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第一章
―不思議な不思議な新しい一日・三―
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人は現実を受け入れないとき、どういった行動を取るのだろうか。
叫んだり、喚いたり、泣き出したり。
私の場合は――
魔法陣。漫画なんかで見るようなそれを、まさかこんな形で見ることになろうとは、流石に菜奈花も思っていなかった。
全身は震えているのに、それでも魅了されるほどの神秘さが、そこにはあった。
魔法陣を下からなんて見たことがあるはずもなく、立体映像を見せられているようなその光景は、とてもこの世のものとは思えないほど、神秘的であったのだから。
「魔法陣……?」
見上げる魔法陣は、外円が少しずつ、時計回りに回っているのが分かった。
つまるところ、魔法陣は動いている。
立体映像の類かと一瞬思ったが、それにしては形や質が明瞭すぎる。
ふと、菜奈花はある事に気がついた。
(この光、さっきまでカードが放っていたのと――)
同じ。そう言おうとした刹那、けれどその思考は次の瞬間にはかき消されてしまった。
――魔法陣の中央、その上にそれの発する光が、光の粒子が吸収され始めたのである。
光にまるで意思があるように、或いはその先に誰かが居るかのように。
居るのか、創り出しているのかは菜奈花にはわからなかった。
ただ呆然と、後ろに手をついたペタン座りのまま、その光景を見守るしか術が無かった。
集まっていく光は、次第に楕円形の繭のような形を形成して行き、そうして光が収まったと同時に、繭は――弾けた。
「きゃああああああ!」
再びの一瞬の閃光が辺りを襲った時、菜奈花は目を固く閉じてしまった。
同時に、覚えのある力を感じずにはいられなかった。
先程まで感じていた感覚。その力の正体は、今も勉強机の上にあるはずだ。
(――ならどうして)
どうして、目の前から感じるのだろうか。
――ィリリリリ。
(どうしてすぐ近くから――)
――リリリリリリリ。
(どうして――)
――リリリリリリリリリリ。
「あぁもううっさい!」
(目の前から声が、聞こえたのだろうか)
菜奈花は自分でもハッキリとわかるほどに、茫然自失を感じた。
「人が折角目覚めたってのにムードもありゃしない。あぁもううっさいうっさい!早く止めて!」
恐る恐る目を開けると、そこはやっぱり幻であった。
目の前に居たのは、パステルグリーンの長めの髪に、エメラルドのような色の瞳の――掌程の大きさの、小さな少女。真っ白なワンピースを身にまとい、頭に白のツルニチニチソウの草かんむりがかけられている。
そんな小さな少女が、物理法則を完全に無視して、宙に浮いているのである。
「誰――」
「まず私を見ての感想がそれぇ?」と小さな少女、「いいからあのうっさいのを早く止めて」
耳を傾ければ、確かに目覚まし時計がリリリと鳴いていた。
そういえば目覚ましを止めるのを忘れていたな、と変に冷静になった菜奈花は、渋々といった様子で立ち上がり、そのベルを止めた。
「ようし、それでいいのそれで」
偉そうな小さな少女だが、菜奈花はまだこれを現実だとは思いたくなかった。
(立て続けに起きる不思議なこと――)
「うん、これは夢――」
「なわけ無いでしょ」と、菜奈花の言葉を遮った。
「私は風の精霊ニンフ。初めまして、『第一オーナー』」
唐突な自己紹介に困惑の色を隠せない菜奈花は、まず一言、「何言ってるの、この子」と哀れみを込めた視線を向けた。
「いやいや、夢にしてはなかなかすごいね、これ」
しかし小さな少女は諦めたのか、「じゃあ夢でいいから、言うとおりにしてね」と勝手に話を進め始めた。
「まずそこにキチンと立って」
小さな少女が指さしたのは、部屋の中央、木製の丸く低い、円形の四足テーブルの前。
菜奈花はもう夢だと割り切ったのか、「はいはい」といかにも適当な様子で言われた場所に立った。
小さな少女は菜奈花の周りをぐるぐると飛び回っている。
「今は仮の仮契約だからね。せめて仮の契約にしないといけないの」
「そうなの?」
しかし小さな少女は答えはしなかった。
その代わりに、小さな少女はある質問を投げかけた。
「ねえ、あなた。名前は?フルネームでね」
「桜之宮菜奈花」
