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第二章
―vs.恋人Ⅶ―
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「改めてお疲れ様、菜奈花」
そう話しかけるのは、ルニであった。
あの後、叔母さんに心配されたが、菜奈花は友達と話し込んでしまったと誤魔化した。
実際友人と一緒にいたのは違いないので、一概には嘘とは言えないような、そんな内容であった。
そうして今は夕食とお風呂を終えた後の、自由な時間であり、いつものように菜奈花も、叔母さんも、それぞれがそれぞれの部屋に篭っていた。まだ午後八時を回って少しした程度であるのにも関わらず、リビングには既に明かりはない、というのも、最早この家では日常の風景であった。
「うん。お疲れ様、ルニ」
叔母さんの前でルニと会話するわけにもいかず、であればルニは菜奈花がコートを部屋に置きに行った時に、一緒に部屋で留守番となっていた。
即ち、幾分の時間が立っているのにも関わらず、ゆっくりと会話できたのは、この時間がやっと、そういう事であった。
外からは昼間の快晴はどこにいったのか、轟音をあげて雨粒が地面へとめちゃくちゃなリズムを刻んでおり、それは雑音であった。
そういえば、モールで食事しに出かけた直後は如何にも降りそうな雲行きであったのと、叔母さんが降水確率四〇%だと言っていたのを、菜奈花は思い出した。
「雨、強いね」
菜奈花がポツリと呟いたのは、そういう思考を巡らせていたからであった。
「そうだね、この調子だと明日もかな」
「明日は家から出たくないなぁ」
リビングでみた六時終盤の天気予報では、明日は雨らしいとの事であり、ならば明日はゆっくりしようと菜奈花が決心したあたりで、ルニは唐突に話題を変えた。
「あの第三オーナー、知り合い?」
ルニの言う第三オーナーとは、紅葉弘のことであり、ならば当然菜奈花は頷いた。
「そっか……」
「それが、どうかしたの?」
訝しむ菜奈花は、ベットに腰をかけ、比較的リラックスしていた。一方その正面に浮遊するルニは険しい表情を醸し出しており、腕組をしていた。
「わからないんだ」
その一言には、多分な量の情報が含まれているらしいことが、菜奈花にも察せた。
「何が?」
「分からないことは色々あるけど」とルニ、「一番分からないのは、どういて乱入しておいて菜奈花に、第一オーナーにアルカナを譲るような形をとったのか、ってとこ」
言われてみれば、おかしな話ではある。
いくら彼が優しい、そういう正確であったとしても、それだけで片付けていいようにも菜奈花には思えなかった。
「普通なら、奪う?」
「普通なら、ね」
そういえば、と菜奈花は思い返した。突然の出来事で放心していた時、何か菜奈花には理解のできない、けれど重要なことを話していたような、そんな事を。
それは確か――
「儀式……?」
そう、儀式がどうのとか、そんな会話をしていたような事を思い出した。
「儀式って、何?」
気が付けば、ルニに質問を投げかけていた。
ルニの表情は、どこか困惑したような、或いは迷ってるような表情であった。
「何が、儀式なの?私の知らない何かが、まだまだあるんでしょう?」
けれど菜奈花は、そんな事もお構いなしに、質問をさらにかぶせていた。
ルニは嘆息すると、その重たそうな口は、ゆっくりと開いた。
「――儀式ってのは、要するにこのアルカナの回収作業の事だよ」
「アルカナの回収が、儀式?」
「厳密に言うと少し違うけど、大体合ってる」
その回答は明らかに曖昧であり、それはつまり、ルニがまだその秘密を開示する気はないと、そういうことらしい。
「どうして、そうなるの?そもそもこの儀式は、何をするための儀式なの」
けれど菜奈花は、またさらに質問を重ねており、最早みよう人によっては尋問のようであった。
ルニはちょっと躊躇った様に沈黙をつくるが、やがて諦めたように、嘆息した。
「言ったでしょう。菜奈花はまだ仮のオーナーだって」
「仮の仮を仮にするのが、この契約…だっけ?」
言われて思い出したらしいが、すっと出てきた。
そんな事を、契約の際に言われたように思わなくもない。
「そう、これはあくまで仮の契約。となればこの儀式の意味することは――わかるでしょう?」
「――仮の契約を、真の契約に変えること?」
少し間をおいて、菜奈花がそう結論づけると、ルニも静かに頷いて肯定を示した。
「これ以上は、その時になればわかる」とルニ、「だから、私からはこれだけ」
そう言われて納得する菜奈花ではないが、ルニがふいと踵を返して、その場にあぐらをかいて見せた。それはつまり、それ以上その会話は絶対にしないという意思を示したものであり、菜奈花も渋々と「わかった」と答えざるを得なかった。
するとルニはその体制のまま、話題を戻した。
「きっと、第三オーナーは何か考えがある、それだけは確かだね」
菜奈花は「うん」と頷くしかなかった。
「用心したほうがいいよ、彼は」
けれど菜奈花には弘が打算的な人間だとは思っておらず、ならばルニの言い分を容易く信じるのは不可能であった。が、事実だけを見ればルニの言うことは全うであり、であればやっぱり、「うん」と覇気のない相槌だけを返すしかなかった。
