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序章・帝国崩壊編
1、不真面目領主
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深く深く暗い森。
青々広がる草原。
そんな自然の中に小さな村が一つあった。
アーランドラ帝国の端の端に位置し、深い森を開拓して帝国の領土を増やす為の村でモンタアナという。
モンタアナ村の領主は辺境伯ラドウィン・ナンセクトといった。
まだ二十にも満たない青年だ。
父が早いうちに死んでしまったからその後を継いで辺境伯となったのである。
とはいえ、近隣の国々に軍事的に備える辺境伯と違い、彼は辺境の地を開拓して言葉も解さない蛮族と戦う役割でしか無かった。
彼は飄々としてあまり物事に執着しない。
いつもニコニコとしていて、たまに皮肉を言うことはあっても怒る事はなく。
出世欲が無ければ、富も名誉も興味無い。
税の取り立ての時に使用する作物の重さを測る籠に、村民が石を入れていても何も言わない程だ。
下戸で酒は飲まないが、しょっちゅう屋敷の倉を開いて村人達と宴会を開く。
だから帝都の皇帝達に送る税が全然足りないのだが、報告書に「不作」とだけ書いて送る始末である。
村人達は贅沢の出来ない慎ましい暮らしをしていたから、貴族の贅の為に村から税を取り立てる真似をしないラドウィンに感謝していた。
一方、ラドウィンは帝都の方ではすこぶる不真面目で有名な男だった。
「まあいい、あんな辺境の地の事なんて気にする必要は無いさ。ドラ息子というものは余計な事をする方が迷惑なもんだから、辺境の地でずうっと遊んでいてくれればそれでよろしい」
帝都の貴族達はそのように言ってラドウィンの事なんて全く気にはしていなかった。
ラドウィンも帝都できっとそのような評価になっているだろうと思っていたから気兼ねなく仕事をしなかったのである。
一日中本を読んで、昼寝して、腹が減ったら村へ出てきて村人の食事に預かって帰っていく。
夜になったら時々宴を開き、村人達と語らって眠るのが彼の幸せであった。
その日も、ラドウィンは昼頃にのそのそとベッドから這い出て、外が十分に明るいのを見ながら大きくあくびする。
寝間着から着替えると、小腹が空いたので屋敷から出るのだ。
彼の住んでいる屋敷は複数人が暮らすことを前提として、二階建ての幾つも部屋がある横に広い屋敷であったが、ラドウィンしか住んでないので全く人気の無い寂しい屋敷である。
使用人の一人も雇わないので、寝室と廊下とリビング以外は埃が積もっていた程だ。
その屋敷は小高い丘の上にあって、村が一望できる。
遠くには青々と広がる田畑。
手前へ目を向けるに従って民家が少しずつ建っていた。
畦道をゆっくり歩いて畑を見ている人が屋敷から見える。
村の端にある、森から流れてくる小川で洗濯しながら笑っている人々も見えた。
村の合間を無造作に伸びる道を子供達が木の棒を持って走っているのも見えると、ラドウィンは今日も一日平和だと思いながら丘を降って村の中を歩く。
村は昼時ということもあって、パンを焼くいい匂いが立ち込めていた。
ラドウィンはその匂いに頷くと一つの民家へと足を運んだ。
彼はいつも昼食を村人の家で食べる。
それが日課だったし、村人も彼が来ると喜んで迎えた。
別にラドウィンが来たからと言って特別にもてなす訳ではなく、家族の料理のうち、余った物を彼に出して、ラドウィンと適当に談笑するのである。
「そういえば、今日はラドウィン様が珍しく仕事をする日ですね」
おばさんがそのように言う。
「ええ、そうですね」
「うちの人とあとこの子もお願いしますね。最近、やたらとワンパクだから、ラドウィン様に教えて貰うにはちょうど良いですよ」
おばさんはガツガツと食事にありついている我が子の肩に手を置いた。
ラドウィンが唯一行う仕事というのは村人達に剣を教える事だ。
このモンタアナには兵が居ない。
ラドウィンの父の代には私兵が居たが、結局、自分自身の食う糧を得るために剣や槍を倉庫に閉まって鋤や鍬を握らなければならなかった。