キョトンとした様子で首を傾げる菜奈花に、小さな少女は「ん」、と相槌なのか了承の意を示すものなのか分かりかねるような返事を返した。
「それじゃ、始めよっか」
小さな少女は、菜奈花から三フィート程離れた正面の空中で止まり、両手を前に翳した。
「なに、するの?」
しかし小さな少女はやはり答えない。
代わりに、何かをつらつらと唱え始めようとしていた。
そして、これはやっぱり夢なんかではないのだろうと、諦めたように、頭を天に向けた。
「現実って……やっぱり非常かもしれない」
――答えの代わりに、小さな少女の呪文は唱えられ始めた。
「我、『光』の力を守護せし四方の一角、風のニンフが契約の契を結ばん。少女、『正義』を呼び寄せし者なり。名を桜之宮菜奈花、契約を結ぶに値せし者なり。汝、『正義』の手を取り、望みを叶える力を巡るべく、参加の意をここに表明せよ」
少女の唱えているものは、きっと呪文とか、そういう類のものなのであろうと、菜奈花はすぐに察した。
同時に、タロットカードの力が小さな少女の元に集まるのを確かに感じた。
――否、タロットカードそのものが、「正義」のカードが、独りでに宙を舞って小さな少女の前まで行った。
それを確かに菜奈花は、その目で確認したのだ。
――して、しまったのだ。
やがて「正義」のタロットカードは、小さな少女の呪文が終わると同時に、菜奈花の元までやってきた。
「手を、触れればいいの?」
小さな少女は、静かに頷いた。
伸びかけた手は、一度引っ込んだ。
(――これを触れたら、きっと戻れなくなる)
しかし何故だろうか、菜奈花は自分でも不思議に思わずにはいられなかった。
(例えそうだとしても、私は――)
菜奈花は、生唾を飲み込み、それから『正義』のタロットカードを凝視した。
それから、右手を一度おろし、固く結んだ。
固く、固く、固く結んだ後で、もう一度、生唾を飲み込んだ。
そうして目を固く閉じた後、迷いを捨てたような瞳を開き、ゆっくり、ゆっくりと手を――、触れた。
瞬間、菜奈花の足元に、菜奈花を包むようにして魔法陣が現れ、感じていた力が菜奈花の中に入り込むのがわかった。
少しずつ、少しずつ。胸の奥へと突きあがるような感覚を感じていた間、菜奈花は目を閉じ、身を委ねていた。
「菜奈花、そのアルカナの名前を読んで!」
(名前――)
菜奈花はゆっくりと目を開き、そうして――
「『正義』」
呟くように、その名を呼んだ。
叫んだり、喚いたり、泣き出したり。
私の場合は――
魔法陣。漫画なんかで見るようなそれを、まさかこんな形で見ることになろうとは、流石に菜奈花も思っていなかった。
全身は震えているのに、それでも魅了されるほどの神秘さが、そこにはあった。
魔法陣を下からなんて見たことがあるはずもなく、立体映像を見せられているようなその光景は、とてもこの世のものとは思えないほど、神秘的であったのだから。
「魔法陣……?」
見上げる魔法陣は、外円が少しずつ、時計回りに回っているのが分かった。
つまるところ、魔法陣は動いている。
立体映像の類かと一瞬思ったが、それにしては形や質が明瞭すぎる。
ふと、菜奈花はある事に気がついた。
(この光、さっきまでカードが放っていたのと――)
同じ。そう言おうとした刹那、けれどその思考は次の瞬間にはかき消されてしまった。
――魔法陣の中央、その上にそれの発する光が、光の粒子が吸収され始めたのである。
光にまるで意思があるように、或いはその先に誰かが居るかのように。
居るのか、創り出しているのかは菜奈花にはわからなかった。
ただ呆然と、後ろに手をついたペタン座りのまま、その光景を見守るしか術が無かった。
集まっていく光は、次第に楕円形の繭のような形を形成して行き、そうして光が収まったと同時に、繭は――弾けた。
「きゃああああああ!」
再びの一瞬の閃光が辺りを襲った時、菜奈花は目を固く閉じてしまった。
同時に、覚えのある力を感じずにはいられなかった。
先程まで感じていた感覚。その力の正体は、今も勉強机の上にあるはずだ。
(――ならどうして)
どうして、目の前から感じるのだろうか。
――ィリリリリ。
(どうしてすぐ近くから――)
――リリリリリリリ。
(どうして――)
――リリリリリリリリリリ。
「あぁもううっさい!」
(目の前から声が、聞こえたのだろうか)
菜奈花は自分でもハッキリとわかるほどに、茫然自失を感じた。
「人が折角目覚めたってのにムードもありゃしない。あぁもううっさいうっさい!早く止めて!」
