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魔王と勇者は混乱する
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「……さっきキスした時の顔」
「っんぐ」
ぽつりと呟けば、魔王が言葉に詰まりました。見上げたその表情は、さっきまでのポーカーフェイスが嘘のように崩れています。
「……っに、二連続で、顔とは。芸がないな」
「う、うるさい……!」
言い返す声音にも力がありません。
やり返すことに成功した勇者ではありますが、勇者も勇者でそんな反応を返されて照れる羽目になってしまいました。もじもじとした空気が流れます。
「と、にかく……っ、数打ちゃ当たるだろ。お前もそれっぽいこと言えよな!?」
照れを誤魔化すように勇者が指示をして、それから互いの『一番好きなところ』を言い合っていきました。淡々と、けれどもほんのり熱を込めて。
「紅くて鋭い眼」
「蜜のような金の瞳」
「でかい手の平」
「人間にしては鍛えられた身体」
「低い声」
「馬鹿な程お人好し」
「なんだかんだ人殺しはしてない」
「理性をなくした魔物しか討伐していない」
「魔法が強いとこ」
「力が強いところ」
ラリーのようにポンポンと出てくる言葉は、真実なのか嘘なのか分かりません。鏡に浮かぶのはずっとバツ、バツ、バツ。『一番』好きなところを言わない限り終わらないようです。
そして、とうとう。
バツを出し続けていた鏡に、『埒が明かないので答えを発表します』という文字が現れました。試練なのにそれでいいのかと思うかもしれませんが、女神の作ったものなので大抵がゆるゆるなのです。
「くっそ……、答え出せるんなら最初からそれでいいだろ……」
恥じらいながらそう愚痴る勇者を置いて、鏡面がゆらりと波打ちます。その一拍後、大きな鏡には勇者が寝ている姿が映し出されました。
「は……?……あれ、これってだいぶ前に泊まった宿……?」
「っ……!!それを見るな、勇者!」
「見るなって何で……、っわ!?嘘だろ、身体が動かねぇ……!?」
「っぐ……、……女神め……!!」
まるで石になってしまったかのように動けなくなった二人は、瞬きをすることも出来ないまま目の前の鏡を見ることしか出来ません。
薄暗い室内、すうすうと寝入っている勇者の元に、程なくして一人の男が現れます。白銀の長髪、赤い瞳。黒いマントを羽織った彼は、魔王その人でした。
「え」
「……」
勇者は混乱してしまいます。確かこの時は、初めて魔王と対峙した日でした。お遊びのようにあしらわれ、もっと強くなれと言い捨てられたことは今でも覚えています。そんな日の夜に魔王が寝室に忍び込んでいたなんて、初耳ですし初見です。
知らない間に何かの魔法をかけられていたのか、と思った矢先でした。
魔王の長い指が、勇者の黒髪をさらりと掬うように撫で始めました。何度も、何度も。
『ん……っ』
身じろぐ勇者は、眠っていてもその心地良さが分かるのかふにゃりと相貌を崩します。そんな彼を見下ろす魔王は、あまりにも魔王らしくない、蕩けるような笑みを浮かべていました。
映像はそこでプツリと途切れ、その代わりに文字が出てきます。
『愛らしい笑顔』
勇者も魔王も、またもやだんまりです。何をどう言えばいいのか分かりません。そんな中、再び鏡面が揺らぎました。
「っんぐ」
ぽつりと呟けば、魔王が言葉に詰まりました。見上げたその表情は、さっきまでのポーカーフェイスが嘘のように崩れています。
「……っに、二連続で、顔とは。芸がないな」
「う、うるさい……!」
言い返す声音にも力がありません。
やり返すことに成功した勇者ではありますが、勇者も勇者でそんな反応を返されて照れる羽目になってしまいました。もじもじとした空気が流れます。
「と、にかく……っ、数打ちゃ当たるだろ。お前もそれっぽいこと言えよな!?」
照れを誤魔化すように勇者が指示をして、それから互いの『一番好きなところ』を言い合っていきました。淡々と、けれどもほんのり熱を込めて。
「紅くて鋭い眼」
「蜜のような金の瞳」
「でかい手の平」
「人間にしては鍛えられた身体」
「低い声」
「馬鹿な程お人好し」
「なんだかんだ人殺しはしてない」
「理性をなくした魔物しか討伐していない」
「魔法が強いとこ」
「力が強いところ」
ラリーのようにポンポンと出てくる言葉は、真実なのか嘘なのか分かりません。鏡に浮かぶのはずっとバツ、バツ、バツ。『一番』好きなところを言わない限り終わらないようです。
そして、とうとう。
バツを出し続けていた鏡に、『埒が明かないので答えを発表します』という文字が現れました。試練なのにそれでいいのかと思うかもしれませんが、女神の作ったものなので大抵がゆるゆるなのです。
「くっそ……、答え出せるんなら最初からそれでいいだろ……」
恥じらいながらそう愚痴る勇者を置いて、鏡面がゆらりと波打ちます。その一拍後、大きな鏡には勇者が寝ている姿が映し出されました。
「は……?……あれ、これってだいぶ前に泊まった宿……?」
「っ……!!それを見るな、勇者!」
「見るなって何で……、っわ!?嘘だろ、身体が動かねぇ……!?」
「っぐ……、……女神め……!!」
まるで石になってしまったかのように動けなくなった二人は、瞬きをすることも出来ないまま目の前の鏡を見ることしか出来ません。
薄暗い室内、すうすうと寝入っている勇者の元に、程なくして一人の男が現れます。白銀の長髪、赤い瞳。黒いマントを羽織った彼は、魔王その人でした。
「え」
「……」
勇者は混乱してしまいます。確かこの時は、初めて魔王と対峙した日でした。お遊びのようにあしらわれ、もっと強くなれと言い捨てられたことは今でも覚えています。そんな日の夜に魔王が寝室に忍び込んでいたなんて、初耳ですし初見です。
知らない間に何かの魔法をかけられていたのか、と思った矢先でした。
魔王の長い指が、勇者の黒髪をさらりと掬うように撫で始めました。何度も、何度も。
『ん……っ』
身じろぐ勇者は、眠っていてもその心地良さが分かるのかふにゃりと相貌を崩します。そんな彼を見下ろす魔王は、あまりにも魔王らしくない、蕩けるような笑みを浮かべていました。
映像はそこでプツリと途切れ、その代わりに文字が出てきます。
『愛らしい笑顔』
勇者も魔王も、またもやだんまりです。何をどう言えばいいのか分かりません。そんな中、再び鏡面が揺らぎました。
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