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第三章
―School In The Night.4―
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「で、次は『魔術師』ね」
ルニはそう言うと、菜奈花のポケットから『魔術師』のアルカナを呼び出して、宙に浮かせた。宙に浮いているアルカナは、その絵柄を主張するようにゆっくりと横に回転し、微弱な光源を見せる。
「えっと、イメージしたものを作り出す、だったよね」
「そうそう、ただし造れるものは術者の内的魔力に依存するってのは忘れちゃダメね」
「そうなの?」
菜奈花が聞くと、弘が納得したように言った。
「あぁ、だからか」
「どうゆうこと?」
菜奈花が聞き返すと弘は、「この前鎖を造ったとき、数を展開した時よりも一つを展開した時のほうが精巧にできていただろう?」
「そ。造られるモノの強度、精巧さなんてのは全部内的魔力に依存されるから、菜奈花の場合一気に魔法陣を展開するとそれだけ一つ一つの出来は落ちるってわけ」
「でも、どうして内的魔力によるんだい?」
そう聞いたのは、もはや蚊帳の外といっても遜色ない燈葵であった。
「んーと……それについてはわかんないんだよね」とルニ、「内的魔力と外的魔力の違いによる、ってのが構造上の理論なんだけど、何しろその違いがわからないんじゃ、説明は無理かなぁ」
「まあ、細かい説明されても理解できないわよ、私は」
「そもそも理解する必要性はないだろうな、この件に関しては」
弘が同意すると、ルニは『魔術師』を菜奈花のポケットへと滑らせるように操作して戻し、代わりに最後の大アルカナをまたルニのすぐ横へと浮遊させた。『恋愛』である。
「そしてこれが『恋愛』、正直能力は大アルカナの中で一番使い道のないものかもね」
「えぇと……ダメージを受けると、そのダメージを与えた本人に返す、だっけ?」
「そうそう。さらに詳しく言うと、受けた痛みを受けた場所……例えば、手なら手に痛覚を送りつける、っていう感じかな」
「ですが、実際には手に痛覚を反映させているわけではありません。原理としては痛覚を感じた際に、自動的に相手を起点として魔法陣を展開します。そして同時に痛覚を解析して、データを魔法陣に送りつける、所謂付与魔法の類なのです」
「うん?魔法陣の展開には内的魔力が必要なんでしょ?」
「そうだよ?」
「だったら、離れていたら展開できなくない?」
菜奈花の問に珍しくルニが感心したのか、けれどそうではないと満足気な表情を見せながらもかぶりをふった。
「別に内的魔力を必要とはいったけど、必ずしも自分のものである必要はないよ。マイナス効果を付与する系統全般に言える話だけど、ここで消費する自分の魔力は、魔法陣を展開するための初期段階程度だけで、残りは全部相手持ち。確かに離れていると理屈的には展開できなそうなんだけど、魔力流動操作……つまり、魔力の流れを操作して命令を飛ばしさえすれば、あとは勝手に展開してくれるってわけ」
「なにそれすっごい便利じゃない」
「まあ、当然命令を飛ばせる範囲ってものはあるから、そういう意味では菜奈花の言い分は正しいよ」とルニ、「ただし、忘れてはいけないのは、このアルカナ自体に転移の術式が含まれているってこと」
ルニがそう言うと、三人はまるでピンと来ていないのか、揃って頭に疑問符を浮かべていた。
「指輪を持った状態で念じれば、カードを呼び出せるでしょ」
ルニは半ば呆れた様子でそう言った。三人とも、ようやく理解したらしく、「あぁ……」だの、「なるほど……」だの、「そういう……」という微妙な納得のリアクションを見せた。ルニは再び呆れたらしく、嘆息した。
「で、説明を続けると――」
「いや、もう大体わかった」と弘、「要するに、最初から組み込まれている転移を応用して命令を相手に飛ばすってところか?」
「むう……まあ、だいたい正解」とルニはここで『恋愛』を止めると、絵柄を弘と燈葵の方へと向けた。「ただし注意しないといけないのは、転移を応用できるのは魔力だけ。だから人やものは転移できないよ」
「へぇ」
「……まあ、できるようになるカードもあるけど」
菜奈花が適当に相槌を打つと、ルニは小声で、そういった。菜奈花は首をかしげた。聞き取れなかったのだ。しかしどうでもいいのか、「じゃあ次は小アルカナの方?」と説明の続きを促した。
するとルニはまたかぶりをふって、今度はいたずらを企んでいるような表情をみせてから、「いいや」と続けた。「これだけだとなーんにも使えないからね、実際には別の方での使い方の方が多くなると思うよ」
「あぁ……ダメージを受けるのは術者……桜之宮さんだから、フィードバックは狙うに狙えないのか」
「そもそも相手はアルカナ、人じゃないからね。痛みなんてあってないようなものだよ」とルニ、「でコイツの効果は、小アルカナを矢として使うことが出来るっていうことかな」
「それって全部に対応しているの?」
「そう全部」とルニ、「まあ逆に言うと、それくらいしか使い道はないよ。現状だと『魔術師』よりも確実性のある遠距離攻撃手段、ってところだから……まあ使えなくはないんだけど」
「なーるほどねぇ」
「基本的には小アルカナの効果を付与された矢、っていう感覚でいいと思うよ。例えばカップの2なら効果は探索だから……探索の魔法陣の展開中心地が矢が着弾した位置になる、っていう感じ」
「そもそも探索って前から思ってたけど何に使うのよ……」
「んじゃこのまま小アルカナの説明まで行こうか」
そういうと、ルニは再度『恋愛』をポケットへと滑らせると、菜奈花のもつ小アルカナ八枚全てを宙に浮かせた。