だからモンタアナの村人達は自分たちの身を守るために三日に一度、ラドウィンから剣術を習う。
この時ばかりはラドウィンも怠けるような真似はせず、しっかりと彼らに剣を教えた。
「このように剣はそれ自体の重さもあるので、振り上げて降ろす際に余計な力はいらないので――」
広場で村の男や子供達、一部の女がラドウィンの講義を聞いている。
だが、子供というものはラドウィンが怠け者である事を知っていたし、その飄々とした態度から強いのかどうか疑問に思っていたのでイマイチちゃんと話を聞いていないのである。
そんな子供達を大人達は領主様の話を聞きなさいとたしなめたが、「ラドウィン様よりアーモの方が絶対に強いよ!」と言った。
アーモというのは村の樵で森の開拓において一番活躍する大男だ。
腕は巨木のような男で、噂によれば蛮族の一、オーガの血を引くとも言われる巨体の力自慢だった。
そのアーモもラドウィンに剣を習うため、広場に居たから、ラドウィンを批判される材料に自分を使われて大きな体を小さく丸めてしまう。
だけどラドウィンは大きな声で笑って「アーモと戦ったら僕なんて一瞬で死んじゃうよ」と子供達の批判を認めた。
「じゃあラドウィン様よりアーモから戦い方を教わった方が良いよ!」
年頃の子供というのは強さに憧れるものだ。
ラドウィンなんて大した事ない人に戦い方を教わりたくないと言うのである。
これに大人達はカンカンとなって怒ると子供達は「ボク達はいつかこんな村を出て、剣で英雄になってやるんだ!」とむしろ反発してしまった。
「領主様に謝らんかクソガキどもが!」
口髭逞しい中年のタッガルという男が青筋たてて怒ると大人達はたちまち子供達に謝りなさいと怒る。
子供というものはラドウィンの表面的な部分しか見ていない。
ラドウィンがただの怠け者だというだけで、わざわざ帝都への税を誤魔化すような危険な真似をする訳ではないのだ。
帝都の要求する食糧の税はあまりに重く、このような小さな村が払うには村人一人一人の食糧を切り詰める必要があったのである。
だけど、ラドウィンは自分が帝都から処罰を受ける可能性があるのに、『不作』と税を誤魔化したり、村人達が税として治める収穫を誤魔化しても見て見ぬふりをしてくれるのだ。
だが、そんな事情を知らない子供達は怒られるとむしろ憤って文句を言った。
これにラドウィンはタジタジとなって「まあまあ、子供というのはこのくらい元気な方が良いくらいだから」と子供達を擁護するのだが、「領主様! 子供を甘やかさないで下され! これは元気というのではなく『生意気』と言うのです!」と言われてしまう。
だけどラドウィンの子供の頃ときたらもっと悪ガキだった。
村の近くに流れている川で水浴びしていた物静かで引っ込み思案な娘っ子の服を下着諸共かっぱらうと、その子が密かに想いを寄せている青年の家に投げ込んだりしたものである。
結局、その時の事件が切っ掛けでその娘と青年は結婚する事になったのだが、思い返せば酷いことをしたものだとラドウィンは反省していた。
他にも、閉じ込められている牧畜の羊が可哀想だと勝手に小屋から解放したり、いじめられていた子が殴られて顔を大きく腫らした時にはいじめっ子の両足を縛って木の上から吊るしたりもしたものだ。
当時は悪気が無かったとはいえ、やはり酷いことをしたと思う。
だから、面と向かって悪口を言うくらいは悪ガキのうちにも入らないとラドウィンは思うのである。
だけれど、そんなラドウィンの態度を子供達はむしろ男らしくないと言って、剣を教わること無く遊びに行ってしまう始末だった。
こうなると大人達はラドウィンを責める。
子供達にズバっと厳しく言ってやらねばならない。とか、子供に男らしい所を見せねばなめられたまま。とか言うのだ。
ラドウィンは別に子供達から慕われなくても良かったからなめられたままでも良かったのだが、「では子供達が剣を教わりませんよ」とタッガルが指摘した。
たしかにその通りだ。
この村では自分の身は自分達で守るというのが大事ゆえ、剣を学ぼうとしないのは良くない事である。
