7 / 27
第3章 あなたは知っていたの?
アリア・マークヴィス、この命貴方様に捧げることを誓います。
しおりを挟む
アリアの口から”知っていた”そう聞いた瞬間に私は、アリアの服に掴みかかっていた。
「しって、いたのに。教えてくれな、かったの?」
たぶん今の私の顔はすごいことになっているだろうが、そんなことも気にしておけないほど私の頭の中は真っ白になっていた。
「…申し訳ございません」
アリアは、ただ謝ることしかできない。それもそのはず、私はこの世界に来て初めてこれほどの怒りを人にぶつけてしまった。ぶつける相手はアリアではない、アリアに当たってはいけないのにどうしても今の怒りが収まることを知らないように手に力が入る。
ふっと少しだけ冷静になっていく自分がいる。
私は少しずつ手の力を抜いていき、しばらくすると手が垂れるように手を放す。
それでも私の怒りは収まらないようで、爪が食い込むほどに私は手に力を入れてしまっているようだった。
「――!! アンナ様!! 手が!」
これほど焦っているアリアを見たことがなかった。
いつも冷静沈着で、崩れたアリアを見たことがなかった。私がけがをしているところを見てこれだけ心配してくれている。そんな人が、わざわざこんな面倒なことをするだろうか。
「ごめんなさいね、あなたに当たっても意味などないのに…」
俯く。ドレスを手で握り、手に握っていたドレスはすでに血だらけでポトっと床に血が垂れている。
お気にいりのドレス、そんなこと考える暇なんてない。信じていたものに裏切られる。ただそれが私の怒りの原因であり、心が痛い原因である。
ふと、”復讐”そんな言葉が頭に思い浮かぶ。
前世ではそんなこともできずに死んでしまった。今は? 事故などこの世界ではありえず、私は多くの人々によって守られている。
前世の鬱憤もこの世界なら晴らせるのでは? そんなことを考えてしまう私に自己嫌悪を抱くが、それでもこの怒りが収まるなら。目の前にいるアリアの心の霧を晴らせるのなら。
今回は私一人だけでなく、私を好いてくれているアリアにも心配を与えてしまった。
許せない。そんな感情が怒りを支配するように渦巻いていく。きっと今の私はとても怖い顔をしていることだろう。
「アリア、ハンカチをくれる?」
「――!? ハッ!」
素早くアリアはハンカチを取り出し私に手渡してくれる。だが、手渡した時のアリアの手は震えていた。
「心配をかけたわね」
ハンカチで出血している部分をふき取ると、まだ滲んでは来るがそっと離しアリアの胸の部分に押し付ける。
「アリア、私は今とても悔しいわ」
「…はい…」
アリアは静かに受け取ると、俯いてしまう。
「私一人だけでなく、あなたにまで心配を、そして怒りをぶつけてしまった私に自己嫌悪を感じてしまう」
「そんな! それは私が悪かっ――」
「それ以上は言わないで頂戴。余計に自分に怒りが湧いてしまうわ」
「…はい…」
アリアは、手の震えが体に伝わったかのように全身小刻みに震えだす。
「だからね、あの浮気男にぶつけようと思うのよ」
アリアは俯いていた顔を勢いよく上げて私を見る。
ふふふ、ものすごい顔。こんな驚いているアリアを見るのは生まれて初めてだわ。
「あなたはついてきてくれるわよね?」
私は今できる限りの微笑みをアリアに向ける。
アリアは、瞳から一線の涙を流し、すぐに膝を付けその涙を床にたらしながら、それでもなおその姿に合わない力強い声で言った。
「アリア・マークヴィス、この命貴方様に捧げることを誓います」
おまけ
馬車に乗り込んだ私だったが、扉が閉まる前にアリアに一言言った。
「手が痛いわ。ハンカチまた貸してくれないかしら?」
「ふふ、はい」
「ムツ! 笑わないでよ、アリア!」
「しって、いたのに。教えてくれな、かったの?」
たぶん今の私の顔はすごいことになっているだろうが、そんなことも気にしておけないほど私の頭の中は真っ白になっていた。
「…申し訳ございません」
アリアは、ただ謝ることしかできない。それもそのはず、私はこの世界に来て初めてこれほどの怒りを人にぶつけてしまった。ぶつける相手はアリアではない、アリアに当たってはいけないのにどうしても今の怒りが収まることを知らないように手に力が入る。
ふっと少しだけ冷静になっていく自分がいる。
私は少しずつ手の力を抜いていき、しばらくすると手が垂れるように手を放す。
それでも私の怒りは収まらないようで、爪が食い込むほどに私は手に力を入れてしまっているようだった。
「――!! アンナ様!! 手が!」
これほど焦っているアリアを見たことがなかった。
いつも冷静沈着で、崩れたアリアを見たことがなかった。私がけがをしているところを見てこれだけ心配してくれている。そんな人が、わざわざこんな面倒なことをするだろうか。
「ごめんなさいね、あなたに当たっても意味などないのに…」
俯く。ドレスを手で握り、手に握っていたドレスはすでに血だらけでポトっと床に血が垂れている。
お気にいりのドレス、そんなこと考える暇なんてない。信じていたものに裏切られる。ただそれが私の怒りの原因であり、心が痛い原因である。
ふと、”復讐”そんな言葉が頭に思い浮かぶ。
前世ではそんなこともできずに死んでしまった。今は? 事故などこの世界ではありえず、私は多くの人々によって守られている。
