婚約者の浮気現場を目撃してしまったので、叩き潰して差し上げます!!

ジニス

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第3章 あなたは知っていたの?

アリア・マークヴィス、この命貴方様に捧げることを誓います。

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 アリアの口から”知っていた”そう聞いた瞬間に私は、アリアの服に掴みかかっていた。

「しって、いたのに。教えてくれな、かったの?」

 たぶん今の私の顔はすごいことになっているだろうが、そんなことも気にしておけないほど私の頭の中は真っ白になっていた。

「…申し訳ございません」

 アリアは、ただ謝ることしかできない。それもそのはず、私はこの世界に来て初めてこれほどの怒りを人にぶつけてしまった。ぶつける相手はアリアではない、アリアに当たってはいけないのにどうしても今の怒りが収まることを知らないように手に力が入る。
 ふっと少しだけ冷静になっていく自分がいる。
 私は少しずつ手の力を抜いていき、しばらくすると手が垂れるように手を放す。
 それでも私の怒りは収まらないようで、爪が食い込むほどに私は手に力を入れてしまっているようだった。

「――!! アンナ様!! 手が!」

 これほど焦っているアリアを見たことがなかった。
 いつも冷静沈着で、崩れたアリアを見たことがなかった。私がけがをしているところを見てこれだけ心配してくれている。そんな人が、わざわざこんな面倒なことをするだろうか。

「ごめんなさいね、あなたに当たっても意味などないのに…」

 俯く。ドレスを手で握り、手に握っていたドレスはすでに血だらけでポトっと床に血が垂れている。
 お気にいりのドレス、そんなこと考える暇なんてない。信じていたものに裏切られる。ただそれが私の怒りの原因であり、心が痛い原因である。

 ふと、”復讐”そんな言葉が頭に思い浮かぶ。
 前世ではそんなこともできずに死んでしまった。今は? 事故などこの世界ではありえず、私は多くの人々によって守られている。
 前世の鬱憤もこの世界なら晴らせるのでは? そんなことを考えてしまう私に自己嫌悪を抱くが、それでもこの怒りが収まるなら。目の前にいるアリアの心の霧を晴らせるのなら。

 今回は私一人だけでなく、私を好いてくれているアリアにも心配を与えてしまった。

 許せない。そんな感情が怒りを支配するように渦巻いていく。きっと今の私はとても怖い顔をしていることだろう。

「アリア、ハンカチをくれる?」
「――!? ハッ!」

 素早くアリアはハンカチを取り出し私に手渡してくれる。だが、手渡した時のアリアの手は震えていた。

「心配をかけたわね」

 ハンカチで出血している部分をふき取ると、まだ滲んでは来るがそっと離しアリアの胸の部分に押し付ける。

「アリア、私は今とても悔しいわ」
「…はい…」

 アリアは静かに受け取ると、俯いてしまう。

「私一人だけでなく、あなたにまで心配を、そして怒りをぶつけてしまった私に自己嫌悪を感じてしまう」
「そんな! それは私が悪かっ――」
「それ以上は言わないで頂戴。余計に自分に怒りが湧いてしまうわ」
「…はい…」

 アリアは、手の震えが体に伝わったかのように全身小刻みに震えだす。

「だからね、あの浮気男にぶつけようと思うのよ」

 アリアは俯いていた顔を勢いよく上げて私を見る。
 ふふふ、ものすごい顔。こんな驚いているアリアを見るのは生まれて初めてだわ。

「あなたはついてきてくれるわよね?」

 私は今できる限りの微笑みをアリアに向ける。
 アリアは、瞳から一線の涙を流し、すぐに膝を付けその涙を床にたらしながら、それでもなおその姿に合わない力強い声で言った。

「アリア・マークヴィス、この命貴方様に捧げることを誓います」







おまけ

 馬車に乗り込んだ私だったが、扉が閉まる前にアリアに一言言った。

「手が痛いわ。ハンカチまた貸してくれないかしら?」
「ふふ、はい」
「ムツ! 笑わないでよ、アリア!」


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