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閑古鳥武器屋来客中
お菓子な妖精
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俺の名前はアルジュ。
容姿性格共に特に目立ったところがない、平々凡々な町人だ。
親父の跡を継いでペリトルスという小さな町で武器屋を営んでいるものの、まあ売れ行きはそんなに良いとはいえない。
今日も今日とて閑古鳥が鳴く店内だけど、昼も過ぎたというのに珍しくルダセイクの姿がない。…………いや、別にルダセイクが毎日ここに来なきゃいけない理由なんてないし、寧ろ最近は違う意味でテンパってばかりだったから有り難いというか。決して淋しいなんて感情は抱いていない、そんなもの浮かんですらいない。
一人きりの店内で暗示に似た自問自答を悶々と繰り返していると、ふわりと店の中で風が吹いた。
ルダセイクいわく、この風は誰かが転移してくる予兆らしい。確かに無風地帯で風なんておかしいし、意識してみるとルダセイクが現れる時はいつも風が吹いていた。程なくして現れる人影。俺はてっきりルダセイクだと思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。
だけど、俺はその人物に見覚えがあった。
「あれ。今日はルダ様いないの」
巨人のごとき背丈を持つお菓子の妖精、クーロン君。
眠たげな目で辺りを見渡してルダセイクがいないことを悟ると、クーロン君は残念そうにいつもルダセイクが座っている椅子に腰掛けた。
いや。
いやいやいやいや。
流れ的に帰るところだよね!?
何で当たり前のように座ってるんですか居座る気ですかお喋りするにしても話しかけづらいんですけど……!
こういう時こそメリダールに来てほしいのに、店の扉は動く気配すら見せない。
……そういえば、そもそもメリダールが来る頻度が最近少なくなっている気がする。いや、俺としてはこれくらいで丁度いいんだけど。うーん、道具屋の仕事が忙しくなってきてんのかな。さくさくと隣から聞こえてくる音をBGMに、そんなことを考え───……さくさく?
バッと隣を見ると、無表情でクッキーを食べているクーロン君と目が合った。……あれ、確か手ぶらだったはずなのに。
「ん、人間も食べる?」
「へっ?」
クーロン君が軽く手を振ると、ぽんっという音と共にキャンディが出現した。
それを無造作に放られて、慌ててキャッチする。え、これ貰っていいのか、な?
「あ、ありがと」
「別に礼なんていらない」
そう言うと、ふいっと視線を逸らしてしまうクーロン君。
うわー、お菓子の妖精だからこんな力を使えるのかな。菓子好きにはたまらない力だな、うん。
包装を剥がすと赤色の飴がころりと表れて、反射的にルダセイクを思い出してしまった。…………いやいや、なんて連想してんだ俺!その思考を振り払うように飴を口に含むと、苺の甘い味が広がった。妖精が出した物とはいえ、味は人間の物と変わらないんだな。
「ところでさ、人間の名前はなんつーの?」
「え、俺の?ア、アルジュだけど……」
「そ。俺はクーロン。一応お菓子の妖精」
「あ……、それはルダセイクから聞いたよ。妖精なんて初めて見たんだけどさ、あんまり見た目は人間と変わらないし背も凄く高いしでビックリしたなぁ」
「へぇ、ルダ様から……」
「そういえば、クーロン君はルダセイクの友達なんだっけ」
「クーロンでいーよ。…………そーだね、ルダ様がそう言うなら友達だよ」
「……?何でそんな言い回し……?」
「あれ、気付いてなかった?俺、ルダ様のこと好きなんだけど」
「…………………………は、い?」
「でもルダ様はずっとアルジュのことが好きでさ。それなら仕方ないなって。寂しくないって言ったら嘘になるけど、俺はルダ様が幸せになってくれれば嬉しいから。アルジュ鈍そーだからもっかい言うけど、ルダ様を幸せにしてよね」
いきなりのカミングアウトに、思考が一瞬停止する。
え、これ、どう反応すれば……!?というか、クーロンの中ではもうルダセイクと俺がこ……恋人同士だって認識されてんのかな。
うわ、どうしよう、ここで幸せにしますなんて言ったらルダセイクの告白を受け入れる形になってしまうわけで……っ?
──……よし。話題を変えよう!
