うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

防衛戦(山 ) 1

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「よっ、暗い顔してんな」

 ぼんやりとしていた僕に声をかけてきたのは、『城壁の守護者』のリーダーベスだ。
 僕とセラ様、そして『城壁の守護者』パーティー一行は、狭い街道を馬車に揺られて進んでいた。

「そりゃ、海と山で離れてるから心配にもなりますよ」

 理由はそれだけではなく、突然の作戦でイスカとフーシェは1日早く行動することになったことも原因だ。
 僕は、自分の不安を少しでも鎮めようと、胸元にしまった2枚の術符を確かめた。
 一枚には、レーヴァテインの座標が。もう一枚にはイスカの持つ術符と対になる術式が組み込まれている。
 先に出発するイスカが、大急ぎで作成した長距離転移用の術符だ。 
 レーヴァテインへの座標は、リズから渡された本に記載されていた。

「きっと大丈夫ですよ。お二人共強いですから」

 隣に座るセラ様が、僕を元気づけようと笑顔を向ける。

「まぁ、あの二人は初めて会った時に比べると遥かに強くなったよなぁ。勿論、ユズキの強化あってだろうが。ところで、そっちの嬢ちゃんは本当についてきて良かったのか?」

 ベスは、いかにも良家のお嬢さんといった風体のセラ様を、今一度確認すると怪訝な顔をした。
 セラ様が女神様本人であることを知っているのは、この馬車の中には誰もいない。およそ、戦場に向かう一行には似つかわしくない姿の少女がいれば、それは不思議に思うだろう。

「勿論です、ユズキさんは私の大事な人ですから!離れるつもりはありませんし、皆さんにもご迷惑をおかけしません!」

 意気込む姿勢のセラ様を見て、セラ様の隣に座っていたサユリがセラ様に抱きつく。

「ほんま、健気で可愛いなぁ。にしても、ユズキもイスカやフーシェがおるのに、こんな可愛い娘に、そんなことを言わせるなんて。あんさん、もしかしてロリコンなん?」

 この世界にロリコンという概念があったとは。
 いや、問題はそこじゃないか。

「僕達の関係はそんなんじゃないよ。説明は確かに難しいけど⋯⋯」

「──ハイハイ、それ以上ユズキを困らせないの。そろそろ着くわよ」

 ベスの隣に座っていたアルティナが、軽く手を叩いて話を切り上げた。2日前にトナミカに到着したアルティナは、恋人であるベスの喜ぶ顔を尻目に、淡々と業務をこなしている。
 如何にも、できる女性といった感じだ。

 馬車はまもなく停まった。
 これまでに、何台もの荷馬車とすれ違って来たが、それらはトナミカに運び込む荷物の数々だ。
 この荷馬車が何とかすれ違うことができる程度の街道が、トナミカにとっての大動脈だ。僕達は、ここを封鎖するためにやってきた。

 先発隊として朝方に出発したため、陽はまだ昇りきってはいない。少しだけ道の横に広場がある場所に馬車は停まると、続々と『城壁の守護者』のパーティーが降り立った。
 その数はおよそ30人。3台の馬車が停まると、すぐに広場は寿司詰め状態となった。

「では、現地に着いたのでこれからの流れについて説明致します」

 若い『蒼天の灯台ブルートーチ』のメンバーである、青年が駆けてきた。
 名前は、トールと言ったはずだ。
 快活そうな青年は、『城壁の守護者』の屈曲な面々を前にしても、物怖じせずに、よく通る声で口を開いた。

「ご覧の通り、この道は狭いです。これは、攻めてであるグリドールには進軍の遅延を図るには、とても有効ですが、守り手である我々にとっても、デメリットでもあります。ですが、上手く守ることができれば、ここは自然の要塞となって、グリドールの戦意を挫くことができます!では作戦開始です、皆さん頑張りましょう!!」

「おーっ!」

 返事は少なかった。
 意気を高める声なんて聞こえてこない。何せ相手は20万人で、トナミカの兵力は数千人程度。西方諸国連合を入れても1万に足りないくらいだ。

 トールの言葉に、反応したセラ様の声だけが虚しく響いた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ハーッ、疲れた!!」