そう話しかけるのは、ルニであった。
あの後、叔母さんに心配されたが、菜奈花は友達と話し込んでしまったと誤魔化した。
実際友人と一緒にいたのは違いないので、一概には嘘とは言えないような、そんな内容であった。
そうして今は夕食とお風呂を終えた後の、自由な時間であり、いつものように菜奈花も、叔母さんも、それぞれがそれぞれの部屋に篭っていた。まだ午後八時を回って少しした程度であるのにも関わらず、リビングには既に明かりはない、というのも、最早この家では日常の風景であった。
「うん。お疲れ様、ルニ」
叔母さんの前でルニと会話するわけにもいかず、であればルニは菜奈花がコートを部屋に置きに行った時に、一緒に部屋で留守番となっていた。
即ち、幾分の時間が立っているのにも関わらず、ゆっくりと会話できたのは、この時間がやっと、そういう事であった。
外からは昼間の快晴はどこにいったのか、轟音をあげて雨粒が地面へとめちゃくちゃなリズムを刻んでおり、それは雑音であった。
そういえば、モールで食事しに出かけた直後は如何にも降りそうな雲行きであったのと、叔母さんが降水確率四〇%だと言っていたのを、菜奈花は思い出した。
「雨、強いね」
菜奈花がポツリと呟いたのは、そういう思考を巡らせていたからであった。
「そうだね、この調子だと明日もかな」
「明日は家から出たくないなぁ」
リビングでみた六時終盤の天気予報では、明日は雨らしいとの事であり、ならば明日はゆっくりしようと菜奈花が決心したあたりで、ルニは唐突に話題を変えた。
「あの第三オーナー、知り合い?」
ルニの言う第三オーナーとは、紅葉弘のことであり、ならば当然菜奈花は頷いた。
「そっか……」
「それが、どうかしたの?」
訝しむ菜奈花は、ベットに腰をかけ、比較的リラックスしていた。一方その正面に浮遊するルニは険しい表情を醸し出しており、腕組をしていた。
「わからないんだ」
その一言には、多分な量の情報が含まれているらしいことが、菜奈花にも察せた。
「何が?」
「分からないことは色々あるけど」とルニ、「一番分からないのは、どういて乱入しておいて菜奈花に、第一オーナーにアルカナを譲るような形をとったのか、ってとこ」
言われてみれば、おかしな話ではある。
いくら彼が優しい、そういう正確であったとしても、それだけで片付けていいようにも菜奈花には思えなかった。
「普通なら、奪う?」
「普通なら、ね」
そういえば、と菜奈花は思い返した。突然の出来事で放心していた時、何か菜奈花には理解のできない、けれど重要なことを話していたような、そんな事を。
それは確か――
「儀式……?」
そう、儀式がどうのとか、そんな会話をしていたような事を思い出した。
「儀式って、何?」
気が付けば、ルニに質問を投げかけていた。
ルニの表情は、どこか困惑したような、或いは迷ってるような表情であった。
「何が、儀式なの?私の知らない何かが、まだまだあるんでしょう?」
けれど菜奈花は、そんな事もお構いなしに、質問をさらにかぶせていた。
ルニは嘆息すると、その重たそうな口は、ゆっくりと開いた。
「――儀式ってのは、要するにこのアルカナの回収作業の事だよ」
「アルカナの回収が、儀式?」
「厳密に言うと少し違うけど、大体合ってる」
その回答は明らかに曖昧であり、それはつまり、ルニがまだその秘密を開示する気はないと、そういうことらしい。
「どうして、そうなるの?そもそもこの儀式は、何をするための儀式なの」
けれど菜奈花は、またさらに質問を重ねており、最早みよう人によっては尋問のようであった。
ルニはちょっと躊躇った様に沈黙をつくるが、やがて諦めたように、嘆息した。
「言ったでしょう。菜奈花はまだ仮のオーナーだって」
「仮の仮を仮にするのが、この契約…だっけ?」
言われて思い出したらしいが、すっと出てきた。
そんな事を、契約の際に言われたように思わなくもない。
「そう、これはあくまで仮の契約。となればこの儀式の意味することは――わかるでしょう?」
「――仮の契約を、真の契約に変えること?」
少し間をおいて、菜奈花がそう結論づけると、ルニも静かに頷いて肯定を示した。
「これ以上は、その時になればわかる」とルニ、「だから、私からはこれだけ」
そう言われて納得する菜奈花ではないが、ルニがふいと踵を返して、その場にあぐらをかいて見せた。それはつまり、それ以上その会話は絶対にしないという意思を示したものであり、菜奈花も渋々と「わかった」と答えざるを得なかった。
するとルニはその体制のまま、話題を戻した。
「きっと、第三オーナーは何か考えがある、それだけは確かだね」
菜奈花は「うん」と頷くしかなかった。
「用心したほうがいいよ、彼は」
けれど菜奈花には弘が打算的な人間だとは思っておらず、ならばルニの言い分を容易く信じるのは不可能であった。が、事実だけを見ればルニの言うことは全うであり、であればやっぱり、「うん」と覇気のない相槌だけを返すしかなかった。
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