ステラ☆オーナーズ〜星の魔法使い〜

霜山 蛍

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第一章

―VS.魔術師.Ⅱ―

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「結界が起動って、それじゃぁ――」
「範囲内に入り込んだって事でしょ」
 塗り替えられた景色は菜奈花を中心に広く、半球状に広がっており、半球状の境界の先は、ガラス板でもさしこまれたかのように、ズレが生じていた。
「起動したからには、どこかにいるのよね」
 菜奈花はそう言うと、二回目の癖に手馴れたように、『正義ジャスティス』のアルカナを前に翳し、再び姿を変えた。
 黄金のティアラに、フードのない内側の微かな黒が見える白いローブマント。首元には不均等な大きさでいながら、それでいて釣り合っている天秤のアクセサリーのあるそれに身を包むと、菜奈花は気配に意識を注目させ、油断なく周囲を警戒した。
「えぇ、間違いなく」
 菜奈花は今、交差点向かって左側の横断報道、その真ん中に居るが、車が走っている気配は無く、先程まで止まっていた車の姿さえ認識することは叶わなかった。
 信号や街灯は明かりを消し、辺りに物音の類は無かった。
 薄暗い景色の中で、気配だけはしっかりと確認することはできるものの、近いという事以外さっぱりである。
「どこから……」
 ふと、菜奈花の右方向から、見慣れた物が飛来するのが分かった。
「机!」
 咄嗟に地面に突き刺さった剣を抜き、それを振るうと、それはやはり手応えなく消失した。
「菜奈花、後ろ!」
 かと思うと今度は、背後から丸太が飛来してきた
 剣を振るうことを間に合わないと判断したらしかった菜奈花は、屈むようにして前へ躱すと、丸太はそのままズレの元まで一直線に飛んでいき、そこで勢いを消失させた。
「あ、危な……」
 ホッと息を下ろす菜奈花に、しかし菜奈花に休みを与えようとはしてくれず、今度は上から車が落下してくるのが分かった。
「菜奈花上!」
 ルニの忠告に菜奈花はその剣を振るうことなく上に翳すと、やはり二人の予測通り、またもや手応えなく消失したのを確認できた。
 これも『魔術師マジシャン』の造り出したものである、という事らしい。
「ようやくお出ましってところ?」
 菜奈花は油断なく周囲を警戒しながら、そうしてとある事実に気がついた。
「ひょっとして気配、増えてる?」
「恐らく」
 つまり、今の一連の攻撃はやはり全て、別々の『魔術師』が攻撃を下した、という事であり、こうなるとやはりプランを立てなかったことが返って功を成したのかもしれなかった。
 ルニは菜奈花のコートのポケットからでて、菜奈花と互いに背合わせの形で宙に浮いた。
 未だ暗闇に紛れて姿を隠す存在は、しかし彼らは二人を正確に捉えているらしく、寸分の後にまた、しかし今度は同時に丸太と机、それぞれが同じ方向から飛来してきた。
(二つ同時に消し去るのは無理――っ!)
 菜奈花は、駆け出した。
 姿勢を低くし、その場を離れたのをルニも察し、菜奈花のすぐ傍を浮遊しながらついてく。
 机と丸太は互いに派手な音を鳴らして激突すると、しかし二度目の衝突音が鳴り響く前に姿を消した。
 菜奈花が走りだすと、静止していた三つの気配のうち二つが菜奈花を追いかけるように動き始め、さらに間髪入れず交互にそれらが再び飛来した。
「ど、どうするのよこれ!」
 十字路を円を描きながら走る菜奈花は、剣を振るう暇さえなく、回避するのがやっとと言った様である。 二つの気配は菜奈花と一定の距離を保ちながら、菜奈花を中心に回る衛生の如く、同じく周回しているのである。
「そう言われても困るって」
 ルニはルニで特に何をするでもなく、ただ菜奈花に付いて行きながら何か案を出すべく思案しているらしかった。
「なら、とりあえずまずは一体ずつ、かな」
 しかしルニが案を思いつくより早く、菜奈花は机の飛んできた方向へと急速に旋回し、その元に向かって走る速度を速めた。
 そうしてジグザグに、回避と打ち消しを利用して走れば、やがてその姿を捉えることができた。
「やっぱり、『魔術師』!」
「どうするの?」
「屋上でやったようにやる!」
 菜奈花が剣を持つ右腕を振りかぶると、しかしハッとしたようにルニが叫びを上げた。
「菜奈花、上!上!」
 直後、菜奈花も気がついた。
 暗闇の中で尚、月明かりに雲が刺したらしく、辺はより一層の暗黒を示しだした。
「え――」
 途端、菜奈花の頭上に姿を現していたのは、夥しい数の――剣だとか、槍だとかの、所謂刃物。
 それが雨のように、地上に、二人に向けて降り注ごうとしているのである。
 かと思えば、前方に見える『魔術師』からは三つ机が、後方からは二つ丸太が飛来してきていた。
 けれど菜奈花は何を思ったか、思いとどまることなくそのまま机を放出する『魔術師』に、勢いよく剣を投げつけ――直後、菜奈花とルニに、刃の雨が降りかかった。
「菜奈花!」
 叫びを上げるルニも当然範囲対象内であり、とすれば菜奈花と運命を共にする他ないらしかった。
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