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第一章
―VS.魔術師.Ⅷ―
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なんの運命なのだろか、結界が勝手に発動したとき菜奈花がいた場所に、彼は居た。
交差点、横断歩道のその真ん中。
振り返った彼の眼前に広がる五つの魔法陣は、独特の透明感でいて、神秘的な立体映像を物語っていた。青白く輝く神秘の五芒星は、徐々にその姿を鮮明に変え、徐々に目の前に迫ってくる。
星々は互の行く末を見守り、月はその月光を持って見据える。何れの光も、事の顛末を見届ける数少ない証人であり、この激しくも静かな戦闘の終わりを、悟っているかのようであった。
寸分の後に立体映像は完全と成り、その中点より存在を形造る。それが彼、『魔術師』のアルカナに与えられた唯一の力であり、また絶対の力であると、証明するように。
菜奈花の右の人差し指と中指に挟まれた小アルカナもまた、幻想的な光を放っていた。しかし彼の青白いものではなく、月光にも似た、それでいて幻想的な光。特別強く眼前を照らし、導く訳でもなく、照らし出すのは、ただこの後に待ち受ける、一つの終幕。
魔法陣から描き出されたものは――桜之宮菜奈花。五人の、薄桃色のスプリングコートをはためかせた菜奈花が、そこから飛び出したのである。
一瞬の困惑と、躊躇の念を抱く本人であるが、しかし迷っている暇など等にないのだと判断したらしかった。躊躇いを払拭するかのような声色で、菜奈花はその右手の中にある小アルカナの名を読み上げた。
「『ソード』の『クイーン』!」
月光にも似た光は直後、パステルグリーンの淡い光へと変わり、そうして、風の刃を生み出した。――鎌鼬の小アルカナである。
生み出された刃は、分身の菜奈花を――切り裂くことなく、突き飛ばすに留まったのは、菜奈花がそう望んだからかもしれない。
「さあ、もう終わり!」
理解しきるよりも早く距離を詰める巨大鷲の上で、菜奈花は身を乗り出して見せる。
その瞳には、ここで終わらせるという確固たる意思を表明しており、行動は、それを示すに容易い。
突き飛ばされた五人の菜奈花は、その姿を虚空の淡い黒へと変え、溶け込んでいった。
菜奈花には、理解していた。ここで、この激動にも決着がつくのだと。否、それは菜奈花だけでなく、やや離れたとことから、傍観せざるをえなかったルニでさえも、そう確信していたのである。
菜奈花は、遂に巨大鷲の背中から、目の前目掛けて飛び出していた。
勢いそのままに急速に『魔術師』に迫る最中、菜奈花の右手には、一つのカードがあった。
光るそれを眼前に翳し、名を叫び上げる。願う顛末は、事なきを得る事。その願いを反映してくれる存在は、己自身と、そのアルカナ――『正義』。
「はあああああああああああああああああ!」
スプリングコートの代わりに、純白のローブマントをはためかせ、その剣を彼目掛けて、――投げ放った。
瞬間の光の光線は、瞬く間に彼に突き刺さり、けたたましい轟音は、暗闇に一筋の線を描いた。一瞬の閃光は『魔術師』に回避の余地を与えずにいて、そうして彼は事の顛末を悟ったらしく、天を仰いぐのであった。
遅れてやってきて、彼を障害物の壁面まで押し飛ばした菜奈花は、その最中に、もう一度、あの声を耳に――否、頭に聞いた。景色は、一瞬で後ろへと流れていく。
『認めざるを……、得まい……」
『魔術師』を押しやる最中、菜奈花は横目でそれを確認することになった。――ヒラリと衝撃に身を任せて宙を舞う、今尚光り続けている一枚のカードを。
そうして勢いそのままに壁まで叩きつけると、その突き出したままの右手――指輪のあるその手をそのままに、菜奈花はその言の葉を彼に突きつけた。それは、彼を封じ込める終幕の一言、詠唱。
「――汝、我の配下となれ!」
『あぁ、其方ならば或いは――』
もう一度聞こえてきたその声は、しかしその続きが聞こえるよりも早く――
「『魔術師』!」
言の葉の完成を色付けたのである。
剣の突き刺さった『魔術師』は、その瞳を穏やかなものへと変え、やがてその姿そのものを光の粒子へと変えていった。
