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第一章
―もう一人のオーナー・参―
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「そういえば、この二枚にはどんな効果があるの?」
菜奈花がふいにそうルニに訪ねたのは、次の日。昨晩の喧騒など隣国の事のように、相も変わらずの澄み渡った青で空は覆われており、菜奈花は起きてカーテンを開けるや否や、グッと伸びをした程であった。
菜奈花の勉強机の上には二枚のアルカナがあり、指輪があり、そうして用意の済まされた手持ちカバンがあった。
ルニは未だ寝ぼけ眼で、その勉強机から飛び立つと目を擦りながら、「あぁ」と相槌を打った。
「あれね」
それだけ言うと、『魔術師』のアルカナを宙に浮かして見せた。やがて光りが二つ、そのアルカナから現れると、衛星であるかのように、グルグルとアルカナの周りを集会し始めた。それは、『正義』の時と同じ光景であった。
菜奈花はすっかり制服に着替えており、実のところ、残りは下で朝御飯を食べれば後は家を出るのみであった。時刻は未だ七時を二十分程回ったのみであり、多少の余裕はある。
「そう、あれ」
菜奈花はその衛星――基二枚の小アルカナを指差した。
「『カップ』と『ペンタクル』の『2』ね」
ルニがその二つの正体を言い当てると、それに呼応したように、二つの小アルカナはその姿を表し、そうして意思があるかのように菜奈花の元へと飛んでいった。
ベッドに腰掛ける菜奈花のスカートは、本来校則的にはひざ下、或いは上五センチという明文こそあれど、十センチ近くまくっており、それなりに短い。そこはやはり今時の女子らしく、可愛くありたいと言う事なのだろうか、それでいて妙に落ち着き払っていて、清楚感があるのだから不思議なものである。
尚、未だ登校三日目であり、やはりそういう所に関しては肝が据わっているらしい。
「そうそう、この二枚」
手元まで来た二枚を、菜奈花は手にとった。
「分かった、じゃあ『カップ』の『2』」とルニ、「これは探索の効果を持つ小アルカナ」
「探索?」
首を傾げる菜奈花に、ルニは「そう」と頷き、続けた。
「簡単な話、何かを探したい時とかに使えばいいの」とルニ、「勿論、範囲は決まってるけど――」
「どれくらい?」
ルニはちょっと唸ってから、
「これも使用者の魔力に依存するからね、徒歩五分圏内くらいじゃない?」
菜奈花は「へぇ」などと相槌を打つと、「けど」と続けた。
「使い道なくない?特に戦闘には」
しかしルニは嘆息し、
「小アルカナは大体がそういうものだよ」
それだけ言うと、さっさと次の説明に移っていった。
菜奈花はそっと「そういうものなんだ……」と呟くが、それも最早ルニは気にしない。
「で、『ペンタクル』の『2』ね」
けれどその先を言うよりも早く、菜奈花が割り込む。
「そもそもペンタクルって何?」
するともう一度嘆息すると、呆れたようにルニは続けた。
「コインのこと」とルニ、「ちなみに、小アルカナには、『ワンド』、『カップ』、『ソード』、『ペンタクル』の四種類のスートがあって、それぞれ順に『火』、『水』、『風』、『地』の四大元素をそれぞれ持っているの」
スートとはつまり、マークの事である。
またもや「へぇ」などと曖昧な相槌を打っていると、ルニは気が済んだらしく、話を修正した。
「で、『ペンタクル』の『2』の効果は、伝言」
伝言、その単語を聞いた瞬間、菜奈花ははっとして、ルニの方に丸くなった目を向けた。
「何……その反応?魚の物まね?」
いきなりそういう反応をされてもルニは困惑の色しか浮かべられないようで、つい悪態を付いてしまったらしい。
「ひ、ひどっ!」
「冗談」とルニ、「伝言だからね、誰かに意思を伝えるの。テレパシーで」
しかし意にも介さない様子で淡々と続けるルニに、菜奈花も切り替えたらしく、
「それも距離とか制限あるの?」
「あるよ、これも同じくらい」
すると菜奈花は考え込むように、その『ペンタクル』の『2』を凝視し続けていた。
「まー伝言だからね、一方的にしか送れないから使いどころはどこかって言われると――」
うだうだと未だ宙を漂いながら、菜奈花の方を向くことなく説明を続けるルニだが、菜奈花はそんな事は耳には入らず、銃弾のようにただ耳の左右を通過するのみであった。
「あれはじゃあ、やっぱり……」
そうしてポツリと独り言を洩らすも、しかし話の方向がおかしな方へと向かっているルニには届かなかった。
即ち、あの時の言葉は菜奈花の予想通り彼のものであった、という事らしい。
ルニの話している内容は、未だ早く続きを読みたいらしい本の事であり、曰く、「いつになったら面白くなるのこれ!」だとか、「そもそも読ませる気あんの!」だとかである。
しかしそんな平日朝の、常識からかけ離れた一コマでさえも、菜奈花にはもう慣れたらしく、むしろその事に今度は嘆息を洩らす。
そうしてやがて来る叔母さんの「朝ごはんよ」の一言が来るまで、こうしてただ時間を無用に浪費させていくのであった。
(今朝は何かな)