 僕は作業を終えた身体を労る様に身体を地面に投げ出した。
 一日中、街道のあちこちな罠を作るために走り回り、気がつけばもう夜だった。

 作業を終えて、見張り以外の面々が拠点へと帰ってきていた。

「ユズキさん、お疲れ様でした」

 スッと、視界に覗き込んできたセラ様の顔が映り込む。
 その手には水の入ったコップが握られていた。

「ありがとう、頂くよ」

 僕は起き上がると、コップを受け取って水を流し込んだ。
 程よく冷えた水が、火照った身体を冷ましてくれる。

 パチ、パチリと焚き火のはぜる音が聞こえてくる。
 視線を上に向ければ、焚き火の明かりにも掻き消されることのない、圧倒的な星々の煌めきが写った。

「ふふっ、神界からは見下ろしてばかりでしたから、こうやって皆さんと一緒に神界を見上げることができるのは新鮮です」

 セラ様は笑うと、自分も持っていたコップの水をコクリと一口飲んだ。

「ここに来ると、あぁ。やっぱり、生きるってことは素晴らしいことなんだなって思います。仮初めの肉体ですが、この身体が地面を踏みしめることで、大地の力強さを。見果てぬ海が、圧倒的な存在というものを、そして、人と人との繋がりが私の心を震わせる。そう、生を実感させてくれるんです」

 セラ様はそっと僕の横に近寄ると、一緒に空を見上げた。

「面白いですよね。上から見下ろすと、様々な物が見えますが、下から見上げると、見つめているものは皆同じです。こうやって、同じ方向を見上げることで、皆が同じ気持ちになればいいのに」

 セラ様は少し悲しそうに笑った。

「でも、嬉しいことも辛いことも。この身体があることで実感できるんだなって、ほんの短い間ですが、感じるようになりました。だから、その喜びも辛さも、ユズキさん達と一緒に感じて行けたらなって思ってます」

「セラ様⋯⋯いや、セラならできるよ。だから、絶対トナミカは落とさせない。メナフやアマラ様の思い通りにはさせないと約束する」

 僕の言葉にセラ様は泣き笑いの様な顔を作ると、顔を少し赤くしながら頷くと、残りの水を一気に飲み干した。

「おーい!ミスティが一曲弾くってよ!」

 焚き火を囲う一角から、歓声が上がった。
 歓声の輪の中には、一人のミステリアスな雰囲気を持つ女性がリュートに似た楽器を持って座っている。

「ははっ、悪いね。酒に喉やられちゃっててね。音楽だけで勘弁してよ」

 顔をお酒で赤く染めたミスティと呼ばれた女性が軽く笑う。

「流石ミスティの姉御!酒好きなのに酒に弱い!普通にしてたら、女神も聞き惚れる歌声なのに、すぐ酒にやられるんだからな」

 周囲の男性陣が囃し立てる。
 ミスティは、まぁまぁと笑っていたが、ふとセラ様を見つけると、ちょいちょいとセラ様を手招きした。

「あ、行ってきますね」

 セラ様はトコトコとミスティの元へと駆けていく。
 僕も立ち上がると、ゆっくりとセラ様の後を追った。

「ははっ、格好悪いとこ見せて申し訳ないけど、アンタ。私の赤ちゃんみたいな喉の代わりに歌ってくれないかい?なーに、みんな聞いたことのあるこのメロディーさ」

 ミスティが、軽くリュートを鳴らす。

「あ」

 エラリアの街角、トナミカの居酒屋でも聞いたことのあるメロディー。
 確か、日々の営みが送れることを女神に感謝するといった、牧歌から生まれた詩のはずだ。

 メロディーが流れると、セラ様は瞳を輝かせた。

「あ、その詩!私大好きです!いつも捧げてもらってましたから!」

「え──?アンタ面白いことを言うね。まぁ、知っているなら話が早いよ。一曲いけるかい?」

 どうやら、セラ様の危険な発言は流されたようだ。
 僕は胸を撫で下ろした。

「さぁて、それじゃあ。この酒に焼かれた私の声に代わって、この小さなプリンセスが歌うよ。曲は、皆の知っているあの詩だ。今生きていること、日々の営みに感謝を込めて。詩に想いを載せて女神に捧ぐ、我らが女神よ、明日への活力を我らに与え給え」

 リュートが、ミスティの細い指によってかき鳴らされた。

 スウッと、セラ様が息を吸い込む。

『──!!』

 セラ様の口が開き、その声が森林に響いた瞬間。
 まるで、森が喜びに打ち震える様にザワッと木々を揺らした。

 圧倒的。いや、神秘的というのはこのことなのだろう。
 セラ様から紡がれる歌声は、一瞬で僕達の心を鷲掴みにした。
 魂が揺さぶられるというのは、比喩表現じゃないんだ。

 ──

 気がつけば、僕の頬には一筋の涙が伝わるのを感じた。
 いや、僕だけではない。
 ベスを始め、屈強な男性陣だけではなく、アルティナやサユリも頬を涙で濡らしている。

 そうか、これは日々の感謝を受けてきた女神様が歌う、この世界の住人に対する感謝の気持ちなんだ。 
 誰もが、手を止めてセラ様の歌に聞き入っていた。

 今のセラ様には、僕達を強化するといったスキルや魔法を持っているわけではない。
 だけど、胸に暖かく宿った熱は、確かに僕達の心に火をつけたのだった。
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