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第二章
―少しだけ変化した新しい日常・二―
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その日の光景も別段変わりはなく、ただいつもの喧騒だけが教室内を包んでいた。
一年二組、全部で六クラスある内のそこが、菜奈花のいるクラスである。未だ登校四日目となる今日、既にグループは固定化されたらしく、お昼の時間の今であってもそれは如実に出ているらしい。
中学である以上、当然給食は出るが、教室内であれば自由に席をくっつけるなりしてグループを作っても良い、というのが二組の方針であった。
担任は放任主義らしく、教室には基本いない。
菜奈花は当然のように親友の椎夏香穂――外ハネが特徴的な、ソフトグレーのロング髪の少女と机を隣接させ、後は適当に三人程のグループを、正面と菜奈花側の半側面に付け、凸字の形を形成させていた。香穂正面から、北山亜沙美、佐山恵利、そして菜奈花と恵利の二人と机を合わせているのが、田辺詩香。
三人は小学校時代からの友人同士らしく、菜奈花ともそれなりに親しい関係であり、であれば大体一緒にいる香穂とも同義であった。
「でさ、この前モール行ってこれいいなぁって服見つけたはいいんだけどさ?」
そう話すのは、亜沙美。セミロングの黒髪で、よくポニーテールのスタイルでいる。タレ目で大人しそうな見た目とは裏腹に、言動がやたら残念な高テンションの持ち主であった。
「高かったの?」
給食のスープを啜り、そっと食器をお盆に置きながら、菜奈花は聞き返した。
けれどそれに亜沙美が答えるよりも先に、
「いや、単に似合ってなかっただけ」
そう答えるのは、恵利。低身長な彼女は、菜奈花の目線ほどの高さであり、ダークブラウンのサイドテールと、赤縁のスクエアメガネが特徴であった。
物静かに、それでいて上品な雰囲気を醸し出す恵利に、「ひどくねっ!」とまた亜沙美は言い返す。
「実際、ポンチョは似合わなかった……。あのピンクのフリフリは」
さらに追撃をかます詩香は、明るめのレッドブラウンのミディアムショートが特徴で、ひょっとしたら恵利以上に大人しいかも知れない印象を抱かせる。
否、或いは単にぼーっとしすぎているだけ、なのかも知れない。
「ね、何かやたら可愛すぎて……。あさみんとはイメージ合わないよ」
亜沙美と恵利はそれぞれの事をあだ名呼びしており、菜奈花、香穂、亜沙美、恵利、詩香をそれぞれ、なな、かほっち、あさみん、えりりん、たかと呼んでいる。菜奈花も亜沙美と恵利の事はその愛称で呼ぶことが多く、そもそも女子というものがあだ名を付けるのが好きなのか、上記のあだ名のうち香穂と詩香を除いて、そのあだ名は定着しつつあった。余談だが、詩香はうたかっちだの、たかたかだのとも呼ばれたりしている。
「ウチがピンク着るの、そんな似合わない?」
「イメージの問題……。似合う似合わないの前に」
「ウチだって着たって似合うって事を証明したかった……」
亜沙美と詩香がそんな会話を続ける最中、一方の香穂は微笑みながら、箸を黙々と動かしていた。それを目に留めたらしく、
「な、かほっちはどう思う?」
すると、香穂は「そうですね」と前置きしてから、
「似合う似合わないよりも、着てみたいと思うのなら、それでいいと思いますよ?」
見慣れた微笑みに、しかし調子に乗ったらしく亜沙美は、
「ほうらみろ、ウチだって似合うんだよ」
けれど詩香は冷静に反論する。
「イメージの問題って言った……私は」
実際、亜沙美は黙ってればカリスマ性に溢れていそうな癖に、その言動と趣向が伴わないらしく、けれどそれを指摘されても、改善しようという様子は一向に見せないでいる。
「けど、確かにあさみん黙ってればカッコイイもんね」
「黙ってればって何だよ、ななぁ!」
「言葉通りかと思うなぁ」
「えりりんまで……!」
がっくりと項垂れる亜沙美に、しかし香穂は更に微笑むと、
「あら、私は、似合うとも言ってませんよ?」
「かほっちまで……ウチに味方はいないのか!」
すると香穂は人差し指を口の下に持っていくと、
「だって、私たちは見てないから、わかりませんもの」
そこまで言われると、結局亜沙美は香穂と菜奈花を味方に付けるのを諦めたらしく、何やらブツブツ言いながら食事に戻っていた。
その後も食事を交えながらの雑談を続けており、時間数分前に菜奈花は食事を終えた。
周囲の一層の喧騒もまた慣れたもので、お昼の放送と称して流れていた音楽もかき消され、事実周囲に目をやれば遠近で和やかな様が溢れていた。
制服のブレザー、その右ポケットに仕舞われた指輪も自然、菜奈花の意識からは遠のいていく。お昼というのはそういうもので、そもそも授業中に置いても、既に一々気にしているという訳ではなく、半ばアルカナに対する意識が薄れていた事は、菜奈花にも薄らと理解していた。それは即ち、ルニの言ったあの一言は事実であり、しばらくは安心できそうだという実感に肖ってるという事なのだろう、と。
