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2章、剣弩重来編
51話、子供
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ラドウィンの日常にグィーゼルが割り込んで来て一週間ほど。
その日、海から小舟を戻したラドウィンは、彼にしては珍しく大漁していた。
ラドウィンは上機嫌に、浜で遊んでいたアキームに「どうだい? 父さんもやる時はやるだろう?」と聞く。
アキームは笑って、「皆いつもそのくらい魚を取ってくるよ」と減らず口を叩くのだ。
ラドウィンは笑って「沢山食べろよ」とアキームの頭を撫でた。
この町では物々交換が基本だ。
とはいえ、原則物々交換というだけで、ラドウィンのように釣りや漁が苦手な人は物が無くとも物を買う事が出来た。
今まではそうやって食べてきたものだ。
ラドウィンは魚の一部を今までに世話となった人へ譲り、また一部を今回不漁だった人へ渡す。
残りの半分で肉や野菜を買って、残りの半分は自分達で食べる事とした。
港で女衆と混じってお喋りをしているミルランスの元へと行き、今夜は豪勢に食べようじゃないかと話す。
ミルランスはラドウィンが大漁だった事に喜び、腕によりをかける事にした。
それでラドウィンとミルランスは一足先に家へと戻る。
アキームには昼食の時間に帰って来るよう伝えた。
その帰り道のことだ。
またしてもグィーゼルがやって来て、道の真ん中で片膝をつくとラドウィンに将としての地位を約束した。
何も敷かれてない砂地の道に、グィーゼルの南方人特有のゆったりとしたローブが汚れる。
ラドウィンとミルランスはほとほと困り、「あなたのような方が衆目の前で土を付けてはなりません」と立たせると、ひとまず家へと案内した。
ラドウィンとミルランスの家は水酸化カルシウムの漆喰で真っ白に塗られている。
この地方独特のもので、青い海と白い家々は観光資源の一つであった。
ミルランスは久しぶりに料理の作りがいがあると張り切る。
「おばあちゃんから教わった料理の腕が錆びてたらごめんなさいね」
ミルランスは意地の悪い冗談を言った。
モンタアナに居た頃、老婆の元で炊事家事を教わったものだが、最近はラドウィンがまともに漁で魚を取れなかったから、あまり凝った料理が作れなかったのだ。
ラドウィンはミルランスの皮肉に苦笑しながら「腕によりをかけてくれるのを楽しみにしてるよ」と答えると、グィーゼルと机を挟んで向かい合わせで座った。
あいにく客間の無い構造だったので、グィーゼルのような身分ある者を食卓につかせる無礼を詫びる。
グィーゼルは気にしないように言い、まじまじと部屋の中を見渡した。
「いや、いや、あなたのような人がこのような家に住んでいるとは思いませんでした」
「質素で良い家でしょう。気に入っておるのです」
ラドウィンは水を汲んだコップをグィーゼルの前に出す。
グィーゼルは「使用人は?」と聞いた。
もちろんそのような人を雇う余裕なんて無い。
ラドウィンはこの町にとって海賊退治の英雄ではあるが、しがない漁人でしか無かった。
「悲しいものですな。一国の領主がかような地で燻る(くすぶる)とは」
ラドウィンの顔から飄々とした笑みが消えたのはこの時である。
グィーゼルはラドウィンの事を徹底的に調べ上げていた。
幾ら四つに分かれたとはいえ、ルルム地方を治めるラズベルト家の諜報力を使えば造作も無い話だ。
ラドウィン自身も、サボり魔という悪名も乱世の雄という良名も、どちらの名も知れた男であった事が大きな原因であるが。
「そして、ミルランス様はもしや」
グィーゼルは声を低くした。
前皇帝ミルランスは行方不明だ。
かつて、帝都が混迷極めし時に行方知らずとなっていた。
もちろんここにいるミルランスが皇帝と同名の女性である可能性はある。
だが、歳も佇まいも皇帝ミルランスとしか思えなかった。
ラドウィンは自分もミルランスも偽名を使って暮らすべきだったと今更後悔する事となる。
ラドウィンにしてはくだらないミスとも言えたが、片田舎へ逃げ込めた安堵からツメが甘くなっていたのであろう。
ラドウィンもミルランスも新しい暮らしに浮かれていて用心を怠っていた。
だが、例え身分がバレたとしても関係の無い話だ。
「地位を捨ててまでここに逃げた。意思の強さは分かるだろう?」