指輪から漏れ出る力がそうさせているらしく、みるみるうちに姿を消滅させて行くのである。
「これが――」
「そう、これが具現化したアルカナを元の在るべき姿に戻すという事」
いつの間に転移したのか、当然のようにそこにいたルニに、しかし菜奈花は気にする事無く、未だその姿を光の粒へと変成する彼に注意を向けていた。
そうしていると光へと姿を変えた『魔術師』は、次第にその手の先へと集行き、そうして別の姿を描き始めた。――アルカナ、即ち本来の姿へと。
独特の金属音を上げて地に落ちる『正義』の剣の音を横に、菜奈花はその手の先に生成されたアルカナを手に取り、まじまじと観察していた。そのアルカナと一緒に、二枚の小アルカナ――『カップ』の『2』と、『ペンタクル』の『2』が、『魔術師』の裏に何時の間にやらあったのもまた、菜奈花は確認することとなった。
「これで、終わり……、なのよね?」
「ええ、終わり」
ルニがそう言うと、見計らったかのようなタイミングで、結界の境界のズレが崩壊を始めた。ガラスが砕け落ちるように、光となって地へ舞うその光景を顔を上げてただ見守る菜奈花に、ルニはそっと労いの言葉を掛けた。
「お疲れ様、菜奈花」
と。
こぼれ落ちる光の破片は、しかし地に着く事なく、何れも宙で溶けるようにして消え失せており、ただ感嘆を漏らすばかりであった。
「もうじき、結界が閉じるよ」
それでも尚天を仰ぐ菜奈花は、そっともう何度目かのその言葉を洩らすのでる。
「綺麗だなぁ……」
ルニもそこは同感らしく、「本当に」と幾度となく道中に交わしたやり取りをして、結界はその存在を完全に消失させたのである。
さりとて、真の顛末はここではなかった。
――横断歩道の真ん中に再度出現した菜奈花を迎え入れたのは、激しく照らすヘッドライトと、騒々しいクラクションの叫び声。
「え――?」
突然の光景に、立ち尽くしていたその体が瞬時に反応できるはずもなく、また思考が追いつくはずもなく、であればこの後に待ち受けている真の顛末は――、想像する事は容易かった。
菜奈花は思わず視界を右の腕で覆うと、諦めたようにその瞳をそっと瞑り、後は受け入れる他なかった。
――例えそれが、受け入れがたい理不尽であったとしても。
交差点、横断歩道のその真ん中。
振り返った彼の眼前に広がる五つの魔法陣は、独特の透明感でいて、神秘的な立体映像を物語っていた。青白く輝く神秘の五芒星は、徐々にその姿を鮮明に変え、徐々に目の前に迫ってくる。
星々は互の行く末を見守り、月はその月光を持って見据える。何れの光も、事の顛末を見届ける数少ない証人であり、この激しくも静かな戦闘の終わりを、悟っているかのようであった。
寸分の後に立体映像は完全と成り、その中点より存在を形造る。それが彼、『魔術師』のアルカナに与えられた唯一の力であり、また絶対の力であると、証明するように。
菜奈花の右の人差し指と中指に挟まれた小アルカナもまた、幻想的な光を放っていた。しかし彼の青白いものではなく、月光にも似た、それでいて幻想的な光。特別強く眼前を照らし、導く訳でもなく、照らし出すのは、ただこの後に待ち受ける、一つの終幕。
魔法陣から描き出されたものは――桜之宮菜奈花。五人の、薄桃色のスプリングコートをはためかせた菜奈花が、そこから飛び出したのである。
一瞬の困惑と、躊躇の念を抱く本人であるが、しかし迷っている暇など等にないのだと判断したらしかった。躊躇いを払拭するかのような声色で、菜奈花はその右手の中にある小アルカナの名を読み上げた。
「『ソード』の『クイーン』!」
月光にも似た光は直後、パステルグリーンの淡い光へと変わり、そうして、風の刃を生み出した。――鎌鼬の小アルカナである。
生み出された刃は、分身の菜奈花を――切り裂くことなく、突き飛ばすに留まったのは、菜奈花がそう望んだからかもしれない。
「さあ、もう終わり!」
理解しきるよりも早く距離を詰める巨大鷲の上で、菜奈花は身を乗り出して見せる。
その瞳には、ここで終わらせるという確固たる意思を表明しており、行動は、それを示すに容易い。