別に慕われたくは無いが、彼ら自身を守る為にも剣は習って貰わねばならない。
仕方ないのでラドウィンは剣の稽古を中止し、子供達を探す事にした。
子供を見つけたらガツンと言ってやろうと思う。
大人達と協力して子供達を探したのであるが、しかし、はてさて、子供達はなぜか村の中に居なかった。
使われていない廃屋や蔵も探したが、やはりどこにも居ない。
やがて村人総出で子供達を探したのだが、子供達はやっぱり見つからなかった。
そう大きくない村だ。
村人総出で見落とすような事にはなるまい。
ばかりか、子供達を探していると各家に一振はある剣が無くなっている事が分かって騒ぎになったのである。
「ラドウィン様、こりゃもしかして……」
不安げなタッガルが言葉を全部言う前にラドウィンは頷いた。
「これは森の中にでも入ってしまったかな」
モンタアナの近くにある広大な森。
蛮族と言われる野蛮人の住まう危険な森である。
大方、家の剣でも持ち出して、武功の一つでも立ててやろうと言う所か。
「子供の向う見ずってのは時として恐ろしいな」
ラドウィンはそう呟くと、大人達に引き続き村の中を探すよう命じた。
「ラドウィン様はどうするのです?」
「僕か? 僕は森の中を探す」
ラドウィンは屋敷へと戻る。
領主の屋敷にある一室を開いた。
そこには剣や鎧、兜などが置かれている。
また、彼の家の紋章だろうか。
剣を持った大鷲の紋章の盾が飾られている。
その部屋から青みがかった鎧を取り出す。
兜も被った。
フッと息を吹けば埃が舞い散る程に使われていない鎧と兜をつけて腰に剣を提げると、いつも世話をしている愛馬を屋敷の裏の厩から出した。
栗色の立派な毛並みの馬だ。
筋肉がついている脚はスラリと伸びている。
毎日かかさず世話をしている愛馬だ。
ラドウィンが馬の背に乗ると、久しぶりに主人を乗せた馬は驚いた様子で竿立つのである。
「ようし良いぞ。元気が一杯だな」
良く走らせてやるが背中に乗る事は少ない。
だけどこれ程元気ならば問題無いだろうとラドウィンは思いながら、そんな愛馬の背中をポンポンと撫でると腹を蹴って森に向かった。
青々広がる草原。
そんな自然の中に小さな村が一つあった。
アーランドラ帝国の端の端に位置し、深い森を開拓して帝国の領土を増やす為の村でモンタアナという。
モンタアナ村の領主は辺境伯ラドウィン・ナンセクトといった。
まだ二十にも満たない青年だ。
父が早いうちに死んでしまったからその後を継いで辺境伯となったのである。
とはいえ、近隣の国々に軍事的に備える辺境伯と違い、彼は辺境の地を開拓して言葉も解さない蛮族と戦う役割でしか無かった。
彼は飄々としてあまり物事に執着しない。
いつもニコニコとしていて、たまに皮肉を言うことはあっても怒る事はなく。
出世欲が無ければ、富も名誉も興味無い。
税の取り立ての時に使用する作物の重さを測る籠に、村民が石を入れていても何も言わない程だ。
下戸で酒は飲まないが、しょっちゅう屋敷の倉を開いて村人達と宴会を開く。
だから帝都の皇帝達に送る税が全然足りないのだが、報告書に「不作」とだけ書いて送る始末である。
村人達は贅沢の出来ない慎ましい暮らしをしていたから、貴族の贅の為に村から税を取り立てる真似をしないラドウィンに感謝していた。
一方、ラドウィンは帝都の方ではすこぶる不真面目で有名な男だった。
「まあいい、あんな辺境の地の事なんて気にする必要は無いさ。ドラ息子というものは余計な事をする方が迷惑なもんだから、辺境の地でずうっと遊んでいてくれればそれでよろしい」
帝都の貴族達はそのように言ってラドウィンの事なんて全く気にはしていなかった。
ラドウィンも帝都できっとそのような評価になっているだろうと思っていたから気兼ねなく仕事をしなかったのである。
一日中本を読んで、昼寝して、腹が減ったら村へ出てきて村人の食事に預かって帰っていく。
夜になったら時々宴を開き、村人達と語らって眠るのが彼の幸せであった。
その日も、ラドウィンは昼頃にのそのそとベッドから這い出て、外が十分に明るいのを見ながら大きくあくびする。