前世の鬱憤もこの世界なら晴らせるのでは? そんなことを考えてしまう私に自己嫌悪を抱くが、それでもこの怒りが収まるなら。目の前にいるアリアの心の霧を晴らせるのなら。
今回は私一人だけでなく、私を好いてくれているアリアにも心配を与えてしまった。
許せない。そんな感情が怒りを支配するように渦巻いていく。きっと今の私はとても怖い顔をしていることだろう。
「アリア、ハンカチをくれる?」
「――!? ハッ!」
素早くアリアはハンカチを取り出し私に手渡してくれる。だが、手渡した時のアリアの手は震えていた。
「心配をかけたわね」
ハンカチで出血している部分をふき取ると、まだ滲んでは来るがそっと離しアリアの胸の部分に押し付ける。
「アリア、私は今とても悔しいわ」
「…はい…」
アリアは静かに受け取ると、俯いてしまう。
「私一人だけでなく、あなたにまで心配を、そして怒りをぶつけてしまった私に自己嫌悪を感じてしまう」
「そんな! それは私が悪かっ――」
「それ以上は言わないで頂戴。余計に自分に怒りが湧いてしまうわ」
「…はい…」
アリアは、手の震えが体に伝わったかのように全身小刻みに震えだす。
「だからね、あの浮気男にぶつけようと思うのよ」
アリアは俯いていた顔を勢いよく上げて私を見る。
ふふふ、ものすごい顔。こんな驚いているアリアを見るのは生まれて初めてだわ。
「あなたはついてきてくれるわよね?」
私は今できる限りの微笑みをアリアに向ける。
アリアは、瞳から一線の涙を流し、すぐに膝を付けその涙を床にたらしながら、それでもなおその姿に合わない力強い声で言った。
「アリア・マークヴィス、この命貴方様に捧げることを誓います」
おまけ
馬車に乗り込んだ私だったが、扉が閉まる前にアリアに一言言った。
「手が痛いわ。ハンカチまた貸してくれないかしら?」
「ふふ、はい」
「ムツ! 笑わないでよ、アリア!」
0
あなたにおすすめの小説
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
【完】王妃の座を愛人に奪われたので娼婦になって出直します
112
恋愛
伯爵令嬢エレオノールは、皇太子ジョンと結婚した。
三年に及ぶ結婚生活では一度も床を共にせず、ジョンは愛人ココットにうつつを抜かす。
やがて王が亡くなり、ジョンに王冠が回ってくる。
するとエレオノールの王妃は剥奪され、ココットが王妃となる。
王宮からも伯爵家からも追い出されたエレオノールは、娼婦となる道を選ぶ。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画
及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。
【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】
姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。
双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。
だが、この公爵家、何かおかしい?
異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。
一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。
ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳
バーディナ伯爵家令嬢
✖️
ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳
キングスフォード公爵
ブックマーク登録、いいね❤️、エール📣たくさんいただきありがとうございます。
とても励みになります。
感想もいただけたら嬉しいです。
地味で結婚できないと言われた私が、婚約破棄の席で全員に勝った話
といとい
ファンタジー
「地味で結婚できない」と蔑まれてきた伯爵令嬢クラリス・アーデン。公の場で婚約者から一方的に婚約破棄を言い渡され、妹との比較で笑い者にされるが、クラリスは静かに反撃を始める――。周到に集めた証拠と知略を武器に、貴族社会の表と裏を暴き、見下してきた者たちを鮮やかに逆転。冷静さと気品で場を支配する姿に、やがて誰もが喝采を送る。痛快“ざまぁ”逆転劇!
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
いや、無理。 (本編完結)
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。
一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。
もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、
「わかってくれるだろう?ミーナ」
と手を差し伸べた。
だから私はこう答えた。
「いや、無理」
と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる