30 / 39
30
しおりを挟む
暖が琥珀の家に行くと、琥珀の姉たちはみな驚いて、三人は同時に同じセリフを吐いた。
「今年は暖君の家じゃないの?」
聞くところによると琥珀は学校からも帰ってきていないらしい。
「てっきり、帰りにそのまま暖君の家に行ったのかと思った」
琥珀の姉たちは戸惑いと不安の入り混じった表情を浮かべている。
学校が終わったのは正午過ぎで、今は午後三時を回ったところだった。
「ちょっと探してきます」
暖は雪道を走りながら琥珀に電話をかけた。しかし呼び出し音が鳴り続けるだけだった。
数日前、琥珀に絶交だと言われたが、暖はイヴにかこつけて仲直りをするつもりだった。
琥珀が最近女子と一緒にいることが多いのに嫉妬してしまった。
あんな酷いことを言えば琥珀が怒るのは当たり前だった。けれど血の誓いを解消したい、琥珀の親友を止めたい、その気持ちは本心でもあった。
もう少し言い方があったのだろうが、自分もいっぱいいっぱいだった。一メートル以上近づくな、などと馬鹿なことを琥珀に強いるほど、琥珀と親友でいることが苦しくてならなかった。
今日、琥珀が行きそうな所といったら青龍山しかない。
クリスマスカラーの灯台の灯りを眺めるのが二人の恒例だった。
標高四百メートルにも満たないといっても、山は山だ。登るにつれ雪がひどくなっていくように感じた。
すれ違う車はほとんどなく、昔から慣れ親しんだ山とはいえ、どことなく心細くなってくる。琥珀はこんな雪の中を一人で山を登って行ったのだろうか。
「琥珀―!」
大声で琥珀の名を呼んだ。
が、その声は山林に響くどころか、沈黙した雪にあっと言う間に吸い込まれてしまった。
山頂近くの眺めのいい場所に琥珀の姿はなかった。山の麓からここまでは一本道だ。
琥珀とすれ違わなかったということは、琥珀はここには来なかったのだろうか?
灯台の灯りは雪に霞んでほとんど見えなかった。
何気に足元に視線をやると、暖の立つ場所から下方に向かって積もった雪が乱れているのが分かった。
なだらかとはいえ、そこは崖だった。普段なら踏み間違うことはないが、雪で道路との境界線がすっかり分からなくなっていた。
数メートル落ちたところに青い何かが見えた。
目を凝らすと、それは傘だった。琥珀の傘の色は青色だった。
全身から血の気が引いた。
「琥珀―! 琥珀―!」
狂ったように叫んだ。
耳を澄まして返答を待つ。自分の心臓の音が耳元でバクバクうるさい。
琥珀に何かあったらと思うと、気が変になりそうになった。
ずっと下方で、声が聞こえた。
暖は迷わず声のした方に向かって駆け下りた。
「今年は暖君の家じゃないの?」
聞くところによると琥珀は学校からも帰ってきていないらしい。
「てっきり、帰りにそのまま暖君の家に行ったのかと思った」
琥珀の姉たちは戸惑いと不安の入り混じった表情を浮かべている。
学校が終わったのは正午過ぎで、今は午後三時を回ったところだった。
「ちょっと探してきます」
暖は雪道を走りながら琥珀に電話をかけた。しかし呼び出し音が鳴り続けるだけだった。
数日前、琥珀に絶交だと言われたが、暖はイヴにかこつけて仲直りをするつもりだった。
琥珀が最近女子と一緒にいることが多いのに嫉妬してしまった。
あんな酷いことを言えば琥珀が怒るのは当たり前だった。けれど血の誓いを解消したい、琥珀の親友を止めたい、その気持ちは本心でもあった。
もう少し言い方があったのだろうが、自分もいっぱいいっぱいだった。一メートル以上近づくな、などと馬鹿なことを琥珀に強いるほど、琥珀と親友でいることが苦しくてならなかった。
今日、琥珀が行きそうな所といったら青龍山しかない。
クリスマスカラーの灯台の灯りを眺めるのが二人の恒例だった。
標高四百メートルにも満たないといっても、山は山だ。登るにつれ雪がひどくなっていくように感じた。
すれ違う車はほとんどなく、昔から慣れ親しんだ山とはいえ、どことなく心細くなってくる。琥珀はこんな雪の中を一人で山を登って行ったのだろうか。
「琥珀―!」
大声で琥珀の名を呼んだ。
が、その声は山林に響くどころか、沈黙した雪にあっと言う間に吸い込まれてしまった。
山頂近くの眺めのいい場所に琥珀の姿はなかった。山の麓からここまでは一本道だ。
琥珀とすれ違わなかったということは、琥珀はここには来なかったのだろうか?
灯台の灯りは雪に霞んでほとんど見えなかった。
何気に足元に視線をやると、暖の立つ場所から下方に向かって積もった雪が乱れているのが分かった。
なだらかとはいえ、そこは崖だった。普段なら踏み間違うことはないが、雪で道路との境界線がすっかり分からなくなっていた。
数メートル落ちたところに青い何かが見えた。
目を凝らすと、それは傘だった。琥珀の傘の色は青色だった。
全身から血の気が引いた。
「琥珀―! 琥珀―!」
狂ったように叫んだ。
耳を澄まして返答を待つ。自分の心臓の音が耳元でバクバクうるさい。
琥珀に何かあったらと思うと、気が変になりそうになった。
ずっと下方で、声が聞こえた。
暖は迷わず声のした方に向かって駆け下りた。
12
あなたにおすすめの小説
寡黙な剣道部の幼馴染
Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー
美絢
BL
勉強が苦手な桜水は、王子様系ハイスペックイケメン幼馴染である理人に振られてしまう。にも関わらず、ハワイ旅行に誘われて彼の家でハウスキーパーのアルバイトをすることになった。
そこで結婚情報雑誌を見つけてしまい、ライバルの姫野と結婚することを知る。しかし理人は性的な知識に疎く、初夜の方法が分からないと告白される。
ライフイベントやすれ違いが生じる中、二人は同棲する事ができるのだろうか。【番外はじめました→ https://www.alphapolis.co.jp/novel/622597198/277961906】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる