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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

88 魔王様、学校生活に不安を抱く。

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学校生活にも早々になれた頃、学級委員の魔法使いは少しだけ頭を悩ませていた。
学級委員の仕事は多い、生徒たちを静かにさせて議題の話し合い等もあるのだが――まぁ、小学校から中学生に上がったばかりの生徒が静かにするはずもなく、担任は呆然と騒いでいる姿を見るだけで注意もしない。
ともなると、負担は学級委員に押し付けられる。
押し付けられるが――何度「静かにして下さい」と言っても静かにならない為、最早注意する気も失せたようだ。

責任感のある者を学級委員にすればよかったのだろうが、担任は見た目だけで選んだのだろうが――魔法使いは冷めている。
静かになろうがなるまいが淡々と進めて「では終わりまーす」と告げるだけなのだが、その日は担任の虫の居所が悪かったようで、魔法使いともう一人の学級委員、そして生徒にキレた。


「学級委員は皆を静かにさせてから議題に望め!! お前たちも静かにしろ!!」


今まで傍観を続けていた担任のブチ切れに生徒たちはクスクス笑っている。
そもそも、キレるくらいなら最初から手伝えば済むだけの話である。
サルが大量にいる中で、日本語の通じないサルに何を言っても無駄なのだから。

今回のクラス担任は正直【ハズレ】と言われている先生で、中々仕事をしない事で有名らしく、その癖キレる時はキレて騒ぎ立てるので有名らしい。
怒鳴り声は他のクラスにも聞こえ始めたようで、別のクラスや別クラスの担任まで様子を見に来ているようだ。


「そもそも鬼塚!! お前はやる気があるのか!!」
「っていうけど、やる気がある人間を選ばなかったのがそもそもの間違いだと思いますよ? 僕やる気ありませんし、でも選んだのは先生ですよね? 先生のミスじゃないですか?」
「口答えをするな!! 大人の言う事を聞け!!」
「サルに日本語喋っても通じないから放置してるだけですよ。僕に怒鳴るのもお門違いでは?」


この一言にクラスの女子が切れた。
まぁ、一番騒いでいたのがクラスの女子なので、サル呼ばわりされて頭に来たのだろう。
しかし、魔法使いの言い分も分かる。


「人間ってのはね、静かにしろって言われたら静かにするんですよ。こいつら言っても喋り続けるし、サルですよ? サルに何を教えるって言うんですか? 日光にでも連れて行って調教して貰った方がまだマシなレベルですよ?」
「お前は……っ」
「それに、僕は仕事はしています。怒鳴られることはしてませんし、ただ呆然と傍観してた先生こそ執務放棄じゃないんですか?」
「このっ」
「それは言えていますね。ずっと傍観していたのに行き成りキレられてるこちらの身にもなって頂きたい」


そう助け舟を出すと担任は目を血走らせながらこちらを見た。


「そもそも議題は終わりました。終わったところで騒ぎ立てても意味は無いでしょう? 一体先生は何がしたいんです?」
「このっ……お前たちは先生を愚弄するのか!」
「え、愚弄されるような事をなさっていたんですか? 自覚はあったんですね」


微笑んでそう言うと、魔法使いは我に微笑み「なるほどー」と口にした。


「執務放棄な上に愚弄されるような事をしてたと言うのは、担任としてどうなんですかー? 恥ずかしいと思いますし、大人の言う事って執務放棄して愚弄することが大人の仕事なんですか?」
「もういい!! お前たちには何を言ってもわからん!」
「私たちは先生ではないので分かりかねますね」
「わかんなーい」


そう言うと担任は教室を飛び出し、他の先生が入ってくると溜息を吐きながら「お前たちも静かにするときはしなさい」と諭しつつ、「担任がアレだと苦労するな」と労いの言葉を貰った。
此方が入手した情報では、女子生徒には甘く、男子生徒にはとても厳しいのだという事と、執務放棄が激しく、急にキレる担任である――と言うことだ。
前回三年生を受け持っていた際にも問題を起こしたらしく、今回問題を起こせば学校から入れなくなるだろうという情報だが……。


「正直、担任が担任の仕事をしないので、副担任の先生に今後をお願いしたいくらいですよ」
「だろうなぁ……。俺からも職員会議の時に伝えておこう」
「まともに中学時代を送れそうにありませんからね。スタートダッシュでつまずくのは宜しくない」
「そうだな……」


こうして教師不在のまま予鈴は鳴り、そのまま普段ならばホームルームに入るのだが、担任が居ない為どうしようもない。
隣の担任の先生が代わりにホームルームを済ませてくれたが、これでは先が思いやられる。
取り敢えず、我たちの中学校生活が序盤からこれでは、今後どうなるのか分からない。

それから数日後、職員会議が行われたようで、担任だけでは不十分と言う結果に終わったらしく、後ろに副担任がついての授業と言う結果に落ち着いた。
卒業するまでは、副担任も後ろの席で仕事をしながら様子をみてくれるらしいが、果たしてそれがどうなるかは不透明だ。
癒着と言うものもある。
だが、それを予防するために隣のクラスの担任も様子を見てくれるという事になっている為、現在担任は否応なしに働かねばならず、呻き声をあげることも度々ある。

精神状態が不安定なのは否めないが、これでまともに我たちが学校生活を送れるのかどうかは疑問だ。

この話は各生徒から親に連絡が行き――緊急の保護者会議が開かれる事となった。
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