ラドウィンは静かに言い放つのだが、グィーゼルの意思は硬い。
グィーゼルは椅子から降りるとその場に膝をついて「お頼み申す! 我が主の為にご助力を!」と頼み込んだ。
ラドウィンは腕を組んで静かに目を閉じた。
そしてただ、首を左右に振るのだ。
グィーゼルはその意思があまりに強いので、やはり諦める事となった。
どうしたら仕えてくれるだろう。
グィーゼルはそう悩みながら、家から出る事にする。
ミルランスが料理は良いのかと聞いたが、「申し訳ない。予定があったのを忘れてました」と答えてグィーゼルは出て行った。
もちろん予定があった訳では無いがもてなしを断る言葉である。
グィーゼルは玄関で再び頭を下げて通りへ出た。
さてどうしたものか。
考えるグィーゼルを背後から誰かが呼び止めた。
振り向くとそこには活発な笑顔と日に焼けた肌のアキームが居る。
彼は目を輝かせて、「さっき、お父さんと話して事って本当か!」と聞くのだ。
アキームはラドウィンとグィーゼルが何の話をするのか気になって、その話を居間の窓の外から聞いていたのである。
アキームは自分が皇帝の血を継ぐ母親の息子だと知り、また、何やら戦争で活躍したらしいラドウィンの子だと知ったのだ。
年相応に、戦いというものへ対する憧れの強いアキームにとって、降って湧いたような話であった。
俺も戦争で活躍出来るかとアキームは聞くと、まだ十歳の子供に戦争は無理だろうとグィーゼルは苦笑する。
しかし、ふと、この少年は使えると気付いた。
それで、城へ来ないかと聞くと、アキームは純真な瞳を輝かせて頷いたのである。
グィーゼルはアキームを連れて、ルルム地方南方の、パルソンへと連れていった。
パルソンは湖から流れる川の近く、丘を挟んだ平野の街だ。
河川につきものの氾濫を丘が防いでくれる。
また、公都パルから水の都ヘルニス、そしてパルソンからラドウィンらの居るアンターヤには船で下流に進むだけで到着した。
船で南に降り、帰りは馬で北上する。
アーランドラ帝国の諺に南船北馬なる言葉があったが、この事が由来だ。
そのような文化を持つ地であり、各地に馬屋ギルドの運営する馬車駅があった。
馬車駅で馬を借り、借りた馬はどの馬車駅からでも返却出来るのだ。
このように交通設備はアーランドラ一番とも言えるほどに整えられていた。
「あの人達は何をしてるの?」
馬を操るグィーゼルの、その前に座るアキームが聞いたのは、森と平野の間にテントを張っている人達だ。
「彼らはオルト人だ。ルルム地方の部族の一つだな」
オルト人は小さな村を作る部族で、集落が一定の人口に達すると一部が新しい住居を求めて旅に出る慣わしがあった。
「この辺りにはオルト人以外にも色んな部族がいるぞ」とグィーゼルはアキームに教える。
広い平野にはスキライ人が。
丘にはタンキア人が。
アキームの住んでいた村も、元々はターライ人という人々を起源とする部族が作った村だと教えた。
ルルム地方はこのように大小様々な部族が百を越えて存在する。
その部族の中でも特に高い経済力や、高い武力を保持し、各部族に対して強い発言権を人達を『豪族』と呼んだ。
「私達アーランドラ人はルルム地方を治めているが、豪族の力無くしてこの地を治める事は出来ない」
他の地方は、抵抗する部族をアーランドラ人が鎮圧し、支配した。
しかし、ルルム地方だけは、ラズベルト家の祖先が宥和政策を取って支配した為に在来部族の権力が強かったのだ。
「今、ラズベルト家は四つに別れているが、豪族とその下に居る部族の支持を得た者がラズベルト家とルルム地方を治めるのだ」
グィーゼルがそのように説明したが、アキームは全くもって難しい話なので生返事しか出来なかった。
アキームは生来の好奇心の強さから、周囲の景色や人々の営みに気を取られていたのも生返事をしていた原因だが。
気付くとパルソンに到着している。
こじんまりとした町だ。
活気が良いとは言えない。
城も立派なものではなく、城壁は木製であるし館というのが相応しかったのでアキームはガッカリした。
グィーゼルはアキームを連れて館へと案内する。
館に入るとすぐに中年ほどの男が出迎えた。
やや太った体。
顎の下には肉がついているので、この館の主だとすぐに分かる。
彼こそラズベルト家の三男、カインだ。
大仰に両腕を広げたカインはグィーゼルの帰りを芝居がかった口調で出迎え用とする。
