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本編

66.リエルが第2王子の婚約者に選ばれた理由………

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『では出発致します。』
御者のその一言と共に馬が足踏みを始め、三人を乗せた馬車は次第にスピードを上げていく。

赤髪の男性に言われて外を見ると、其処には列車の窓から見たものとは全く別の景色が映っていた。

真っ青な海と空、真っ白な壁とそれに映えるカラフルな鳥の彫刻と至る所に立てかけてある無数の絵画。

燦々と降り注ぐ陽光の下では、様々な年代の人々が観光を楽しんでいた。

リエルは、パンクラス島とは全く違う景色と町並みに目を輝かせながら横から聞こえる説明の声に耳を澄ませ、眼の前に広がる絵のように美しいその景色を楽しんだ。

リエルを載せた馬車がある程度走ったところでブレーキがかけられ、馬の足が止まった。

『マヴィック様、レイガ様。到着いたしました。』

そう言われて外を見ると大きな屋敷が見えた。

どうやら学園ではなく、そのまま美術展が行われている場に連れてこられたようだ。

来たときと同様に、差し出された手を借りながら馬車から身を下ろすと、列車の中から見た時より更に多くの彫刻が視界の至る所に見て取れた。

『まぁ……』思わず感嘆の声が漏れる。

『美しいだろう、』
リエルの手を取って案内してくれていた男性が立ち止まって話しかけてきた。
『えぇ、とても』

『ここは学園が所有する美術館の一つで、何時も様々な美術品を展示しているんだ。今年は姫様の希望もあって例年より規模を大きくしているから、その分今は絵画以外にも彫刻なども数多く展示してある。
またこの地を訪れる事があったら是非ともまた来てみるといい。その時は歓迎しよう。』

『そうなんですね。その時は是非…』
華の都では中々見ることがない美術品の数々に目を奪われながら手を引かれるままに足を前に動かす。

『此方だ。足元に気をつけてくれ…』

目の前の男性に続いて歩いていく途中壁に掛けられている作品の説明などをしてくれたりしたので退屈する事はなく、目的地へと辿り着くことが出来た。

受付らしき場所で名前の確認をされ、いらない荷物を預けて館内に入るとそこは外とは完全に異なる別世界が広がっていた。

色鮮やかな花々に囲まれた庭園には噴水があり、至る所に様々な彫刻と絵画が飾ってあった。

何よりリエルが一番凄いと感じたのはどの作品も喧嘩をしていないところだ。

これだけの作品があれば何処かで違和感が出てしまうはずなのに全てが一つの巨大な作品だと言わんばかりに調和しているのだ。

リエルが目の前にある幾つもの作品に見惚れていると

『貴方がルナスーヴェルク学園の副会長?』

突然後ろから声がかけられた。

リエルが振り向くと、艶のある美しく波打つブロンドのその髪と真っ赤なドレスが目に入った。

『私はマリア・テルミエール。ベルンフリート学園の生徒会長よ、』

少し睨まれながらかけられたその言葉にリエルは戸惑いながらも頭を下げて『ルナスーヴェルク学園の副会長を務めております。リエル・シュルテンヴェルと申します。』と、返した。

『挨拶程度はできるようですね、何か質問はありまして?』

自身にかけられた言葉に一瞬悩んだ様子を見せたリエルは、貰った言葉の通り質問をするために口を開いた。が、

『では恐れながら一つだけ。失礼ですが彼等の』様に私も人を連れてきたほうが良かったでしょうか。

そう口に出そうとした言葉は目の前の人物によって途中で掻き消された。

『何?貴方も二人をよこせとでも言うつもり?』先程よりも鋭い目つきで言われたその言葉にリエルは『何でそうなるの…?』と、困惑のあまり敬語が抜けてしまった。

『だって…貴方の学園から来た女子生徒も同じことを言ったわ!』

リエルはその言葉を聞いて今すぐ逃げ出したくなった。

立場を考えずそんな馬鹿な事を言う人物は一人しか思い当たらなかったからだ。

『失礼ですがその女子生徒の名前を教えていただいても…』

『…ヘイリー・ヴェルディという名よ、やっぱり知っていたのね…』

目の前の女性に厳しい目を向けられ、リエルは慌てて言葉を返した。

『違います!寧ろ失礼ながら同じ立場で…』
『同じ?という事は貴方も?』

向けられた視線に頷きながら頭を抱えた。

[ヒロイン(偽)]を学園内で見なくなったと安心していたら此れである。

『じゃあ先程のは…』『あれは唯他の者も連れてきたほうが良かったのかと聞きたくて…』



『………完全なる私の早とちりじゃ無い、、御免なさい。』
先程の威勢は何処へやら肩を下げて落ち込んだ様子の目の前の女性に私は慌てて顔を上げる用に声を掛けた。

『いえ…後、』『何かあるかしら?お詫びで出来るものは何でも…』リエルのその言葉に女性はぱっと顔を上げた。

『お詫び、と言うか少し知っておいて頂きたい事が有りまして…』『知っておいて欲しい事?何かしら、』『先程から私と彼サブウェルさんを良く見て居られるのですが…私にも彼にもそんな気は一切ないのですよ?』

