が、「無敵の巫女」に変わった瞬間だった。
そりゃ、驚くし困惑するよね。
ごめんな、全て乙羽の責任だ!
この情報は、すぐに宮司に伝わることとなった。
* * *
さっそく宮司の菅野が飛んできた。
『すばらしい。やはり、今回の「鏡合わせ」は一味違いますね!』
やはり? 何だろう? あ、そういえば、今回は三人の巫女がつながったしな。いつもと違うってのは確かだな。
「事実上の無敵のバリアを纏ってるしね!」
「うん、『僕の考えた最強の防御』?」
「ほんと、そんな感じ」
「ちょっと出来過ぎで怖いくらいだな」
確かにな。たまたまってことはないだろう。
誰が考えたものかは不明だが、二つの世界の境界としては最低限必要なものだったんだろうとは思う。
『これからも我々は全力で支援してまいりますので、今後も巫女たちのことをよろしくお願いします』
なるほど。でもさすがに魔物討伐にずっと付き合うのは難しいかなぁ。
「三鈴の効果を使うには私たちが立ち会う必要がありますので、週末限定ということになります」
『はい、それで結構です。それでも十分ありがたい話です』
週末限定の無敵の女! 爆誕!
そして、当然のように魔物討伐隊、「巫女隊」が結成されたのだった。
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