異世界人は装備が出来ない

桜羽根ねね

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②儀式を始めました

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「えーっと……、『手コキでイかせてもらう。その間ずっとキスをしておくこと』……、…………???」

 ページを閉じた。
 なんだかとんでもない幻覚を見てしまった気がする。

 深呼吸して、もう一度。

 『手コキでイかせてもらう。その間ずっとキスをしておくこと』

「幻覚じゃなかったあぁ!えっ!?な、なな何だよこれっ!卵は!?掃除は!?なんでこんな……っ、……あ、でもこれって相手が指定されてないから、別に王子じゃなくても……」
「ほう?堂々と浮気をするつもりか」
「うわっ!」

 肩を押されて、あっという間にベッドに逆戻り。トンデモ本は手から離れて、ふよふよと宙に浮いている。そして俺の視界は、どこか不機嫌な表情の王子でいっぱいになっていた。

「う、浮気……って、だって王子は、俺みたいな伴侶は嫌なんだろ」

 それに俺だって、手コキされるなら可愛い女の子の方がいい。……いい、はずなのに、顔の良い王子が至近距離にいるからか変にドキドキしてしまう。
 これはそう、恐怖とかそういうのであって、恋のトキメキとかそういうのじゃないはず、うん。

「いつ、誰が嫌だと言った?」
「へ?言っ……てはないけど、顔見てれば分かるっていうか……」
「……」

 途端、今度は苦虫を噛み潰したような顔になった。何かを我慢しているような、そんな感じだ。

「……?王子?」
「…………グウェンだ。貴様には、そう呼ぶことを許す」
「うわー、上から……。えっと……、グウェン、っぷ」

 試しに呼んでみた瞬間、王子……グウェンとの距離がゼロになった。

 キス、されてる。
 顔がいいとはいえ、男に。

 うげぇ、と気持ち悪くなる……はずなのに、何故か逆に気持ちよく感じてしまう自分がいた。唇が触れ合ってるだけで、全身が甘く蕩けていく。

 俺は童貞だけど、キス自体は初めてじゃない。ただ、別れた彼女としたキスより、ずっと心地よくて、気がつけば流されるように目を閉じていた。

「ん……っ」
「っふ、……、……カスミ」
「っっ!!」

 掠れた声で名前を呼ばれただけで、脳がびりっと痺れた。やばい、なんだこれ、変な魔法でも使われたのか?

「んうっ!?」
「……じっとしていろ」

 少し開いてしまった口の中に、熱いモノが入り込んでくる。それと同時に柔くちんこを握られて、思わず腰が跳ねてしまった。

「ふ……っ、ん、はぁ……」

 舌、が。絡め取られて、吸われて、このまま食べられてしまいそうで。奥に引っ込めようとしても、すりすりと舌先を擦り合わされて、力が抜けてしまう。

 控えめな水音が響き出すのが、恥ずかしい……けど、ゆっくり口の中をかき混ぜられるのは、悔しいことに気持ちがいい。上顎をねっとり舐められると、ビクリと感じてしまった。

 元カノとは、こんなにねちっこいキスをしたことはなかったから……、初めての感覚に酔ってしまいそうだ。

 それと同時にちんこまで扱かれるとか、ある意味拷問な気がする。

「ん゛っ、……ひ、ぷ、……っあ♡」

 さっき射精したばかりなのに、俺のちんこはグウェンの手で簡単に勃起してしまっていた。キスよりも激しい水音が聞こえだして、顔に熱が溜まる。

 どうにか鼻で息をして耐える俺とは裏腹に、グウェンからの責めはちっとも弱まらない。ぐちゅぐちゅと咥内を暴かれて、先走りでだらだらになったそこを弄られて、こんなの、もう……、すぐに、イきそ──……。

「ひぐっ♡……ん、んん~~~っ♡♡」

 イった。
 こんなに早漏じゃないはずなのに、呆気なくイってしまった。ああ俺、クズとはいえ王子様の手を精液で汚しちゃったんだな……。

「ふ、んぅ、っ……」
「は……」

 まるで労わるようにゆるゆるとちんこを擦られた後、更に続行される深いキス。

 ……ん?あれ、もう終わった……んだよな?俺、イったし。だからキスも終わっていいはずなのに。

「むぷ、んっ、はあ……っ、ひゃめ、ぐうぇ、ん……っ」
「……っん、ふ、……」
「んうっ!」

 ぷちゅ、と離れそうになったところで、また奪われる。二人分の唾液が混じって、飲み込めない分が口の端から零れていく。

 唇も舌も痺れて、このままだと腫れてしまいそうだ。それに、2回もイったはずのちんこがまたむずむずしてきてる。やばい、色々とやばい。

 ……あんまり、痛いことはさせたくないけど。

 絡みついてくる舌を、自分から捉えて甘噛みする。怪我させない程度の強さで、かぷりと。

「──!」

 その瞬間、まるで魔法が解けたかのようにグウェンが身を離した。血の味はしないから、どうやら力加減は大丈夫だったらしい。唇から唾液が糸のように繋がって、プツリと切れる。

 お互いに、息が荒い。あれだけ嫌そうな顔をしていたグウェンは、俺と同じくらい赤くなっていた。
 そのなかでもいっとう紅い、艶めいた唇を見ていると、また手を伸ばして、味わいたくなっ──……。

 ……る、わけない!俺の思考がやばい!!いきなり過激なべろちゅーかまされて混乱してるだけだ落ち着け俺!!

「はあっ、ふ……、も、ながすぎ……、……あ、そうだ、手……っ!お、俺ので、汚れただろ」
「手……、…………」

 どこかぼんやりした様子のグウェンは、白濁に濡れた自分の手をしげしげと眺めた。いやそれ、眺めるもんでもないから。

「うわ、めっちゃ付いてる……。早く拭いて、」
「…………美味いな」
「はぁっ!?何してんだよお前っ!な、なな舐め……っ!?」

 そして舐めるもんでもないからな!?

 美味いとか馬鹿みたいなこと言ってるけど、絶対不味いだろそれ……!

「一つめの儀式は済んだ。本に二つめが現れているはずだ、確認しろ」
「は!?も、もう……!?少しは休憩挟んだ方が……」

 精液を舐める舌がえろくて、なんだか直視出来ない。つーか舐めんな。
 それも気になるけど、どうやら俺はまたあの本を確認しないといけないらしい。泣きたい。

 しぶしぶ浮いていた本に手を伸ばすと、ひとりでに寄ってきてくれた。賢者タイムに浸る暇もないまま、俺はそのページを捲った。
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