ショボい人生のやり直し?!絶対に消えたくないので真逆の人生でポイント貯める

亀野内アンディ

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貴族学院編

シュクルと夏の風物詩

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「へぇ~それで小さくなれたのか」 

今日は休日。シュクルは精霊とニーチェから詳しい経緯を聞いた。 

「ピーチャン、魔法極めタネ。ニーチェヲ小さくデキタヨ。シュクルサマ、もう寂しくナイネ」 

「凄いなぁぴーちゃんは」 

ぴーちゃんはアホなサバンとは違い優秀だ。シュクル帝国に来た大勢の魔術師の魔法や、その魔力を分析して魔術を極めたらしい。ぴーちゃんは真面目で勤勉なのだ。 

「シュクルサマ、寂しいノ?チェリーいつもイルヨ、一緒に寝ヨウ?ムシシ」
「チェリー右、シュクルサマ真ん中、ワタシ左ネ」

「⋯⋯⋯⋯」



「じゃあニーチェもいるし、今日はトウモロコシ畑でも作るかな~」 

「ウ?(何?)」 

邸宅の裏に来た。表は野菜と庭で発掘した遺跡をオブジェとして飾ったおしゃれ庭園だが、裏はエロ馬が闊歩していているだけで手付かずなのだ。 

「随分と雑草が伸びてるな。コーン畑用に農地を拡大したいし、広めに刈るかな」 

やはり夏が近づくにつれて雑草の成長も早くなる。そのままでは虫が湧くので草刈りも頻繁にしなくてはな。しばらくシュクルは集中して風魔法で草を刈っていると、庭に硬い石の塊がある事に気づいた。 

「遺跡かな?」 

作業を止めてその石を見てみる。 

「おぉぉぉ?こ、これは!!井戸じゃないか!!」 

やっぱりあったか古井戸。どうしょう?中を覗く?でもお清めの塩が無いし、何より怖い。 

「もし白骨化遺体とか中にあったらどうしょう?もし髪の長い女が這い出て来たら⋯⋯」 

ふとシュクルは考えた。古井戸は怖い建造物ランキング何位だろうかと。 

「廃病院は一位か?多分墓場や慰霊碑は常に三位内だろう。一家惨殺事件の家はどうだ?廃トンネルより廃ホテルは上か?怪しい祭場跡、ダムや自死多発スポットもあるし、そう考えると井戸はそれほど怖くはなさそうだ」 

そうだ、よく考えれば井戸とは水を汲む物だ。現代的に表現するなら水道管か。ならば配管工なら余裕で中に入るだろう。シュクルよ、あの赤と緑の兄弟を見習え。きっと中には金貨があるはずだ。だがスケルトン的な亀はお化け―――― 

「プシュ(から)」 

「ん?空?」 

エロ馬が井戸は空だと言っている。こいつには嘘をつくメリットがないので信用できるかも。 

シュクルは勇気を振り絞って井戸の中を覗いてみた。 

「⋯⋯⋯⋯ん?あら?埋まっている?蛙すらいない」 

多分長い年月をかけて枯れ草や塵が積り、井戸は自然と土に還ったのかもしれない。 

これなら安心か。 

シュクルは井戸に満タンになるほどの土を入れて、結界的な意味も込めたハーブとダークマター苺を植えた。すると可愛い丸い花壇が出来上がった。 

花壇の微笑ましさに安心したシュクルは辺りの草を刈り、トウモロコシ畑を作った。 

「いや~初夏の香りがしますねぇ~」 

最近は魔力を与えなくともトマトやナスは太陽の光を浴びてプリプリだし、新ジャガも美味しい。 

「ウーウー(森に行きたい)」 

「ほう?そういえばこの森の探索はまだしていなかったな」 

学校がある日はなかなか忙しく、帰宅後は畑の手入れをして夕食を食べると、就寝の時間だったりする。 
休日は王都の北の森に行ってお金を稼ぎ、残りの時間は庭の整備と畑仕事で終わってしまうのだ。

今日の午後は学院の北の森で魔獣狩りをする事にした。 


「へぇ~割と広いな。あ!山芋の蔓じゃん!」 

早速山芋をみつけた。これは幸先がよい。シュクルが山芋を丁寧に掘り出していると、ニーチェは森の中をじっくりと観察しているみたいだった。何か気になる点でもあるのだろうか。

「魔獣はいるかな~?」 

山芋を掘り終わったので次は魔獣のお肉が欲しい。だが鳥の気配はあるが魔獣の姿はない。がっかりだが私が学校に行っている間、ニーチェが一頭で森に入っても安心ではある。今のニーチェは小さいからな。 