「そ、それより先にさっ。クーロンから見たルダセイクの話が聞きたいなー……なんて」
「えー……。あんまり長く喋るのめんどいんだけど。……まあいいや」
超無理矢理な話題転換に何か言われるかと思ったけど、そんなこともなく。
しかも断られるのを前提で言ったのに了承されてしまった。
……や、別に聞きたくないわけじゃないけど。自分の知らないルダセイクの一面があるかもだし。好奇心というか何というか……って誰に言い訳してんだ俺は。
心の中で一人ツッコミをする俺に構うことなく、
「ルダ様はさ、俺を助けてくれたんだ」
どこか昔を懐かしむような表情で、クーロンはそう切り出した。
容姿性格共に特に目立ったところがない、平々凡々な町人だ。
親父の跡を継いでペリトルスという小さな町で武器屋を営んでいるものの、まあ売れ行きはそんなに良いとはいえない。
今日も今日とて閑古鳥が鳴く店内だけど、昼も過ぎたというのに珍しくルダセイクの姿がない。…………いや、別にルダセイクが毎日ここに来なきゃいけない理由なんてないし、寧ろ最近は違う意味でテンパってばかりだったから有り難いというか。決して淋しいなんて感情は抱いていない、そんなもの浮かんですらいない。
一人きりの店内で暗示に似た自問自答を悶々と繰り返していると、ふわりと店の中で風が吹いた。
ルダセイクいわく、この風は誰かが転移してくる予兆らしい。確かに無風地帯で風なんておかしいし、意識してみるとルダセイクが現れる時はいつも風が吹いていた。程なくして現れる人影。俺はてっきりルダセイクだと思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。
だけど、俺はその人物に見覚えがあった。
「あれ。今日はルダ様いないの」
巨人のごとき背丈を持つお菓子の妖精、クーロン君。
眠たげな目で辺りを見渡してルダセイクがいないことを悟ると、クーロン君は残念そうにいつもルダセイクが座っている椅子に腰掛けた。
いや。
いやいやいやいや。
流れ的に帰るところだよね!?
何で当たり前のように座ってるんですか居座る気ですかお喋りするにしても話しかけづらいんですけど……!
こういう時こそメリダールに来てほしいのに、店の扉は動く気配すら見せない。
……そういえば、そもそもメリダールが来る頻度が最近少なくなっている気がする。いや、俺としてはこれくらいで丁度いいんだけど。うーん、道具屋の仕事が忙しくなってきてんのかな。さくさくと隣から聞こえてくる音をBGMに、そんなことを考え───……さくさく?
バッと隣を見ると、無表情でクッキーを食べているクーロン君と目が合った。……あれ、確か手ぶらだったはずなのに。
「ん、人間も食べる?」
「へっ?」
クーロン君が軽く手を振ると、ぽんっという音と共にキャンディが出現した。
それを無造作に放られて、慌ててキャッチする。え、これ貰っていいのか、な?
「あ、ありがと」
「別に礼なんていらない」
そう言うと、ふいっと視線を逸らしてしまうクーロン君。
うわー、お菓子の妖精だからこんな力を使えるのかな。菓子好きにはたまらない力だな、うん。
包装を剥がすと赤色の飴がころりと表れて、反射的にルダセイクを思い出してしまった。…………いやいや、なんて連想してんだ俺!その思考を振り払うように飴を口に含むと、苺の甘い味が広がった。妖精が出した物とはいえ、味は人間の物と変わらないんだな。
「ところでさ、人間の名前はなんつーの?」
「え、俺の?ア、アルジュだけど……」
「そ。俺はクーロン。一応お菓子の妖精」
「あ……、それはルダセイクから聞いたよ。妖精なんて初めて見たんだけどさ、あんまり見た目は人間と変わらないし背も凄く高いしでビックリしたなぁ」
「へぇ、ルダ様から……」
「そういえば、クーロン君はルダセイクの友達なんだっけ」
「クーロンでいーよ。…………そーだね、ルダ様がそう言うなら友達だよ」
「……?何でそんな言い回し……?」
「あれ、気付いてなかった?俺、ルダ様のこと好きなんだけど」
「…………………………は、い?」
「でもルダ様はずっとアルジュのことが好きでさ。それなら仕方ないなって。寂しくないって言ったら嘘になるけど、俺はルダ様が幸せになってくれれば嬉しいから。アルジュ鈍そーだからもっかい言うけど、ルダ様を幸せにしてよね」
いきなりのカミングアウトに、思考が一瞬停止する。
え、これ、どう反応すれば……!?というか、クーロンの中ではもうルダセイクと俺がこ……恋人同士だって認識されてんのかな。
うわ、どうしよう、ここで幸せにしますなんて言ったらルダセイクの告白を受け入れる形になってしまうわけで……っ?
──……よし。話題を変えよう!
「そ、それより先にさっ。クーロンから見たルダセイクの話が聞きたいなー……なんて」
「えー……。あんまり長く喋るのめんどいんだけど。……まあいいや」
超無理矢理な話題転換に何か言われるかと思ったけど、そんなこともなく。
しかも断られるのを前提で言ったのに了承されてしまった。
……や、別に聞きたくないわけじゃないけど。自分の知らないルダセイクの一面があるかもだし。好奇心というか何というか……って誰に言い訳してんだ俺は。
心の中で一人ツッコミをする俺に構うことなく、
「ルダ様はさ、俺を助けてくれたんだ」
どこか昔を懐かしむような表情で、クーロンはそう切り出した。
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