仕舞いには、思考の先はどこかこの非常な現実から逃げるような、下らない、極めてどうでもいい事へと変化していた。
菜奈花の今の気分は、TKGであった。
菜奈花がふいにそうルニに訪ねたのは、次の日。昨晩の喧騒など隣国の事のように、相も変わらずの澄み渡った青で空は覆われており、菜奈花は起きてカーテンを開けるや否や、グッと伸びをした程であった。
菜奈花の勉強机の上には二枚のアルカナがあり、指輪があり、そうして用意の済まされた手持ちカバンがあった。
ルニは未だ寝ぼけ眼で、その勉強机から飛び立つと目を擦りながら、「あぁ」と相槌を打った。
「あれね」
それだけ言うと、『魔術師』のアルカナを宙に浮かして見せた。やがて光りが二つ、そのアルカナから現れると、衛星であるかのように、グルグルとアルカナの周りを集会し始めた。それは、『正義』の時と同じ光景であった。
菜奈花はすっかり制服に着替えており、実のところ、残りは下で朝御飯を食べれば後は家を出るのみであった。時刻は未だ七時を二十分程回ったのみであり、多少の余裕はある。
「そう、あれ」
菜奈花はその衛星――基二枚の小アルカナを指差した。
「『カップ』と『ペンタクル』の『2』ね」
ルニがその二つの正体を言い当てると、それに呼応したように、二つの小アルカナはその姿を表し、そうして意思があるかのように菜奈花の元へと飛んでいった。
ベッドに腰掛ける菜奈花のスカートは、本来校則的にはひざ下、或いは上五センチという明文こそあれど、十センチ近くまくっており、それなりに短い。そこはやはり今時の女子らしく、可愛くありたいと言う事なのだろうか、それでいて妙に落ち着き払っていて、清楚感があるのだから不思議なものである。
尚、未だ登校三日目であり、やはりそういう所に関しては肝が据わっているらしい。
「そうそう、この二枚」
手元まで来た二枚を、菜奈花は手にとった。
「分かった、じゃあ『カップ』の『2』」とルニ、「これは探索の効果を持つ小アルカナ」
「探索?」
首を傾げる菜奈花に、ルニは「そう」と頷き、続けた。
「簡単な話、何かを探したい時とかに使えばいいの」とルニ、「勿論、範囲は決まってるけど――」
「どれくらい?」
ルニはちょっと唸ってから、
「これも使用者の魔力に依存するからね、徒歩五分圏内くらいじゃない?」
菜奈花は「へぇ」などと相槌を打つと、「けど」と続けた。
「使い道なくない?特に戦闘には」
しかしルニは嘆息し、
「小アルカナは大体がそういうものだよ」
それだけ言うと、さっさと次の説明に移っていった。
菜奈花はそっと「そういうものなんだ……」と呟くが、それも最早ルニは気にしない。
「で、『ペンタクル』の『2』ね」
けれどその先を言うよりも早く、菜奈花が割り込む。
「そもそもペンタクルって何?」
するともう一度嘆息すると、呆れたようにルニは続けた。
「コインのこと」とルニ、「ちなみに、小アルカナには、『ワンド』、『カップ』、『ソード』、『ペンタクル』の四種類のスートがあって、それぞれ順に『火』、『水』、『風』、『地』の四大元素をそれぞれ持っているの」
スートとはつまり、マークの事である。
またもや「へぇ」などと曖昧な相槌を打っていると、ルニは気が済んだらしく、話を修正した。
「で、『ペンタクル』の『2』の効果は、伝言」
伝言、その単語を聞いた瞬間、菜奈花ははっとして、ルニの方に丸くなった目を向けた。
「何……その反応?魚の物まね?」
いきなりそういう反応をされてもルニは困惑の色しか浮かべられないようで、つい悪態を付いてしまったらしい。
「ひ、ひどっ!」
「冗談」とルニ、「伝言だからね、誰かに意思を伝えるの。テレパシーで」
しかし意にも介さない様子で淡々と続けるルニに、菜奈花も切り替えたらしく、
「それも距離とか制限あるの?」
「あるよ、これも同じくらい」
すると菜奈花は考え込むように、その『ペンタクル』の『2』を凝視し続けていた。
「まー伝言だからね、一方的にしか送れないから使いどころはどこかって言われると――」
うだうだと未だ宙を漂いながら、菜奈花の方を向くことなく説明を続けるルニだが、菜奈花はそんな事は耳には入らず、銃弾のようにただ耳の左右を通過するのみであった。
「あれはじゃあ、やっぱり……」
そうしてポツリと独り言を洩らすも、しかし話の方向がおかしな方へと向かっているルニには届かなかった。
即ち、あの時の言葉は菜奈花の予想通り彼のものであった、という事らしい。
ルニの話している内容は、未だ早く続きを読みたいらしい本の事であり、曰く、「いつになったら面白くなるのこれ!」だとか、「そもそも読ませる気あんの!」だとかである。
しかしそんな平日朝の、常識からかけ離れた一コマでさえも、菜奈花にはもう慣れたらしく、むしろその事に今度は嘆息を洩らす。
そうしてやがて来る叔母さんの「朝ごはんよ」の一言が来るまで、こうしてただ時間を無用に浪費させていくのであった。
(今朝は何かな)
仕舞いには、思考の先はどこかこの非常な現実から逃げるような、下らない、極めてどうでもいい事へと変化していた。
菜奈花の今の気分は、TKGであった。
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