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エピソード3
貸与術師と束の間の休息
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そして場面は『グライダー』事件を解決し、『中立の家』に戻るヲルカ達一行の元へと変わる。
門を通り調査隊が戻ってきたことは『中立の家』で待機していた六人にベルで伝わった。各々が部屋がから出て出迎えのためにエントランスに集合する。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
待ち構えていた六人は消耗しきっているヲルカ達を見て、やはり驚きの顔を見せた。長いギルド生活の中でお互いにいけ好かないと思ってはいるものの、同時に厄介さとしてその実力を認めてもいる。
各人がギルドの重鎮として認められる実力者たち。そんな彼女らの満身創痍の姿を見るとウィアードの脅威さに改めて不安が募ってしまう。そして同時にそのウィアードに対抗できる手段を有しているヲルカの価値を再認識した。
とは言えそれを悟らせるように動く彼女たちではなかった。
◇
「こりゃあまた…前回に引き続き凄いな」
「全くもって不甲斐ない。ウィアードが相手では、手も足も出せん…」
「本当に。ヲルカ君がいなかったらどうなっていた事か」
いや、今日ばかりはチームを組んで良かったと俺は思った。機動性が段違いなんだもの。ウィアード対策室もこんな感じでやっていければよかったのになぁ。アレの失敗原因は多分人を集め過ぎた事だろうな…いや、やっぱりギルドの仲が良くないせいだな。
まあ、今はそんな事はどうでもいい。
皆には早くゆっくりもらわないと。
「とりあえず今日、手伝ってくれたみんなは休んでよ。」
「ヲルカは大丈夫なのか?」
「うん。すこし疲れたけど、みんなで色々と調べてくれたんでしょ? そっちの話も聞きたいし」
「…底なしだな」
そうして今日の調査に同行してくれた四人と別れ、会議室に移動しようとした矢先。オレは自分の中に芽生えた感覚に驚き、声を上げた。
「うわ!」
俺が一番後ろにいたせいで必然的にみんなの背中に向かって大声を出す形になってしまった。全員がびくっと反応し、何事かという視線を俺に向けてくる。
「あ、ごめん」
「びっくりした~」
「急に年相応のガキっぽい事すんなよ」
「ご、ごめん。ただ今日、捕まえた新しいウィアードがいるんだけど、今変な感覚が出てきて」
「え? だ、大丈夫なの、ヲルカ」
「ちょっと待ってて」
そう言って心配のこもった二十の瞳の視線が集中する…くそ、やっぱりみんな顔立ちが良いな。緊張する。
俺は目をつぶって自分の中に芽生えた感覚を更に探る。そしてその正体が分かった途端、オレの身体は空中に浮かび上がった。
「え?」
全員が同じような声を出したのに、何故かサーシャの声だけが一番耳に届いた。
「どういう事だ、ヲルカ殿。それもウィアードの力なのか?」
「そうみたい。ここに戻った途端に変な感覚があってさ。どうやら『屋根のあるところ』でならこうやって浮かべるみたい」
「なんと…」
するとタネモネとハヴァの二人が同じようにフワリと浮かび上がった。エントランスの天井は開けているので三人が浮かび上がったところで狭くはない。
「やはり不可思議であるな。浮遊などは魔法をもってしてもおいそれと実現ができないというにこうもあっさりと」
「ヲルカ様。空中浮遊のご気分は如何ですか?」
「めちゃくちゃ楽しいね、これ。ただもう少し練習が必要かも」
「その時は是非仰ってください。空中浮遊の先輩として手ほどき致しますよ」
「それはいい。我も教授しよう」
「うん。その時はお願いしようかな」
そうか。こうやって条件が揃うと覚醒する能力もあるのか…妖怪って奥が深いな。
