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①ゆうしゃは つかまって しまった!
1.まおうが あらわれた
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薄らいでいた意識がぼんやりと戻ってくる。……オレは一体、何をしていたのだろうか。
……ああ、そうだ。確か、勇者を選定するという伝説の杖に選ばれてしまって……。そうして、この世界を脅かしているらしい魔王を倒す旅に出て、魔王の城まであと少しという所まで来ていたんだ。
暗い森の出口が見えて、魔王の城にしては至って小綺麗な城が視界に入って。
そして、それから、…………それから……?
「っ……!?」
「目が覚めたか?」
何かの衝撃を受けて気を失ったことを思い出して、一気に意識が覚醒する。
パッと目を開くと、見慣れない景色と見たことがない魔物の姿が飛び込んできた。思わず飛び出しそうになった悲鳴を押し込んで身構えようと……したのだが、身体の自由が利かずに不発に終わってしまう。
縛られている感触はないのに、寝かせられているベッドらしき物に縫い止められている感覚。拘束の魔法か、と歯噛みする。この魔法は万能薬で治すことが出来るが、生憎手元にはない。
……それより、拘束魔法は通常だと手や足といった一部分しか拘束出来ないはずだ。それなのに、全身を動かなくさせているこの魔力……。よく現れる魔物が使うにしては高度すぎるモノだ。
つまり、オレを見下ろしてにやついている目の前の魔物……、人間に近い姿をした青肌に赤髪の魔物こそが、
「お前が……魔王か……!」
「ほう、よく分かったな。……我の城へようこそ、勇者」
……オレはどうやら、ラスボス戦を迎えることなく、捕らわれてしまったようだ。頭から伸びる二本の角がなければ人間と勘違いしてしまいそうな外見は、予想していた魔王像とはかけ離れているが、ひしひしと感じる魔力はオレの想像を越えている。
こうなってしまった以上、覚悟を決めるしかないだろう。
「……殺すなら、さっさと殺せ」
「ふ、おかしなことを言うな。杖に選ばれた花嫁を殺すわけがないだろう?」
「………………は?」
今こいつは、何と言った?
杖に選ばれた、……花嫁?
「知らされないままのこのことやってきたのか?貴様等人間が伝説の杖と呼んでいるそれは、魔王の花嫁を選ぶ為の杖だ。まあ、貴様が嫌だと言ったとしても遅いがな」
「まっ……、待て!いくら美形と言えどもオレは男だぞ!?」
「そんなことは知っている。ふ……、相変わらず自らを美形と称しているのだな、愛らしいことだ」
「愛らしくは……っ、あるが!……ん?相変わらず、とは……、どういうことだ……?」
「千里眼で貴様のことを見ていた故、全て知っているぞ、勇者アレク。自称美形勇者、他称ナルシストバカ、好物は西の国のトレスレチェ、剣を振るうより楽器を弾く方を好んでいる……」
つらつらと語られる内容は、全て本当のことだった。俺の美貌を妬んだ、ナルシストバカなんて陰口まで知られているだなんて。
「ああ、それから。風呂の時に一番最初に洗うのは足からだな。小用を足すのが苦手で使うのはいつも個室、ほとんど自慰をしていないからか朝勃ち率が高いな。ついでに夢精も多──……」
「わあああああああ!!?おっ、おおおお前っ!!なんでそんなところまで見て……っ!!?」
「嫁のことを知りたいと思うのは当然だろう?」
「限度というものがあるだろ!!!?……というかっ、そもそもオレはお前の嫁になるつもりなどないっ!!」
「…………ほう?」
オレがそう言った途端、すっ、と部屋の空気が冷えた気がした。膨れ上がった怜悧な魔力がちくちくと肌を刺す。それこそ、魔王が手を一振りしたら絶命してしまうような、そんな感覚だ。
怖くないと言えば嘘になるが、殺される覚悟は元から出来ている。本音を押し殺した気丈な姿で、真っ直ぐ魔王を睨みつける。足掻いて命乞いするなんて、美しいオレに相応しくないからな。
「……なんだ、殺す気になったのか?」
「そんなわけないだろう。そういった強情な態度、嫌いではないぞ。……調教のしがいがあるというものだ」
そんな不穏な言葉を吐きながら、魔王はおもむろに、爆発寸前だった魔力を解放した。
……ああ、そうだ。確か、勇者を選定するという伝説の杖に選ばれてしまって……。そうして、この世界を脅かしているらしい魔王を倒す旅に出て、魔王の城まであと少しという所まで来ていたんだ。
暗い森の出口が見えて、魔王の城にしては至って小綺麗な城が視界に入って。
そして、それから、…………それから……?
