ステラ☆オーナーズ〜星の魔法使い〜

霜山 蛍

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第一章

―Multiple Indications.5―

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「あなたは行かないの?」
 コバルトブルーの少女に、彼女はそっと微笑んだ。
「えぇ、行きません」
「何故?」
 ソフトグレーの髪の少女は窓の外に視線をやった。
「私たちは、最後まで会うべきでは無いのです」
「どうして?」
 訝しむ視線を向ける少女に、彼女は「だって」と続けた、
「その方が、きっと――」
 その言葉の続きを彼女は続けようとはしなかった。
 しかしそれでも満足したらしく、少女は「そう」と見透かしたように、サファイアの瞳の奥を少女に向けた。
「いいわ、ならば私たちの指針は、接触を極力控える事、そういうことでいいのね?」
「えぇ、その通りです」
「なら、そっちもヘマしないでくださいな」
 彼女は少女の方を向き、そっと少女のコバルトブルーを撫でた。
「勿論、そんな事しませんよ」
 シトリン色の瞳を少女に向けると、彼女はまた、そっと微笑んだ。

「しかし困った」
「何が?」
 部屋に戻ると、ルニは腕を組んで唸っていた。
 だが、内容については菜奈花も大凡予想はついていた。
「そりゃ当然、『魔術師』についてでしょ」
「まあ、そうだよねぇ」
「本体は目覚めているのに、どこにいるのか分からない」
 菜奈花は円形の木の低い四足テーブル、その下のクッション赤と白のうち白の方を取り出し、腰掛けた。
「それって、結局どうやって捕まえるの?」
 ルニはまた一頻り唸った後で、
「地道に?」
 やっとでた回答は、最早わかりきっていたものであった。
 菜奈花は落胆し、嘆息した。
「結局そうなるのね……」
「でも本体を見つければ勝手に結界が張られるわけだし」
  「要するにノープランってことね」
 ルニは深くうなづいた。
 菜奈花は改めて嘆息し、「仕方ないか」とボヤいた。
「まず最初の出現場所がモール。で、次が学校」とルニ、「どっちも屋上に現れた、と」
「それもおかしな話だよね」
 菜奈花はテーブルの上に学校指定のカバンの中身を広げていた。
「だって、学校とモールじゃ方向真逆だもん」
「そう、そこが尚更、ね」
 菜奈花はそこから数学のプリントを取り出すなり、筆箱からシャープペンシルを取り出し、指で回し始めた。
「二つの場所の中心が次の現れる場所、とかだったら楽なんだけどね」
「ちなみに、その場所はどこだか分かる?」
 ルニがそう質問を投げかけてくると、菜奈花は「待ってて」とスマホを取り出した。何やら操作をした後で、「えっとね」とルニに画面を見せてきた。
「ゴルフ場?」
「みたい」
 菜奈花が見せたスマホの画面には、地図が開かれており、確かに学校からモールを直線で繋いだとき、その中心がどこかは分からずとも、その場所はゴルフ場の中だ、という事はわかった。
「仮にその線が合ってたとしても、入る手段がなさげか」
 ルニがそう呟くと、菜奈花も何も言うことはなく、ただ頷きだけを返した。
 けれど菜奈花は暫くすると、思い出したように「いや?」、と異を唱えた。
「入れ無いことはないと思うよ」と菜奈花、「だって、そういえばフェンスが緩いところとかあったはずだし」
 しかしルニは改めてスマホの画面を見て、怪訝そうな顔をしてみせた。
「そんなアホな事ってある?だってここ、仮にも国際ゴルフコースって銘打っているし……」
 ところが菜奈花は得意げに、
「けど、入るくらいならできるのは本当」
と言った。
 そう言ってまた菜奈花が何やらスマホを操作して、ストリートビューをしてみせると、事実ゴルフ場沿いの荒い細道の脇のフェンスは、実に簡単に飛び越えれてしまいそうなほどであった。
「ま、法的にアウトだけれど」
 そう言うと、ルニはまた腕を組み、唸ってみせた。
 しばらくそうしていると、「仕方ない」と切り出した。
「もう少し様子を見て、本当にそこにいそうだってなったらやるしかない」
「それもそっか」
 それっきり会話は終わり、菜奈花は数学のプリントを睨みつけ始めた。
「ねぇ、菜奈花、本借りるね」
「どーぞ」
 ルニはルニで、菜奈花に断って本棚から文庫本を取り出し、読み始めてしまった。
 タイトルは、「枯れる花々は彼の地に生きる」。そこは菜奈花の趣味らしく、愛も変わらず恋愛もの、らしい。
 けれどルニは気にもしていない様子で、さっさと読書に耽入ってしまった。

「おはよう」
「おはようございます」
 何時ものように香穂と挨拶を交わす菜奈花は、席に着くなり、いつものように座席を右に旋回した。
「宿題、やった?」
「えぇ、勿論」
「難しかったよねぇ」
 他愛の無い話が始まるのは最早いつものことであった。
 昨日のあの後、菜奈花が教師から指導を食らうことはなく、どうやら香穂は保健室に行った、と説明してくれていたらしい。
 そうして談笑していると、「そういえば」と香穂が切り出してきた。
「噂で聞いたのですが、何やら不思議な光景を、今朝見たという方たちがいたそうですよ」
 菜奈花は首を捻ると、「どんな?」と先を促した。
「えぇっと、昨晩、あの高速道路の近くの大通りで、見たそうなんです」
「何を?」
 生唾を飲み込む菜奈花に、香穂は微笑んで、その続きを言った。
「『道路を塞ぐ木材の山』を、だそうです」
「それって――」
 別の意味で生唾を飲み込む菜奈花だが、それ以上の会話は予鈴に拒まれてしまった。
 考え込む菜奈花に、香穂はそっとその微笑みをまた、浮かべていた。
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