ひょっとしたら既に捕まえているウィアードたちも何かの条件が嵌れば新しい能力に目覚めることがあるかもしれない。
それから飛行チームと別れて会議室へと入る。
アルルが気を聞かせてお茶を出してくれたというのに、それに口をつける間もなく俺は急くように聞いた。
「それで? どうだった?」
「報告を円滑に進めるために、ボクが先に概要をまとめておいた」
「そうなんだ。ありがとう」
ラトネッカリがレポートを差し出してきた。斜め読みしただけだが、噂の正誤と一緒に怪しげな情報などが事細かにまとめられていて正直メチャクチャ読みやすい。大学でレポートを書くのに散々苦労してきた俺からしてみれば、これが一番魔法に思える。
「え、ヤバ。こんな短時間でここまでまとめられるんですか?」
「ふふふ。いいよ、もっと褒めてくれたまえ。それを見れば分かると思うがボク、ヤーリン君、マルカ君は渡された資料の真偽正誤の確認に勤しんだ。結果はそこのレポートにまとめてある通りだ」
「てことは…」
俺は今名前の出なかった三人の顔を見た。それぞれが物言いたげな表情を浮かべながらジッと俺を見てきた。俺はそこから悲壮感や焦燥感を感じ取っていた。
「アルルとカウォンとワドワーレは何か別の進展が?」
「オレの場合は特別任務の方だ。言われたような場所とかに当たりはつけておいたぜ」
「そっか。ありがとう」
「儂とアルルは少し妙な事件に出くわした」
「妙な事件?」
自分の鼻がピクリと反応したのが分かった。我ながら悲しい性分だ。
「うむ。被害に遭った者たちが似通っているから恐らくは同じ事件だと思うが、そもそもウィアードが絡んでいる事件かどうかの判断すらできていない。最終的な判断はヲルカに任せようと思っての」
「どんな…事件だったの? てか、二人とも大丈夫なの?」
「うん、ウチらはその事件の話を聞いただけだから」
「ただし確実に『カカラスマ座』と『アネルマ連』に実害が出ておる。もしウィアードの絡んだ事件だとしたら…迅速な対応を願いたい」
「まずは聞かせて」
オレは二人の話を懇切に聞き始めた。
まずアルルの話はこうだった。
数カ月前から『マドゴン院』の医師までが匙を投げるような奇病が『アネルマ連』のギベル商店街で流行しているらしい。その病にかかると高熱を出し、まるで毒を盛られたかのように苦しみ悶え、やがて死に至るという。
この病気が奇病たる所以はそれを患う者達に特徴があった。
どういう訳かケンタウロス族だけがその奇病に罹ってしまうのだ。その致死性は凄まじく今現在を持って患者の死亡率は100%で老若男女問わず亡くなっているらしい。不幸中の幸いなのは病気に罹る人数が少なく、それでいてどうやら周囲に感染することはない点だ。
次いでカウォンの話はこうだ。
というよりも大よその概要はアルルの話と似通っていた。『カカラスマ座』のギルド員の中で謎の奇病が流行している。症状もやはりそっくりだが、患うのはミノタウロス族という点が異なっている。
むしろここまでの話を統括するとケンタウロス族とミノタウロス族だけが罹る病気のような気さえする。
「どうじゃろうか?」
「『アネルマ連』はケンタウロス、『カカラスマ座』はミノタウロスが原因不明の病か…」
ベルギ商店街のあるワフル地区とズキア劇場のあるチモタボ地区は隣合わせ。仮にウィアードが関わっているとしても整合性は取れている。問題は被害に遭っている種族だ。
「ウィアードは人間を襲うのが普通だけど…」
種族が幅広いヱデンキアだと亜人も人間扱いされるのか? それにしたって種族が偏り過ぎてる。てことはひょっとして亜人としての特徴に関連してるのかな。つまりはケンタウロスは馬、ミノタロスは牛の性質も兼ね揃えている観点から考えてそれらを襲うウィアードだとは考えらないだろうか。