突き飛ばされた五人の菜奈花は、その姿を虚空の淡い黒へと変え、溶け込んでいった。
菜奈花には、理解していた。ここで、この激動にも決着がつくのだと。否、それは菜奈花だけでなく、やや離れたとことから、傍観せざるをえなかったルニでさえも、そう確信していたのである。
菜奈花は、遂に巨大鷲の背中から、目の前目掛けて飛び出していた。
勢いそのままに急速に『魔術師』に迫る最中、菜奈花の右手には、一つのカードがあった。
光るそれを眼前に翳し、名を叫び上げる。願う顛末は、事なきを得る事。その願いを反映してくれる存在は、己自身と、そのアルカナ――『正義』。
「はあああああああああああああああああ!」
スプリングコートの代わりに、純白のローブマントをはためかせ、その剣を彼目掛けて、――投げ放った。
瞬間の光の光線は、瞬く間に彼に突き刺さり、けたたましい轟音は、暗闇に一筋の線を描いた。一瞬の閃光は『魔術師』に回避の余地を与えずにいて、そうして彼は事の顛末を悟ったらしく、天を仰いぐのであった。
遅れてやってきて、彼を障害物の壁面まで押し飛ばした菜奈花は、その最中に、もう一度、あの声を耳に――否、頭に聞いた。景色は、一瞬で後ろへと流れていく。
『認めざるを……、得まい……」
『魔術師』を押しやる最中、菜奈花は横目でそれを確認することになった。――ヒラリと衝撃に身を任せて宙を舞う、今尚光り続けている一枚のカードを。
そうして勢いそのままに壁まで叩きつけると、その突き出したままの右手――指輪のあるその手をそのままに、菜奈花はその言の葉を彼に突きつけた。それは、彼を封じ込める終幕の一言、詠唱。
「――汝、我の配下となれ!」
『あぁ、其方ならば或いは――』
もう一度聞こえてきたその声は、しかしその続きが聞こえるよりも早く――
「『魔術師』!」
言の葉の完成を色付けたのである。
剣の突き刺さった『魔術師』は、その瞳を穏やかなものへと変え、やがてその姿そのものを光の粒子へと変えていった。
指輪から漏れ出る力がそうさせているらしく、みるみるうちに姿を消滅させて行くのである。
「これが――」
「そう、これが具現化したアルカナを元の在るべき姿に戻すという事」
いつの間に転移したのか、当然のようにそこにいたルニに、しかし菜奈花は気にする事無く、未だその姿を光の粒へと変成する彼に注意を向けていた。
そうしていると光へと姿を変えた『魔術師』は、次第にその手の先へと集行き、そうして別の姿を描き始めた。――アルカナ、即ち本来の姿へと。
独特の金属音を上げて地に落ちる『正義』の剣の音を横に、菜奈花はその手の先に生成されたアルカナを手に取り、まじまじと観察していた。そのアルカナと一緒に、二枚の小アルカナ――『カップ』の『2』と、『ペンタクル』の『2』が、『魔術師』の裏に何時の間にやらあったのもまた、菜奈花は確認することとなった。
「これで、終わり……、なのよね?」
「ええ、終わり」
ルニがそう言うと、見計らったかのようなタイミングで、結界の境界のズレが崩壊を始めた。ガラスが砕け落ちるように、光となって地へ舞うその光景を顔を上げてただ見守る菜奈花に、ルニはそっと労いの言葉を掛けた。
「お疲れ様、菜奈花」
と。
こぼれ落ちる光の破片は、しかし地に着く事なく、何れも宙で溶けるようにして消え失せており、ただ感嘆を漏らすばかりであった。
「もうじき、結界が閉じるよ」
それでも尚天を仰ぐ菜奈花は、そっともう何度目かのその言葉を洩らすのでる。
「綺麗だなぁ……」
ルニもそこは同感らしく、「本当に」と幾度となく道中に交わしたやり取りをして、結界はその存在を完全に消失させたのである。
さりとて、真の顛末はここではなかった。
――横断歩道の真ん中に再度出現した菜奈花を迎え入れたのは、激しく照らすヘッドライトと、騒々しいクラクションの叫び声。
「え――?」
突然の光景に、立ち尽くしていたその体が瞬時に反応できるはずもなく、また思考が追いつくはずもなく、であればこの後に待ち受けている真の顛末は――、想像する事は容易かった。
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