『そう…なの?』
リエルが発した言葉に思わずといった様子で声を漏らしたマリアに二人して何度も繰り返し頷いてみせた。

『姫様、その通りです。それにリエル様には婚約者が居ると聞いております。このままでは少し失礼に当たるかと…』二人の態度を見ても戸惑いを隠せていなかったマリアにマークが横から声を掛けた。

『えっ…其れは本当なの?』
『はい。そして此れは私個人の考えなのですが…テルミエール様も、そちらのお二人と婚約関係にあらせられますよね?』

『何で分かったの?此れ迄誰も分からなかったのに、、』
『御三方の視線…でしょうか、後は女の勘としか…』

『視線?』
『えぇ、テルミエール様を見つめる視線です。サブウェル様は特に、、』


『そんなにわかり易かっただろうか?』『えぇ、とても。テルミエール様を愛しておられるのですね、』『あぁ、とても好いている。』

そんな二人の会話をよそにマリアの顔は段々真っ赤に染まっていった。

二人の会話を止めようにも二人は本音を言っているだけなので恥ずかしく思うことなどなく、寧ろ話は大きくなっていく一方だ。

『で、では何故…ずっとレイガと手を…』

マリアがずっとリエルの事を疑っていた一番の原因はそれだ。

少なくともマリアが館の中で3人を待っていたときからずっと二人は手を繋いでいる。

其れはもう、自身とレイガが手を繋いだ時よりずっと長く、幸せそうに。

一方声をかけられた二人は繋いでいる手を見つめて困ったような表情で隣りにいたマークに目を向けた。

マークはギクッと肩を震わせた後、3人の視線に負けその場所で言いづらそうにマリアに向かって話し始めた。

『姫様。実は二人が手を繋いでる原因は俺で…』
『原因?一体何をしたと言うの?』
『あ~、その。怪我をさせて…』『マヴィが相手に怪我を?一体誰に、、』『その…リエル様に…』

マークがそう言葉にした瞬間マリアとマークのみ成らず同じ部屋内にいたマリアの護衛、一般の観光客、案内人等様々な人の目が一斉にリエルの方を向いた。

『レイガ、リエルさん…今のは本当?』

その言葉に何と言うことも出来ず固まったリエルの代わりにタイガが『本当だ。姫様からの条件を確かめる為にマヴィックが副会長殿に剣を向けた所、剣を避けた際にヒールの踵部分が溝に嵌り、足をひねってしまわれた。』とマリアからの問に答えた。

そう、最初に自身に振り下ろされた剣を避けたリエルはとっさの事で足元まで意識が回っておらず姿勢を元に戻したときに見事白いレンガとレンガのほんの僅かな隙間にヒールの踵が嵌り、見事に足を捻ってしまったのだ。

今でもカフェで患部を少しの間冷やしていたとはいえ足の痛みは引いておらず、腫れている部分をガーゼで包みレース付きのロークルーを履くことで隠している状態だ。


(え…今マヴィック様が女性に剣を振り落としたって言わなかったか!?)

(いやそんな客人に失礼という前に非倫理的なことをやるはずが…)
(だけどあの女の子、ずっと左足を引きずってるよ?)

(レイガ様は嘘などつかないし…)(え?じゃあ本当な訳?)

(え?やばいんじゃない?向こうの女の子、交流校の副会長でしょ?)

(私知ってる!あの子パーティでみたわ、シルヴェルのデザイナーで、王家とも繋がりがあるって…)(え? 其れが本当だとしたらうちの国やばくない?)

レイガとマークの言葉が聞こえたのか、周りにいた人々がざわめき始めた。

マリアも流石にこの場所にいることはマズイと考えたのかリエルに場所を移動する提案が出された。

勿論リエルもその提案を断ることなどするはずもなく、マリアに出された提案に乗り、タイガに手を引かれながら別の部屋に移動した。

次に四人が移ったのは刀剣が壁一面に掛けられた展示室。

勿論リエルが一番推していた日本刀等一つもないが、リエルが今持っているレイピアを始め長剣の「ロングソード」「ツーハンドソード」短剣の「ファルシオン」「ダガー」等様々な西洋剣がガラスケースに囲まれてそこにあった。

(ここなら入れる者も限られているし大丈夫だろう)

レイガがそう思いながらリエルの方を見ると、そこには瞳をキラキラと輝かせながら展示されている剣を見て回る少女の姿があった。

(こういうところはまだ子供だな)
そんなことを考えていると、いつの間にか隣に来ていたマークから声をかけられた。

『レイガ、あの子は一体何者なんだ?王家と繋がりがあると…』 

『事前に調べなかったのか?あの方はシュルテンヴェル家のご令嬢で、向こうの国の第二王子の元婚約者であったらしい。』

横からかけられた言葉に少しため息を吐きながら自分の調べた情報を伝える。

『婚約者!?嫌…、あの美貌と家柄であれば…』

『元だ、彼女には既に婚約者がいるのだそうなのだからそれは失礼に当たるぞ。其れにあの国の王子の婚約者は家柄だけでは選ばれない。特にあの家では、』

『家?唯の少し地元で有名な程度の家だけじゃないのか?』そう軽々しく言ったマークにタイガは自身の手を強く握り込んだ。

『はぁ…あの家はあちらの国の中では取り分け有名な公爵家だ。女主人は現女王の血の繋がった実の妹、当主の二人も由緒正しき血を引いている者だ。』

『じゃああのお嬢様は、家のお姫と並ぶくらいに家柄が高いとでも…?』

『あぁ、彼女の兄は高等部の生徒会長で剣術の達人。それに加えて彼女本人も大きな財を成した者で在り、副会長だ。』

『聞けば聞くほど家柄で選ばれたとしか…』

『それは違う。あの家は恐ろしいほどに個人の地位が求められているんだ。』『地位?』

『あぁ、例えば彼女の兄は古代文明の解明、遺伝子の研究等学業の面で膨大な人脈と情報を得ている。其れに彼女も10歳頃にはもうシルヴェルを作っていた。』

マークは剣をマリアと見て言葉をかわしている自分の身長の半分ほどしかないリエルを見ながら驚きの表情を浮かべた。

どうしても己の婚約者と年齢相応に笑顔を浮かべているかの令嬢がそれだけの力を持っているとは信じられなかった。

マークが二人に声をかけられるまでずっと其のことについて悩まされる事になるのはまだ誰も知らない…

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本日も多くの女神様に見て頂くことが出来て、
本当に嬉しく思っております!
また何時もよりも長くなってしまった……申し訳ない…

花粉で無事に目と鼻が死んでいる結ノ葉です。

え~っと、口内炎予防と花粉で…ビタミンBとDとEを……取れるかぁ!何個食べることになるの…魚ときのこ類しか無いやつあるし…よし、サプリに使用…うん。それが一番手っ取り早いよね。

いや~、最近推しグループの投稿が毎日のように合って…圧倒的に睡眠不足☆
だってね?推し単体での配信は少ないけどグループの方には偶に顔だしてるしコメント欄に出現するし……見に行くしかないでしょう???

明日は休み……つまりは…夜更かしをしても良いということ?いや先日もやったばかりなんですけど…(←春休みにやる予定の1000ピースパズルを我慢できずに一徹で終わらせた馬鹿)

明日が休みで夜更かしをしている子が何処かに必ず居るであろう本日birthdayの子は、

最近漫画がやばい展開を繰り広げているある呪物を飲み込んだ主人公と、兄弟思いの革命軍、反社の蕁麻疹持ちetc…

いやね?もっと本日birthdayの推しは一杯居るのだけど…止まらなくなる予感しかないのでここら辺ですとっぷしておきます。

明日は名前がかわいすぎる五条人形の跡取り君と、とあるアイドルにお熱なお姉ちゃん。

愛すべき噛ませ犬の9代目総長のbirthday…獅音ちゃん……うん……やばいかった……それでも私は君を愛すよ…

本日お誕生日の方の誕生花はスイートピー 「門出」「ほのかな喜び」「優しい思い出」・ミツマタ「強靱」「肉親の絆」何じゃこの平和に溢れた周りに花でも飛んでそうな花言葉は……羨まし(蹴


「え?もうすぐで2年生終わる????早く無い…?え?てことは…推しと再開して…何日目?」入学のタイミングでスマホデータ紛失した審神者(皆もちゃんとバックアップ取っておこうね!!心臓止まったかと思ったから!)

「え~、ちょ~運命感じるんですけど~」by.恋する可愛いがすぎる金髪黒ギャル

「あ'?お前が退けよ、………あ、小エビちゃ~ん」by.何が起こるかわからないドキがムネムネでハラハラになること間違い無しのウツボ

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