一年二組、全部で六クラスある内のそこが、菜奈花のいるクラスである。未だ登校四日目となる今日、既にグループは固定化されたらしく、お昼の時間の今であってもそれは如実に出ているらしい。
中学である以上、当然給食は出るが、教室内であれば自由に席をくっつけるなりしてグループを作っても良い、というのが二組の方針であった。
担任は放任主義らしく、教室には基本いない。
菜奈花は当然のように親友の椎夏香穂――外ハネが特徴的な、ソフトグレーのロング髪の少女と机を隣接させ、後は適当に三人程のグループを、正面と菜奈花側の半側面に付け、凸字の形を形成させていた。香穂正面から、北山亜沙美、佐山恵利、そして菜奈花と恵利の二人と机を合わせているのが、田辺詩香。
三人は小学校時代からの友人同士らしく、菜奈花ともそれなりに親しい関係であり、であれば大体一緒にいる香穂とも同義であった。
「でさ、この前モール行ってこれいいなぁって服見つけたはいいんだけどさ?」
そう話すのは、亜沙美。セミロングの黒髪で、よくポニーテールのスタイルでいる。タレ目で大人しそうな見た目とは裏腹に、言動がやたら残念な高テンションの持ち主であった。
「高かったの?」
給食のスープを啜り、そっと食器をお盆に置きながら、菜奈花は聞き返した。
けれどそれに亜沙美が答えるよりも先に、
「いや、単に似合ってなかっただけ」
そう答えるのは、恵利。低身長な彼女は、菜奈花の目線ほどの高さであり、ダークブラウンのサイドテールと、赤縁のスクエアメガネが特徴であった。
物静かに、それでいて上品な雰囲気を醸し出す恵利に、「ひどくねっ!」とまた亜沙美は言い返す。
「実際、ポンチョは似合わなかった……。あのピンクのフリフリは」
さらに追撃をかます詩香は、明るめのレッドブラウンのミディアムショートが特徴で、ひょっとしたら恵利以上に大人しいかも知れない印象を抱かせる。
否、或いは単にぼーっとしすぎているだけ、なのかも知れない。
「ね、何かやたら可愛すぎて……。あさみんとはイメージ合わないよ」
亜沙美と恵利はそれぞれの事をあだ名呼びしており、菜奈花、香穂、亜沙美、恵利、詩香をそれぞれ、なな、かほっち、あさみん、えりりん、たかと呼んでいる。菜奈花も亜沙美と恵利の事はその愛称で呼ぶことが多く、そもそも女子というものがあだ名を付けるのが好きなのか、上記のあだ名のうち香穂と詩香を除いて、そのあだ名は定着しつつあった。余談だが、詩香はうたかっちだの、たかたかだのとも呼ばれたりしている。
「ウチがピンク着るの、そんな似合わない?」
「イメージの問題……。似合う似合わないの前に」
「ウチだって着たって似合うって事を証明したかった……」
亜沙美と詩香がそんな会話を続ける最中、一方の香穂は微笑みながら、箸を黙々と動かしていた。それを目に留めたらしく、
「な、かほっちはどう思う?」
すると、香穂は「そうですね」と前置きしてから、
「似合う似合わないよりも、着てみたいと思うのなら、それでいいと思いますよ?」
見慣れた微笑みに、しかし調子に乗ったらしく亜沙美は、
「ほうらみろ、ウチだって似合うんだよ」
けれど詩香は冷静に反論する。
「イメージの問題って言った……私は」
実際、亜沙美は黙ってればカリスマ性に溢れていそうな癖に、その言動と趣向が伴わないらしく、けれどそれを指摘されても、改善しようという様子は一向に見せないでいる。
「けど、確かにあさみん黙ってればカッコイイもんね」
「黙ってればって何だよ、ななぁ!」
「言葉通りかと思うなぁ」
「えりりんまで……!」
がっくりと項垂れる亜沙美に、しかし香穂は更に微笑むと、
「あら、私は、似合うとも言ってませんよ?」
「かほっちまで……ウチに味方はいないのか!」
すると香穂は人差し指を口の下に持っていくと、
「だって、私たちは見てないから、わかりませんもの」
そこまで言われると、結局亜沙美は香穂と菜奈花を味方に付けるのを諦めたらしく、何やらブツブツ言いながら食事に戻っていた。
その後も食事を交えながらの雑談を続けており、時間数分前に菜奈花は食事を終えた。
周囲の一層の喧騒もまた慣れたもので、お昼の放送と称して流れていた音楽もかき消され、事実周囲に目をやれば遠近で和やかな様が溢れていた。
制服のブレザー、その右ポケットに仕舞われた指輪も自然、菜奈花の意識からは遠のいていく。お昼というのはそういうもので、そもそも授業中に置いても、既に一々気にしているという訳ではなく、半ばアルカナに対する意識が薄れていた事は、菜奈花にも薄らと理解していた。それは即ち、ルニの言ったあの一言は事実であり、しばらくは安心できそうだという実感に肖ってるという事なのだろう、と。
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