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ふと、琥珀は遠い雪の日の事を思い出していた。
細い赤い布でお互いの手を繋げて死んでいた二人のお兄さんたち。町の大人たちは殺人事件だったなんて言うけれど、絶対に違う。高校生になった今だから、なおさらはっきりとそれは言える。
お兄さんたちは自殺だった。
二人が死ななければいけなくなった理由は分からないが、お互いが離れないよう、しっかりと手を繋ぎ止めて一緒に死ぬことで、二人は何かを添い遂げたのだ。
命より大事な何かを守ったのだ。
メロスとセリヌンティウスも命をかけて、二人は人を信じることができない暴君ディオニスの心を動かしたのだ。
固い友情で結ばれた二人だからこそできた偉業だ。
走れメロスをはじめ、琥珀は今まで男の友情について描かれた小説や漫画を読み漁ってきた。ドラマや映画も数えきれないほど観た。
その中で、あの雪の日の二人は琥珀にとって走れメロスと同じかそれ以上の、もっとも琥珀が理想とする男の友情の形だった。
『世界で一番大切な人だよ』
まるで眩しいものを見るかのような目をして、あのお兄さんは背の高いお兄さんを見て言った。
琥珀はあることに気づいた。
あの時のお兄さんの目と今の暖が琥珀を見る目は似ている。
一メートル以上近づくなだなんて、訳の分からない誓いをたてられてしまったが、暖が琥珀に強い友情を抱いてくれているのは確かだろう。
暖の自転車の後ろには乗せてもらえないけど、人混みで暖が琥珀の手を引いて歩いてくれることはないけど、暖のそばにいられるのだったら、暖の親友でいられるのだったら、そんなことどうだっていい。
もう二度とこの前みたいに暖と親友でなくなるのは嫌だ。暖のそばにいられないのは嫌だ。暖が足りなくなるのは嫌だ。
暖がいれば、暖さえいれば、他は何もいらない。
結局一度も水に触れることなく夏休みは終わり、二学期が始まった。
男子生徒の多くはこんがり日焼けをし、女生徒たちはどこか少し大人っぽくなったように感じた。
花火大会以来だった早坂さんは、髪を短く切っていて、他校に彼氏ができていた。
早坂さんは琥珀を教室の隅に引っぱって行くと、こう耳打ちしてきた。
「花火大会の時のことは忘れてね。私、彼氏できたからさ、ごめんね」
ごめんねって、まるで琥珀がフラれたみたいだが、まあいいかと、琥珀は素直にうなづいておいた。
早坂さんは前より綺麗になったように見えた。
新学期になって変わったことが他にもあった。それは琥珀たちのクラスに転入生がやってきたことだった。
東京からやってきたというその女の子は、雑誌の読者モデルのように垢抜けていて、彼女のS N Sのフォロワー数はうん万人だとか……。
けれど驚くべきことはそれだけではなかった。
担任に連れられて教室に入ってきた彼女は暖を見るなり、大声で叫んだ。
「暖! 暖だよね? 私だよ、紗理奈だよ、覚えてる? 大きくなっても私が暖のことが好きだったら暖のお嫁さんにしてくれるって約束してもらったいとこの紗理奈だよ」
クラスの女子の中でも密かに暖を狙っている子が多い中、紗理奈は招かざる客として嫌われるかと思いきや、その逆だった。
スタイル抜群で美人、洗練されたセンス、若い子のインフルエンサーである紗理奈はあっという間にクラスの女子たちを味方につけた。
細い赤い布でお互いの手を繋げて死んでいた二人のお兄さんたち。町の大人たちは殺人事件だったなんて言うけれど、絶対に違う。高校生になった今だから、なおさらはっきりとそれは言える。
お兄さんたちは自殺だった。
二人が死ななければいけなくなった理由は分からないが、お互いが離れないよう、しっかりと手を繋ぎ止めて一緒に死ぬことで、二人は何かを添い遂げたのだ。
命より大事な何かを守ったのだ。
メロスとセリヌンティウスも命をかけて、二人は人を信じることができない暴君ディオニスの心を動かしたのだ。
固い友情で結ばれた二人だからこそできた偉業だ。
走れメロスをはじめ、琥珀は今まで男の友情について描かれた小説や漫画を読み漁ってきた。ドラマや映画も数えきれないほど観た。
その中で、あの雪の日の二人は琥珀にとって走れメロスと同じかそれ以上の、もっとも琥珀が理想とする男の友情の形だった。
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まるで眩しいものを見るかのような目をして、あのお兄さんは背の高いお兄さんを見て言った。
琥珀はあることに気づいた。
あの時のお兄さんの目と今の暖が琥珀を見る目は似ている。
一メートル以上近づくなだなんて、訳の分からない誓いをたてられてしまったが、暖が琥珀に強い友情を抱いてくれているのは確かだろう。
暖の自転車の後ろには乗せてもらえないけど、人混みで暖が琥珀の手を引いて歩いてくれることはないけど、暖のそばにいられるのだったら、暖の親友でいられるのだったら、そんなことどうだっていい。
もう二度とこの前みたいに暖と親友でなくなるのは嫌だ。暖のそばにいられないのは嫌だ。暖が足りなくなるのは嫌だ。
暖がいれば、暖さえいれば、他は何もいらない。
結局一度も水に触れることなく夏休みは終わり、二学期が始まった。
男子生徒の多くはこんがり日焼けをし、女生徒たちはどこか少し大人っぽくなったように感じた。
花火大会以来だった早坂さんは、髪を短く切っていて、他校に彼氏ができていた。
早坂さんは琥珀を教室の隅に引っぱって行くと、こう耳打ちしてきた。
「花火大会の時のことは忘れてね。私、彼氏できたからさ、ごめんね」
ごめんねって、まるで琥珀がフラれたみたいだが、まあいいかと、琥珀は素直にうなづいておいた。
早坂さんは前より綺麗になったように見えた。
新学期になって変わったことが他にもあった。それは琥珀たちのクラスに転入生がやってきたことだった。
東京からやってきたというその女の子は、雑誌の読者モデルのように垢抜けていて、彼女のS N Sのフォロワー数はうん万人だとか……。
けれど驚くべきことはそれだけではなかった。
担任に連れられて教室に入ってきた彼女は暖を見るなり、大声で叫んだ。
「暖! 暖だよね? 私だよ、紗理奈だよ、覚えてる? 大きくなっても私が暖のことが好きだったら暖のお嫁さんにしてくれるって約束してもらったいとこの紗理奈だよ」
クラスの女子の中でも密かに暖を狙っている子が多い中、紗理奈は招かざる客として嫌われるかと思いきや、その逆だった。
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