「っ……!?」
「目が覚めたか?」
何かの衝撃を受けて気を失ったことを思い出して、一気に意識が覚醒する。
パッと目を開くと、見慣れない景色と見たことがない魔物の姿が飛び込んできた。思わず飛び出しそうになった悲鳴を押し込んで身構えようと……したのだが、身体の自由が利かずに不発に終わってしまう。
縛られている感触はないのに、寝かせられているベッドらしき物に縫い止められている感覚。拘束の魔法か、と歯噛みする。この魔法は万能薬で治すことが出来るが、生憎手元にはない。
……それより、拘束魔法は通常だと手や足といった一部分しか拘束出来ないはずだ。それなのに、全身を動かなくさせているこの魔力……。よく現れる魔物が使うにしては高度すぎるモノだ。
つまり、オレを見下ろしてにやついている目の前の魔物……、人間に近い姿をした青肌に赤髪の魔物こそが、
「お前が……魔王か……!」
「ほう、よく分かったな。……我の城へようこそ、勇者」
……オレはどうやら、ラスボス戦を迎えることなく、捕らわれてしまったようだ。頭から伸びる二本の角がなければ人間と勘違いしてしまいそうな外見は、予想していた魔王像とはかけ離れているが、ひしひしと感じる魔力はオレの想像を越えている。
こうなってしまった以上、覚悟を決めるしかないだろう。
「……殺すなら、さっさと殺せ」
「ふ、おかしなことを言うな。杖に選ばれた花嫁を殺すわけがないだろう?」
「………………は?」
今こいつは、何と言った?
杖に選ばれた、……花嫁?
「知らされないままのこのことやってきたのか?貴様等人間が伝説の杖と呼んでいるそれは、魔王の花嫁を選ぶ為の杖だ。まあ、貴様が嫌だと言ったとしても遅いがな」
「まっ……、待て!いくら美形と言えどもオレは男だぞ!?」
「そんなことは知っている。ふ……、相変わらず自らを美形と称しているのだな、愛らしいことだ」
「愛らしくは……っ、あるが!……ん?相変わらず、とは……、どういうことだ……?」
「千里眼で貴様のことを見ていた故、全て知っているぞ、勇者アレク。自称美形勇者、他称ナルシストバカ、好物は西の国のトレスレチェ、剣を振るうより楽器を弾く方を好んでいる……」
つらつらと語られる内容は、全て本当のことだった。俺の美貌を妬んだ、ナルシストバカなんて陰口まで知られているだなんて。
「ああ、それから。風呂の時に一番最初に洗うのは足からだな。小用を足すのが苦手で使うのはいつも個室、ほとんど自慰をしていないからか朝勃ち率が高いな。ついでに夢精も多──……」
「わあああああああ!!?おっ、おおおお前っ!!なんでそんなところまで見て……っ!!?」
「嫁のことを知りたいと思うのは当然だろう?」
「限度というものがあるだろ!!!?……というかっ、そもそもオレはお前の嫁になるつもりなどないっ!!」
「…………ほう?」
オレがそう言った途端、すっ、と部屋の空気が冷えた気がした。膨れ上がった怜悧な魔力がちくちくと肌を刺す。それこそ、魔王が手を一振りしたら絶命してしまうような、そんな感覚だ。
怖くないと言えば嘘になるが、殺される覚悟は元から出来ている。本音を押し殺した気丈な姿で、真っ直ぐ魔王を睨みつける。足掻いて命乞いするなんて、美しいオレに相応しくないからな。
「……なんだ、殺す気になったのか?」
「そんなわけないだろう。そういった強情な態度、嫌いではないぞ。……調教のしがいがあるというものだ」
そんな不穏な言葉を吐きながら、魔王はおもむろに、爆発寸前だった魔力を解放した。
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