恐る恐る目を開けると、そこはやっぱり幻であった。
目の前に居たのは、パステルグリーンの長めの髪に、エメラルドのような色の瞳の――掌程の大きさの、小さな少女。真っ白なワンピースを身にまとい、頭に白のツルニチニチソウの草かんむりがかけられている。
そんな小さな少女が、物理法則を完全に無視して、宙に浮いているのである。
「誰――」
「まず私を見ての感想がそれぇ?」と小さな少女、「いいからあのうっさいのを早く止めて」
耳を傾ければ、確かに目覚まし時計がリリリと鳴いていた。
そういえば目覚ましを止めるのを忘れていたな、と変に冷静になった菜奈花は、渋々といった様子で立ち上がり、そのベルを止めた。
「ようし、それでいいのそれで」
偉そうな小さな少女だが、菜奈花はまだこれを現実だとは思いたくなかった。
(立て続けに起きる不思議なこと――)
「うん、これは夢――」
「なわけ無いでしょ」と、菜奈花の言葉を遮った。
「私は風の精霊ニンフ。初めまして、『第一オーナー』」
唐突な自己紹介に困惑の色を隠せない菜奈花は、まず一言、「何言ってるの、この子」と哀れみを込めた視線を向けた。
「いやいや、夢にしてはなかなかすごいね、これ」
しかし小さな少女は諦めたのか、「じゃあ夢でいいから、言うとおりにしてね」と勝手に話を進め始めた。
「まずそこにキチンと立って」
小さな少女が指さしたのは、部屋の中央、木製の丸く低い、円形の四足テーブルの前。
菜奈花はもう夢だと割り切ったのか、「はいはい」といかにも適当な様子で言われた場所に立った。
小さな少女は菜奈花の周りをぐるぐると飛び回っている。
「今は仮の仮契約だからね。せめて仮の契約にしないといけないの」
「そうなの?」
しかし小さな少女は答えはしなかった。
その代わりに、小さな少女はある質問を投げかけた。
「ねえ、あなた。名前は?フルネームでね」
「桜之宮菜奈花」
キョトンとした様子で首を傾げる菜奈花に、小さな少女は「ん」、と相槌なのか了承の意を示すものなのか分かりかねるような返事を返した。
「それじゃ、始めよっか」
小さな少女は、菜奈花から三フィート程離れた正面の空中で止まり、両手を前に翳した。
「なに、するの?」
しかし小さな少女はやはり答えない。
代わりに、何かをつらつらと唱え始めようとしていた。
そして、これはやっぱり夢なんかではないのだろうと、諦めたように、頭を天に向けた。
「現実って……やっぱり非常かもしれない」
――答えの代わりに、小さな少女の呪文は唱えられ始めた。
「我、『光』の力を守護せし四方の一角、風のニンフが契約の契を結ばん。少女、『正義』を呼び寄せし者なり。名を桜之宮菜奈花、契約を結ぶに値せし者なり。汝、『正義』の手を取り、望みを叶える力を巡るべく、参加の意をここに表明せよ」
少女の唱えているものは、きっと呪文とか、そういう類のものなのであろうと、菜奈花はすぐに察した。
同時に、タロットカードの力が小さな少女の元に集まるのを確かに感じた。
――否、タロットカードそのものが、「正義」のカードが、独りでに宙を舞って小さな少女の前まで行った。
それを確かに菜奈花は、その目で確認したのだ。
――して、しまったのだ。
やがて「正義」のタロットカードは、小さな少女の呪文が終わると同時に、菜奈花の元までやってきた。
「手を、触れればいいの?」
小さな少女は、静かに頷いた。
伸びかけた手は、一度引っ込んだ。
(――これを触れたら、きっと戻れなくなる)
しかし何故だろうか、菜奈花は自分でも不思議に思わずにはいられなかった。
(例えそうだとしても、私は――)
菜奈花は、生唾を飲み込み、それから『正義』のタロットカードを凝視した。
それから、右手を一度おろし、固く結んだ。
固く、固く、固く結んだ後で、もう一度、生唾を飲み込んだ。
そうして目を固く閉じた後、迷いを捨てたような瞳を開き、ゆっくり、ゆっくりと手を――、触れた。
瞬間、菜奈花の足元に、菜奈花を包むようにして魔法陣が現れ、感じていた力が菜奈花の中に入り込むのがわかった。
少しずつ、少しずつ。胸の奥へと突きあがるような感覚を感じていた間、菜奈花は目を閉じ、身を委ねていた。
「菜奈花、そのアルカナの名前を読んで!」
(名前――)
菜奈花はゆっくりと目を開き、そうして――
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