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第十四話
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いつもより一足早く入浴した二人がゆっくりと夕方の時間を過ごしていると、玄関から声がする。どうやら蒼平が遊びに来たらしい。先日も来たばかりなのに今日も、彼も暇な日常を過ごしているのかもしれない。
「よう、尚夏。もう風呂に入ったのかー? 良いご身分だなあ」
「今日はバイトが休みだったんですよ」
「飯食おうぜ、知り合いのイタリアンレストランのシェフからさ手打ちのパスタ麺もらったんだよ。パスタなら鳴海食えるだろ?」
「大丈夫だと思いますけど、一体どういう知り合いなんですか?」
「たまたま居酒屋で隣の席になった。話してみたら良いやつでさ、友達になったの」
「はあ……交友関係広いんですね」
「そうか? 人間話してみれば友達になれることは多いよ。それにまあ知り合いは多いほうがいいじゃん。いろんなこと知れて楽しいぞ」
貰ったパスタ麺をゆでて、三人で夕食にする。にんにくを刻んだペペロンチーノ、麺は市販のものより歯ごたえよくもっちりとしていて美味しい。そのおかげか鳴海も八割くらい食べることが出来た。
尚夏が食器の片づけをして部屋に戻ると蒼平と話していた鳴海がどこかぼんやりとしていて、やがて大きなあくびをする。
「どうしたの、先生。眠いの?」
「ううーん、なんだか疲れちゃって……」
「鳴海、眠いのなら寝てしまえ。ほらはみがきして」
「でも、まだ早いし」
「無理して起きていても身体に良くないだろ、疲れたのなら寝たほうがいい」
「そうだよ、先生。残った仕事は明日やればいいじゃん」
「うん……寝ようかな」
そう言って鳴海はふらふらと洗面所にむかって行く。そしてしばらくして寝室のふすまを開ける音がした。
その間、尚夏と蒼平はふたりで特に面白くもないテレビのバラエティ番組を見ていた。若いタレントが大げさに何か騒いでいるが、どこが笑いどころなのかわからない。飽きた蒼平がテレビを消す。
「あのー……蒼平さん」
「なんだ? 尚夏」
「仕事紹介してくれるって本当ですか?」
「なんで? お前今のバイト辞めるの?」
「先生から聞いたんです。蒼平さんに頼めばいいって。別に今すぐ辞めたいわけじゃないんですけど今のバイトイライラすることも多いし、いまいちやりがいも感じられなくて……まあ、別にアルバイトにそこまで求めちゃいけないかもしれないんですけど。俺、何の仕事むいていると思います? 自分じゃよくわからないんです」
尚夏の相談に蒼平は腕を組んで考えこんだ。尚夏だって日々同じ時間を仕事に使うのならば、あまりイライラしたくはない。それがいまのコンビニバイトでは叶わない気がして……。
「お前は介護とかむいてるんじゃないのか? 資格持ってなくても出来る仕事があるんだよ」
「介護? 俺、人の面倒を見るのなんてむいてませんよ」
「さんざん毎日鳴海の世話焼いたり看病したりしているくせに、よく言うよな」
「でもいままでお年寄りと話をする機会もなかったし」
「年取ったって人間は人間だからな。どうしようもないやつもいれば、いい人もいるよ。認知症とか患ってコミュニケーションが難しくなっちゃってる人もいるけど、それはそれで。介護って賃金は安いけどな、悪い仕事じゃないよ」
「介護かあ……」
「俺の知り合いに老人ホームの施設長やってる人がいてさ、いま人手不足で介護助手のバイト探してるんだって。ちょうどいい人材いないか聞かれてたんだよ。なに、難しい仕事じゃない。利用者にお茶をいれたり、話し相手になったり、あとは掃除やゴミ集めとか雑用だけど。勤務時間は要相談、どうだ?」
「でも、俺、いまコンビニのバイトもあるからシフト休みの日じゃないと……」
