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前編
ご
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「──いや、悪く思わんでくださいね。私らも商売なわけですよ。お得意様が淫魔のペットを所望なものでして。それもまた何の役にも立ちそうもない羽なし。きっと性奴隷にでもする気なんでしょ。まあ、買われた後のことなんて私らには関係ないですが。そういうわけで、あなたには商品になってもらいますので悪しからず」
「……ん、んー……」
「おやおや、叫び疲れてしまったようですね。猿轡も拘束もしているのに暴れるからですよ。キズモノになると価値が下がるんで、五体満足でいたければ大人しくしておいてくださいな」
「…………」
ペットショップのオーナーが矢継ぎ早に告げてくる内容を理解出来るまで、少し時間がかかった。シャッ、とカーテンが引かれて暗くなった檻の中、響くのは僕の呼吸だけ。
両手両足、言葉まで封じられてしまった僕は、ぐったりと横になることしか出来なかった。
そっか……。
僕、ペットになっちゃうんだ。リリちゃんとおそろいだね。
でも、性奴隷なんて嫌だな。痛いのかな。痛いんだろうな。一応淫魔だから勝手に濡れてくれるけど、道具みたいに使われるんだろうな。……嫌、だなぁ。
「(……リリちゃんは、どうなったんだろう。ちゃんと逃げれたのかな。優しい魔族に拾ってもらえるといいんだけど。……もしかしたら、ミラくんが拾ってくれるかも。そしたらクモリちゃんと仲良く出来るし、リリちゃんも嬉しいんじゃないかな)」
涙と唾液が音もなく落ちていく。ミラくんが助けに来てくれる、そんな都合のいいことを考えては打ち消した。だって、ミラくんは僕のことが嫌いなんだ。煩わしかった低級淫魔がいなくなって、せいせいするかもしれない。だから、可能性のない希望に縋っても無駄なんだ。分かろうよ、僕。
「──や、……て、……とは!」
「それで……、……は、……?」
不意に聞こえてきた話し声は、オーナーのものと聞いたことがない魔族のものだった。カツカツと近づいてきた靴音が檻の前で止まって、カーテンが開かれる。ぼんやりとした光の先にいたのは、ねちゃりとした嫌な笑みを浮かべたオーナーと、でっぷりとした巨大なスライムだった。
「おお……!これぞまさに、私が求めていた羽なしの淫魔!店主よ、すぐに買わせてもらうぞ」
「ええ、ええ、お買い上げありがとうございます。レルル様、ラッピングはいかがいたしましょう」
「必要ない。私のナカで飼うからな。前のペットはうっかり溶かしてしまったが、羽なし淫魔には溶解耐性があると聞いてな。これは長く楽しめそうだ」
緑色のぶよぶよが楽しそうに揺れている。溶解耐性なんて初めて聞いたけど、それがなかったら僕、骨まで溶けちゃうのかな。
その疑問を口にすることも出来ず、僕は引きずられるがままにスライムの体内へと飲み込まれていった。
「(……ミラくん、さよなら。大好きだったよ)」
【大好きな幼馴染みが僕に冷たい】
(大好きな幼馴染みはもういない)
「──いや、悪く思わんでくださいね。私らも商売なわけですよ。お得意様が淫魔のペットを所望なものでして。それもまた何の役にも立ちそうもない羽なし。きっと性奴隷にでもする気なんでしょ。まあ、買われた後のことなんて私らには関係ないですが。そういうわけで、あなたには商品になってもらいますので悪しからず」
「……ん、んー……」
「おやおや、叫び疲れてしまったようですね。猿轡も拘束もしているのに暴れるからですよ。キズモノになると価値が下がるんで、五体満足でいたければ大人しくしておいてくださいな」
「…………」
ペットショップのオーナーが矢継ぎ早に告げてくる内容を理解出来るまで、少し時間がかかった。シャッ、とカーテンが引かれて暗くなった檻の中、響くのは僕の呼吸だけ。
両手両足、言葉まで封じられてしまった僕は、ぐったりと横になることしか出来なかった。
そっか……。
僕、ペットになっちゃうんだ。リリちゃんとおそろいだね。
でも、性奴隷なんて嫌だな。痛いのかな。痛いんだろうな。一応淫魔だから勝手に濡れてくれるけど、道具みたいに使われるんだろうな。……嫌、だなぁ。
「(……リリちゃんは、どうなったんだろう。ちゃんと逃げれたのかな。優しい魔族に拾ってもらえるといいんだけど。……もしかしたら、ミラくんが拾ってくれるかも。そしたらクモリちゃんと仲良く出来るし、リリちゃんも嬉しいんじゃないかな)」
涙と唾液が音もなく落ちていく。ミラくんが助けに来てくれる、そんな都合のいいことを考えては打ち消した。だって、ミラくんは僕のことが嫌いなんだ。煩わしかった低級淫魔がいなくなって、せいせいするかもしれない。だから、可能性のない希望に縋っても無駄なんだ。分かろうよ、僕。
「──や、……て、……とは!」
「それで……、……は、……?」
不意に聞こえてきた話し声は、オーナーのものと聞いたことがない魔族のものだった。カツカツと近づいてきた靴音が檻の前で止まって、カーテンが開かれる。ぼんやりとした光の先にいたのは、ねちゃりとした嫌な笑みを浮かべたオーナーと、でっぷりとした巨大なスライムだった。
「おお……!これぞまさに、私が求めていた羽なしの淫魔!店主よ、すぐに買わせてもらうぞ」
「ええ、ええ、お買い上げありがとうございます。レルル様、ラッピングはいかがいたしましょう」
「必要ない。私のナカで飼うからな。前のペットはうっかり溶かしてしまったが、羽なし淫魔には溶解耐性があると聞いてな。これは長く楽しめそうだ」
緑色のぶよぶよが楽しそうに揺れている。溶解耐性なんて初めて聞いたけど、それがなかったら僕、骨まで溶けちゃうのかな。
その疑問を口にすることも出来ず、僕は引きずられるがままにスライムの体内へと飲み込まれていった。
「(……ミラくん、さよなら。大好きだったよ)」
【大好きな幼馴染みが僕に冷たい】
(大好きな幼馴染みはもういない)
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