が、すぐにアキームに気付いて眉をひそめた。
グィーゼルが、ラドウィンの息子だと紹介すると、一度は萎びかけた芝居が復活し、アキームを迎えるのだ。
すぐに豪勢な料理が振る舞われた。
豚肉の丸焼き。
珍味と言われる魚の肝。
色彩豊かな幻想的鳥を丸焼きにしたもの。その羽は彩りに使われていた。
「どうだい。美味しかろう」
そう言って食べられるものを食べるカイン。
アキームはお腹が空いていたから幾つかの料理を口に運んだ。
そんなアキームの表情はつまらなそうである。
「なんか違うな」というのが、アキームの率直な感想だ。
つまり、カインは英雄の器じゃないとアキームは感じたのだ。
子供が何を分かろうか。
しかし、時に肩書きを見ない純粋な人柄を見るという意味では無知も馬鹿に出来ないものだ。
アキームはその日、館の三階に通された。
アキームはラドウィンを招待する為の人質も同然なので、逃げられないように入り口の前には見張りも用意してある。
当然、アキーム自身に人質なんて気付かれてはならないので、お金を幾らかとお菓子を上げて逃げる気を起こさないようにしていた。
だが、アキームはその夜、つまらないと思って窓から逃げてしまう。
木登りは得意だったので外壁の柱を利用したら、アキームには簡単な脱出劇であった。
アキームは城壁を伝って街道に飛び出る。
木製の城壁は外部からの侵入には堅牢であるが、内側から出るのは容易だ。
そうして、馬車駅に向かうと、カインから貰った金を使って馬を一頭借りた。
馬車駅の亭主はアキームを子供だと思って馬の値段を吹っかけたのだが、「あの値段表と馬一頭の値が違うじゃないか」と指摘されたので適正な値段で馬を貸し付ける。
アキームはラドウィンとミルランスから文字の読み書きを教わっていた。
つまらないものだと思っていたが、予想外の所で役に立つものだとアキームは思いながら馬に乗ろうとする。
ところが、まだ子供のアキームにとって馬は背が高く、なかなか乗れない。
見かねた馬が前足を折り畳んでわざわざ乗せてくれたくらいだ。
アキームは運が良い。
馬は良く躾られて大人しい馬だったからだ。
アキームはその馬を走らせると、北へ北へと駆けて行くのだった。
その日、海から小舟を戻したラドウィンは、彼にしては珍しく大漁していた。
ラドウィンは上機嫌に、浜で遊んでいたアキームに「どうだい? 父さんもやる時はやるだろう?」と聞く。
アキームは笑って、「皆いつもそのくらい魚を取ってくるよ」と減らず口を叩くのだ。
ラドウィンは笑って「沢山食べろよ」とアキームの頭を撫でた。
この町では物々交換が基本だ。
とはいえ、原則物々交換というだけで、ラドウィンのように釣りや漁が苦手な人は物が無くとも物を買う事が出来た。
今まではそうやって食べてきたものだ。
ラドウィンは魚の一部を今までに世話となった人へ譲り、また一部を今回不漁だった人へ渡す。
残りの半分で肉や野菜を買って、残りの半分は自分達で食べる事とした。
港で女衆と混じってお喋りをしているミルランスの元へと行き、今夜は豪勢に食べようじゃないかと話す。
ミルランスはラドウィンが大漁だった事に喜び、腕によりをかける事にした。
それでラドウィンとミルランスは一足先に家へと戻る。
アキームには昼食の時間に帰って来るよう伝えた。
その帰り道のことだ。
またしてもグィーゼルがやって来て、道の真ん中で片膝をつくとラドウィンに将としての地位を約束した。
何も敷かれてない砂地の道に、グィーゼルの南方人特有のゆったりとしたローブが汚れる。
ラドウィンとミルランスはほとほと困り、「あなたのような方が衆目の前で土を付けてはなりません」と立たせると、ひとまず家へと案内した。
ラドウィンとミルランスの家は水酸化カルシウムの漆喰で真っ白に塗られている。
この地方独特のもので、青い海と白い家々は観光資源の一つであった。
ミルランスは久しぶりに料理の作りがいがあると張り切る。
「おばあちゃんから教わった料理の腕が錆びてたらごめんなさいね」
ミルランスは意地の悪い冗談を言った。
モンタアナに居た頃、老婆の元で炊事家事を教わったものだが、最近はラドウィンがまともに漁で魚を取れなかったから、あまり凝った料理が作れなかったのだ。
ラドウィンはミルランスの皮肉に苦笑しながら「腕によりをかけてくれるのを楽しみにしてるよ」と答えると、グィーゼルと机を挟んで向かい合わせで座った。