ルニはそう言うと、菜奈花のポケットから『魔術師』のアルカナを呼び出して、宙に浮かせた。宙に浮いているアルカナは、その絵柄を主張するようにゆっくりと横に回転し、微弱な光源を見せる。
「えっと、イメージしたものを作り出す、だったよね」
「そうそう、ただし造れるものは術者の内的魔力に依存するってのは忘れちゃダメね」
「そうなの?」
菜奈花が聞くと、弘が納得したように言った。
「あぁ、だからか」
「どうゆうこと?」
菜奈花が聞き返すと弘は、「この前鎖を造ったとき、数を展開した時よりも一つを展開した時のほうが精巧にできていただろう?」
「そ。造られるモノの強度、精巧さなんてのは全部内的魔力に依存されるから、菜奈花の場合一気に魔法陣を展開するとそれだけ一つ一つの出来は落ちるってわけ」
「でも、どうして内的魔力によるんだい?」
そう聞いたのは、もはや蚊帳の外といっても遜色ない燈葵であった。
「んーと……それについてはわかんないんだよね」とルニ、「内的魔力と外的魔力の違いによる、ってのが構造上の理論なんだけど、何しろその違いがわからないんじゃ、説明は無理かなぁ」
「まあ、細かい説明されても理解できないわよ、私は」
「そもそも理解する必要性はないだろうな、この件に関しては」
弘が同意すると、ルニは『魔術師』を菜奈花のポケットへと滑らせるように操作して戻し、代わりに最後の大アルカナをまたルニのすぐ横へと浮遊させた。『恋愛』である。
「そしてこれが『恋愛』、正直能力は大アルカナの中で一番使い道のないものかもね」
「えぇと……ダメージを受けると、そのダメージを与えた本人に返す、だっけ?」
「そうそう。さらに詳しく言うと、受けた痛みを受けた場所……例えば、手なら手に痛覚を送りつける、っていう感じかな」
「ですが、実際には手に痛覚を反映させているわけではありません。原理としては痛覚を感じた際に、自動的に相手を起点として魔法陣を展開します。そして同時に痛覚を解析して、データを魔法陣に送りつける、所謂付与魔法の類なのです」
「うん?魔法陣の展開には内的魔力が必要なんでしょ?」
「そうだよ?」
「だったら、離れていたら展開できなくない?」
菜奈花の問に珍しくルニが感心したのか、けれどそうではないと満足気な表情を見せながらもかぶりをふった。
「別に内的魔力を必要とはいったけど、必ずしも自分のものである必要はないよ。マイナス効果を付与する系統全般に言える話だけど、ここで消費する自分の魔力は、魔法陣を展開するための初期段階程度だけで、残りは全部相手持ち。確かに離れていると理屈的には展開できなそうなんだけど、魔力流動操作……つまり、魔力の流れを操作して命令を飛ばしさえすれば、あとは勝手に展開してくれるってわけ」
「なにそれすっごい便利じゃない」
「まあ、当然命令を飛ばせる範囲ってものはあるから、そういう意味では菜奈花の言い分は正しいよ」とルニ、「ただし、忘れてはいけないのは、このアルカナ自体に転移の術式が含まれているってこと」
ルニがそう言うと、三人はまるでピンと来ていないのか、揃って頭に疑問符を浮かべていた。
「指輪を持った状態で念じれば、カードを呼び出せるでしょ」
ルニは半ば呆れた様子でそう言った。三人とも、ようやく理解したらしく、「あぁ……」だの、「なるほど……」だの、「そういう……」という微妙な納得のリアクションを見せた。ルニは再び呆れたらしく、嘆息した。
「で、説明を続けると――」
「いや、もう大体わかった」と弘、「要するに、最初から組み込まれている転移を応用して命令を相手に飛ばすってところか?」
「むう……まあ、だいたい正解」とルニはここで『恋愛』を止めると、絵柄を弘と燈葵の方へと向けた。「ただし注意しないといけないのは、転移を応用できるのは魔力だけ。だから人やものは転移できないよ」
「へぇ」
「……まあ、できるようになるカードもあるけど」
菜奈花が適当に相槌を打つと、ルニは小声で、そういった。菜奈花は首をかしげた。聞き取れなかったのだ。しかしどうでもいいのか、「じゃあ次は小アルカナの方?」と説明の続きを促した。
するとルニはまたかぶりをふって、今度はいたずらを企んでいるような表情をみせてから、「いいや」と続けた。「これだけだとなーんにも使えないからね、実際には別の方での使い方の方が多くなると思うよ」
「あぁ……ダメージを受けるのは術者……桜之宮さんだから、フィードバックは狙うに狙えないのか」
「そもそも相手はアルカナ、人じゃないからね。痛みなんてあってないようなものだよ」とルニ、「でコイツの効果は、小アルカナを矢として使うことが出来るっていうことかな」
「それって全部に対応しているの?」
「そう全部」とルニ、「まあ逆に言うと、それくらいしか使い道はないよ。現状だと『魔術師』よりも確実性のある遠距離攻撃手段、ってところだから……まあ使えなくはないんだけど」
「なーるほどねぇ」
「基本的には小アルカナの効果を付与された矢、っていう感覚でいいと思うよ。例えばカップの2なら効果は探索だから……探索の魔法陣の展開中心地が矢が着弾した位置になる、っていう感じ」
「そもそも探索って前から思ってたけど何に使うのよ……」
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【作者より、感謝を込めて】
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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