馬や牛を狙って襲うウィアードには…一つ心当たりがある。
ともすれば。
「カウォン、アルル。もっと詳しく調べてほしいことがある。聞いてほしいことを後でまとめるから、聞いてきてもらってもいい?」
「是非もない。何でも言うてくれ」
「ウチも。すぐにだって出られるよ」
「今日は無理にしても、明日の朝くらいまでにはまとめておくから」
もしもオレが想定している妖怪だとすれば対応レベルを最優先にしないといけない。人間を襲う事はないが、亜人が被害に遭うのはヱデンキアにおいては人死にと一緒だ。しかも被害者はアルルとカウォンに近しい人たちもいる。
それだけが理由ではないが、俺の中に一つの熱が生まれた。
「ところでヲルカ達の方はどうだったの?」
するとヤーリンが話題を変えてきた。急だったので俺は何も取り繕うことなく今日起こった事を口にしてしまう。
「一瞬、十階から落ちて死にかけた」
「え!?」
驚いたのはヤーリンだけではない。その場の全員が立ち上がったりしてどういう事かと聞いてきた。そりゃそうだろう。変なポーズを見せて元気なのをアピールしつつ弁明をする。
「でもこうしてピンピンしてるよ。あ、そうそう。なんとさ、フェリゴが助けてくれたんだよ」
「え、フェリゴってあのフェリゴ君?」
「そうそう。あいつがいなかったらマジで死んでかも…」
「でも、なんで?」
「今『ハバッカス社』に入ってるのは知ってるだろうけど、ハヴァさんに取り入ろうとしてオレ達のこと調べてたみたい。うまく出し抜かれてハヴァさんに重要そうな書類にサインしてもらってた」
「相変わらずだね…」
俺とヤーリンは込み上げてきた懐かしさで破顔した。ケラケラという笑いが響いたが、すぐにカウォンの冷水のような冷たい声にかき消されてしまう。
「二人とも、察するに共通の友人の話題で盛り上がってるようじゃが、今すべき話かのう?」
「あ」
「ご、ごめんなさい」
そうだった。まだみんながいてギルドの任務の最中だった。
慌てて謝罪の言葉を述べると何故かマルカが口をとがらせてふてくされたような顔をこちらに向けてきていた。
「むー。やっぱ、ヤーリンちゃんの幼馴染キャラは強いよね。お姉ちゃんもヲル君と思い出話で盛り上がりたいなあ。エッチな話でもいいけど」
「なんですか、それ!」
エッチなと言う単語にヤーリンは露骨に反応した。思春期だからしょうがないね。前世の中学での記憶が思い返された。
その時ラトネッカリが好奇心に満ちた瞳でこちらに近寄って聞いてきた。
「そう言えば今回新しく捕まえたのはどういうウィアードなんだい? 部屋の中で飛ぶ以外にも能力はあるんだろう?」
「山地乳ってウィアードなんだけど…」
俺は早速、山地乳を体に貸与して見せた。ムササビのような皮膜が現れ、先に見せた浮遊能力と一緒に空中での立ち回りが可能になった事を説明する。
「ふむ。空中戦術は有意義だが、他のウェアードに比べるとウィアードらしさに欠けるな。まるで普通の野生動物のような…」
「他にもあるよ。夜な夜な寝てる人の口から寝息を吸って寿命を変えることができるんだ」
俺がそう言うとマルカがキャッと短い悲鳴を上げた。
「それってヲル君は誰でも寝込みを襲ってキスできる能力を手に入れたって事?」
「ちょっとヲルカ! どういう事!?」
「解釈の仕方がおかしいだろ! そんな事は一言も言ってねえ!」
「そんなウィアードの力を使わなくたってこの家にいる奴らはみんなOKしてくれるだろ?」
「うむ。ボクはいつでも歓迎だ」
「むしろキスだけで事足りるのう?」
「いや、ウチはまだ心の準備が…」
「なんで俺が寝込みを襲う前提で話を進めてんだ。しないから!」
俺がそう叫んだ瞬間から部屋がしんっと静まり返った。誰しもがしょんぼりとして意味深な瞳を向けてきている。
皆さん、残念そうにしないでもらえます?
