クラスまるごと転移したら、みんな魔族のお嫁さんになりました

桜羽根ねね

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第一部:婚姻編

⑨橙色ホーネスト

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「あーあ、スマホがあったら絶対撮ってたのに。にゃんにゃんうるさい変態もだけど、あの筋肉君のなっさけない痴態見た?やばすぎでしょ」
「ぷくく……っ、思い出させないでくださいよ」
「男として終わってますよねぇ」

 繋がったままの中紅くんを大事に抱きしめた人魚がいなくなると、ここぞとばかりに金見くん達が揶揄りだした。中紅くんは見た目だけじゃなく人柄も良くて皆に好かれているから、余計に気に食わないんだろう。
 あー……、一発殴ったら止まらないかな……。……僕のへなちょこな力じゃ無理だろうし、我が身が可愛いから動けないけど……。

 そんな自分本位で情けない僕を他所に、金見くん達に詰め寄る人がいた。橙村くんだ。

「いい加減、人のことを侮辱するのをやめたらどうだい」
「はぁ?何でそんなこと言われなきゃなんないわけ?ぼくはただ本当のことを言ってるだけだけど~?」
「悪意があるだろう。前々から思っていたけど、君は他人を見下しすぎだよ。ここではもうお金の有無なんて関係ない。いつまでも自分が上に居ると勘違いしないことだね」

 橙村くんは静かに怒っていた。琥珀くんとも中紅くんとも仲が良かったから、あんなことを言われて我慢出来なかったんだろう。……すごいなぁ、かっこいい。何も出来ずに縮こまっている自分が恥ずかしくなってくる。

「うわ……、うっざ。お前さ、何熱くなってんの?ぼくには及ばないなりに、ちょーっと顔がいいからって天狗になった?ぼくが何をしようがぼくの勝手、口出ししないでくれる?」

 金見くんにとって、そんな橙村くんの言葉は羽虫のようなものだったみたいだ。うざったいから払って、聞き入れることすらしない。……ずっとこうだったから、この先も変わることはないんだろうな。

「もういいですよねぇ?庶民と話していると頭が弱くなりそうなのでぇ」
「あっちに行きましょう、金見さん」

 取り巻きの二人が金見くんを囲んで離れていく。それ以上言い募ることはしなかった橙村くんだけど、強く握り締めている拳が痛そうで……、うわ、あれほんとに血が出てない?大丈夫?

「だーめ。そんなに力を入れたら、綺麗なお手々が可哀想だよ」
「っ……!……あ、貴方は……?」
「初めまして、僕は人狼だよ。正直者が大好きなんだ」
「う、わ……っ、なっ、舐めるのは……!」
「じっとして?癒しの魔法をかけてあげるから」

 そう言ってうっそりと微笑む人狼は、パッと見、妖艶な美女のようだった。一体いつの間に現れていたんだろう。神出鬼没の魔族が多すぎるよ。
 彼は人間ベースに狼の耳と尻尾が生えているんだけど、とにかく美麗で色気がすごい。赤い舌でチロチロと橙村くんの手を舐める姿は、まるで一枚の絵画のようだった。

「……うん、良かった。傷ひとつ残ってないよ」
「あ、ありがとう……」
「可愛いなぁ。御礼が言える子も大好き。えらいねぇ」

 赤く光るピアスが似合う、濃いグレーの狼耳がひくりと動く。ゆるりと微笑む姿は、まるで遊郭の花魁みたいだ。実際に見たことはないから、想像でしかないけど。あの金見くん達ですら、思わず見惚れてしまっている。ただ……、銅鐘くんは違ったみたいだ。

「か、金見さん、騙されちゃ駄目ですよ。人狼ってのは嘘つきなのが当たり前なんです」
「……へぇ、そうなんだ?ふーん……、じゃあ、あいつのこと好きってのも大嘘ってことじゃん」

 そういうボードゲームというか、テーブルゲーム……?があるのは僕でも知ってる。ざっくり言えば、人に紛れて殺人をしている人狼を探すゲームだったはずだ。でも、それはあくまでゲームであって、今この場に居る人狼には当てはまらない。ただの決めつけだ。

