今日も武器屋は閑古鳥

桜羽根ねね

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妖精はかく語りき

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 ──あいつ、あのナリで僕達と同じ妖精なんだってさ

 ──えー、ありえなーい

 ──あんなのと一緒にされたらたまんないわよ

 ──実は妖魔なんじゃないの?

 ──ただでかいだけで邪魔な妖魔だなんて笑えるわー


 ……こんなことを言われるのは、日常茶飯事だった。

 『妖精』らしくない体躯と力を兼ね揃えた俺は、同じ妖精達から異質の存在として扱われていた。

 まあ、別にあんななよなよした奴等を同族だと思ったことはないし、一人の方が気が楽だったからどうってことはなかった。

 今思えばただの強がりにしか聞こえないけど、当時の俺はそんな風に自分に言い聞かせていた。

 そんな膠着状況が一変したのは、日差しがきつくなってきた初夏のこと。

 俺が創ったお菓子を勝手に奪って食べた妖精が、突然苦しみ始めた。
 毒が入ってたとか言ってたけど、それが演技だってことはバレバレだった。棒読みすぎて笑えてくる。まあ、分かっていたことだけど、周りの奴等はこぞって俺を非難した。ここぞとばかりに小さな手で暴力も振るってきた。

 理不尽すぎて潰してしまいたくなったけど、ここでキレたらこいつらの思うツボなんだろうなぁと考えて耐えることにした。

 お前のせいで僕達の価値が下がるとか、さっさと消えていなくなれとか、言葉の暴力も健在だった。
 俺だっていつまでもこんな所にいたいわけじゃない。妖精は主人になってくれる人がいないと自分の生まれた地から離れることが出来ないんだから。仕方なくここに留まってるだけだ。

 言葉通り消えろというのなら……それは妖精としての生を捨てろってことなんだろう。
 俺、悪いことなんてしてないはずなんだけどな。

 不思議なことに、殴られている身体より胸の奥がずきずきと痛んだ。
 おかしいな、これまで何を言われても、何とも思わなかったのに。

 ずきずきから逃げるように身を捩ると、至近距離にいた妖精に手が軽く当たってしまった。
 本当に軽くだったのに、あからさまに泣き喚き出すそいつにうんざりする。

 うるさい。

 うるさい。

 もう、耐えるのも面倒くさい。
 いっそのこと、俺以外みんなプチッと潰したら、楽になれるのかな。

 俺はお菓子を生み出すための手に、ぐっと力を入れた。

 そして。

 まるでそのタイミングを見計らったかのように、そいつは現れた。

「醜い暴力は感心しないな」

 太陽みたいに赤い瞳と、黒い髪。狼のようなその姿から、膨大に溢れている魔力。姿を見るのは初めてだったけど、その男が『魔王様』だってことは、俺を含めた全員が一瞬で理解した。

 青くなりながらも弁明を始めた妖精達には目もくれず、魔王様は真っ直ぐな視線で俺を射抜いてきた。

「お前、名前は?」
「………………クーロン」
「そうか。私はルダセイク。今この瞬間からお前の主になることにしたよ」
「……え?」

 魔王様から発せられた言葉の意味が理解出来なくて、目が点になってしまう。
 え、魔王様が、俺の、主?

「でも……俺、他の奴等みたいに妖精らしい容姿じゃねぇし…………」
「それがどうした?私としては、背が高くて羨ましい限りだが」
「……お菓子を創ることぐらいしか出来ないし」
「私は東の国に伝わる和菓子が好みなんだ。そういった特殊な菓子も創れるのか?」
「お菓子に分類されてるなら、出来るよ」
「それじゃあ、その時はお前の力を借りることにするよ。クーロン」

 有無を言わせない魔王様の笑顔に、頷くことしか出来なくて。

 呆気にとられている妖精達を余所に、俺は小さな箱庭から解放された。

 その時感じたのは、安堵の気持ち。勿論驚きも残ってたけど、誰かに普通に接してもらったことなんてなかったから、なんだかほっとして、嬉しくなった。

 ──魔王様は言葉通り俺の力を頼ってくれて、自分が存在していてもいいんだな、って思えてきて。
 心臓の近くがほわほわとあったかくなって。そんなだから魔王様を……ルダ様を好きになるのに時間はあんまりかからなかった。

 我慢出来なくなって好きだって伝えたら、クーロンを恋愛対象としては見れないって、はっきりフラれちゃった。
 辛かったけど、まあ、結果は分かりきってたんだよね。

 ──……だってルダ様、事あるごとに人間の……、アルジュの話を嬉しそうにしてたからさ。
 そいつのことが好きだって、バレバレだったもん。
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