「お?何だろう?あそこに石垣の跡がある気がするな」 

少し小高い丘に石が積み上げられていた形跡が見える。これも遺跡の跡なのだろうか?少しワクワクする。シュクルは魔法で周囲の草を刈り、水で軽く洗ってみた。 

「おお!石垣跡から、大きな石をくり抜いて作った箱を発掘したぁ!」 

凄い物を見つけた。考古学者になった気分だ。 
これは持って帰ってシュクル邸宅で使おう。アンティークな物入にするか花壇にしてもいいな~ 

シュクルはこの後、五つもの石の箱を見つけて 古代ロマンを肌で感じた。


「私のポストは酷い風評被害を受けているから横に花壇を配置しよう」 

ポストの横に今日見つけた石の箱を置いて土を入れ、花の種を蒔いて成長させる。ちなみに花の種は学院の花壇から頂いた。 

「うん。これは超可愛いだろうよ。こりゃ佐藤がもらえなかったラブレターが届くな。いらないけど」 

その他の石の箱も邸宅に続く道に等間隔において綺麗な花を植えた。 

シュクルの庭造りの腕前は、帝国の開拓時に磨かれた芸術センスが鬼才の域にまで到達した事による物で、たとえ初めての庭造りでもすでに光る物がある。(シュクル談) 

「ヤバイ。私の庭造りから才能しか感じない⋯⋯天才か」 


シュクルはまた森に戻り、遺跡の発掘を進める。 

「よく分からないが、かっこいいオブジェも出てきたぞ!」 

石に文様が彫られた物や石の土台も出てきたし、小さな東屋みたいな物も堆積物を退かせたら出てきた。 

「決めた!ここはシュクルの素敵な東屋にする」 

森の中で一人、太古のロマンに浸りながら出てきた石を並べて東屋を復元する。やはりこれは失われた文明に違いない。心なしか胸がどきどきするし、魔力が体内をぐるぐるとめぐる。

シュクルは週末の二日間、日が暮れるまで発掘と整備に翻弄した。 


「ニーチェ、エロ共よ、行ってくる」 

 週末が終わり学院に登校する。そういえば噴水の小銭の回収を忘れていたな⋯⋯ よし。今日の放課後の予定は決まった。シュクルは涎を垂らしながら、噴水の小銭の溜まり具合を見ていると――

「あ!あの時の子ね?」 

「ん?あぁ!生徒会役員の方ですか」 

いきなり背後から声をかけてきたのは、以前この噴水で出会い、王都の北の森でも会ったヴェロニクさんだった。 

「森では助けてくれてありがとう。あの後なかなかあなたに会う機会がなかったから、お礼をする機会もなくてごめんなさいね」 

「いえ、無事で何よりです。あ、そういえばあの森ですが――――」 

シュクルは危険な毒蛇がいる事を伝えた。確か学校の行事の下見に来たと言っていたので、このまま危険を知らずに参加した生徒が蛇の被害に遭ったら大変だ。 

「え?そんなに危険なの?そうなると学院の北の森での演習になってしまうわ⋯⋯どうしましょう⋯⋯」 

「?学院の北の森に何かダメな所があるんですか?」 

魔獣が足りない感じだろうか。危険性が低すぎて勉強にならないとか。 

「だって⋯⋯怖いじゃない。あなたは知らないの?あそこには噂があって――――」 

遠い昔、北の森には男爵家の屋敷があったそうな。だがある日その一家が無残にも惨殺され、その屋敷で働いていた者達も殺されたそうな。 

「ご遺体は近くの丘に埋葬されたらしいのだけれど――」 

殺された怨念は消えず、墓から夜な夜な這い出ては犯人を捜して徘徊していたらしい。困った人々は遺体が墓から容易には出られない様に男爵家の家族五人分の頑丈な石棺を作り、遺体を中に納めて重い蓋で閉じたが効果はなかった。 

その後、あまりの怨念の強さを鎮めるため、墓に小さな神殿を建てて周囲に祈りの言葉を刻み、結界を張って念を封印したらしい。 

「その男爵家の屋敷は、その後に建設された貴族学院の寮として使われ始めたらしいわ。でも――」 

度重なる生徒からの霊の目撃情報は止まず、井戸から這い出てくる使用人達の霊に悩まされ、とうとう自死者まで出てしまったらしい⋯⋯すぐに住む生徒は居なくなり、寮は閉鎖されたそうだ。

そして神殿の専門家が調査に来て分かった事は、この寮の辺りには古代遺跡の祭場跡があり、神聖な場所にも関わらず無礼にも後世の人々が建物を建て、血で汚した事による呪いが原因であった。 

「今でも闇の魔力が漂うそうよ。精神を侵されるらしいわ」 

「怖い!!」 

どうしょう?!北の森が怖くなった!今日からニーチェと寝よう! 

「まぁ、あくまで噂よ。貴族院が建てられたのすら遠い昔なのだから」 

「そうですね。噂は悪い尾ひれが付きますし」 

シュクルのポストも勝手に呪いスポットにされたし、十代の少年少女は多感な時期だから色々話が変化していったのだろうな。
だってこの話が本当なら怖い建造物ランキング上位の墓場、一家惨殺事件の家、廃ホテルは廃寮で、古代の祭場跡もあり、自死者、心霊井戸まで網羅する最凶スポットになってしまうではないか。 

あり得ないな。そんな心霊ちゃんぽん。学生が作った話に違いない。

予冷が鳴ったのでシュクルはヴェロニクさんと別れて授業へ向かった。 
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