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Episode3
垣間見る勇者
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「う、うわあああ!」
リーダー格の魔族が容易くねじ伏せられたことで、残りのメンバーは思い思いに逃亡を図った。しかし、アーコの放った魔法により、草原に茂っている草という草が壁を作るように群生しだして、逃げ道を悉く潰してしまった。
「くそがぁぁぁ」
攻撃を繰り出して突破を試みるものの、それよりもラスキャブ達の追い打ちの方が早い。まともにやり合えばいい勝負になる様な実力は持ち合わせていたが、混乱に乗じたこちら側のパーティに軍配が上がった。
オレが腕を切り落した魔族は、失血がひどく手当てをする前にショック死してしまった。生き残った他の奴らも気絶するか、拘束されるかで身動きを封じられている。
かくして、ようやく落ち着いて会話と情報分析のできる時間を得ることができたのだった。
◇
「トスクルっ! トスクルっ!!」
ピオンスコは気を失っているトスクルを抱え起こすと、必死になって名前を呼んだ。青い顔をしており、確かに傍目にも心配になる顔色だ。しかしすぐにアーコが様子を見てくれ、記憶と精神が混乱しているだけで命に別状はないと断言してくれた。
「・・・しかし、とんでもない術だったな。あれだけのイナゴを生み出して、尚且つ手に取るように操れるとは思わなかった」
「アタシも初めて見た。一緒にいた頃はもっと単純な命令しか出せなかったし、沢山のイナゴを出せるけどもっと時間がかかっていたはずなのに」
「何?」
それは妙な話だ。ラスキャブとピオンスコの戦闘技術や能力は総合的に見れば大体同じだ。だからこそ、昔からつるんでいたのだろう。聞けばトスクルだって似た様な実力の持ち主だというし、ともすれば彼女は『囲む大地』にやってきてから急速にレベルを上げたことになる。
若干の記憶を保持しているピオンスコでさえ、こっちの環境に馴染めていなかったし、見る限り仲間に恵まれて経験値を積むことができたとも考えにくい。
トスクルは、どうやって短期間に魔法レベルを上げることができたんだ・・・?
いずれにしても草原は街道が通っている事もあり、人目も多い。それを避けるために森の中へと移動をした。不可抗力とは言え殺してしまった魔族の亡骸をひとまず葬ると、オレは意識のある奴らに改めて質問をした。
「ダブデチカを襲ったのは、お前らで間違いないな」
「そ、そうです」
魔族たちは冷や汗をかきながらオレを見据える。こうなっては従順になって命を乞うか、逃げるタイミングを計るしかないので当然の反応だろう。
「お前ら、さっき仕事って言ってたよな。ありゃどういう意味だ?」
「仕事だと?」
「た、頼まれたというか、命令されたんだ」
「誰に?」
「ソリダリティって女の魔族だった。白い髪で頭から猫の耳を生やしていた」
「猫の耳?」
その証言でオレの妙な予感が生まれた。
ササス族の持つ鳥の特徴を色濃く持ったまま謎の変容を遂げたフェトネックを思いながら、猫の特徴を持つ魔族と聞けばリホウド族である聖女レコットが思い出されてしまう。とはいえども、それだけでは確証は持てない。詳しく聞こうとと思った矢先、もっと効率的かつ確実な方法を思い出した。
オレは顕現していたルージュとアーコに目配せした。
ルージュは腕から青白いブレードを出すと、それを横薙ぎに振るった。そうすると魔族たちが全員、弛緩したように倒れ込み気を失ってしまった。
オレ達の目には見えないが、ルージュ達は空中から何か千切る様な仕草をして互いに確認し合っている。不謹慎かと思ったが、オレは馬車に積んであった欲し肉を齧りながら酒を少し貰い、その様子をぼんやりと眺めている。
やがて、魔族たちの記憶を精査し終わった二人はその内容をオレ達に伝達しようと振り返った。が、その顔には若干の緊張が走っている。
「どうかしたのか?」
「まあな。口で説明するよりもこいつらの記憶を見た方が手っ取り早い」
「手っ取り早いが…驚くなよ?」
「それは約束できんな」
そうして二人は魔族たちの記憶の断片を見せてきてくれた。案の定と言った具合に、オレはアーコとの約束は守れなかった。
