ステラ☆オーナーズ〜星の魔法使い〜

霜山 蛍

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第一章

―VS.魔術師.Ⅵ―

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 ソフトグレーの髪の少女は、車の行き交う十字路を眺めていた。
 規則的に色を変える信号と、それに従う鉄の乗り物は、各々のエンジン音を上げ、あくまで日常の一コマに過ぎないと物語っているようであった。
「そろそろ、戻ってきそうですね」
 しかしそれでいて見据える瞳は、その一コマではなく、その奥にある何かを見据えているようであった。
「貴方は、本当に何物なのかしら?」
 コバルトブルーの髪をなびかせるてのひらほどの小さな少女は、けれど視線の先を彼女に向けることなく、訪ねた。
「どう、思いますか?」
 月と、星々と、街灯と、信号と、屋内から漏れ出る光を受けて佇む少女はもまた、視線を変えることなく、問い返した。
「そうね」と小さな少女、「こちら側、かしら」
 少女のトートバックから顔をひょっこり出している様の小さな少女の答えは、最早確信にも似た、確かな自身を含んでいた。
 少女は、ようやく顔をトートバックを覗くように落とすと、小さな少女に微笑んでみせた。
「さぁ……どうでしょう」
 少女はぼかすような言葉を返してみせると、おもむろに「うふふふっ」と弾むような、それでいて上品な笑い声を上げた。
 答える気は無いと、或いは時期に分かると、そう言いたげな少女の意を汲んだのか、小さな少女もまたそれに便乗してみせた。
「なら、今はまだ、聞かないで上げるわ」
「えぇ、そうしてくれると助かります」
 しばしの沈黙の間、二人はその場をみつつ、それでいて別の何かを見据えていた。見えているように見えて、それでいて見えていないものを。
 そうしていると耳に入ってくるのは、鉄の乗り物が過ぎ去る音と、止まるそれらのエンジン音。自然のBGM音楽が表すのはただ流れる時の流れだけである。雑音であり、それでいて静寂を表していた。
 少女の来ている服は黒のニット、それに紺のジーンズとラフなスタイルであり、その彩色チョイスはまるで暗闇に隠れる事を前提としているかのようであり、しかし少女は物陰に隠れるわけでもなく、大通りの見える、わずかばかり遠い位置にいた。最も、街灯の灯間の暗闇であるそこは、時折来る鉄の乗り物のヘッドライトが少女の輪郭を顕にする程度であった。
 身動ぎ一つする事なく佇む姿は、見るものが見ればこの世の者ならざる存在にもみえうるのかも知れなく、時折鉄の乗り物の作り出すカルマン渦に靡くソフトグレーの髪のせいで、より一層の儚さを演出していた。それは、待ち人を待つ、或いは寄る辺の無いか弱い少女のようであり、けれどその堂々たる立ち姿と何かを見据える瞳が、そうでは無いのだと物語っているかのようであった。
 しばらく立ち尽くしていると、徐に夜空を見上げ、少女もまた呟くのであった。
「綺麗ですね」
と。
 けれど小さな少女の返しは違った。
「えぇ」と同意こそ見せる小さな少女は、「まさに幕開けに相応しいと、そうは思わないかしら、――?」
と、そう言うのである。
 幕開けと謳った今宵の空は、確かに圧巻の域を超えていて、思わず嘆息を洩らしそうになる。
 けれどその嘆息を飲み込んだ少女は、
「確かに、良い幕開けかもしれませんね」
と、再度微笑んだ。
 しかしそれでいて、「ですが」と即座に否定を見せた。
「折角の星空も、きっと見ている余裕はないかもしれませんよ?」
「えぇ、そりゃあそうでしょうね」
 分かりきっていると、そう言外に主張する小さな少女の言葉には、先ほどと同じようなそれを含んでいた。
 少女が何も返さないでいると、小さな少女はさらに続けた。
「ここで死んでしまう、なんてことも――」
「そうはならないように、私たちはここに来たのですよ?」
 静かに首を左右に振った少女は、その右手の中指にある、サファイアのような輝きを見せる指輪を、そっと見た。
「とは言え、私たちは極力彼女には無鑑賞、その方針のはずだったのだけれど?」
 すると少女はその視線の先を、星空から小さな少女へと落とすと、また微笑んでみせた。
「いいえ、違いますよ」と少女、「極力無鑑賞ではなく、接触を控える、です」
「つまり?」
 小さな少女がさらに聞くと少女はまた天を仰ぎ、そうして手を月へとかざしてみせたあと、その手を顎にやってから、また微笑んだ。
「つまり、バレずに接触する、そういうことですよ」
 すると小さな少女は呆れたように嘆息して、トートバックの中にストンと落ちた。
 小石でも落ちたかのような感覚に引っ張られるも、小さな少女は見た目通り軽いらしく、少し腕が下がる程度であった少女は、「あらら」と声を洩らした。
「バレても知らないわよ」
 バッグの中から不満げに呟く小さな少女に、しかし少女は自信を持って、「大丈夫です」と続けた。
「何度も言っているでしょう?大丈夫、って」
 そう言い聞かせる少女の瞳はやはり、言葉と同じように澄んでいた。
 それっきり、この一時において、二人の間に会話が生じる事は無かった。
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