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第一章 魔王様、少年期をお過ごしになる

9 魔王様、おっぱいは裏切らない事をお知りになる

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七夕が終われば夏休みが来る。
とは言え、お盆の間は寺も忙しい。
墓参りの参拝者が毎日訪れるのだ。

そして七夕が過ぎた頃、我は僧籍を得た。
この夏から本格的に袈裟を着て御経を唱えることになるのだ。

お披露目として袈裟に身を包んだ我を見た聖女は、顔を真っ赤に染めていた。
そしてミユはスマホを手に「眼福じゃぁあああ!」と叫びながら写真を撮りまくった。


「ユウかっこいいな!」
「はぁ~~……美坊主になるわ、絶対なるわ」
「お褒めの言葉ありがとう御座います」
「祐ちゃん格好いいよ!」
「褒めてもキスしか出ませんよ?」


聖女の唇に人差し指をつけて口にすると、耳まで赤くなって硬直してしまった。
我には人を魅了する何か出ているのだろうか?
だが真っ赤になったまま硬直する聖女は愛らしい、このまま食べてしまいたいくらいだ。


「はいはいご馳走様、そう言えば宿坊の話はどうなったの?」
「そうでしたね」


そう、七夕から数日後――祖父に宿坊をしてはどうかと我から提案したのだ。
すると祖父は我が僧籍を取ったら宿坊を作ろうと決めていたらしく、最近は宿坊施設を作る為に色々と動き回っている。
もう使われていない納屋を建替えて、そこに宿坊を建てようと決まったらしい。

その為、我の修行は更に激しくなったと言えよう。
家にいる間のほぼ全てを跡継ぎとしての修行に使っているのだ。

しかし、祖母と母の強い抗議もあり多少は自由に動ける時間は用意して貰った。
その時間はこうやって聖女と共に過ごせる時間に全て使うわけだが、家族全員承知しているので問題は無い。


将来の嫁は若いうちから掴まえておかねば……。


「なのでお彼岸過ぎた頃から色々と宿坊に関しては進むようです。少なくとも来年の春くらいには宿坊も出来るでしょう」
「予約しないと泊まれないんだっけ?」
「ええ、そうですね。断食をするかどうかで父と祖父が話し合いをしましたが、精進料理を食べていただくと言うことで事なきを得ました。この辺りはお寺で色々と違いますから」
「なるほどねぇ……」


寺にも色々とあるのだ。
宗派の違いでも全く変ってくるのだから、覚える事は兎に角多い。
眠っていても目の前に文字がフワフワと浮いてくるほど、我も少々疲れているようだな。


「ユウ、本当に最近疲れてんだな……大丈夫か?」
「ええ、夏バテもあるのでしょうが、やはり覚えることが多くて」

おお、アキラよ。我を心配するとは褒めてやろう。
何時も「宿題忘れてきた~」だの「ノート写させてくれ~」と頼むことも、今の瞬間無しにしてやりたくなったほどだ。


「そんな祐一郎君にはご褒美が必要だね! ってことで……年上のお姉さんの胸に抱きついてみな~い!?」
「申し訳ありません。袈裟を着て居る時は仏に仕えているのだと思っておりますので、あり難い申し出ですが今はお断りさせて頂きます」
「ストイック~!」
「でも、祐ちゃんも疲れてるなら少しは甘えていいんだからね?」


心配してくれる聖女に我は心が感涙しそうになる、無論表情は何時もと変らぬのだが。

「甘え……ですか」
「そうだよ! 昔はよく甘えてくれてたのに、いつから甘えなくなったんだろう?」
「無意識でしたね……では袈裟を脱いでくるので少々お待ち下さい」


そう言うと我は袈裟を脱ぎ、何時もの作務衣に着替えると境内で涼んでいる三人の元へと向かった。
が――眠っていた勇者が起きていたようで会話に参加しているようだ。


「お帰りなさい」
「ただ今戻りました」
「やっぱりそっちの格好のほうがシックリ来るね」
「幼い頃から作務衣でしたからね」


それでも日々成長はしているようで、昔よりもサイズは大きくなった。
背丈も伸びてきたし、聖女を追い抜くのも時間の問題だろう。


「祐ちゃん」
「はい?」


返事をすると同時に、顔面に柔らかい二つの山……いや、谷間に顔が埋まった。
……おぉ、コレは素晴らしい。
両方から柔らかいナニカに包まれ、更に聖女の香りが堪能できる。
俗世から離れて僧侶になったというのに、まだまだ欲にまみれている自分を否応無しに感じてしまう。


「何時も気を張りつめてたら、身体壊れちゃうよ?」
「そうですね、ええ、その様です。なので会う度にこうして頂けると多少力が抜けます」
「じゃあそうするね!」
「おにいちゃんずるい――!!」

我の足を踏みつけながら文句を言う勇者。
だがココは渡さぬ。
この柔らかさ、断じて渡すわけにはいかぬ!


「小雪ちゃんはお姉さんで我慢しよう~!」


そう言ってミユが勇者を抱きしめ顔を谷間に埋めると、勇者からは「おおぉぉ……」と感動する声が聞こえて来た。
勇者よ、揉もうとするんじゃない。
ワキワキと動く手がいやらしいぞ、もっと女であることに自覚を持て。


しかし――。


「恥ずかしいですが、懐かしいですね」
「そうだね」
「ユウが羨ましい」
「この場所は渡しませんよ」
「デスヨネ」


聖女に抱きつきアキラを牽制すると、アキラは諦めた様子で苦笑いしていた。


筋肉は裏切らない。
これは正にその通りだと思う。

だが、おっぱいも裏切らない。
それを改めて自覚した、まさに大収穫だ。


魔王城にいる時は、どこを隠しているのか隠していないのか分らない女の魔物たちが城内をうろついていても見向きもしなかったというのに、聖女の胸はなんと清らかで美しく柔らかく香りが良いのだ。

口には決して出さないが、アキラのおっぱい好きは理解できるな。
確かに無いよりあったほうが断然良い……。
これからは遠慮なく抱きつこうと決めた。


その後、聖女たちが帰宅し鐘付きを終えるまで勇者は手をワキワキさせて放心状態だった。
余程良い弾力だったのだろう、声を何度掛けても反応が無いので頭に手刀打ちするとやっと現実世界に戻ってきたようだ。


「聖女様は!?」
「もうお帰りになりました。何時まで呆然としているおつもりです。愛しい聖女の前で他の女性の胸に顔を埋め雄叫びに近い声を上げて手をワキワキさせるなど……勇者にあるまじき行動だと思いますし、女性としてアウトです」
「私はそんなことはっ!」
「してました」


まるで衝撃の事実みたいな顔をしないで頂きたい。
軽く言葉で蹂躙してやろうかと思ったのだが――。


「魔王よ!」
「何です」
「……おっぱいとは素晴らしいな」


しみじみと口にする勇者に、思わず我も頷いた。
アレは実に良いものだ。
その後、晩御飯に呼ばれるまで我と勇者は鐘打ち堂でおっぱいについて熱く語り合ったのだった。
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