記憶の中には尤も憎むべき男がいたからだ。
リーダー格の魔族が容易くねじ伏せられたことで、残りのメンバーは思い思いに逃亡を図った。しかし、アーコの放った魔法により、草原に茂っている草という草が壁を作るように群生しだして、逃げ道を悉く潰してしまった。
「くそがぁぁぁ」
攻撃を繰り出して突破を試みるものの、それよりもラスキャブ達の追い打ちの方が早い。まともにやり合えばいい勝負になる様な実力は持ち合わせていたが、混乱に乗じたこちら側のパーティに軍配が上がった。
オレが腕を切り落した魔族は、失血がひどく手当てをする前にショック死してしまった。生き残った他の奴らも気絶するか、拘束されるかで身動きを封じられている。
かくして、ようやく落ち着いて会話と情報分析のできる時間を得ることができたのだった。
◇
「トスクルっ! トスクルっ!!」
ピオンスコは気を失っているトスクルを抱え起こすと、必死になって名前を呼んだ。青い顔をしており、確かに傍目にも心配になる顔色だ。しかしすぐにアーコが様子を見てくれ、記憶と精神が混乱しているだけで命に別状はないと断言してくれた。
「・・・しかし、とんでもない術だったな。あれだけのイナゴを生み出して、尚且つ手に取るように操れるとは思わなかった」
「アタシも初めて見た。一緒にいた頃はもっと単純な命令しか出せなかったし、沢山のイナゴを出せるけどもっと時間がかかっていたはずなのに」
「何?」
それは妙な話だ。ラスキャブとピオンスコの戦闘技術や能力は総合的に見れば大体同じだ。だからこそ、昔からつるんでいたのだろう。聞けばトスクルだって似た様な実力の持ち主だというし、ともすれば彼女は『囲む大地』にやってきてから急速にレベルを上げたことになる。
若干の記憶を保持しているピオンスコでさえ、こっちの環境に馴染めていなかったし、見る限り仲間に恵まれて経験値を積むことができたとも考えにくい。
トスクルは、どうやって短期間に魔法レベルを上げることができたんだ・・・?
いずれにしても草原は街道が通っている事もあり、人目も多い。それを避けるために森の中へと移動をした。不可抗力とは言え殺してしまった魔族の亡骸をひとまず葬ると、オレは意識のある奴らに改めて質問をした。
「ダブデチカを襲ったのは、お前らで間違いないな」
「そ、そうです」
魔族たちは冷や汗をかきながらオレを見据える。こうなっては従順になって命を乞うか、逃げるタイミングを計るしかないので当然の反応だろう。
「お前ら、さっき仕事って言ってたよな。ありゃどういう意味だ?」
「仕事だと?」
「た、頼まれたというか、命令されたんだ」
「誰に?」
「ソリダリティって女の魔族だった。白い髪で頭から猫の耳を生やしていた」
「猫の耳?」
その証言でオレの妙な予感が生まれた。
ササス族の持つ鳥の特徴を色濃く持ったまま謎の変容を遂げたフェトネックを思いながら、猫の特徴を持つ魔族と聞けばリホウド族である聖女レコットが思い出されてしまう。とはいえども、それだけでは確証は持てない。詳しく聞こうとと思った矢先、もっと効率的かつ確実な方法を思い出した。
オレは顕現していたルージュとアーコに目配せした。
ルージュは腕から青白いブレードを出すと、それを横薙ぎに振るった。そうすると魔族たちが全員、弛緩したように倒れ込み気を失ってしまった。
オレ達の目には見えないが、ルージュ達は空中から何か千切る様な仕草をして互いに確認し合っている。不謹慎かと思ったが、オレは馬車に積んであった欲し肉を齧りながら酒を少し貰い、その様子をぼんやりと眺めている。
やがて、魔族たちの記憶を精査し終わった二人はその内容をオレ達に伝達しようと振り返った。が、その顔には若干の緊張が走っている。
「どうかしたのか?」
「まあな。口で説明するよりもこいつらの記憶を見た方が手っ取り早い」
「手っ取り早いが…驚くなよ?」
「それは約束できんな」
そうして二人は魔族たちの記憶の断片を見せてきてくれた。案の定と言った具合に、オレはアーコとの約束は守れなかった。
記憶の中には尤も憎むべき男がいたからだ。
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