あいにく客間の無い構造だったので、グィーゼルのような身分ある者を食卓につかせる無礼を詫びる。
グィーゼルは気にしないように言い、まじまじと部屋の中を見渡した。
「いや、いや、あなたのような人がこのような家に住んでいるとは思いませんでした」
「質素で良い家でしょう。気に入っておるのです」
ラドウィンは水を汲んだコップをグィーゼルの前に出す。
グィーゼルは「使用人は?」と聞いた。
もちろんそのような人を雇う余裕なんて無い。
ラドウィンはこの町にとって海賊退治の英雄ではあるが、しがない漁人でしか無かった。
「悲しいものですな。一国の領主がかような地で燻る(くすぶる)とは」
ラドウィンの顔から飄々とした笑みが消えたのはこの時である。
グィーゼルはラドウィンの事を徹底的に調べ上げていた。
幾ら四つに分かれたとはいえ、ルルム地方を治めるラズベルト家の諜報力を使えば造作も無い話だ。
ラドウィン自身も、サボり魔という悪名も乱世の雄という良名も、どちらの名も知れた男であった事が大きな原因であるが。
「そして、ミルランス様はもしや」
グィーゼルは声を低くした。
前皇帝ミルランスは行方不明だ。
かつて、帝都が混迷極めし時に行方知らずとなっていた。
もちろんここにいるミルランスが皇帝と同名の女性である可能性はある。
だが、歳も佇まいも皇帝ミルランスとしか思えなかった。
ラドウィンは自分もミルランスも偽名を使って暮らすべきだったと今更後悔する事となる。
ラドウィンにしてはくだらないミスとも言えたが、片田舎へ逃げ込めた安堵からツメが甘くなっていたのであろう。
ラドウィンもミルランスも新しい暮らしに浮かれていて用心を怠っていた。
だが、例え身分がバレたとしても関係の無い話だ。
「地位を捨ててまでここに逃げた。意思の強さは分かるだろう?」
ラドウィンは静かに言い放つのだが、グィーゼルの意思は硬い。
グィーゼルは椅子から降りるとその場に膝をついて「お頼み申す! 我が主の為にご助力を!」と頼み込んだ。
ラドウィンは腕を組んで静かに目を閉じた。
そしてただ、首を左右に振るのだ。
グィーゼルはその意思があまりに強いので、やはり諦める事となった。
どうしたら仕えてくれるだろう。
グィーゼルはそう悩みながら、家から出る事にする。
ミルランスが料理は良いのかと聞いたが、「申し訳ない。予定があったのを忘れてました」と答えてグィーゼルは出て行った。
もちろん予定があった訳では無いがもてなしを断る言葉である。
グィーゼルは玄関で再び頭を下げて通りへ出た。
さてどうしたものか。
考えるグィーゼルを背後から誰かが呼び止めた。
振り向くとそこには活発な笑顔と日に焼けた肌のアキームが居る。
彼は目を輝かせて、「さっき、お父さんと話して事って本当か!」と聞くのだ。
アキームはラドウィンとグィーゼルが何の話をするのか気になって、その話を居間の窓の外から聞いていたのである。
アキームは自分が皇帝の血を継ぐ母親の息子だと知り、また、何やら戦争で活躍したらしいラドウィンの子だと知ったのだ。
年相応に、戦いというものへ対する憧れの強いアキームにとって、降って湧いたような話であった。
俺も戦争で活躍出来るかとアキームは聞くと、まだ十歳の子供に戦争は無理だろうとグィーゼルは苦笑する。
しかし、ふと、この少年は使えると気付いた。
それで、城へ来ないかと聞くと、アキームは純真な瞳を輝かせて頷いたのである。
グィーゼルはアキームを連れて、ルルム地方南方の、パルソンへと連れていった。
パルソンは湖から流れる川の近く、丘を挟んだ平野の街だ。
河川につきものの氾濫を丘が防いでくれる。
また、公都パルから水の都ヘルニス、そしてパルソンからラドウィンらの居るアンターヤには船で下流に進むだけで到着した。
船で南に降り、帰りは馬で北上する。
アーランドラ帝国の諺に南船北馬なる言葉があったが、この事が由来だ。
そのような文化を持つ地であり、各地に馬屋ギルドの運営する馬車駅があった。
馬車駅で馬を借り、借りた馬はどの馬車駅からでも返却出来るのだ。
このように交通設備はアーランドラ一番とも言えるほどに整えられていた。
「あの人達は何をしてるの?」
馬を操るグィーゼルの、その前に座るアキームが聞いたのは、森と平野の間にテントを張っている人達だ。
