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第1章 狼男が鳴く夜に
第13話 犯人は一体どこに?
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「お、終わった……」
ひたすら似顔絵を描いて描いて描きまくる生活を送る事三日。最後の一枚を描き上げたウチは、そのまま机の上に突っ伏した。
寮にも帰して貰えず、たまの差し入れを主食とし、睡眠も椅子で仮眠を摂るだけという地獄の日々。それが、やっと、終わりを告げたのだ。
「いやぁ、お疲れ様」
その声に顔を上げると、ウチをこんな地獄に突き落とした張本人である白川さんが涼しい顔で今描き上がった似顔絵を手に取り、眺めていた。悪びれた様子の全くないその態度に心の底から怒鳴り付けてやりたいと思うけど、今はその気力も沸かない。
「……うーん……でも……これは困った事になったねぇ」
と、不意に、白川さんが少し難しい顔になった。神経がささくれ立ってるウチは、そんな白川さんをギロリと睨み付ける。
「何か!? ウチの似顔絵に文句でも!?」
「いや、君の絵にはこれでも全幅の信頼を置いてるんだけどね。だからこそ困ったんだよ。……あの会社の社員の中に、モノノ怪はいない」
「は?」
けれど返ってきた予想外の返事に、ウチは思わず間抜けな声を出してしまった。社員の中に……モノノ怪がいない?
「どういう事ですか? それ」
「君の描いた似顔絵の中には、狼男はおろか、人間と解離した見た目の者は誰もいなかった。つまり、全員人間だって事」
「はああああっ!?」
告げられた衝撃的な結論に耐え切れず、ウチは疲れも忘れて椅子から立ち上がった。そ、それじゃ、ウチの三日間は全部無駄だったって事ぉ!?
「ど、ど、ど、どうしてくれるんですかあっ! ウチの三日間返して下さいよぉ!」
「落ち着いて、毛虫ちゃん」
「これが落ち着いてられますかっ! ウチの三日間の苦労が、ぜーんぶ、水の泡になったんですよっ!?」
「いや、まだそうと決まった訳じゃない」
「へ?」
珍しく真剣な顔を保ったままの白川さんの言葉に、その真意が解らないウチはパチパチと目を瞬かせる。白川さんは似顔絵から目を話さず、話を続けた。
「社員が全員人間なのが証明されたお陰で、少なくとも狼男は内部の人間じゃない事が証明された。となると怪しいのは外部の人間なんだけど、この会社、終業後に清掃業者が入るらしいんだ。もしも外部の人間が毛を持ち込んだなら、その時に掃除される可能性があるよね?」
「つまり……?」
「狼男がいる、そうでなくても毛を仕込んだ誰かがいるとしたら、それは清掃業者の人間の可能性が極めて高いって事」
そう結論付けると、やっと白川さんはこっちを見て「解った?」といつもの笑みを浮かべる。ウチはただただ呆気に取られ、そんな白川さんをポカンと見つめた。
「……どうしたの呆けちゃって。若年性のボケにしても早すぎない?」
「いえ、白川さんが何だか本物の刑事に見えて……」
「君、時々人の口の悪さの事言えないよね」
とにかく、なら、ウチの尊い犠牲は必ずしも無駄じゃなかったって事だ。そう思うと、何だか安心する。
ハァ……もう絶対、こんな安請け合いはしないんだから!
「それじゃ君を一旦家まで送るから、着替えとお風呂、手早く済ませて来ちゃってね」
「はいっ! お疲れ様……え?」
白川さんが、サラリと言った一言に。すっかり役目を終えた気でいたウチは、小さく固まった。
ひたすら似顔絵を描いて描いて描きまくる生活を送る事三日。最後の一枚を描き上げたウチは、そのまま机の上に突っ伏した。
寮にも帰して貰えず、たまの差し入れを主食とし、睡眠も椅子で仮眠を摂るだけという地獄の日々。それが、やっと、終わりを告げたのだ。
「いやぁ、お疲れ様」
その声に顔を上げると、ウチをこんな地獄に突き落とした張本人である白川さんが涼しい顔で今描き上がった似顔絵を手に取り、眺めていた。悪びれた様子の全くないその態度に心の底から怒鳴り付けてやりたいと思うけど、今はその気力も沸かない。
「……うーん……でも……これは困った事になったねぇ」
と、不意に、白川さんが少し難しい顔になった。神経がささくれ立ってるウチは、そんな白川さんをギロリと睨み付ける。
「何か!? ウチの似顔絵に文句でも!?」
「いや、君の絵にはこれでも全幅の信頼を置いてるんだけどね。だからこそ困ったんだよ。……あの会社の社員の中に、モノノ怪はいない」
「は?」
けれど返ってきた予想外の返事に、ウチは思わず間抜けな声を出してしまった。社員の中に……モノノ怪がいない?
「どういう事ですか? それ」
「君の描いた似顔絵の中には、狼男はおろか、人間と解離した見た目の者は誰もいなかった。つまり、全員人間だって事」
「はああああっ!?」
告げられた衝撃的な結論に耐え切れず、ウチは疲れも忘れて椅子から立ち上がった。そ、それじゃ、ウチの三日間は全部無駄だったって事ぉ!?
「ど、ど、ど、どうしてくれるんですかあっ! ウチの三日間返して下さいよぉ!」
「落ち着いて、毛虫ちゃん」
「これが落ち着いてられますかっ! ウチの三日間の苦労が、ぜーんぶ、水の泡になったんですよっ!?」
「いや、まだそうと決まった訳じゃない」
「へ?」
珍しく真剣な顔を保ったままの白川さんの言葉に、その真意が解らないウチはパチパチと目を瞬かせる。白川さんは似顔絵から目を話さず、話を続けた。
「社員が全員人間なのが証明されたお陰で、少なくとも狼男は内部の人間じゃない事が証明された。となると怪しいのは外部の人間なんだけど、この会社、終業後に清掃業者が入るらしいんだ。もしも外部の人間が毛を持ち込んだなら、その時に掃除される可能性があるよね?」
「つまり……?」
「狼男がいる、そうでなくても毛を仕込んだ誰かがいるとしたら、それは清掃業者の人間の可能性が極めて高いって事」
そう結論付けると、やっと白川さんはこっちを見て「解った?」といつもの笑みを浮かべる。ウチはただただ呆気に取られ、そんな白川さんをポカンと見つめた。
「……どうしたの呆けちゃって。若年性のボケにしても早すぎない?」
「いえ、白川さんが何だか本物の刑事に見えて……」
「君、時々人の口の悪さの事言えないよね」
とにかく、なら、ウチの尊い犠牲は必ずしも無駄じゃなかったって事だ。そう思うと、何だか安心する。
ハァ……もう絶対、こんな安請け合いはしないんだから!
「それじゃ君を一旦家まで送るから、着替えとお風呂、手早く済ませて来ちゃってね」
「はいっ! お疲れ様……え?」
白川さんが、サラリと言った一言に。すっかり役目を終えた気でいたウチは、小さく固まった。
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