ステラ☆オーナーズ〜星の魔法使い〜

霜山 蛍

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第一章

―VS.魔術師.Ⅴ―

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 菜奈花は、改めて、『魔術師マジシャン』の彼をまじまじと観察する。
 左側が白、右側が黒のツートンカラーのローブに、先端が金色の巻き髪で、側面から二つの金の輪っかが垂れ下がった帽子かぶっている、傍から見ても異様なその出で立ちは、しかしそれでいて分身と何らかの違いも見受けられなかった。
 違うのは、感じられる気配がより鮮明であるというくらいであろうか。
 彼の右手には短杖が握られており、それでいて少し宙に浮いている。
 互いに互を牽制しあう時間が続く。
 ピリつく空気は、菜奈花の緊張をありありと示していた。
 しかしその空気を破り先に仕掛けたのはやはり、彼であった。
 彼の目の前に、即座に展開された三つの魔法陣より、凶刃が再び放出されたのである。
「来たよ、菜奈花!」
「うん!」
 けれどそれを冷静に回避の判断を下し、事実躱してみせると、菜奈花は彼に向かって走り出した。
  『正義ジャスティス』をまとった菜奈花に取れる選択肢は、さほど多くはない。相性における絶対有利はしかし、先のように数の違いで容易に変動してしまう。それでも尚その剣を携え向かう菜奈花に、けれど『魔術師』は冷静に菜奈花の方を向いたまま、滑るようにして後退を図りながら、刃の射出を怠らない。
 細い、或いは小さいと言うのは、相応にしてデメリットになりやすい。けれどこの場面においてはその限りではなく、速度もある細身の凶刃は、容易く消し去るには難儀である。
 また、同時に三つだの、四つだの射出されてしまっては、一つ消し去ったとしても後が危険すぎる。
 けれど菜奈花は見切ったのだろうか、その都度ひと振りで二つ程を消し去り、残りは少ない動きで冷静に回避してみせる。
「これ、どうしたら捕まえられるの!」
 そうして走っても追いつく気配の見せない状況に嫌気が刺したらしく、堪らず菜奈花は叫んだ。
「指輪でアイツに触れて、呪文を言えばいいの」
 ルニはルニで来る刃を突風を持って軌道を逸らし、微力でありながらも菜奈花のサポートを怠ってはおらず、傍を飛び回っている。
「触れるって、どうやって!」
「それを考えるのが菜奈花の仕事でしょう!」
 しかしそうは言われても、現状を打破できうるだけの手段は、今現在に置いて見つからない。
 剣を投げようにも、そんな暇さえ彼は与えてくれないし、投げたあとの無防備にも気を付けないといけない。
 とすれば、安易にそういった方法を取るわけにもいかなかった。
 ――と、『魔術師』は唐突に、凶刃の射出を止めてくれた。
「チャンス!」
 そうすると菜奈花はさらに駆ける速度を速め、一気に詰め寄る。が、違う。
「火!」
 彼は単に、攻撃の方法を変えただけに過ぎず、その相変わらず展開された三門の魔法陣より、炎の弾が射出された。
「魔法もできるなんて、聞いてない!」
 堪らず叫ぶ菜奈花だが、それでいても尚剣で向かい来る火炎弾を消し去ると、けれど速度を落とすことなく走っていた。
「そりゃあ、なんでも作り出せるんだし、炎くらいねぇ」とルニ、「けど配下カード使ってるわけでもなさそうだし、威力自体は低いはずだよ、うん」
 やけに冷静なルニに、しかし菜奈花もやはり冷静であった。
「配下カードって、あれも使えるの?」
 あれ、と『魔術師』を目線で指差す菜奈花に、ルニは頷いた。
「使える。けど使わない所を見ると、『魔術師』にとって外れだったのかな」
「ハズレって……」
 尚も襲い来る火炎弾を剣で払いながら、躱しながら進む菜奈花だが、次の彼の攻撃で足を止めた。
「きゃああ?!」
 いつの間にそうしたのだろうか、菜奈花の足元には魔法陣があり、気づかずに菜奈花は踏みつけてしまった。
 発動し現れたのは、幸か不幸か、丸太。けれどその大きさは先の比ではなく、五ヤードの長さであった。かつ太いそれは、菜奈花を持ち上げるには容易で、菜奈花がそれに気がついて消し去る頃には、菜奈花は宙へと投げ出されたいた。彼は滑りながら、菜奈花たちの進路にトラップよろしく魔法陣を設置していったらしい。
 『魔術師』は、ツートンカラーのローブを勢いよく開く――腕を横に開く様をすると、彼は急ブレーキを掛けたようにその場に足を付けて踏ん張った。微動の後にその場に止まると、宙に打ち上げられた菜奈花の方を向いて、自身の前に魔法陣を一斉に展開し始めた。
「菜奈花!」
 一方の菜奈花の横を飛んでいたルニは、丸太の直撃を貰うこと無く、結局再度その場に取り残されてしまったのである。
 『魔術師』は、その門を開き、中より二通りの物を造り描いてみせた。
 ――一つ目は、相も変わらずの凶刃の数々。鉄製のそれらは、シンプルな飾り気の無い物ばかりで、それでいて尚中には黄金だったり、ブロンズだったりのそうではないものも混ざっている。槍や両刃の刃物は勿論、包丁や、斧、果てにははさみまである始末である。
 ――二つ目は、いつの時代のものだろうか、火縄銃の数々。木製のそれらは、傍目にも古びており、明らかな旧式、――シア・ロック式のそれらは、見れば一人でに引き金を引かれており、まるで銃そのものに生が込められているかの如くであった。
 然るに次の起こりうる事は菜奈花にも予想が付いており、けれど逃げ場の無い空中にいて、最早絶体絶命もいいところであった。
 ――ふと、菜奈花の耳に、聞き覚えの無い声が届いた。
 否、耳ではない。直接脳内に……、とでも言えば、ひょっとしたら正解かもしれなかった。
(これで、終わりだ)
 低い男の声で、そう――聞こえたのである。
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