「彼らはオルト人だ。ルルム地方の部族の一つだな」
オルト人は小さな村を作る部族で、集落が一定の人口に達すると一部が新しい住居を求めて旅に出る慣わしがあった。
「この辺りにはオルト人以外にも色んな部族がいるぞ」とグィーゼルはアキームに教える。
広い平野にはスキライ人が。
丘にはタンキア人が。
アキームの住んでいた村も、元々はターライ人という人々を起源とする部族が作った村だと教えた。
ルルム地方はこのように大小様々な部族が百を越えて存在する。
その部族の中でも特に高い経済力や、高い武力を保持し、各部族に対して強い発言権を人達を『豪族』と呼んだ。
「私達アーランドラ人はルルム地方を治めているが、豪族の力無くしてこの地を治める事は出来ない」
他の地方は、抵抗する部族をアーランドラ人が鎮圧し、支配した。
しかし、ルルム地方だけは、ラズベルト家の祖先が宥和政策を取って支配した為に在来部族の権力が強かったのだ。
「今、ラズベルト家は四つに別れているが、豪族とその下に居る部族の支持を得た者がラズベルト家とルルム地方を治めるのだ」
グィーゼルがそのように説明したが、アキームは全くもって難しい話なので生返事しか出来なかった。
アキームは生来の好奇心の強さから、周囲の景色や人々の営みに気を取られていたのも生返事をしていた原因だが。
気付くとパルソンに到着している。
こじんまりとした町だ。
活気が良いとは言えない。
城も立派なものではなく、城壁は木製であるし館というのが相応しかったのでアキームはガッカリした。
グィーゼルはアキームを連れて館へと案内する。
館に入るとすぐに中年ほどの男が出迎えた。
やや太った体。
顎の下には肉がついているので、この館の主だとすぐに分かる。
彼こそラズベルト家の三男、カインだ。
大仰に両腕を広げたカインはグィーゼルの帰りを芝居がかった口調で出迎え用とする。
が、すぐにアキームに気付いて眉をひそめた。
グィーゼルが、ラドウィンの息子だと紹介すると、一度は萎びかけた芝居が復活し、アキームを迎えるのだ。
すぐに豪勢な料理が振る舞われた。
豚肉の丸焼き。
珍味と言われる魚の肝。
色彩豊かな幻想的鳥を丸焼きにしたもの。その羽は彩りに使われていた。
「どうだい。美味しかろう」
そう言って食べられるものを食べるカイン。
アキームはお腹が空いていたから幾つかの料理を口に運んだ。
そんなアキームの表情はつまらなそうである。
「なんか違うな」というのが、アキームの率直な感想だ。
つまり、カインは英雄の器じゃないとアキームは感じたのだ。
子供が何を分かろうか。
しかし、時に肩書きを見ない純粋な人柄を見るという意味では無知も馬鹿に出来ないものだ。
アキームはその日、館の三階に通された。
アキームはラドウィンを招待する為の人質も同然なので、逃げられないように入り口の前には見張りも用意してある。
当然、アキーム自身に人質なんて気付かれてはならないので、お金を幾らかとお菓子を上げて逃げる気を起こさないようにしていた。
だが、アキームはその夜、つまらないと思って窓から逃げてしまう。
木登りは得意だったので外壁の柱を利用したら、アキームには簡単な脱出劇であった。
アキームは城壁を伝って街道に飛び出る。
木製の城壁は外部からの侵入には堅牢であるが、内側から出るのは容易だ。
そうして、馬車駅に向かうと、カインから貰った金を使って馬を一頭借りた。
馬車駅の亭主はアキームを子供だと思って馬の値段を吹っかけたのだが、「あの値段表と馬一頭の値が違うじゃないか」と指摘されたので適正な値段で馬を貸し付ける。
アキームはラドウィンとミルランスから文字の読み書きを教わっていた。
つまらないものだと思っていたが、予想外の所で役に立つものだとアキームは思いながら馬に乗ろうとする。
ところが、まだ子供のアキームにとって馬は背が高く、なかなか乗れない。
見かねた馬が前足を折り畳んでわざわざ乗せてくれたくらいだ。
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地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
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