「その辺も相談に乗ってくれると思うぞ。とにかくいい人なんだよ、施設長。それに別に週二日程度からでもいいって言っていたし」
「そっか、考えてみようかな……」
「よう、尚夏。もう風呂に入ったのかー? 良いご身分だなあ」
「今日はバイトが休みだったんですよ」
「飯食おうぜ、知り合いのイタリアンレストランのシェフからさ手打ちのパスタ麺もらったんだよ。パスタなら鳴海食えるだろ?」
「大丈夫だと思いますけど、一体どういう知り合いなんですか?」
「たまたま居酒屋で隣の席になった。話してみたら良いやつでさ、友達になったの」
「はあ……交友関係広いんですね」
「そうか? 人間話してみれば友達になれることは多いよ。それにまあ知り合いは多いほうがいいじゃん。いろんなこと知れて楽しいぞ」
貰ったパスタ麺をゆでて、三人で夕食にする。にんにくを刻んだペペロンチーノ、麺は市販のものより歯ごたえよくもっちりとしていて美味しい。そのおかげか鳴海も八割くらい食べることが出来た。
尚夏が食器の片づけをして部屋に戻ると蒼平と話していた鳴海がどこかぼんやりとしていて、やがて大きなあくびをする。
「どうしたの、先生。眠いの?」
「ううーん、なんだか疲れちゃって……」
「鳴海、眠いのなら寝てしまえ。ほらはみがきして」
「でも、まだ早いし」
「無理して起きていても身体に良くないだろ、疲れたのなら寝たほうがいい」
「そうだよ、先生。残った仕事は明日やればいいじゃん」
「うん……寝ようかな」
そう言って鳴海はふらふらと洗面所にむかって行く。そしてしばらくして寝室のふすまを開ける音がした。
その間、尚夏と蒼平はふたりで特に面白くもないテレビのバラエティ番組を見ていた。若いタレントが大げさに何か騒いでいるが、どこが笑いどころなのかわからない。飽きた蒼平がテレビを消す。
「あのー……蒼平さん」
「なんだ? 尚夏」
「仕事紹介してくれるって本当ですか?」
「なんで? お前今のバイト辞めるの?」
「先生から聞いたんです。蒼平さんに頼めばいいって。別に今すぐ辞めたいわけじゃないんですけど今のバイトイライラすることも多いし、いまいちやりがいも感じられなくて……まあ、別にアルバイトにそこまで求めちゃいけないかもしれないんですけど。俺、何の仕事むいていると思います? 自分じゃよくわからないんです」
尚夏の相談に蒼平は腕を組んで考えこんだ。尚夏だって日々同じ時間を仕事に使うのならば、あまりイライラしたくはない。それがいまのコンビニバイトでは叶わない気がして……。
「お前は介護とかむいてるんじゃないのか? 資格持ってなくても出来る仕事があるんだよ」
「介護? 俺、人の面倒を見るのなんてむいてませんよ」
「さんざん毎日鳴海の世話焼いたり看病したりしているくせに、よく言うよな」
「でもいままでお年寄りと話をする機会もなかったし」
「年取ったって人間は人間だからな。どうしようもないやつもいれば、いい人もいるよ。認知症とか患ってコミュニケーションが難しくなっちゃってる人もいるけど、それはそれで。介護って賃金は安いけどな、悪い仕事じゃないよ」
「介護かあ……」
「俺の知り合いに老人ホームの施設長やってる人がいてさ、いま人手不足で介護助手のバイト探してるんだって。ちょうどいい人材いないか聞かれてたんだよ。なに、難しい仕事じゃない。利用者にお茶をいれたり、話し相手になったり、あとは掃除やゴミ集めとか雑用だけど。勤務時間は要相談、どうだ?」
「でも、俺、いまコンビニのバイトもあるからシフト休みの日じゃないと……」
「その辺も相談に乗ってくれると思うぞ。とにかくいい人なんだよ、施設長。それに別に週二日程度からでもいいって言っていたし」
「そっか、考えてみようかな……」
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