貸与術師と仕組まれたハーレムギルド ~モンスター娘たちのギルドマスターになりました~

音喜多子平

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エピソード3

貸与術師と牛打ち坊

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 オレは時計を見る。時刻は19:59。アルル、カウォン、ナグワーの三人には余程のトラブルが起こらない限りは二十時にウィアード退治をすると言ってある。三人とも少し遠く離れてしまっているが、何となく視線は感じた。

 そして設定したアラームを止めると俺は小屋に向かって手を合わせて、呪文を唱え始めた。これはじっちゃんが俺に教えてくれた呪文で『ハンニャシンキョウ』と言うらしい。じっちゃんの考えた世界では割とポピュラーな呪文詠唱なのだが、意味はさっぱり分からない。というか考えたじっちゃん本人もよく分かっていなかった。

 やがて経文を唱え終わった俺は取り立てて何の変化も見受けられない小屋を見て、虚しさと焦燥感を覚えた。

 大丈夫だよな? ここまでやって何もなかったら恥ずかしいどころの騒ぎじゃないぞ。

 俺はそんな疑念を払拭するかのように指先に魔法で種火をつけると小屋に火をつけた。茄子と一緒に発火剤も入れてあるので労せず小屋は燃え始めた。傍から見るとイベントに合わせたキャンプファイヤーだな。

 パチパチと木材の爆ぜる音が聞こえる。ひとまずはこれで牛打ち坊は焼き払えるはず。

 …はずだった。

 モクモクと上がっていく黒煙は夜空の下であってもやたらとはっきりと見える…というかはっきりと見えすぎじゃないだろうか。いやいや、もしかしなくても様子がおかしい。煙がどんどんと集まって形を成していく。

 アレだ、魔法のランプの精霊みたいな感じだな。

 黒々と墨が固まった様な体に巨大な目と鋭い牙を携えた口。頭からは二本の角をはやしたような輪郭が確認できた。

これが牛打ち坊の正体なのだろう。じっちゃんの画集にも何だかよく分からないマスコットみたいに描かれていたし…なんにせよひしひしと発せられる邪悪な気配だけで退治するには十分すぎる理由がある。

 それにしてもやっぱり伝承と差異があると予想外の事が起こってしまう。ヱデンキアでは実現困難な要素も多分にあるだろうから今後はより注意が必要だな。

 牛打ち坊は流石に劇的な登場かつ、体躯も大きかったので広場は一時騒然となった。集っていた三つのギルド員達が遠距離から援護の魔法を飛ばす。だが当然、それは効かない。来場客もその様子を垣間見て、噂に聞いているウィアードであると判断したのか所々から悲鳴や動揺の声が上がった。だが幾分の距離があったので被害を受けることはないだろう。そもそも牛打ち坊は先ほどからずっと俺の事しか見ていないようだった。

「がああああ!!!」

 そんな雄叫びと共に牛打ち坊は木の幹のような太い腕を振り回し始めた。俺もそれに対抗すべく右腕を蟹坊主のソレに貸与して迎え撃つ!

「うおおおおっ!!!!」

―――

 小屋の煙の中から牛打ち坊が現れた時、異変はイベント会場にもすぐさま伝わっていた。

 アルル、カウォン、ナグワーの三人は今の今までしていた職務を一旦中断し、握手会用のステージの上に集まる。

「アルル殿、カウォン殿」
「うむ。現れたようじゃな」
「アイツがオサイフさん達を…」

 グルル、と狼の威嚇するときの唸り声がアルルの喉から鳴った。すると近くにいたキーキアとコッコロも話の輪に加わる。

「思ったよりも大きいんだ。噂通り魔法も通用して無いみたいだし…」
「カ、カウォン様。これからどうすれば」

 不安を隠す余裕もない二人にカウォンはあっけらかんという。

「どうもこうもない。集まったファンや公園に通りがかった者達を全力で守るだけじゃ」
「いやいや、加勢しなくていいのかよ。いくらなんでもあの子一人じゃ…」

 いまひとつ、ヲルカの事を信じれていないキーキアに向かってジャックネイヴの三人のギルド員達は自信に満ちた表情で返事をする。

「ふふふ。ヲルカの事をよく知らぬお主らには少々不安かも知れんがな。心配は無用」
「むしろ自分らが加勢しては足手まといであります。隊長が余念なく戦いに集中できればおのずと勝利は訪れるでしょう」
「うん。ヲルカ君は強いから大丈夫!」

 キーキアとコッコロは改めて唖然とし、牛打ち坊と戦うヲルカを見据えた。

『アネルマ連』の野生語り(ワイルドスピーカー)こと、アルル・エファングロー。
『カカラスマ座』の新緑の歌姫(ヴァーデント・ディヴァ)こと、カウォン・ケイスシス。
『ナゴルデム団』の龍の戦乙女(ドラゴン・ワルキュリエ)こと、ナグワー・ニードーニ。

 間違いなくヱデンキアのギルド史に名を連ねる事になるであろう三人が、こぞって圧倒的な信頼感を寄せる少年。

 そんな人物がいることも当然驚くべき事だったが、コッコロには更にもう一つ驚くことがあった。

 ここまで名前を上げ、各ギルドの幹部クラスに当たるギルド員達が等しく同じ意見でまとまっている場面を始めてみたのだった。

 ―――
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