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Episode1

備える勇者

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 メカーヒーとの取引が終わり、目的地がルクーサー地方へと変わった。結果として相手の思惑に嵌り、護衛という仕事付きだが道中の旅費が掛からない上に報酬まで出るのだから御の字という事で納得した。



 出発は三日後の昼。旅支度は最小限で済むが、その前にやらなればならない事が一つあった。



 支度のために宿を一度出ると、オレは早速自分の考えを二人に伝えた。



 ◇



「やるべきこと?」



「ああ。何だかんだとトラブル続きでないがしろにしていたが、護衛っていう重大な仕事が入ったからな」



「い、一体なんでしょうか?」



 オレが改まった雰囲気で話を切り出したせいか、ラスキャブはやけに緊張して聞き返してきた。が、今回に限っては多少の緊張感は持っておいてもらいたい。



「パーティとしての連携の相談だよ」



 個々の範疇で賄えることなど高が知れている。パーティを組む最大の理由とは個の限界を超えた戦闘を行えるようになることだ。そうなると、お互いの連携力は必要不可欠になる。



 それに現時点のオレ達には他にも問題がある。ルージュの強さは別格としても、オレとラスキャブは戦闘においてそれぞれ不安材料がある点だ。言わずもがなオレの不安とはリセットされた諸々のステータスであり、ラスキャブの懸念は戦闘経験の少なさだ。どちらも決して無視することができない課題となっている。



「が、相談といってもどこかで茶を飲みながらやったところで埒が開かない。こればかりは何度も戦いを経験して各々が体で覚えるしかないからな」



「という事は、今から戦闘に行くという事か?」



「ああ。そういう事だ」



「ど、どなたと戦うんですか?」



 大きな町にいる今の状況なら戦闘訓練の方法はいくつか選ぶことができる。



 ギルドのどこか別のパーティに模擬戦を依頼する、町の外に出て索敵をして戦う、どこかで要戦闘のリクエストを受ける、などが思い付くところだ。それぞれに利点があるから、一概にどれが良いとは決められない。



 ともすれば必要に迫られている要因を踏まえて考えるほかない。



 今、真っ先にオレ達に必要なのは多対多の戦闘経験だ。それも、できれば魔獣を相手にしたい。旅先で戦う事になる相手は大きく分けて他のパーティ、魔族、魔獣の三パターンがあるが、その中でも圧倒的に機会が多いのが魔獣だからだ。



 他の二つの仮想的に対して魔獣は連携や厄介な術を使う場合は殆どないが、大抵が強靭な肉体を有し、的確に弱点を責めなければならない事が往々にして起こる相手だ。既知の魔獣であればよいが、未知の魔獣であれば心理的なストレスも抱えやすい。ラスキャブにはそれに慣れることから始めさせなければならないし、オレも経験値だけはあるが時間が経ち過ぎていて今一つ信用に足りない。時が経てば生息域が変わったり、進化していることも十二分に考えられれる。



 ともすれば、帰還が容易な範囲の街道で実際の魔獣を相手取るのが安全かつ一番手っ取り早い。



「一度、町を出て草原で適当な魔獣を探そう。できれば多対多の闘いを多くこなして、オレ達の息を合わせていく」



「うむ。承知した」



「が、頑張ります」



 二人の同意が得られた後、道中の武具屋で簡単に装備を整えた。いよいよ連携が出来ると思うと、オレは少しだけ武者震いをした。根っからの戦闘馬鹿っぷりを自笑する。
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