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本編

65.交流会1日目………どうしましょう、ルー様…。私帰っていいでしょうか?

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ピピッ ピピッ ピピッ

時計の針が4時を指したとき、リエルは端末のアラーム音で目を覚ました。

何時もより早い起床ではあるが、今日は交流会当日。遅れるわけには行かないのだ。

このまま暫く暖かいベットの中に居ても時間は大丈夫だが、二度寝をしないとも言い切れないのでベットの中から体を外に出す。

「寒っ…、」ベットの外の空気は先日の朝とは違いとても冷え切っていた。

窓辺に目をやれば機能とは全く違う景色がそこには広がっていた。

華の都とも、パンクラス島とも違うその景色にあっという間に視線を奪われる。

まばゆい光を浴びている至る所に置かれている無数の巨大な彫刻、アチラコチラで咲き誇る何色もの美しい薔薇、まるでこの国全体が巨大な宝石のように光り輝いている。

暫くぼーっと視線を向けていたリエルだったが、準備があるのを思い出し、急いで鏡の前に立った。

洗面台の前に立ち、いつもより丁寧に洗顔を終わらせて直ぐにフェイスパックを顔に貼る。

服は昨日用意したもの。ハンガーから新品のその服を外して身に纏う。

白色のシルクと薄い何層ものレースが重なった特注のシフォンワンピース。

五分袖とショルダーオフのそれは少し肌寒くなると思ったけれど外の空を見る限り大丈夫そうだ。リエルは腕や足に日焼け止めを塗りながらそう思った。

日焼け止めは塗らなくても前世のように黒くなることはないが…真っ赤に染まって肌が痛くなってしまうので此れは今や私の必須アイテムだ。

服を着終わったら次はヘアセット、2.3日前に練習していたのと同じように高い位置で結んだ髪をコテを使ってくるくると巻いていく。
ヘアゴムをリボンで隠してヘアオイルをつけたらヘアセットは完成。

因みにコテでまた軽い火傷をしてしまったのは此処だけの秘密。

髪が終わったら次はメイク、昨日用意しておいたものを手にとって寝起きで血色の悪い顔に色を足していく。

顔にフェイスブラシでパウダーを乗せて、3色のアイシャドウを使って上手くグラデーションに成るように描いていく。この時に一番濃い色でアイラインを引くのも忘れない。リップは濃すぎないように、あくまで少しだけ付ける程度に色を乗せる。

メイクが終わったら最後にジュエリーボックスを開けて中に入っているジュエリーを手にとって身につけていく。

流石シルヴェルの職人技というべきがどれも装飾が細く、とても綺麗なものだ。ネックレスを首の後ろで合わせ、大きな花の形に加工された宝石が正面に来るように調整をする。

イヤリングはルーガイルから送り際に貰ったものを着ける。此れは私が彼等の婚約者であって、ルナスーヴェルク学園の副会長の位置に着いている事を示してくれる大切な物。

少しネックレスとデザインが異なるけれど…そこは私の腕の見せ所、他のアクセサリーも使ってそれが気にならないように全体のコーデを仕上げていく。

リエルは鏡の前で全身を確認し笑みを浮かべて、キャリーケースを持って部屋を出た。

列車が到着するまで後30分と少し、リエルは相手校に連絡を入れ、迎えに来てくれる様にお願いをして列車の出口へと向かう。

3日間お世話になった乗務員に見送られてホームに足を踏み入れる。
目の前に広がる美しい景色を見ながら数分間、その場で待っていると、

『リエル様ですね。大変お待たせしました』
景色を楽しんでいたリエルの元に姿を見せたのは2人の男性だった。

1人は細身で長身、長い金髪が特徴の男性で、もう1人は大柄な燃えるような赤髪が特徴的な男性だ。

『荷物を受け取ろう。』そう言って差し出された大きな腕に持っていたキャリーケースを手渡そうと手を伸ばしたとき___

キッッ
『一体何のつもりでしょうか、』

リエルは自身に向けて振り下ろされた剣をしゃがみ込むことで避けながら、近くにあったディスプレイ用の模造刀を手にとって自身に剣を向けた相手…相手校の案内人に剣先を向けながらそう言葉を放った。

相手が振り下ろした剣は近くの建造物に当たったことで少し剣先が掛けてしまっている。

どれだけ強い力で振り下ろしたのかが目に見えて分かる其れを横目に、渡そうとしていたキャリーケースを自身の側に引き寄せ、何時でも反応できるように形の良いベビーブルーのその目を歪め、目の前にいる二人を見た。