「おや、よく知っているね。そうだよ、人狼は嘘つきな生き物さ」

 それなのに、妖艶な人狼はころころと笑いながらあっけらかんとそう言ってきた。

「でもね、君のことが好きなのは本当のことだよ。僕は嘘をつくことが出来ない、はぐれものの人狼だから」
「え」

 長い指が橙村くんの頬を滑る。丸く整えられた爪はきらめいているけど、口から覗く牙はぎらりと鋭い。

「ねえ、キスをしてもいい?君からはすごく可愛くて美味しそうな匂いがするんだ。ぱくっと食べてしまいたくなるくらい、芳醇な香り……♡」
「っ、あ」

 頬から唇へとなぞられた指が、その感触を確かめるようにふにりと触れる。彼等の背景にたくさんの花が見えるのは僕だけだろうか。

「……貴方の、嫁になったら」
「ん?」
「先に嫁になっていなくなった、琥珀や中紅……、皆に会えるのか?」
「お友達思いなんだね。そういうところも好きだよ。もちろん、君が望むなら好きなところに連れて行ってあげるよ」
「……分かった」

 橙村くんは人狼の手首を柔く握ると、触れていた指を離してしまう。そして、自分から顔を寄せると、人狼のそれにぴったりと唇を重ねた。

 まさか橙村くんの方からキスするとは思わなかったから、見守っていた僕達も、キスされた当人も思わず言葉をなくしてしまう。流石橙村くん、恋愛経験が豊富だと、美人な人狼が相手でもこんなスマートなことが出来ちゃうんだな……。なんて、思っていたら。

「ふ、ふふふ。ああ、可愛い。すごく可愛い♡理由があるとはいえ、君から求めてくれて嬉しいよ。ふふ、こんなに真っ赤になっちゃって♡なんて可愛くて食べ頃なんだろう♡」
「ふ、ぁ……♡んっ、なに、これ、からだ、きもちい……♡」

 かっこよかったのが嘘のように、真っ赤に紅潮してとろとろのくたくたになってしまった。その股間は大きく膨らんでいて、人狼の手がするりと撫でていく。

「ひ、ぅ♡あ、あぁ♡まって、イく、すぐイく……っ♡」
「正直に教えてくれて偉いね♡大丈夫、恥ずかしがらずにイってごらん。君の可愛い姿、もっと見せて♡」
「んっ♡み、見せて、いいのか……♡はしたない、とこ……♡」
「もちろん♡えっちにイくイくするところ、僕に見せて……♡」
「はう♡っん、あ、ふあぁ、声っ、すき、だめ、イくっ、イぐぅ……っっ♡♡♡」

 びくんと全身を震えさせた橙村くんは、その後人狼に凭れ掛かるように倒れ込んだ。
 その身体をしっかりと受け止めながら、人狼は眩しいものを見るかのようにうっとりと目を細めた。赤くなった耳をはむりと食みながら、言葉を注ぎ込む。

「声だけで、イっちゃったの……?」
「ん、ぅ……♡それ、ぞくぞく、するから……♡」
「可愛い……♡本当に君は可愛いね……♡君のことだから、恋人がいてもおかしくないけど……、ごめんね、僕のお嫁さんになってもらうから……♡」
「ひう♡は、ぁ……っ♡♡い、いない……っ、恋人……」
「え?」
「れ、恋愛自体、よく分からなくて、キスも……、さっきのが、初めて……♡」
「え……、自分から、仕掛けておいて……?初めて?」

 小さくこくりと頷いた橙村くんは、赤くなった顔を隠すように、人狼の胸元に擦り寄った。
 ……あの、十人中十人がイケメンって答えそうな橙村くんが、恋愛関係に疎い……?さっきのが、ファーストキス?
 頭の中がはてなで埋め尽くされる。人狼はそれ以上の衝撃だったようで、ふわふわの耳や尻尾がぶわりと逆立って、ピンッと立ってしまっていた。

「かっっわい……♡♡いいよ、ゆっくりじっくり、優しく教えてあげるね♡僕のこと、もっといっぱい好きになって♡」
「んっ、ふ、あぁ……っ♡♡」

 優しく、の言葉通り、唇同士を擦り合わせるようなキスが始まる。
 これまでクラスメイトのみだらな行為を見てきておいて今更だけど、なんだかむず痒くて直視出来なかった。
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