ちょっと子供には見せられない妄想が始まっちゃうから。
門を通り調査隊が戻ってきたことは『中立の家』で待機していた六人にベルで伝わった。各々が部屋がから出て出迎えのためにエントランスに集合する。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
待ち構えていた六人は消耗しきっているヲルカ達を見て、やはり驚きの顔を見せた。長いギルド生活の中でお互いにいけ好かないと思ってはいるものの、同時に厄介さとしてその実力を認めてもいる。
各人がギルドの重鎮として認められる実力者たち。そんな彼女らの満身創痍の姿を見るとウィアードの脅威さに改めて不安が募ってしまう。そして同時にそのウィアードに対抗できる手段を有しているヲルカの価値を再認識した。
とは言えそれを悟らせるように動く彼女たちではなかった。
◇
「こりゃあまた…前回に引き続き凄いな」
「全くもって不甲斐ない。ウィアードが相手では、手も足も出せん…」
「本当に。ヲルカ君がいなかったらどうなっていた事か」
いや、今日ばかりはチームを組んで良かったと俺は思った。機動性が段違いなんだもの。ウィアード対策室もこんな感じでやっていければよかったのになぁ。アレの失敗原因は多分人を集め過ぎた事だろうな…いや、やっぱりギルドの仲が良くないせいだな。
まあ、今はそんな事はどうでもいい。
皆には早くゆっくりもらわないと。
「とりあえず今日、手伝ってくれたみんなは休んでよ。」
「ヲルカは大丈夫なのか?」
「うん。すこし疲れたけど、みんなで色々と調べてくれたんでしょ? そっちの話も聞きたいし」
「…底なしだな」
そうして今日の調査に同行してくれた四人と別れ、会議室に移動しようとした矢先。オレは自分の中に芽生えた感覚に驚き、声を上げた。
「うわ!」
俺が一番後ろにいたせいで必然的にみんなの背中に向かって大声を出す形になってしまった。全員がびくっと反応し、何事かという視線を俺に向けてくる。
「あ、ごめん」
「びっくりした~」
「急に年相応のガキっぽい事すんなよ」
「ご、ごめん。ただ今日、捕まえた新しいウィアードがいるんだけど、今変な感覚が出てきて」
「え? だ、大丈夫なの、ヲルカ」
「ちょっと待ってて」
そう言って心配のこもった二十の瞳の視線が集中する…くそ、やっぱりみんな顔立ちが良いな。緊張する。
俺は目をつぶって自分の中に芽生えた感覚を更に探る。そしてその正体が分かった途端、オレの身体は空中に浮かび上がった。
「え?」
全員が同じような声を出したのに、何故かサーシャの声だけが一番耳に届いた。
「どういう事だ、ヲルカ殿。それもウィアードの力なのか?」
「そうみたい。ここに戻った途端に変な感覚があってさ。どうやら『屋根のあるところ』でならこうやって浮かべるみたい」
「なんと…」
するとタネモネとハヴァの二人が同じようにフワリと浮かび上がった。エントランスの天井は開けているので三人が浮かび上がったところで狭くはない。
「やはり不可思議であるな。浮遊などは魔法をもってしてもおいそれと実現ができないというにこうもあっさりと」
「ヲルカ様。空中浮遊のご気分は如何ですか?」
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「その時は是非仰ってください。空中浮遊の先輩として手ほどき致しますよ」
「それはいい。我も教授しよう」
「うん。その時はお願いしようかな」
そうか。こうやって条件が揃うと覚醒する能力もあるのか…妖怪って奥が深いな。
ひょっとしたら既に捕まえているウィアードたちも何かの条件が嵌れば新しい能力に目覚めることがあるかもしれない。
それから飛行チームと別れて会議室へと入る。
