石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
90 / 106

90 幾ら可愛くても腐ってもモンスター。慈悲は無いのである。

しおりを挟む
 それにしても本当に元シャース王国の英雄召喚はクソだったわ。

 そんな悪態を心でつきつつ二号店へと帰りつき、午後は女性のお客様の悩みを聞きつつアイテムを手渡し、膏血契約を進めたそれから数日後――ついに金鉱山に住み着いていた魔物を撃破し、金鉱山を取り戻したと言う情報が真っ先に念話にてお爺ちゃんから連絡!
 ダイヤ王国及びノシュマン王国の魔物討伐隊員及び冒険者、双方に甚大な被害なしと言う連絡は直ぐに二号店にいた皆に話し喜び合った。

 それから数時間後、同時に二つの国で【宝石の国ダイヤ王国を庇護するレジェンドモンスター様達の活躍により、ダンジョン鎮静化及び金鉱山を取り戻す!】と言う号外が出され、国民達は喜びに沸いた。
 ホッと一安心したと同時に凱旋が行われる事となったのだが、レジェンドモンスターであるお爺ちゃん達は参加しなかった。
 理由はただ一つ。


「ユリユリ~~。わしゃ沢山働いたぞぉ~?」
「お爺ちゃん? 私の身体は一つしかないのよ?」
「ボクモ タクサン ハタライタカラ アーン シテホシイナ~?」
「タキちゃ~ん? 何度も言うけど私の身体は一つしかないのよ?」
「ヌシよ。我の腹も撫でるがいい」
「ハク、もう少し小さくなれない?」
「ボクハ プラチナコウセキガ ダイスキヨ♪」
「うん、岩田も沢山食べてね!」


 と、レジェンドモンスター達に群がられて一匹ずつにカップケーキをアーンしている所である。
 陛下からは是非凱旋に出て欲しいといわれたものの、皆は「凱旋よりも甘えたい!」と言う確固たる意志の元、この有様である。
 この日の女性客のお越しはキャンセルして頂いた。
 何せ私が動けないのだから仕方ない。


「なんていうか……レジェンドモンスターにこれでもかと甘えられるユリを見ると」
「美しい姉様に群がる獣たち……」
「ドマ、間違ってはいないけど、相手は伝説級のモンスターだよ。しっかりして」
「いや、ドマの言う事は間違っていない。それにレジェンドモンスターだが可愛いぞ」
「兄上、元魔物討伐隊の魔物の悪魔の言うセリフではありませんよ」
「私もモフモフしたいなー」
「今は止めましょう。殺されます」
「ああ、ラフィはストップだ。今はエンジュですら危険だとアタシでも思うよ」


 そう言われながら見守られる私……。
 既にカップケーキはお爺ちゃん50個。タキちゃん30個。ハク90個食べきっている。
 そろそろ腕が限界だわ。


「も――ダメ! 腕が限界!!」
「お膝争奪戦じゃ――!!」
「もおおおおお好きにして!!」
「ユリ――!!」
「姉上――!!」


 ミモザさんとセンジュ君の悲痛な叫びが飛び出したけど、私は大の字になって好きにさせることにした。
 ハクは赤ちゃんの姿になってくれたので助かったが、みんな私にピッタリ身体を引っ付けて至福時間を過ごしている。
 この邪魔をしたら誰であろうと殺されるだろう。


「可愛い魔物に群がられたユリが可愛すぎる!!」
「姉様最高です!!」
「お姉ちゃん羨ましいわ!!」
「そこの三人、顔を洗って目を覚ましてきな」
「姉上大丈夫……ですか?」
「今この子たちを刺激しないで上げて……きっと怪我では済まないわ」


 そう言うと流石に私たちを避けて皆は歩いてくれたので良かった。
 スギは何が起きているのか分からず「兎に角すごいの?」とミモザさんに聞いていて、「今は近寄らないようにね?」と注意を受けていた。
 そんな中スキル上げをするのだから命知らずと言うか豪快というか。


「は――……ワシ等は疲れたわい」
「シバラク タタカイタクナイネ」
「我は少し物足りなかったがな」
「良く言うわい。ドラゴンブレスを避けきれずタキの結界が無ければ危うかったであろう」
「そう言うスリルも無ければ戦闘とは呼ばぬ」
「血の気の多い奴じゃのう……若い証拠じゃ」
「結局岩田のアダマンタイトでの串刺しで死んだではないか。それでも最後に動いた瞬間はミスリルの槍が大量に突き刺さり、死んだ姿は悍ましかったぞ」
「イチバン イワタガ ツヨカッタネ」
「半数の敵を吸収して溶かして殺し、オリハルコンで叩き潰して殺し……見ておれんかったわ」
「バーン♪ ノ ジュワーン♪ ノ プチーン♪」
「凶悪ね……」
「魔物討伐隊と冒険者の多くが岩田の攻撃を見て尿を漏らしておったわ」