護身術としてフェンシングを習ってからもう5年も経っているが、ハーヴェンから体に叩き込まれた其れは今でもしっかりと体に染み付いているようで、相手の一挙手一投足にも意識を向けることが出来た。

『もう一度問います……一体どういったつもりなのでしょう』
リエルは警戒心を顕にしながら再度同じ質問をした。

そんなリエルの言葉に最初にリエルに剣先を向けた案内人は戸惑いの表情を向けるだけで何も答えなかった。

代わりに口を開いたのはその男の隣にいた赤髪の男の方で…
『貴方は…本当に女性か?』

唐突に問いかけられたリエルは自身に問いかけられたその言葉に顔を引きつらせながら『どういう意味でしょう?』と答えた。

『どういったとは…そのままの意味で…『レイガ!その言い方だと誤解を与えるだろう、」ん?そうか。すまない。』嫌、俺にではなくて…』

目の前の男性がいった言葉に、リエルに剣を向けてきた男性がまた慌てた様子で話し始めた。

先程の緊張感のある空気がふっと溶けるように消え、混乱しているリエルに声をかけたのは金髪の髪を持つ男性の方だった。

『あ~、その…すまない。少し見極める為だったんだ。』
『はい?』

駅を降りてすぐに剣を向けられ、しかもそれが見極める為だったと言うのだからリエルがぽかんとした表情を浮かべてしまったのも仕方がないだろう。

『その…無理なことを言っているのは分かっている。お願いだから話を聞いてほしい。』

そう言って頭を下げた眼の前の男性にリエルは今すぐこの場から消えたい衝動にかられながら何とか首を立てに動かした。

その後赤髪の男性の提案で別の場所に移ることになったリエルは男性に導かれるまま、近くにあるカフェに足を踏み入れた。

席までリエルをエスコートした男は、カフェのテラス席に着いたところで荷物から手を話そうとしないリエルを見て少し苦笑を浮かべながらもう一度頭を下げた。

『女性に対して本当に申し訳ない。姫様からの命を断ることができなかったんだ。』

『姫様…?』聞き覚えのないその言葉にリエルが疑問を口にしたとき、レイガと呼ばれていた男性がもう一人の男性の代わりに答えた。

『あぁ、貴方は知らないのだな。マリア・テルミエール様。我が校の生徒会長だ。』

『生徒…会長……?えっと姫様というのは愛称か何かで…』流石に戸惑いを隠せなかったリエルに男は淡々と機械的に『嫌、ただ姫様からそう呼ぶように指示されているだけだ。何か他に聞きたいことはあるか?』と答えた。

『そ、そうでしたか…あの、それで命というのは一体?』
そう、リエルは此れが一番聞きたかったのだ。

リエルの言葉に頷いたような動きをしたあと、目の前の二人は姿勢を正して此方を向いた。

『何から話せば良いものか…一先ず自己紹介を、俺は生徒会長補佐を務めるマヴィック・マークという。こっちは…』
『同じく補佐を務めるレイガ・サブウェルだ。』

『リエル・シュルテンヴェルです。…今回は副会長として参りました?』
最後に疑問形に成ってしまったが仕方ない。なんと答えるのが正解なのかリエル自身も未だ分かっていないのだ。

『先程の命の件だが…、』『はい、何でしょう…』リエルは目の前の相手の目をじっと見て答えた。

『その…そちらに条件が出されたと思うのだが…あれは姫様の指示だったのだ。それ故それに見合った人物か確認する必要があってな…』

そう告げる目の前の男性…サブウェルにリエルは一瞬固まったものの自身も婚約者を決めるときに条件を出したことを思い出し、直ぐに頷いた。

『それで…その、条件に付いてなのだが…容姿や身長は遠くから見ても分かったんだ。が…』

『身分と身を守るすべを持っているかは分からなかった…と?』
『その通りだ。すまない…、』

(見える限り分かってなかったら剣を振りかざすものなの…?)