アルルが気を聞かせてお茶を出してくれたというのに、それに口をつける間もなく俺は急くように聞いた。
「それで? どうだった?」
「報告を円滑に進めるために、ボクが先に概要をまとめておいた」
「そうなんだ。ありがとう」
ラトネッカリがレポートを差し出してきた。斜め読みしただけだが、噂の正誤と一緒に怪しげな情報などが事細かにまとめられていて正直メチャクチャ読みやすい。大学でレポートを書くのに散々苦労してきた俺からしてみれば、これが一番魔法に思える。
「え、ヤバ。こんな短時間でここまでまとめられるんですか?」
「ふふふ。いいよ、もっと褒めてくれたまえ。それを見れば分かると思うがボク、ヤーリン君、マルカ君は渡された資料の真偽正誤の確認に勤しんだ。結果はそこのレポートにまとめてある通りだ」
「てことは…」
俺は今名前の出なかった三人の顔を見た。それぞれが物言いたげな表情を浮かべながらジッと俺を見てきた。俺はそこから悲壮感や焦燥感を感じ取っていた。
「アルルとカウォンとワドワーレは何か別の進展が?」
「オレの場合は特別任務の方だ。言われたような場所とかに当たりはつけておいたぜ」
「そっか。ありがとう」
「儂とアルルは少し妙な事件に出くわした」
「妙な事件?」
自分の鼻がピクリと反応したのが分かった。我ながら悲しい性分だ。
「うむ。被害に遭った者たちが似通っているから恐らくは同じ事件だと思うが、そもそもウィアードが絡んでいる事件かどうかの判断すらできていない。最終的な判断はヲルカに任せようと思っての」
「どんな…事件だったの? てか、二人とも大丈夫なの?」
「うん、ウチらはその事件の話を聞いただけだから」
「ただし確実に『カカラスマ座』と『アネルマ連』に実害が出ておる。もしウィアードの絡んだ事件だとしたら…迅速な対応を願いたい」
「まずは聞かせて」
オレは二人の話を懇切に聞き始めた。
まずアルルの話はこうだった。
数カ月前から『マドゴン院』の医師までが匙を投げるような奇病が『アネルマ連』のギベル商店街で流行しているらしい。その病にかかると高熱を出し、まるで毒を盛られたかのように苦しみ悶え、やがて死に至るという。
この病気が奇病たる所以はそれを患う者達に特徴があった。
どういう訳かケンタウロス族だけがその奇病に罹ってしまうのだ。その致死性は凄まじく今現在を持って患者の死亡率は100%で老若男女問わず亡くなっているらしい。不幸中の幸いなのは病気に罹る人数が少なく、それでいてどうやら周囲に感染することはない点だ。
次いでカウォンの話はこうだ。
というよりも大よその概要はアルルの話と似通っていた。『カカラスマ座』のギルド員の中で謎の奇病が流行している。症状もやはりそっくりだが、患うのはミノタウロス族という点が異なっている。
むしろここまでの話を統括するとケンタウロス族とミノタウロス族だけが罹る病気のような気さえする。
「どうじゃろうか?」
「『アネルマ連』はケンタウロス、『カカラスマ座』はミノタウロスが原因不明の病か…」
ベルギ商店街のあるワフル地区とズキア劇場のあるチモタボ地区は隣合わせ。仮にウィアードが関わっているとしても整合性は取れている。問題は被害に遭っている種族だ。
「ウィアードは人間を襲うのが普通だけど…」
種族が幅広いヱデンキアだと亜人も人間扱いされるのか? それにしたって種族が偏り過ぎてる。てことはひょっとして亜人としての特徴に関連してるのかな。つまりはケンタウロスは馬、ミノタロスは牛の性質も兼ね揃えている観点から考えてそれらを襲うウィアードだとは考えらないだろうか。
馬や牛を狙って襲うウィアードには…一つ心当たりがある。
ともすれば。