寝間着から着替えると、小腹が空いたので屋敷から出るのだ。
彼の住んでいる屋敷は複数人が暮らすことを前提として、二階建ての幾つも部屋がある横に広い屋敷であったが、ラドウィンしか住んでないので全く人気の無い寂しい屋敷である。
使用人の一人も雇わないので、寝室と廊下とリビング以外は埃が積もっていた程だ。
その屋敷は小高い丘の上にあって、村が一望できる。
遠くには青々と広がる田畑。
手前へ目を向けるに従って民家が少しずつ建っていた。
畦道をゆっくり歩いて畑を見ている人が屋敷から見える。
村の端にある、森から流れてくる小川で洗濯しながら笑っている人々も見えた。
村の合間を無造作に伸びる道を子供達が木の棒を持って走っているのも見えると、ラドウィンは今日も一日平和だと思いながら丘を降って村の中を歩く。
村は昼時ということもあって、パンを焼くいい匂いが立ち込めていた。
ラドウィンはその匂いに頷くと一つの民家へと足を運んだ。
彼はいつも昼食を村人の家で食べる。
それが日課だったし、村人も彼が来ると喜んで迎えた。
別にラドウィンが来たからと言って特別にもてなす訳ではなく、家族の料理のうち、余った物を彼に出して、ラドウィンと適当に談笑するのである。
「そういえば、今日はラドウィン様が珍しく仕事をする日ですね」
おばさんがそのように言う。
「ええ、そうですね」
「うちの人とあとこの子もお願いしますね。最近、やたらとワンパクだから、ラドウィン様に教えて貰うにはちょうど良いですよ」
おばさんはガツガツと食事にありついている我が子の肩に手を置いた。
ラドウィンが唯一行う仕事というのは村人達に剣を教える事だ。
このモンタアナには兵が居ない。
ラドウィンの父の代には私兵が居たが、結局、自分自身の食う糧を得るために剣や槍を倉庫に閉まって鋤や鍬を握らなければならなかった。
だからモンタアナの村人達は自分たちの身を守るために三日に一度、ラドウィンから剣術を習う。
この時ばかりはラドウィンも怠けるような真似はせず、しっかりと彼らに剣を教えた。
「このように剣はそれ自体の重さもあるので、振り上げて降ろす際に余計な力はいらないので――」
広場で村の男や子供達、一部の女がラドウィンの講義を聞いている。
だが、子供というものはラドウィンが怠け者である事を知っていたし、その飄々とした態度から強いのかどうか疑問に思っていたのでイマイチちゃんと話を聞いていないのである。
そんな子供達を大人達は領主様の話を聞きなさいとたしなめたが、「ラドウィン様よりアーモの方が絶対に強いよ!」と言った。
アーモというのは村の樵で森の開拓において一番活躍する大男だ。
腕は巨木のような男で、噂によれば蛮族の一、オーガの血を引くとも言われる巨体の力自慢だった。
そのアーモもラドウィンに剣を習うため、広場に居たから、ラドウィンを批判される材料に自分を使われて大きな体を小さく丸めてしまう。
だけどラドウィンは大きな声で笑って「アーモと戦ったら僕なんて一瞬で死んじゃうよ」と子供達の批判を認めた。
「じゃあラドウィン様よりアーモから戦い方を教わった方が良いよ!」
年頃の子供というのは強さに憧れるものだ。
ラドウィンなんて大した事ない人に戦い方を教わりたくないと言うのである。
これに大人達はカンカンとなって怒ると子供達は「ボク達はいつかこんな村を出て、剣で英雄になってやるんだ!」とむしろ反発してしまった。
「領主様に謝らんかクソガキどもが!」
口髭逞しい中年のタッガルという男が青筋たてて怒ると大人達はたちまち子供達に謝りなさいと怒る。
子供というものはラドウィンの表面的な部分しか見ていない。
ラドウィンがただの怠け者だというだけで、わざわざ帝都への税を誤魔化すような危険な真似をする訳ではないのだ。
帝都の要求する食糧の税はあまりに重く、このような小さな村が払うには村人一人一人の食糧を切り詰める必要があったのである。
だけど、ラドウィンは自分が帝都から処罰を受ける可能性があるのに、『不作』と税を誤魔化したり、村人達が税として治める収穫を誤魔化しても見て見ぬふりをしてくれるのだ。