 想像したくないけど想像できる……。
 可愛い言い方をする岩田だけど、スキルを見てやり方はとってもエゲツナイとは思ってた。
 実際えげつなかったんだろうな。


「デモデモ♪ オカゲデ イチバンオオキナドラゴン モラエタネ♪」
「え!?」
「金鉱山ノボス♪」
「……それは城に渡さないと駄目なのでは? どうなのお爺ちゃん?」
「ワシ等もいらんからのう……。取っておいてものう」
「キネンヒン♪」
「記念品なら仕方ないか」
「記念品なら仕方ないのう」


 余り突っ込んで考えちゃ駄目だ。
 此処はフワッと流そう。そう、フワッとね。
 思わず溜息が零れたけれど、うちの子達はそれぞれ個性的だからなぁ……。
 欠伸をしながら膨れ上がったお腹を撫でろと訴えてくるハクも可愛いけど、お爺ちゃんの丸い頭も可愛らしい。タキちゃんは相変わらず小さいし、岩田はツルツルのヒンヤリだ。
 その日一日、床に寝転がって過ごした訳だけど、誰も文句を言わなかったし、言える雰囲気ではなかったので良かったんだろう。

 その後、最後のミーティング前にようやく起きだし、ドマと私と魔物たちで移動してアイテムが少なくなっている倉庫にアイテム生成して追加をしながら回って行き、全部終わる頃にはタキちゃんが分裂して掃除開始。
 岩田も抱っこして欲しいみたいだけど、それに気づいたエンジュさんが岩田を抱っこしてミーティングに参加。岩田は幸せそうだった。


「――と、明日はなっております。また眼鏡屋の方も眼鏡とサングラスを随時追加で入れている最中で、庶民は大体一人一本ずつ、少し余裕がある方々はスペアも買っておられますね。売り上げは上々です」
「また、輸出も少しずつですが進んでおりまして、ガーネットの所有する船にてノシュマン王国への輸出も順調です。海賊が出ると言う海域は避けているので、今の所は安全かと」
「最後に私からのお知らせが数点です。そちらで確認を取ってからの報告で良いとの事でしたので、ユリさんの従魔たちは貴族の社交場には?」
「「「「出ない」」」」
「分かりました。ユリさんも」
「出ないですね」
「分かりました。最後に式典には参加を」
「「「「「しない」」」」」
「畏まりました。今日の出来事も加えてお伝えしておきます」
「すみませんロザリオスさん、陛下からでしょう?」
「我が国を庇護して下さっているのですから、言う事を聞くのは国民として当たり前の事ですからね。気にしなくていいのよ?」
「ありがとう」


 こうして一日の出来事も終わり、戸締りと盗難防止を作動させて馬車に二台にわかれて一号店に戻り、出迎えてくれたカシュールさんと会話しながら男性陣は「今日ユリの周りは凄かった」と笑いあって語り合い、お爺ちゃん達は各々好きな所で寛ぎつつ、働き者のタキちゃんは分裂して掃除に洗濯に余念がない。

 暫くは冒険者ギルドも落ち着いているだろうし、ホッとできるかなと思いつつも、数年は掛かると言われていた沈静化に成功し、後はノヴァが元シャース王国を作るのか否かに掛かってくる。
 それに、金鉱山を開放したとなれば鉄の国サカマル帝国も黙ってはいないだろう。
 お爺ちゃん達が苦労して奪還した所を横から搔っ攫う真似をしたら、間違いなくうちの子たちに鉄の国サカマル帝国は滅ぼされる事になる。
 暫くは様子を見るしかないだろうな~と思いつつも、今もダイヤ王国とノシュマン王国は鉄の国サカマル帝国とは鎖国している状態だ。


「鉄の国サカマル帝国の様子が静かなのは不気味ですよね」
「あー確かにね。偵察部隊はいそうだけど」
「金鉱山取られたら事ですよ?」
「ソコナラ ボクガ ケッカイ ハッテキタヨ」
「あら、そうなのタキちゃん」
「ヒトモ ハイレナイネ!」
「偉いわタキちゃん! これなら暫く安全そうね!」
「入ろうとしたらどうなるんだい?」
「クモノス」
「「クモノス?」」
「ケッカイニ ヒッツイテ ウゴケナイ。プフフフフ!!」


 なるほど、水も飲めず動けずトイレも行けず……結構鬼畜な結界を張ったのね。
 そうよね、お爺ちゃん達だって苦労したんだし、それくらいはするわよね。


「財宝を守るスライムの結界に、財宝を求める人間が絡まる訳だ」
「想像しやすいですね」
「マァ ヒッツイタラ ツカマエテ クレバイイシ? ホウチシテ コロスノモ アリダヨ」


 なんだかんだ言っても、そこはモンスター。
 慈悲など無いのである。
 さて、後はどうなるか分からないけれど、数日の間に何かしら進展はあるのかしら?
 静観しつつみていようかなと思ったのは言うまでもない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...