「カウォン、アルル。もっと詳しく調べてほしいことがある。聞いてほしいことを後でまとめるから、聞いてきてもらってもいい?」
「是非もない。何でも言うてくれ」
「ウチも。すぐにだって出られるよ」
「今日は無理にしても、明日の朝くらいまでにはまとめておくから」
もしもオレが想定している妖怪だとすれば対応レベルを最優先にしないといけない。人間を襲う事はないが、亜人が被害に遭うのはヱデンキアにおいては人死にと一緒だ。しかも被害者はアルルとカウォンに近しい人たちもいる。
それだけが理由ではないが、俺の中に一つの熱が生まれた。
「ところでヲルカ達の方はどうだったの?」
するとヤーリンが話題を変えてきた。急だったので俺は何も取り繕うことなく今日起こった事を口にしてしまう。
「一瞬、十階から落ちて死にかけた」
「え!?」
驚いたのはヤーリンだけではない。その場の全員が立ち上がったりしてどういう事かと聞いてきた。そりゃそうだろう。変なポーズを見せて元気なのをアピールしつつ弁明をする。
「でもこうしてピンピンしてるよ。あ、そうそう。なんとさ、フェリゴが助けてくれたんだよ」
「え、フェリゴってあのフェリゴ君?」
「そうそう。あいつがいなかったらマジで死んでかも…」
「でも、なんで?」
「今『ハバッカス社』に入ってるのは知ってるだろうけど、ハヴァさんに取り入ろうとしてオレ達のこと調べてたみたい。うまく出し抜かれてハヴァさんに重要そうな書類にサインしてもらってた」
「相変わらずだね…」
俺とヤーリンは込み上げてきた懐かしさで破顔した。ケラケラという笑いが響いたが、すぐにカウォンの冷水のような冷たい声にかき消されてしまう。
「二人とも、察するに共通の友人の話題で盛り上がってるようじゃが、今すべき話かのう?」
「あ」
「ご、ごめんなさい」
そうだった。まだみんながいてギルドの任務の最中だった。
慌てて謝罪の言葉を述べると何故かマルカが口をとがらせてふてくされたような顔をこちらに向けてきていた。
「むー。やっぱ、ヤーリンちゃんの幼馴染キャラは強いよね。お姉ちゃんもヲル君と思い出話で盛り上がりたいなあ。エッチな話でもいいけど」
「なんですか、それ!」
エッチなと言う単語にヤーリンは露骨に反応した。思春期だからしょうがないね。前世の中学での記憶が思い返された。
その時ラトネッカリが好奇心に満ちた瞳でこちらに近寄って聞いてきた。
「そう言えば今回新しく捕まえたのはどういうウィアードなんだい? 部屋の中で飛ぶ以外にも能力はあるんだろう?」
「山地乳ってウィアードなんだけど…」
俺は早速、山地乳を体に貸与して見せた。ムササビのような皮膜が現れ、先に見せた浮遊能力と一緒に空中での立ち回りが可能になった事を説明する。
「ふむ。空中戦術は有意義だが、他のウェアードに比べるとウィアードらしさに欠けるな。まるで普通の野生動物のような…」
「他にもあるよ。夜な夜な寝てる人の口から寝息を吸って寿命を変えることができるんだ」
俺がそう言うとマルカがキャッと短い悲鳴を上げた。
「それってヲル君は誰でも寝込みを襲ってキスできる能力を手に入れたって事?」
「ちょっとヲルカ! どういう事!?」
「解釈の仕方がおかしいだろ! そんな事は一言も言ってねえ!」
「そんなウィアードの力を使わなくたってこの家にいる奴らはみんなOKしてくれるだろ?」
「うむ。ボクはいつでも歓迎だ」
「むしろキスだけで事足りるのう?」
「いや、ウチはまだ心の準備が…」
「なんで俺が寝込みを襲う前提で話を進めてんだ。しないから!」
俺がそう叫んだ瞬間から部屋がしんっと静まり返った。誰しもがしょんぼりとして意味深な瞳を向けてきている。
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