リエルはそう口から零れ落ちそうになった言葉を笑みを保つことで喉の奥に押し込んだ。

『それで…身分と護身についてはもう把握していただけまして?』
リエルのその言葉に弾かれたように顔を上げた二人は縦に何回も首を降った。

『其れは勿論!剣の使い方やエスコートの際に確認させて貰ったからな。』『そうでしたか…』

そう言って安堵からふわりと微笑んだリエルに、またも顔を赤く染める二人を見て、本当にこの世界の貴族というのはこういう表情をするものなの?と思いながら口を開く。

『早速ですが…何故剣を振るうという行動になったのかを教えていただいても…?』
『あぁ、それは勿論だ。』

それから目の前の二人の話を聞くこと約30分……。

彼らの話を要約するとこうだった。

・彼等が姫と呼ぶ生徒会長は容姿に自他共厳しい人である事。
・先程も言った通りに姫様は自他共に厳しい人であることから、姫様に反発をして姫様の身を害そうとするものがいるということ。
・姫様に何かがあったとき、生徒会のものは直ぐ様護衛に向かうため、客人まで護衛をする事が出来ないこと。etc…

『一先ず話は分かりました…』
リエルは溜息を溢しながら頭の片隅にその情報を押し込んだ。

『いきなりで申し訳なかった。姫様から貴方に此れを…』
ずっと黙っていた赤髪の男性がレイピアが差し出された。

「何故レイピアを…?」
予想外の事に思わず言葉が戻ってしまったが此れは仕方ない事だろう。

差し出されたまま引っ込む気配のないその手からレイピアとホルダーを受け取ったリエルはキャリーケースの中から服と同系色のベルトを取り出し、ホルダーを取り付け、腰につけた。

リエルはまさかファッションの一部として持ってきたベルトをこの様な使い方で身につけることになるとは思ってもいなかったし、ベルトもレイピアを身に着けるために使われるなど思ってもいなかっただろう。

赤髪の男性は其れからキャリーケースを片手で持ち、もう片方の空いた手でリエル方に差し出し、案内するとだけ言ってカフェから出た。

後ろからもう一人の男性の焦ったような声と音が聞こえてきたが気のせいなのか?そんなことを考えている間にいつの間にか馬車が到着していたようで…

『副会長殿、手を此方に…』

リエルは差し出された赤髪の男性の手を取り馬車に乗り込む。

この地に足を踏み入れて早3時間。

リエルは一体無事にこの交流会を終えることが出来るのか、そう不安を心のなかで呟き無事に何事もなく終われるよう空に祈った。

_______________
いつも多くの女神様に見て頂くことが出来て、ほんっとうに嬉しく思っております!
久しぶりに時間が取れたので書いたら…何時もより長くなってしまった……申し訳ないです…

ちょっと二日目&生徒会選挙が終わりほっとして体調が死んでいる結ノ葉です。

二日目はまだ薬でなんとか…それより…生徒会選挙!もぅ…トラブル続きすぎて死にそ…

何…?アイスの自販機置くって…夢があるのは大変よろしいことよ?でも…後何代先の生徒会長の時に実現されるの、?そしてそこの男子、、個人的な文句は生徒会長の公約質問の時に言わないでも同じ隣のクラスなんだからお昼休みにでも話しなさいな…

どっちが悪いとか味方するつもりはないケド…此れは…言われた側が可愛そうすぎる…

もぅ、その後に私達がどれだけ気まずくなったことか…まぁ、弟さんの卒業式を祝いに行くことでそんな空気感はすっ飛んだんですけど!

お疲れ様です!そして、超おめでとう!頑張った、超頑張った。偉い!
何がいるものは?ケーキ?シュークリーム?いくらでも焼くよ~!ほんっとうにお疲れ様!

そんな幸せに包まれた子も、少し悔しい思いをした人も居る本日birthdayの子は、巻き込まれ体質の生徒会役員と、食べることが大好きな幼馴染ちゃん!!

幼馴染ちゃん…可愛いよねぇ…小動物感があって(え?)

明日は…若様第一な馬術部員君のお誕生日!!そう、あの声量おばけ…あの拡張器を喉に何個しまっているんだっていうね……今年の服装が気になりますねぇ…と言っても私容量の問題で今入っていないのですが…

再開するかしないかは……迷い中…

本日お誕生日の方の誕生花はハナカイドウ ・花言葉は「温和」「美人の眠り」「艶麗」
楊貴妃のお話から来てるそうですが…、え?女神?美人の眠りとか…眠ってるとき≒無意識の時もずっと美しいと……え?何そのチート……少しだけ此方に分けてくだ(殴

「よし!明日は推しのグッズが!え?田舎だから明後日来る…?明後日予定でみっちりなのですが…?」天国から地獄に放り出された系審神者

「若様は……流石若様……若様はそこでだな…」by.若様三段活用の名手

「兄者が…そこで兄者は……やはり兄者も…」by.兄者三段活用の名刀


あ、今日は新一万円札の顔にもなる渋沢栄一さんのお誕生日&財務の日でもあります!ちょっとした雑学としてどうぞ~!    
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