だが、そんな事情を知らない子供達は怒られるとむしろ憤って文句を言った。
これにラドウィンはタジタジとなって「まあまあ、子供というのはこのくらい元気な方が良いくらいだから」と子供達を擁護するのだが、「領主様! 子供を甘やかさないで下され! これは元気というのではなく『生意気』と言うのです!」と言われてしまう。
だけどラドウィンの子供の頃ときたらもっと悪ガキだった。
村の近くに流れている川で水浴びしていた物静かで引っ込み思案な娘っ子の服を下着諸共かっぱらうと、その子が密かに想いを寄せている青年の家に投げ込んだりしたものである。
結局、その時の事件が切っ掛けでその娘と青年は結婚する事になったのだが、思い返せば酷いことをしたものだとラドウィンは反省していた。
他にも、閉じ込められている牧畜の羊が可哀想だと勝手に小屋から解放したり、いじめられていた子が殴られて顔を大きく腫らした時にはいじめっ子の両足を縛って木の上から吊るしたりもしたものだ。
当時は悪気が無かったとはいえ、やはり酷いことをしたと思う。
だから、面と向かって悪口を言うくらいは悪ガキのうちにも入らないとラドウィンは思うのである。
だけれど、そんなラドウィンの態度を子供達はむしろ男らしくないと言って、剣を教わること無く遊びに行ってしまう始末だった。
こうなると大人達はラドウィンを責める。
子供達にズバっと厳しく言ってやらねばならない。とか、子供に男らしい所を見せねばなめられたまま。とか言うのだ。
ラドウィンは別に子供達から慕われなくても良かったからなめられたままでも良かったのだが、「では子供達が剣を教わりませんよ」とタッガルが指摘した。
たしかにその通りだ。
この村では自分の身は自分達で守るというのが大事ゆえ、剣を学ぼうとしないのは良くない事である。
別に慕われたくは無いが、彼ら自身を守る為にも剣は習って貰わねばならない。
仕方ないのでラドウィンは剣の稽古を中止し、子供達を探す事にした。
子供を見つけたらガツンと言ってやろうと思う。
大人達と協力して子供達を探したのであるが、しかし、はてさて、子供達はなぜか村の中に居なかった。
使われていない廃屋や蔵も探したが、やはりどこにも居ない。
やがて村人総出で子供達を探したのだが、子供達はやっぱり見つからなかった。
そう大きくない村だ。
村人総出で見落とすような事にはなるまい。
ばかりか、子供達を探していると各家に一振はある剣が無くなっている事が分かって騒ぎになったのである。
「ラドウィン様、こりゃもしかして……」
不安げなタッガルが言葉を全部言う前にラドウィンは頷いた。
「これは森の中にでも入ってしまったかな」
モンタアナの近くにある広大な森。
蛮族と言われる野蛮人の住まう危険な森である。
大方、家の剣でも持ち出して、武功の一つでも立ててやろうと言う所か。
「子供の向う見ずってのは時として恐ろしいな」
ラドウィンはそう呟くと、大人達に引き続き村の中を探すよう命じた。
「ラドウィン様はどうするのです?」
「僕か? 僕は森の中を探す」
ラドウィンは屋敷へと戻る。
領主の屋敷にある一室を開いた。
そこには剣や鎧、兜などが置かれている。
また、彼の家の紋章だろうか。
剣を持った大鷲の紋章の盾が飾られている。
その部屋から青みがかった鎧を取り出す。
兜も被った。
フッと息を吹けば埃が舞い散る程に使われていない鎧と兜をつけて腰に剣を提げると、いつも世話をしている愛馬を屋敷の裏の厩から出した。
栗色の立派な毛並みの馬だ。
筋肉がついている脚はスラリと伸びている。
毎日かかさず世話をしている愛馬だ。
ラドウィンが馬の背に乗ると、久しぶりに主人を乗せた馬は驚いた様子で竿立つのである。
「ようし良いぞ。元気が一杯だな」
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だけどこれ程元気ならば問題無いだろうとラドウィンは思いながら、そんな愛馬の背中をポンポンと撫でると腹を蹴って森に向かった。
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